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日本の会社の「属人化」をなくすには、職場の「達人崇拝」や「専門家の神格化」をやめることが一番

沢渡あまね氏の「問題地図」シリーズを読んでいて、働き方改革の阻害要因の一つに、仕事の「属人化」ということがよくでてくる。
「属人化」が進行すると、一定の仕事が特定の個人のノウハウとか知識に依存していて、その人がいないと仕事が滞ったりする上に、悪化すると、そのノウハウや人脈が伝承できず、その人を異動させられなかったり、退職されれば、はいそれまで、といったことがおこってくる。

さらには属人化しやすい専門の得意分野の持ち主を、本当なら、その分野のオーソリティといいう存在であるにもかかわらず、日本人の大好きな「〇〇道」という「道」を極めることと同一視して、すべての分野の通じる、対処できるという錯覚をして、多分野の調整業務が必要なポジションや、プランニングのポジションにつけてしまい、全体が機能不全に・・、といった例は、日本企業でよく耳にする例でもある。。

この「属人化」の解消方法として、「職場の問題地図」では

①脱属人化・標準化の取り組み自体を評価する
②ノウハウや知識の公開・共有を評価する
③その人に、育成者としての地位と名誉を与える

といったことがあげられているのだが、当方的に最も重視すべきなのは②であるように考えている。

というのも、海外は知らず、日本の「属人化」の陰には、「その道の達人崇拝」、あるいは、なんでも「術」から「道」に進化させちゃう傾向が隠れている気がするのである。

このため、本来なら、仕事の技術というのは、ほとんどが「テクニック」の部分で、スポーツの技のようなものと考えるべきなのだが、どうかすると、妙な「精神論」がくっついてきて、時と場合と相手方も考えず、いつでも有効な手法として祭り上げられ、その使い所と使い方は「秘伝」のごとく、家元のもとに秘められたままということになる。

で、この解決策は、とにかくオープンソースにすることが有効だろう。しかも、そのノウハウが適用された相手、シチュエーションも含めてオープンにできるように、一定のフォーマットは決めておく、そして、誰でも簡単にアクセスでき、追記できるシステムを開放する、といったことが大事なように思う。

出典は覚えていないが、司馬遼太郎がイギリスとスペインの植民地支配を比較して、イギリスはその支配のノウハウを外にオープンにしなかったのに対し、スペインはそれを開放した。これが帝国主義が進む中、イギリスの隆盛とスペインの衰退につながったということを言っていたような気がするのだが、一つの組織内において、特定の個人のノウハウ独占が招き弊害は大きい。人事的な処遇や報奨制度も含めて、組織内にノウハウをオープンにしたほうが得になるシステムをつくれるかどうかが、組織の浮沈を分けると思いますな。

「稼ぐ」体質になるには、日々の地道な行動が大事 — 午堂登紀雄『「お金をもらう」から「稼ぐ」人になる習慣術』(パンダ・パブリッシング)

最近、「働き方」を中心にしたレビューが多かったのだが、働く環境の整備も大事だけれど、「お金が儲かる」ようにならないと「働き方」だけよくしてもねー、という向きも多いかと思う。
そうした向きに、「根底にあるのは、「僕たちにとって無駄な経験は何もない。どんなことでも必ず何か学びがある」 という視点」に立って「考え、発想する」というビジネス心肺能力を鍛える方法、「試行錯誤を続ける」というビジネス足腰を鍛えるための方法や考え方という「稼ぐ」ためのノウハウについて論じたのが本書。

構成は

第1章 24時間まるごろ学校化作戦
第2章 知的生活につながる時間術
第3章 マルチプル時代を生き抜く知的生産術
第4章 どこでもオフィス化計画
第5章 情報をお金に換える作戦
第6章 知的生活を生む発想法

となっているのだが、「稼ぐ」ための具体的なヒントやTipsというよりは、本書は、「稼ぐ」思考形態になること、「稼ぐ」身体機能を身につけること、の紹介を主眼としていて、たとえば

タクシーに乗るとき、ホテルに泊まるとき、銀行に行くとき、美容院に行くとき、それぞれに視点を持っておくと、たくさんの気づきが得られます。そして、そういうことをメモしておく、ブログに書いておく、など何らかの手段で記録しておくと、それがいずれ話のネタになるのです。

