シリーズものも冊数を重ねると、登場人物や、彼らを取り巻く環境が、どんどん変化していく時があるもので。これは筆者がそうするというよりも、「物語」や「物語の主人公」が勝手に動き始めることで起きているような気がしてならない。
もちろん、「錯覚」ではあるのだが、話を積み重ねているうちに、作者がシリーズ開始の頃は思ってもみないほうに進んでいってしまうことはありそうで、今巻の最後の話あたりは、「しずく」の店主との恋愛がなかなか進展しない中で、物語自体が「新基軸を求めた」といっても良いような気がする。
【収録は】
第一話 おばけが消えたあとにおやすみ
第二話 野鳥の記憶は水の底に
第三話 まじわれば赤くなる
第四話 大叔父の宝探し
第五話 私の選ぶ白い道
エピローグ
となっていて、第一話と第三話は、「しずく」の店主の娘・露とその同級生、第二話は理恵の部下の「伊予」の友達、第四話は、理恵の従姉妹といったように、探偵役はしずくの店主であることは変わらないものの、メインキャストが当初の登場人物からだんだん周辺に広がっているのは、「新基軸」を欲しがる見えない意思が働いてるような気がする。