スープ屋しずく」タグアーカイブ

幾多の謎解きは、理恵ちゃんを新しい進路へ導く ー 友井羊「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん まだ見ぬ場所のブイヤベース」(宝島社文庫)

シリーズものも冊数を重ねると、登場人物や、彼らを取り巻く環境が、どんどん変化していく時があるもので。これは筆者がそうするというよりも、「物語」や「物語の主人公」が勝手に動き始めることで起きているような気がしてならない。
もちろん、「錯覚」ではあるのだが、話を積み重ねているうちに、作者がシリーズ開始の頃は思ってもみないほうに進んでいってしまうことはありそうで、今巻の最後の話あたりは、「しずく」の店主との恋愛がなかなか進展しない中で、物語自体が「新基軸を求めた」といっても良いような気がする。

【収録は】

第一話 おばけが消えたあとにおやすみ
第二話 野鳥の記憶は水の底に
第三話 まじわれば赤くなる
第四話 大叔父の宝探し
第五話 私の選ぶ白い道
エピローグ

となっていて、第一話と第三話は、「しずく」の店主の娘・露とその同級生、第二話は理恵の部下の「伊予」の友達、第四話は、理恵の従姉妹といったように、探偵役はしずくの店主であることは変わらないものの、メインキャストが当初の登場人物からだんだん周辺に広がっているのは、「新基軸」を欲しがる見えない意思が働いてるような気がする。

続きを読む

美味いスープは、人間関係のもつれを溶かす特効薬である ー 友井羊「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 想いを伝えるシチュー」(宝島社文庫)

東京のビジネス街のちょっとはずれたビルの一階にあるスープの隠れた名店「しずく」を舞台にしたライトミステリー「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん」シリーズの第三巻。
第二巻までで、「しずく」の店主・暁の亡き妻が亡くなった経緯であるとかの過去の背景も明らかになり、主要なキャストであるしずくの店主「麻野暁」と娘の「露」、フリーペーパーの編集者の「理恵」と「伊予」といったところの役柄も収まりがよくなってきて、円熟してきた感がでてきている。

【収録は】

第一話 似ているシチュー
第二話 ホームパーティーの落とし穴
第三話 ゆっくり、育てる
第四話 窓から見えない庭
第五話 やわらかな朝に

の五話で、このシリーズを読む楽しみの一つである、しずくで提供されるそれぞれの話を象徴するスープは「アイリッシュシチュー」、「オレンジ白菜と豚肉のシチュー」、「南ドイツ風オニオンスープ(ツヴィーベルズッペ)」、「水菜と豚肉のみぞれ小鍋」、「牛肉のポトフ」
というラインナップ。
そのうち一番、当方が惹かれのが、「南ドイツ風オニオンスープ(ツヴィーベルズッペ)」で

炒めたタマネギの凝縮された甘みと地味が強く観sじられた。玉ねぎは独特の尖った味わいがあるが、それを卵黄やミルクのまろみが優しく包み込んでいた。飲み込んだ後には、それぞれの香りが一体となって鼻孔を抜ける。シンプルだからこそ素材の特徴が活きている。疲れを感じる朝に相応しい、落ち着く味わいのスープだった。

といった「茶褐色」でない「ホワイトシチューのような色」のオニオンスープってのは一度飲んでみたくなりますね。

続きを読む

「しずく」の店主は”ジビエ”にはまってしまった ー 友井羊「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 今日を迎えるためのポタージュ」(宝島社文庫)

東京のビジネス街の4階建てのビルの一階で営業していて、朝のモーニングのスープからディナーの料理まで、料理の旨さと、謎解きを楽しめる「スープ屋 しずく」シリーズの第2巻目。
 

【収録は】

 
第一話 モーニングタイム
第二話 シチューのひと
第三話 山奥ガール
第四話 レンチェの秘密
エピローグ
 
となっていて、今巻は前巻で話の中心として舞台の中心で踊っていた「理恵」や「伊予」といったメンバーがちょっと脇に引いて、新しいキャストをひきたてる役回りにまわてっている。
 
ただ、今回も血なまぐさい事件は起きないし、怪奇色もないので、ホラー嫌いや「いやミス」嫌いや、スプラッターが苦手な向きには、あいかわらずオススメのミステリーである。
 
 
 【あらすじと注目ポイント】
 
第一話の「モーニングタイム」は、第一作の第一話で、理恵たちが「スープ屋しずく」の常連になるきっかけとなった、理恵たちの勤めるタウン雑誌「イルミナ」の編集長・今野布美子の新婚生活に関連した謎解き。布美子は、新興住宅街に新居を構えているのだが、布美子の夫・克夫の妹「環奈」が布美子のスマホを盗み見たりsite,
彼女の素行を調べている、なぜ?・・・、というのが今回の謎。
このほかに、理恵の人事記録が密かに会社の上層部に調べられていることもわかってきて、謎の上塗りをする。
 
今回のキーとなるのはスープではなくて、布美子が隣家からもらったタイム、ローズマリー、レモングラス、セージといったハーブ。この香りが環奈がスマホを盗み見た理由とか、理恵の人事記録の話とかのをすっきりと解決します。
 

続きを読む

すべての謎は「スープ」で解きほぐされる ー 友井羊「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん」(宝島社文庫)

食屋がある。店の名前は「スープ屋しずく」という・・という雰囲気で始まるのが
優しい外見と人柄の、その店の店主・麻野暁と人見知りながら、鋭い観察眼と勘をもった暁の娘・露による、ほんわりとした謎解き物語が、この「スープ屋しずく」シリーズ。

【収録は】

第一話 嘘つきなボン・ファム
第二話 ヴィーナスは知っている
第三話 ふくちゃんのダイエット奮闘記
第四話 日が暮れるまで待って
第五話 わたしを見過ごさないで

となっていて、本書はシリーズの第一作。レストランを舞台にしたり、料理を展開のサイドディッシュにするミステリーは、ネロ・ウルフシリーズや近藤史恵の「ビストロ・パ・マル」シリーズなど数々あるのだが、「スープ」を使うのは、ちょっと異色。そんなに魅力的なスープってたくさんあるのか、と疑問を抱いたのだが、心配は無用。たくさんのスープが登場するので、謎解きと一緒に楽しめること間違いない。

主な登場人物は、スープ屋の店主・麻野暁とその娘・露、店のウェイターの慎哉、タウン雑誌の編集者の奥谷理恵と長谷部伊予の4人がメインキャストなので、このへんは覚えておいてくださいな。

続きを読む