サービスを受けてお金を払うときは、 次からは自分で同じことがやれるくらい、彼らが提供するものをじっと観察し、盗むようにしましょう。

講演やセミナーに出たら、内容だけでなく、講師の話し方、資料の作り方、運営の仕方、会場の環境などをじっと観察します。そして、次からは自分でセミナーができるくらい、注意を払って吸収します。

といった風に、「取り組み方」、「心の持ち方」のアドバイスの傾向が強い。それは、

世の中は、「マルチ」化、「マルチプル」化が進んでいる印象を受けます。企業経営でも単一の商品・サービスはいつか飽きられるため、周辺分野に手を広げていく必要に迫られています。

収入源も、「給与収入」ひとつだけでは心もとないため、複数の収入源をつくることによって、人生の余裕と選択肢が広がります。

といったような、今の企業社会が不安定化していることへの対応でもあるのだろうし、さらには、その不安定さ故に、具体の方法論をあれこれ考えても、すぐに陳腐化することへの対応でもある。このあたりは、大きな評判をとったビジネス書でも、その本が提案するものが具体的であればあるほど、数ヶ月も立たないうちに使えなくなってしまうことに共通していて、「抽象化」された手法ほど、読み取る上での裁量というか、余白の部分が大きくて、汎用性が高いことの現れでもある。

もっとも、その対応というのが

そんなマルチプル時代を最大限に楽しむには、思考や発想をマルチプルにする必要があります。 つまり自分の専門領域にこだわることなく、専門分野の境界を越えようとしてみることです。 そのためのひとつのキーワードが「複眼思考」 です。

ということで、「専門をとことん極める」ではなく、「専門を極めつつも、周辺に浮気する」といった、少々気まぐれな対応が必要になるようで、真面目な人には顔をしかめられてしまうかもしれず、さらには、

適切な意思決定や適切な問題解決には、情報がたくさんあったほうがいい、と多くの人は考えます。しかし、実際には情報量が増えれば増えるほど、僕たちは思考停止してしまいがちです。

こうした状況を防ぐひとつの考え方として、「アンラーンする」 というものがあります。アンラーンとは、「知識」という余分なゼイ肉を削ぎ落としていくことです。

と、今までのできるだけ広範囲に、より多くの情報を集めることを至上とする行動形態を戒めてもいるので、今まで精密に計画を練ったり、精密な市場調査に邁進してきた方々は注意を願いたいし、どうやら、今まで「王道」とされてきた手法とは、ちょっと道筋が微妙に離れているようである。

ともあれ、本書によれば、なにより肝心なのは

なかには、すでに知っていること、やっていることもあるでしょう。あるいは、それは自分にはできそうにない、というものもあるでしょう。
しかし、習慣を見直すとは、そうやって感じたことを一つひとつ立ち止まって、より自分に負荷がかかる方法へとバージョンアップさせていくことです。

今の自分を超えたいなら、よりしんどい方法を選ぶ。でもそれでは続かないから、それをいかに楽しめるか。ゲーム化できるかを工夫する。その試行錯誤の繰り返しが習慣をつくります。

というように、アドバイスをもとに習慣を一つ一つ「稼ぐ」方向へ変えていく、といった結構、地道な方法が必要であるらしい。「稼ぐ」に「王道」はない、ということなのであろう。本書のアドバイスの数々を、地道に、きちんと試してみましょうか。   

「フレームワーク」や「テンプレート」はシゴトの「型」じゃねぇ — 村井庸介「どんな会社でも結果をだせる! 「最強の仕事の型」」(クロスメディア・パブリッシング)

筆者は、野村総合研究所を皮切りに、リクルート、グリー、日本アイ・ビー・エムを経て、メガネスーパーの企業再生に辣腕を振るった人物なので、転職の数がビジネスマンの経歴だ、ってな調子の転職奨励本かと思いきや、豊富な各種各様の企業生活・ビジネス生活を通じた、どんな会社でも通用する「仕事のやり方」(筆者はこれを「型」といっている)を伝授する、いわば「教習本」。
 
構成は
 
第1章 どんな会社でも結果を出せる仕事の「型」とは
第2章 仕事でいちばん大切な「提案力」の磨き方
第3章 「GISOV」を実際に使うときのポイント
第4章 自分の付加価値を高め続けるための「仕事術」
 
