ミステリー

ミステリー

旧歌舞伎座の舞台で起きる「忠臣蔵」が生んだ毒殺事件の謎=稲羽白莵「仮名手本殺人事件」

重要無形文化財で日本を代表する古典芸能といっていい歌舞伎。落語など寄席を主体としたものと違って、少々敷居の高いのは間違いないのですが、「大向こうを唸らせる」や「一枚看板」といった歌舞伎由来の決まり文句も多く、私たちの暮らしにしっかり根付いて...
逸木裕

AIの作曲アプリのもたらす世界で「音楽」は死ぬのか?=逸木裕「電気じかけのクジラは歌う」

人工知能・AIが、それぞれ個人にあわせて作曲をして配信してくれる「jing」というアプリが世の中を接見し、「作曲家」という職業が絶滅しかけている近未来。 伝説的な人気バンドのクリエイターで、数少ない「売れる」作曲家であった元バンド仲間の自殺...
逸木裕

少女の綴る「殺人ノート」は「加害恐怖」のトラウマの真実を見抜くか?=逸木裕「少女は夜を綴らない」

小学生の頃、同級生の女の子・加奈子が死ぬ場面を目撃してから、「他人を傷つけてしまうかもしれない」という加害恐怖症にかかり、刃物や尖ったものが持てないというトラウマを抱えている「山根理子」という中学校の女の子が、同じ中学に転校してきた、加奈子...
ミステリー

小さな闇が、だんだんと巨大化していく怖さはいかが=芦沢央「汚れた手をそこで拭かない」

ありふれた日常の中で、ふと浮かんだ小さな悪意や隠していたものが、だんだんと膨れ上がって、じわじわと浸食してくる怖さが描かれるミステリ五篇が収録されているのが、本書『芦沢央「汚れた手をそこで拭かない」(文芸春秋)』です。 本書の紹介文によると...
逸木裕

探偵の謎解きは、人の心の底の「苦味」を抽出する=逸木裕「五つの季節に探偵は」

「人の心の奥底を覗きたい、人の秘密を暴きたい」そんな厄介な性質を抱えていることに気づき、探偵家業にはまり込んでしまった少女・榊原みどりを主人公に、彼女が暴く謎や秘密によって思いがけない人間ドラマがこぼれだしてくる探偵ミステリーが本書『逸木裕...
ミステリー

劇場をめぐる五つの物語は、パワハラのリベンジ劇を誘導する=芦沢央「バックステージ」

「バックステージ」というのは、演劇や映画などの「舞台裏」のことで、本書は東京の中野大劇場ホールという架空の劇場で、有名演出家が手がける芝居の周辺で起きた五つの出来事と、パワハラ上司の背任の証拠をつかもうとするPR会社の社員の動きが結びついて...
ミステリー

「女の友情はハムより薄い」ってのは男どもの”いいがかり”か?=芦沢央「今だけのあの子」

「いつまでもずっと友達でいようね」というのは、卒業式をはじめとした、人生の節目の「別れ」の場面に、ほとんどの学校で繰り広げられている友情劇なのですが、数年後、その時と同じ関係を維持している友人関係は思ったより少ないもの。 本書の紹介文による...
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遺影写真には、家族の謎が詰まっている=芦沢央「雨利就活写真館」

家族や親族の死というのは、たいてい突然やってくるものなので、当然、故人の葬式というものも準備がほとんどできていないのが一般的です。まあ、大筋のところは葬儀社さんに頼んでいれば大きな問題なく取り計らってくれるのですが、遺族が決めなければいけな...
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近くへ忍び寄ってくる冷気系の「怪異譚」はいかが=芦沢央「火のないところに煙は」

東京で作家業を営む「私」のもとへ、「小説新潮」から「許されようと思いません」の再校ゲラの校正を終えた時、「怪談」をテーマにした巻に、新潮社の位置する神楽坂を舞台にした短編小説を書きませんか、という「私小説」的な出だしで始まり、筆者の経験談っ...
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交番勤務のへらへらしたお巡りさんが見抜いたのは児童遺棄事件に隠れた偽装誘拐の真実=降田天「朝と夕の犯罪」

神奈川県の地方都市で小京都と呼ばれる神倉市の駅前交番には、表情にも口調にもしまりがなく、髪も警察官にしては長くて、どこかしらへらへらした軽薄な感じを与える「狩野雷太」という警察官が駐在しています。 駅前交番を訪れる容疑者たちは、彼の風貌に惑...