カテゴリー別アーカイブ: ヒストリエ

エウメネスの大出世が始まりそうな予感がする — 岩明均「ヒストリエ 10」

買うには買ったが、積ん読状態が続いていた「ヒストリエ」の10巻。リアル本であれば、ふと手にとって読み始めるということがあるのだが、Kindle本は、そのあたりが、こちら側のアクションにかかっているあたりが、積ん読が増える所以でもあろうか。

さて、10巻は9巻のカイロネイアの戦闘の決着と、戦闘終了後、マケドニア本国での、エウメネスの良家のお嬢さんとの恋愛の行方とエウメネスがマケドニア王国の重鎮としてのし上がる「王の左腕」になるのでは、といた状況でのあれこれ、というところ。

まあ、筋立てのほどは現物で楽しんでほしいのだが、読みどころは、アレクサンドロス王子(後のアレクサンダー大王だね)の武勇と奇矯さと、普通なら「◯◯の右腕となるところが、なぜにマケドニア(ひょっとすると古代ギリシア共通の話なのか?)では「左腕」なのか、といったところか。

最近、除目からはずれたせいで、沈みがちになってしまうのであるが、こうした、今の日本とはほとんど関係ない、古代ギリシアの物語を読むというのも、そうした気分からいっとき逃してくれる効果がある。難しいことはいわず、うかうかと古代マケドニアの雰囲気に浸ってみるのもよいものであるな。

マケドニア軍、動く ー 岩明均「ヒストリエ 9」

マケドニアである種の存在感を持ち始めたエウメネスなのだが、第9巻では、そうした存在感もあってか「高い樹へあたる風は強い」といった風で結構な困難な命令がくだされる。
収録は
第74話 密命・1
第75話 密命・2
第76話 密命・3
第77話 メランティオス・1
第78話 メランティオス・2
第79話 カイロネイア・1
第80話 カイロネイア・2
今回の巻でちょっと注目なのは、エウメネスの若い頃、彼を陥れたヘカタイオスがボコボコになれるところ。前巻までの彼に所業を思いうかべながらまずは溜飲をさげよう。
で、結構な困難命令というのが、アテネのフォーキオンを陥いれろ、といったなんとも陰気な命令ではあるのだが、結構楽しげにこの命令をこなしていくのが、彼の偉さか。
さらに、この巻では、エウメネスがまだ幼く、伸びやかだった幼少期に彼のおつきであった奴隷、カロンに再会する。アテネの有力者になっていた彼とはつかの間の出会いなのであるが、これは次巻以降の伏線か?と勘ぐってみるのである。
まあ、最後のほうは、再びのアテネとの決戦である。場所はギリシア中央部カイロネイア。ここで、どうやらアレキサンドロスが、アテネの同盟軍であるテーベのテアゲネス将軍を相手になにやらしでかしそうななのだが、次巻に続くといった様で終わるのがなんとも残念ではある。

マケドニア軍は雌伏中 ー 岩明均「ヒストリエ 8」

さて、少々長い猶予期間ではあったが、エウメネスの出世物語も、ようやく戦乱の時に突入した。
しかも、その戦乱がけして大勝利、といえないものなので、今まで逼塞ぎみであったエウメネスが一躍、陽のあたるところに登場する機会もでようというものだ。
収録は
第66話 2都市攻略戦・2
第67話 2都市攻略戦・3
第68話 2都市攻略戦・4
第69話 2都市攻略戦・5
第70話 スキタイ遠征・1
第71話 スキタイ遠征・2
第72話 帰途の一戦・1
第73話 帰途の一戦・2
となっていて、最初の方は、ペリントスとビザンティオンでのアテネとの戦い。第70〜71話は、敗戦後、帰りしな失地回復とばかりにスキタイの甘言にのってしまった話とか、スキタイに勝ったものの、バルバロイに襲われて不覚をとるとか、マケドニアにとっては苦い話が続く巻である。
注目しておくべきは最初のほうの戦いで、第9巻でエウメネスが深く関わるアテネの名将にして強力な雄弁家であるフォーキオンの登場。
で、そのフォーキオンの評であるが、優秀な雄弁家、政治家であるほかに
戦場において妙策、奇策を繰り出すような天才肌ではないものの、その指揮ぶりは堅実かつ着実。
冒険を極力避けつつ最小限・最大効果の戦闘で戦局を優位に導いていく
というのは、「実力あるビジネスマン」をめざす者が目指す理想でもあろう。
で、この巻におけるエウメネスはアテネとの海戦での進言や、アテネへの敗戦後失地回復とばかりにでしゃばったスキタイでの戦い、その後引き揚げ中におけるトリバロイ部族の襲撃でのアッタロスを騙った伝令・指揮といったところで存在感を増していく、といった展開である。
最後の方で、後年、フィリッポスの后となるエウリディケと恋仲になったような描写もあり、成り上がりまっただ中のエウメネスであった。