となっていて、まず転職について、筆者は
 
業種・業界が違えば、持っておかねばならない基礎知識は異なります。しかし、本質となる行動プロセスは、同じ「GISOV」です。・・・実はどこに行こうと「仕事ってそんなもの」なのです。
私が転職をむやみに勧めない、いちばん大きな理由はそこにあります。「井戸の外に出たら、きっといまよりもすばらしい世界が広がっているんだろう」という「憧れ」ベースの転職なら、やまたほうがいいでしょう。井戸の外に出ても、いまと同じだからです。(P205)
 
と最後の方で述べているので、転職のノウハウを期待する向きはちょっと「残念」。本書の主眼は、筆者によれば、「よい提案ができるということは、すべての仕事に使える「仕事の基本」(P5)」で、その提案が「承認」される度合いを上げるための「型」について論じたのが本書であるようだ。
 
その「型」というのが、「GISOV」というもので、図式化すると
 
①G:GOAL(ゴール:目的、目標)
②I:ISSUE(イシュー:課題)
③S:Solution(ソリューション:解決策)
④O:Operation(オペレーション:実行計画)
⑤V:Value(バリュー:付加価値)
 
ということで、最後の⑤があるのが、独自なところ。そして、「V」が付加されているところが、通常のコンサルによる仕事術とは違うところで、なんといっても
 
私は「フレームワーク」「テンプレート」と「型」とは、少し意味が違うと考えています。
(略)
「フレームワーク」「テンプレート」はあくまでもツールにすぎません。確かに便利なのですが、必ずしも仕事の本質を学ぶことができるわけではないのです。提案がまさにそうです。「フレームワーク」に事例を当てはめただけの提案なら、「誰でも」できます。「フレームワーク」とはそういうものです。しかし「誰でも」できるような提案に価値はあるのでしょうか。そのレベルの提案なら、誰かがすでにやっているはずでしょう。(P51)
 
といったあたりは、クライアントの立場で、いつもコンサルから煙に巻かれている当方としては、溜飲が下がるところ。というのも、クライアントも横のつながりがあるから、よその会社のプレゼンで、自分のところに来ているものと同類のコンサル提案の見ることはよくありますからな。
 
で、本書は「GISOV」の型に沿ったガチガチのシゴト術が述べられるかというと、そうでもなくて
 
「どうやったら承認してもらえるか」を考えるよりも、「却下されるとしたら理由は何か。どうやったらその理由をなくすことができるか」と考えるほうが、提案をブラッシュアップする方策が具体的になる(P125)
 
ポイントは
①相手のことを徹底的に知る
②「相手によくなってもらいたい」という動機を忘れない(P125)
 
とか
 
「プロジェクトが成功する要因は、キックオフのときに、成功できると思っている人たちが集まっていること」(P130)
 
はじめてのことを「やってみようか」「それならできるかも」と感じさせ、さらに継続するために重要なのは、ハードルの設定の仕方。そのポイントは
①仕事の「型」に沿っており
②すぐに成果が目に見えて
③現状での負荷が大きくない(P132)
 
といった実践的なところが多いのは良いですな。
 
また、最初に「転職のノウハウを知りたい向きには・・」と書いたのだが、それは、転職するためのノウハウは出てこないよ、という意味で、実は、転職で一番大事な、転職した後の頭角の出し方として、
 
・社内で新しい提案をするタイミングは、ひと通り、既存の仕事やプロジェクト、作業を終えたときです。少なくともワンクールの仕事は、そのまま受け入れてやってみる。提案はそのあとです(P148)
・新しい会社に入ったら、まずは既存の仕事、あるいは仕事の進め方や流儀を尊重する。しかし、見えないところでは、ゴールとイシューを発見する(P149)
・イシューを見つけるために有効な視点は「大きな仕事やプロジェクトを、小さく分割してみること」(P151)
・転職先で、できるだけ早く「新参者」から脱却するためには、「売上げアップ」よりも「時間短縮」のほうが成功しやすい(P154)
 
といったものや、新規プロジェクトがスタートできない主要な理由の一つである「上司のやらない理由」を潰す方法として
 
・「何をやるか」も大事だが、有効なのは「何をやるとどれだけ成果が出るのか」を必ず数字で示すこと
・仮にうまくいかなかった場合の「逃げ道(バックアップ)」も用意しておくこと(P164)
 
