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健気な娘「お春」の”くらまし”は成功するのか? ー 今村翔吾「春はまだか ー くらまし屋家業」(時代小説文庫)

前巻で、香具師の親分のもとから姿を「くらまし」たい二人を、何十人もの手下が取り囲む宿屋や、街道筋で目を光らせている道中同心たちの目をかいくぐって「くらます」ことに成功した、堤平九郎、七瀬、赤也の「くらまし屋」三人組の活躍を描くシリーズ第二作である。

このくらまし屋が仕事を受けるには「くらまし屋七条箇条」の
一 依頼は必ず面通しの上、嘘は一切申さぬこと。
二 こちらが示す金を全て先に納めしこと。
三 勾引かしの類ではなく、当人が消ゆることを願っていること。
四 決して他言せぬこと
五 依頼の後、そちらから会おうとせぬこと
六 我に害をなさぬこと
七 捨てた一生を取り戻そうとせぬこと
を守ることが条件なのだが、早々と、これが守られない依頼をうけることになる二巻目である。

【構成と注目ポイント】

構成は

序章
第一章 幼い逃亡者
第二章 血文字
第三章 掟破り
第四章 土竜
第五章 春が来た
終章

となっていて、七箇条が守られない、最も大きな原因は、今回の「くらまし」の相手方が、田舎から出てきたまだ幼い出稼ぎの娘で、しかも、雇い主によって換金されている状態で依頼をしたためである。

通常なら七箇条が守れない依頼を、相手にどんな事情があろうと自分たちの身を守るために受けないのだが、今回の依頼者・お春の姿に、平九郎が自らの家族の姿をダブらせてしまったためであるらしいのだが、彼の家族の「状況」の詳細はまだ本巻では霧の中である。

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江戸から「消えたい」望みを叶えます ー 今村翔吾「くらまし屋家業」(時代小説文庫)

江戸時代の「江戸」は、世界でも有数の大都市で、経済の中心でもあったのだが、富と人が集まって「光」が強いところには、その分、深い「闇」が生まれるのは世の常で、「姿を消してしまいたい」「姿を消さなければならない」事情を抱えた人も、それだけ多くなるというもの。

そんな江戸で、不忍の池の畔にある地蔵の裏に、名と所を書いて置いておけば、
今の暮らしからくらまし候。
約定が破られし時は、人の溢れるこの浮世から、必ずやくらまし候

と、どこからともなく現れて、大金と引き換えに、どんな人間でも、神隠しのように姿を消してくれる「くらまし屋」シリーズの第一巻である。

【構成と注目ポイント】

構成は

序章
第一章 足抜け
第二章 隠れ家
第三章 江戸の裏
第四章 道中同心
第五章 別れ宿
終章

となっていて、最初のネタバレ的にメインキャストを紹介しておくと、「くらまし屋」稼業を営むのは、表向き「飴細工屋」を営む「堤平九郎」という浪人あがり、日本橋堀江町の居酒屋「波積屋」の従業員の「七瀬」、「波積屋」の常連で色男で博打好きの「赤也」という三人である。このうち、くらまし屋のリーダー格が「堤平九郎」なのだが、彼がくらまし屋稼業に踏み込んだのは、家族が行方不明になったことが原因らしい、という設定である。

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