いよいよアテネと戦争開始 ー 岩明均「ヒストリエ 7」

第7巻で描かれるのは、マケドニア宮中のアレクサンドロスの二重人格者の件とエウメネスの発明(?)する将棋が中心。
どちらかというと、アテネとの戦闘に向かう第8巻以降の準備といった印象が強く、収録は
第58話 ヘファイスティオン・2
第59話 ヘファイスティオン・3
第60話 ヘファイスティオン・4
第61話 ミエザ
第62話 将棋で勝負・1
第63話 将棋で勝負・2
第64話 将棋で勝負・3
第65話 同盟都市カルディア
第66話 2都市攻略戦・1
となっている。
ただ、アレクサンドロスの母親オリュンピアスの蛇信仰(ディオニュソス信仰)の怪しげな感じとか、血統へのこだわり(フィリッポスのマケドニア王家の祖先がヘラクレスで、オリュンピアスの実家の祖先がアキレウスという、なんともセレブ中のセレブがアレキサンドロスということらしい)なんてところは出てくるので押さえるべきところは押さえてある。
さらには、将来、アレクサンドロスの有力な武将となるペウケスタスの登場とか、さりげなく重要人物を配置されていっている。

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意識の慮外にあった古代マケドニアが以外に面白い ー 岩明均「ヒストリエ 6」

第5巻に続いて、引き続きマケドニアの王宮生活である。
このマケドニア王家、どこの王家にも共通の複雑さと、当主のフィリッポス王がいわゆる名君であることもそれに拍車をかけているようである。
前巻でつくった玩具はアレクサンドロスの弟向け。弟はどうやら成長に障害があるようなのだが、、兄と弟(義理の兄弟なのだが)の間は、妙な軋轢があるのはお決まりといったところである。
収録は
第49話 王子・2
第50話 王子・3
第51話 乗馬教室・1
第52話 乗馬教室・2
第53話 乗馬教室・3
第54話 ご学友たち
第55話 滝
第56話 心肺停止
第57話 ヘファイスティオン・1
で、前半はエウメネスの宮廷・馬術訓練の話が中心。後半はアレクサンドロスのミエザの学校のエピソードが中心なのだが、アレクサンドロスとエウメネスのさらなる接近とミエザの学校で起きたアレクサンドロスの級友の墜落事故をきっかけに、アレクサンドロスの秘密が垣間見える、というのがおおまかなあらすじ。

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意識の慮外にあった古代マケドニアが以外に面白い ー 岩明均「ヒストリエ 5」

1巻の途中から、エウメネスの幼年時代から奴隷・放浪生活の回想に入り、ようやく4巻の最期でカルディアへの帰還となるのだが、5巻目では、そのカルディアからアレキサンドロス大王の父であるフィリッポス王との邂逅、マケドニアでの生活へと移る。
収録は
第39話 故郷カルディア・4
第40話 故郷カルディア・5
第41話 故郷カルディア・6
第42話 故郷カルディア・7
第43話 キュクロプス
第44話 深酒の王
第45話 アッタロスの家
第46話 大将軍の息子
第47話 進学と就職
第48話 王子・1
となっているのだが、「深酒の王」のところが芝居の舞台めいた構成になっていて、その中で「エウメネスに出会ってから6年経つが」といったフィリッポス大王の回想の場面が挿入されているので、筆者のイメージする「現在」はもう少し未来であるらしい。