といった、転職経験の豊富さを活かしたアドバイスは秀逸である。
 
さて、転職云々は別として、およそ全てのビジネスマンが、強制的に、社内環境、労働環境が、「転職」と同様に大激変することがある。そう「定年」である。「再就職後」を希望するビジネスマンは、誰もが新しい場所で、能力発揮と結果を出すことを求められるし、結果を出すことを望んでいるはず。転職希望社だけでなく、「そろそろ・・」のビジネスマンも読んでおいたほうがよいのかもしれんですね。
 

「デキる」(と言われている)人への、辛口アドバイス — 小倉 広「自分でやった方が早い病」(星海社新書)

ヤリ手と言われる人ほど、部下のやっていることが、要領が悪く見えるという悪癖を抱えがちで、つい口出しをして冷たい目でみられたり、部下から仕事をとりあげたり、といったことをやりがちなもの。
そうした「デキる」(と言われている)上司へのアドバイスが本書。
 
構成は
 
はじめに 「自分でやった方が早い」という病の恐ろしさ
第1章 病が進行すると「孤独な成功者」になる
第2章 病を克服すると「幸せな成功者」になれる
第3章 病の根本にある「自分さえよければ」という考え方
第4章 「自分でやった方が早い病」への処方箋
第5章 「自分でやった方が早い病」が再発しないために
おわりに 「自分でやった方が早い」の正体は「自分でやった方が遅い」
 
となっていて、本書によれば
 
この病にかかっている人は、平気でまわりの人の悪口を言います。まるで自分は違うと訴えたいかのように、堂々と言います。嬉しそうに、ドヤ顔で言う人もいます。
しかし、勘違いしてはいけないのは、まわりの人のレベルは自分のレベルだということ。自分のレベルが高くて、まわりのレベルが低いと思っていること自体が勘違いです。優秀な人が集まって来ないのは、あなたが優秀なリーダー的存在ではないからです。ろくでもない部下しか集まって来ないのは、あなたがろくでもないリーダーだからです。
 
ということらしく、「自分でやったことがはやい。」と思いだしてそれを喧伝し始めたら、要注意というところであるらしい。そういわれれば、「自分がやったほうが・・・」という口癖の「デキる人」というのは、当方の周囲で幾人か見受けられるのだが、総じて本人が優秀でも、徐々に干からびたりしてしまうことが多くて、そこは、その人の周囲に「人」が集まらなくなり、「人」からもたらせられる情報も枯渇し、「人」の援助や応援も少なくなるからであるようだ。
 
そして、チーム全体のパフォーマンスを考えると、一人のプレイヤーのパフォーマンスがいかに高くても、チーム全体が力をつけている場合に比べると、どうしても持続力や永続性の面で劣る場合が多く
 
一人の百歩よりも、百人の一歩のほうが、両輪がうまく回る仕組みになっていると言えます。
外部環境適応で言えば、百人が一歩を踏み出しているのですから、変化の激しい外部環境に適合しているでしょう。
 
といった状態をつくることが、組織全体にとって最適解であるようだ。
とはいうものの、今まで「デキる」と言われてきた人が「人に任せる」という境地になり行動を示すのは、そう簡単ではなく
 
「自分でやった方が早い病」を克服して、まわりの人と成長していくことに決めたあなたは、もう「エースピッチャー」ではありません。
昔の快感が忘れられずに、いつまでもマウンドに登り続けていれば、若手のピッチャーが成長しません。
若手の活躍できるチャンスをみすみす奪っていることに他ならないのです
 
「我慢」が必要なのです。
一時的にトラブルが多発しても、子どものことを信じて待つしかありません。40%のパワーで我慢していれば、いずれ子どもは少しずつ変わっていきます。
本当に徐々にではありますが、プラスに向かっていくのです。
 
といった風に、今まで自分のパフォーマンスを挙げてきた手法とは、視点の異なる手法が必要となるようだ。そして、さらには
 
会社の中は、ビギナーコースです。
つまり、任せるけれど、すべて見ているし、細かくチェックもする。
一挙手一投足を眺めて、脇からハラハラしながら見守る必要があます。
いざとなればすぐに助けを出せる態勢を整えておくわけです。
 
