カテゴリー別アーカイブ: 諸星大二郎

「鳥」に続いて「魚」についての諸星ワールド — 諸星大二郎「私家版魚類図譜」(講談社)

私版鳥類図譜に続いての、魚類版である。
収録は、
 
第1尾 深海人魚姫
第2尾 鮫人
第3尾 魚が来た
第4尾 魚の学校
第5尾 魚の夢を見る男
第6尾 深海に還る
第7尾 ネタウナギ
 
となっていて、第1話目「深海人魚姫」の深海に住む人魚の娘が、深海探査の訪れた潜水艇の調査員の青年に惹かれて、深海から海面まで、ダイオウイカの妨害や貧酸素層を乗り越えて浮上する話と、第6話目「深海に還る」の、浮上後、人間界で水族館関係の売れっ子となった後、再び、深海へ帰還する(ような)オチにいたる話の合間に、諸星ワールドらしい掌編が挟まる構成である。
本筋となる、第1話と第6話は、美少女が、肉親のエピソードに導かれるように、今まで過ごしていた世界から飛び出して、新しい未知の世界へ行き、そこでさまざまな経験をするが、再び故郷へ還る。しかし、その故郷はすでに荒れ果てていて、といった展開で、これは、構造的には「暗黒神話」や「孔子暗黒伝」などのs初期のシリーズから共通のものであるよね。
 
当方的に懐かしい「諸星ワールド」、と思うのは「鮫人」。中国の宋代に皇帝の命をうけて南海の探査に来た将軍が、女だけの住む島に難破してからの不思議譚で、諸星氏の諸怪志異をはじめとする怪異譚のジャンルの風合いが懐かしい。
 
あとがきによれば、鳥、魚と続いたが、これを拡大して、植物やほかの動物の図譜を、描く予定はないらしい。図譜は当面、ここで打ち止めであるようだ。諸星ワールドに郷愁のある方には残念ではあるが、しばし、幻想色豊かな世界に浸ってみてはいかがでありましょうか。

「鳥」をめぐる不思議な「味」の物語群を楽しもう — 諸星大二郎「私家版鳥類図譜」(講談社)

奇妙な味の作品というのは、人ぞれぞれに感覚は違うのだろうが、共通項というものはあって、本作の筆者・諸星大二郎は、そういう「共通項」といっていい。
 
収録は
 
第1羽 鳥を売る人
第2羽 鳥探偵スリーパー
第3羽 鵬の墜落
第4羽 塔に飛ぶ鳥
第5羽 本牟智和気
第6羽 鳥を見た
 
となっていて、題名通り「鳥」をモチーフにした短編集なのだが、
 
例えば、第一羽の「鳥を売る人」は、人びとが、いくつかの離れた巨大な「塔」の別れて暮らしている(近)未来あるいはパラレルワールドの世界で、「鳥」と一緒に渡り歩いている「行商人」と少年の話であるし、
 
第五羽の「本牟智和気」は、日本の古代を舞台に、大和から、伯耆、出雲の国に侵入してきている軍勢に随従している「鳥探し」の男と、伯耆の国の「鳥の巫女」、そして、垂仁天皇の皇子・本牟智和気の話で、本作では、鳥のおかげで口がきけるようになった本牟智和気が出雲へ攻め入ったことになっている
 
ように、それぞれの「味」や「舞台」はかなり異なる。
 
一頃のブームが過ぎて、少々、懐かしい部類に入ってきている諸星大二郎の作品なのであるが、暗黒神話や妖怪ハンターを始めとする「古代歴史もの」、「栞と紙魚子」シリーズのような「不思議もの」など、はまり込むと、やみつきになること請け合いの世界が展開されている。
それぞれに好みは分かれるが中毒性は高いので、少しづつお楽しみあれ。