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意識の慮外にあった古代マケドニアが以外に面白い ー 岩明均「ヒストリエ 4」

第3巻に続く第4巻のほとんどは、エウメネスが成長し、青年時代に入った頃のパフラゴニアの話がほとんど。
収録は
第30話 パフラゴニアにて・7
第31話 パフラゴニアにて・8
第32話 パフラゴニアにて・9
第33話 パフラゴニアにて・10
第34話 パフラゴニアにて・11
第35話 パフラゴニアにて・12
第36話 オデュッセウス
第37話 レスボス島ー生物研究所・1
第38話 レスボス島ー生物研究所・2
となっていて、第3巻に続いて、エウメネスが遭難後育った、ボアの村を襲うティオスの支配者の長男ダイマコスとの戦闘の話が中心。

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意識の慮外にあった古代マケドニアが以外に面白い ー 岩明均「ヒストリエ 3」

引き続き「ヒストリエ」の第3巻をレビュー
第3巻では、奴隷の身に落とされていたエウメネスに買い手がつく。ところが、この飼い主がエウメネスが心の底で行ければ、と思っていたアテネと逆の方向の黒海側の都市の富裕商人。ところが、なんともこの人物が怪しげで、といったところで始まる。
収録は
第20話 書い手あらわる
第21話 出稿
第22話 アンタカイオス
第23話 アルゴ号
第24話 パフラゴニアにて・1
第25話 パフラゴニアにて・2
第26話 パフラゴニアにて・3
第27話 パフラゴニアにて・4
第28話 パフラゴニアにて・5
第29話 パフラゴニアにて・6
となっているのだが、エウメネスを買った商人のぜラルコスは、その性向が原因で途中であえなくお隠れになってしまうので、この巻の本筋は遭難後のパフラゴニアでの歳月。場所的には、ビザンティオンの先な、ティオスの近くなんてのが出てくるのだが、ギリシアから東欧に向けたあたりの地理なんぞ皆目わからぬ当方にしてみるとぼーっとするばかりである。

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意識の慮外にあった古代マケドニアが以外に面白い ー 岩明均「ヒストリエ 2」

エウメネスの牧歌的な幼年時代が一転して、父親の不慮の死、一般市民で裕福な家庭の坊っちゃまから奴隷へ、といった転変が語られるのが第2巻
収録は
第10話 斃すイメージ
第11話 足音
第12話 トラクスの戦い・1
第13話 トラクスの戦い・2
第14話 トラクスの戦い・3
第15話 2つの死体
第16話 証言
第17話 別世界
第18話 図書室・3
第19話 ペンダント
エウメネスの地位の転落のきっかけとなったのは、彼と同じ民族であるスキタイ人奴隷のトラクスの反逆。
多民族を狩って「奴隷」にするということが、日常であった時代というあたりも、なにやら世界史の授業の「ギリシア」の輝かしさと食い違って微妙な感があるのは事実。

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意識の慮外にあった古代マケドニアが以外に面白い ー 岩明均「ヒストリエ 1」

先に「意思の慮外にあった古代マケドニアが以外に面白い ー 岩明均「ヒストリエ」」とざっくりとしたエントリーをしたのだが、読み進むつれて、これはしっかりとした古代ギリシアの歴史物語であるとともに、一人の男の子の成長物語でもあるのだな、と認識を改め、きちっとエントリーをしておこうと思い立った次第。
ということで、岩明均「ヒストリア」の第1巻。
収録は
第1話 地球儀
第2話 故郷カルディア・1
第3話 故郷カルディア・2
第4話 故郷カルディア・3
第5話 図書室・1
第6話 図書室・2
第7話 同じ夢
第8話 スキタイ流
第9話 体育教練

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