まわりの人や部下に仕事を任せると楽になる。
そう勘違いしている人も多いのですが、それはまわりの人が一人前だったり、部下が立派に成長してからの話です。
最初は、必ず仕事量が増えるので、任せた本人の負担も大きくなります。
 
ということらしいので、「人に任す」というのもスムーズにやるのは、結構骨が折れるものである。
 
ただまあ、
 
伸びている会社の社長さんには共通点があります。「忙しい」と言わない。また、いつも余裕があって、ニコニコしている、ということです。
伸びている会社ほど仕事は多いはずなのに、そのトップである社長が余裕の表情を浮かべている。この謎ももちろん「自分でやった方が早い病」が絡んでいます。伸びている会社のリーダー、マネージャーはきちんと任せることができているのです。
 
ということであるので、「自分でやった方が早い病」の克服は、成長を目指す「個人」や「企業)に必須のようだ。本書を読んで、治療をがんばってはいかがでありましょうか。
 

「新しいこと」を始めるには、良い意味で「鈍感」になることが大事

最近読んだ「社長の「まわり」の仕事術」の「サニーサイドアップ」のところで、「良いな」と思ったフレーズがある。それは
 

 

これはどんな組織でもあると思いますが、何か取り組みを進めると懐疑的だったり、否定的なことを言われたりすることもありますよね。そういうときに、直接受け止めると、疲れるし辛いわけです」
  だから、絶対にいいものだ、本気でやるべきだ、と判断したものに関しては、〝鈍感〟になることにしている。
(略)
「それは、本当に鈍いんじゃなくて、自分を鈍く仕上げていくということです。それで丸く収まることがすごくたくさんある。全部にいきり立って、こうあるべき、こうじゃないか、というスタイルもあるのかもしれませんが、そうではないポジションを取るべきだな、と思っています。」
というもので、新しいものに常にチャレンジしている同社の中枢にいる人らしい発言である。
とかく、目新しいことや、今までのやり方を変えようとすると、有形無形の抵抗に遭うのは、どこの組織でもあることで、ともすると、そういった内部の抵抗を打ち破ることのほうが、新規事業をやることより難しい場合すらある。
とりわけ、その抵抗は「客観性」などといったもっともらしい衣をまとってやてくるから、その撃破に結構力がいって、どうかすると面倒になって、新規プロジェクトをやる気が失せて、プロジェクト自体が雲散霧消してしまうことすらある。
そういう時に、この「鈍感になる」というアドバイスはとても有益である。そして、この「鈍感になる」ということは、けして、「抵抗を無視する」、「傍若無人に振る舞う」ということを意味しているのではなくて、プロジェクトの欠陥の指摘については謙虚に受け止めつつ、漠然とした不安感や、新規なものの考案者に対する嫉妬については、キレイに無視する、といった感じで捉えるべきであろう。
「客観的に分析すると」や「現実を直視すると」といった、新規プロジェクトに対する批判は、「主観的で」「個人的な思い込みと夢想」に根ざしていることがよくあるもの。いつも明晰であるよりも、適度に「曇って」いて、「鈍い」ことが、突破力をつけるには大事なように思えてきますね。
 

自分の優秀さを誇示しない「ひと味違うリーダー」のあり方を考えてみる

Business insiderで「優秀な人が、”優秀なボス”になるために不可欠なこと」と題して、同僚によるリーダーの評価がIQが128を超えると落ち始めるといった事象から、高い能力を持つ人が「優れたリーダー」になる秘訣として
・常に勝とうとしない
・常に正解であろうとしない
・常に自分の優秀さを見せつけようとしない
といったことをあげている。
さらに、「私はだれかがヒーローになることを手助けするためにここにいる。自分がヒーローになるためにここにいるわけではない」といった気持ちが大事だとアドバイスしている。
とかく「リーダー論」といえば、統率力を磨き、正しい方向性を自らが探し、先頭に立って動く、といった姿を推奨しがちなのだが、それとは違う「リーダー」が模索される時代になってきているのかな、と思った次第。
これは、最近読んだ「自分がやった方が早い病」のいくつかのエピソードとも共通するもので、「自分でやること」が一見効率的に見えて、かえって非効率になる場合がある、ということの一例でもある。
とくに「リーダー」のパフォーマンスという視点で考えた場合、リーダーの個人的能力を中心に達成される成果と、チームとして達成される成果が同じである場合、後の「再現性」という点では、チームとしてのそれに軍配を挙げざるを得ない。前者の場合は、リーダーがこけたらそれまでだが、後者の場合はリーダーがこけても復元力が働いて、全体で同じパフォーマンスを達成する可能性が高いからである。
ただ、そうは言っても、リーダーになろう、あるいはそのポジションについた人は、今まで先頭に立って動き、他人より優れたところを見せ、成果をあげてきたからこそ、そのポジションに就いたという経緯もあるから、前述のようなリーダーのような振る舞いは、そう簡単にはできるものではない。
さて、どうしたらいいのか、というところで、ふと司馬遼太郎の「この国のかたち 1」に収録の「高貴な”虚”」の
大概大概(テゲテゲ)という方言が薩摩にある。テゲだけでもいい。
「将たる者は、下の者にテゲに言っておく」
そういう使い方をする、薩摩の旧藩時代、上級武士にとって配下を統御する上で、倫理用語ともいうべきほどに大切な言葉だった。
上の者は大方針のあらましを言うだけでこまごましたさしずはしないのである。
(略)
マスタープランを明示したあとは部署部署をその責任者にまかせてしまい、自身は精神的なー高貴なー象徴性を保つだけで終始する
というくだりを思い出した。時代が求める「リーダー像」は、「織田信長型」から「西郷隆盛型」へと志向が変わりつつあるのかもしれない。幕末の薩摩の「英傑」たちに学んでみてもいいかもしれないですな。

「お客を主語にする」の本当の意味とは何か?

先だってレビューした「社長の「まわり」の仕事術」で組織運営に関して、「おっ」と思った記述があったので、ちょっと引用。それは、中川政七商店のデジタルコミュニケーション部部長の緒方恵さんのインタビューで
 
「会社にはいろんな仕事が発生するわけですが、『これは社長はどう思うかな』という主語で議論がなされたりしたら危ないですね。お客さまを主語にしないといけない。内向きの話が多くなる企業は、組織として黄色信号です」
「あそこの人材配置悪いよね」「あっちのチーム、ラクしてない?」なんて声がでてくると、危険だという。
「それは、お客さまを主語にすることで、けっこう防げたりするんです。大事なことは、工芸を元気にすることであり、社長を納得させることではない」
 
というところ。
 
これは特にトップダウンで進んで、うまくいっている組織の落とし穴として気をつけたいところですね。もちろん、トップダウンで組織を活性化し、時代をとらえて躍進したことは、トップの眼力とリーダーシップによるところが大きいのだが、一時期をリードした人でも、時を経ると奢りもでるし、時代とのズレ・ブレがでてくることは避けがたいこと。組織全体から見ると、その価値判断の基準を、いつまでもトップのものだけに頼ってしまうことで、時代の変化を取りこぼして、組織が衰退してしまう恐れがでてくる。
 
この時代とのズレが出ていないかどうかを、「お客さま」という視点から点検するということなのだが、ここは、ありきたりの「お客さま」目線で、といったことではなく、「多様な価値観でとらえること」の重要性としてとらえるべきだろう。
というのも、状況悪化が少ないときに、従来の価値観に基づいた「お客さま目線」では、時代や世間の変化に気づかない事が多い。この段階で異変の兆候をつかむには、いろんな目線で物事を捉える、分析するといったこと、すなわち、「はぐれた」視線から今の状況を分析するといったことでしか発見できないものである。
 
好調なときには、人知れず衰退の種が忍び込んでいるもの。そんなときほど「越境」した視点から捉え直すことが必要なんでしょうね。

ハイスピードで走る「トップ」に伴走する人たちの「疾走」の記録 — 上坂徹「社長の「まわり」の仕事術」(インプレス)

ビジネス書の主人公というものは、先端を走っている経営者か、傾いた会社を立て直した中興の人物、ビジネス系の小説は、時代に裏切られた非業の経営者といったところが定番なのだが、本書は
 
社長になる人は、ひと握り。多くは、エネルギッシュに動く社長に日々、振り回され、ビジョンを実現していこうと奮闘している人たちなのではないか。もしかすると、普通のビジネス書の読者の多くは、そういう人にこそ、学ぶべきなのではないか。
 
ということで、普通なら社長がインタビューを受けている後ろに控えている人たちをとりあげた異色のビジネス書である。
 
第1章 カルビー 松本晃(代表取締役会長兼CEO)のまわり
第2章 Dena 南場智子(代表取締役会長)のまわり
第3章 ストライプインターナショナル 石川康晴(代表取締役社長)のとなり
第4章 隈研吾建築都市設計事務所 隈研吾(主宰)のまわり
第5章 中川政七商店 中川政七(代表取締役社長)のまわり
第6章 サニーサイドアップ 次原悦子(代表取締役社長)のまわり
 
となっていて、とりあげられている企業は、日本有数の総合食品メーカーから有名建築事務所、創業100年を超える伝統工芸メーカーと多種多様。そして取り上げられる人たちも、「カルビー」はフルグラ事業本部本部長、海外事業本部本部長。「Dena」は会長室の会長専任担当。「ストライプインターナショナル」からはkoe事業部部長、宣伝部部長、文化企画部部長。「隈研吾建築都市設計事務所」の代表取締役、コミュニケーション・ディレクター。「中川政七商店」はバイヤー、デザイナー、デジタルコミュニケーション部部長。「サニーサイドアップ」の社長室副室長、バイスプレジデント、とこれまた多士済々のラインナップである。
もちろん、どなたも社内では有数のキレ者、デキる人なんであろうが、どの企業も経営者自体が個性的で、先端を走っていて
 
「川が目の前にある。浅さや深さを分析して、このあたりを歩いたらいい、と方針を示す人はリーダーではない。リーダーは自ら片足を突っ込んで、どこが良さそうかを探して先頭に立って川に入っていく。仮にトゲが足に刺さっても、後ろに不安を与えないように堂々としながら歩んでいくのがリーダー
 
と言った経営者、トップばかりであるから
 
常に求められるのは、スピード。しかし、雑にするわけにはいかない。そのためにも準備が問われる。だからこそ、常に臨戦態勢が求められる。 「あちこちで先回りしておかないといけない。言われていないのにやる、くらいがちょうどいいと思います
 
といった具合に、精神的な意味でもハードワークの環境であるのは間違いないようなのだが、登場するどの人も、そんなハードな「働く環境」を楽しんでいるように思える。おそらくは、ひた走るトップに遅れまいと、必死になって伴走していくことによる「ランナーズ・ハイ」のような現象もあるのだろうが、仕事による高揚感は、何者のも替えがたい充実感であろうな、と当方の拙い経験からも納得してしまう。
 
そして、そういう仕事環境であるから
 
「会長室のミッションは、会長が持っている力をいかに最大化するか、ということです。会長がどんなパワーを持っていて、どこをどうレバレッジして、どんな課題に対処するか。それを最大限に支援して、会長の力をすべて出しきってもらう、ということを常に考えている
 
とか
 
「はいはい、と全部、聞いていると、それはそれで使いやすい人になるとは思うんですが、やっぱり自分の専門があるわけですよね。だから、石川の言っていることに違和感があるなと思えば、ちゃんと反論して、〝これはこうで、こうなんで〟と石川が納得できるようなことが言えないといけない。それは思っていましたね」  そのためには情報武装、スキル武装をしないといけない、ということだ。 「そうしておかないと、突っ込まれたときに答えられない。自分が間違えることにもなりかねません
 
 
「TO DO管理などは一切やらないですね。メモもあまり取らない。忘れるようなことは優先順位が低いと思っています。大事なことは基本、忘れない。そもそも、リストのメンテナンスに毎日30分、1時間使うくらいだったら、さっさとやっちゃった方がいい
 
とか
 
できるだけわかりやすく、1枚の資料をPDFで添付するという。 2枚になるとダメです。1枚にする。これは打ち合わせにおいても同じです。しかも、絵で見てわかるようにする(ストライプインターナショナル 中村雅美氏)
 
のように、高い能力を持って、相当のスピードで走っていく「トップ」に使える心構えと、仕事のノウハウのエッセンスが、会社の違いはあれ、あちこちにでてくるので、「多くのビジネスマン」にはとても有益な情報が得られるのは間違いない。もちろん、
 
オン・オフという発想で仕事を考えてしまうと、どうしても時間に追われることになる。オンの最中に子どもに何かあれば、オンなのに、ということになる。オフの時間に仕事の連絡が来れば、オフなのに、と思ってしまう。オン・オフという考え方をなくせば、そういうストレスはなくなる、ということ
 
といった「シゴト ノ ススメ」もあるので、まあ、それぞれの環境に応じて応用しましょうね、とは言っておこう。
 
さて、本書に登場する人たちが仕えているようなトップはそんなにいるわけではないだろうが、ビジネスパーソンのほとんどが、「トップの伴走者」という状況であろう。「こんな走り様もあったんだ」というヒントを得られるところは間違いない一冊ですな。
 

「期待しないこと」で心の安定を保つ方法もある

人事とか、上司の判断などに左右される物事で一喜一憂するのがサラリーマンというもの。こうした物事の特性は、相手方が判断のイニシアティブを持っていて、自分の方はその結果をひたすら待つという状況にあることで、事の成否もこちらの思うようにならないというところにある。
 
こうした物事はできれば、事の成否は考えず、心穏やかに、努力を続けられ、事が成らなかった時にも平静でいる、なんていうことができればいいのだが、そんなことは、聖人君子のみが為せる業で、大方の人は、発表までそわそわして、ダメな時は「やけ酒」といったことが多いのではなかろうか。
 
いっそ、そんなことで悩むよりもフリーランスに、という声もあるのだが、そう容易く思いきれないのが、現実であろう。
 
で、ここで、心を安定させて仕事をする一方法として提案しておくのは、それを決める権限をもっている方々に対する「期待値を下げておく」というもの。
自分では一所懸命努力し、実績をあげていると思うのだが、これがわからないのは、時代に恵まれないからか・・、といったような、自分を貶めない「諦観」を持つこと。
 
つまりは、期待するから、うまくいかなかった時の落胆も大きいのだから、はじめから「彼らにはわかんないかもしれないね」といった精神的な退避路をつくっておくということで、いわば、「自分で決められないことは、思い悩まない」という大原則の、他人を悪者にする応用形でありますな。
 
まあ、「自分で決められないこと」にあれこれ悩んで「精神的なパワー」を浪費するのが一番良くないと思うわけあります。
 

「まず、行動すること」は、成功と幸福感の万能薬らしい

JR九州の唐池恒二氏の「鉄客商売」の中に
 
私はいつも「気」を集める四つの法則を唱えている。
 
 (一)スピードある動き ー 仕事全体を迅速に進めることから、ふだんの行動やしぐさをきびきびとすることまで広い意味を持つ。
 (二)明るく元気な声ーお客さまへのあいさつをはじめ、仕事上の会話や指差確認のときの声出しも含む。
 (三)お客さまにすきを見せない緊張感ーつねにお客さまの動向や気持ちを意識しお客さまに対し緊張感を持つことだ。
 (四)少しでも成長しよう、もっと向上しようとするどん欲
 
といった記述がある。
氏は物事を成功させる要因として「気」というものを大事にしているのだが、この(一)と(二)のところが、「明日、機械がヒトになる」でハピネス(幸福)についての
 
実は幸せを感じる能力というのは半分くらい遺伝子の影響で決まっています。
(略)
もう半分が変えられる部分ですが、人間関係や健康やお金などの環境的な要因は、なんとわずか10%しか関係しません。
(略)
残り40%は「積極的に行動をしたかどうか」なんです。結果ではなく、「行動を起こすこと」、それ自体が人の幸せに強く寄与するという結論です。つまり、ここで明らかになったのは、「幸せな人達の身体は特徴のある動きをする」という単純な事実なんです。
 
といったことと共通しているように思えた。事業の成功と幸福感と違っているようだが、事業を成功させるのは、何よりもそれをやるヒトの熱意ということを考えると、それに従事することに「幸せ」を感じることができるか、ということは意外にことの成否を左右しているといえる。
 
となると、よく何かプロジェクトを始める時に言われる「まず動け」「考え込まずに行動せよ」といったアドバイスは、「幸福感を感じるかどうか」といった意味でも「正解」であるようだ。
 
とかく不安に陥ると考え込んで、竦んでしまいがちなのだが、エイヤッと動くことがなにより大事なことであるようですね。