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悪辣な老中の”参勤の命”下る。地方の小藩の闘い方はいかに ー 土橋章宏「超高速!参勤交代」+「超高速!参勤交代 リターンズ」(講談社文庫)

参勤交代というのは、外様大名の力を削ぐために江戸幕府が考案した優秀な策といいてよく、例えば加賀百万石の前田家などでは、行列の人数が3000人を超え、費用も3000両近くも費やしたものであるらしい。
このあたりは、上田秀人さんの「加賀百万石の留守居役」でも主人公の瀬能数馬が苦労したところなのだが、本シリーズ「超高速!参勤交代」「超高速!参勤交代リターンズ」は、時の老中・松平信祝が、 内藤政醇の湯長谷藩の隠し金山(らしきもの)に目をつけて、鉱山を自分のものとするために、通常なら8日間かかる参勤交代を5日間で江戸まで来い、という命令を下したことに始まる物語である。

【あらすじと注目ポイント】

時代設定的には「徳川吉宗」の時代。本書で湯長谷藩に無茶な命令を出した「松平信祝」というのは、実在の人物で、奏者番、大阪城代、老中を歴任した人で、ネットで調べる限り、本書にでてくるような悪辣なところは見つからないのだが、この悪辣さで物語の面白さが数倍増しているので、ご子孫もお許しください。

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マラソン大会を開催した、お殿様の意図はどこに? ー 土橋章宏「幕末まらそん侍」

舞台となるのは、今の群馬県安中市を城下町としていた上野(こうずけ)国の「安中藩」。ここの五代目藩主である「板倉勝明」が、”鍛錬のため”と言う理由で、安中城から碓氷峠の上にある熊野神社まで、組をつくって遠足(今のマラソンですな)を命じたことから始まる、藩内のドタバタを描いたのが本書『土橋章宏「幕末まらそん侍」(時代小説文庫)』である。

この命令を下した「板倉勝明」というお殿様は名君であったらしく、藩内の学問奨励や杉の木の栽培などの改革をした人らしいですね。本書の物語にもととなったのは、彼が実際に藩士に命じた「安政遠足(あんせいとおあし)」がモチーフとなっていて、この安中市には「日本マラソン発祥の地」があって、毎年、仮装してマラソンする「安政遠足侍マラソン」が開催されているようですね。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 遠足
第二章 逢い引き
第三章 隠密
第四章 賭け
第五章 風車の槍

となっていて、この「遠足」が開催されたのは安政2年ということなので、安政5年に始まる「安政の大獄」や安政7年の「桜田門外の変」より数年前、黒船来航の1年後といったところで、時代がわさわさしながらも、まだ大動乱にはなっていないところですね。

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日本の海を明るく照らせ。灯台はじめて物語 ー 土橋章宏「ライツ・オン!」(筑摩書房)

「日本はじめて物語」というのは、明治時代の文明開化の頃を舞台にした物語のおなじみネタなのだが、どうしても「鉄道」といった派手なものが注目されることが多くて、「灯台」をテーマにしたものは本書ぐらいのものだろう。その意味で、こうしたマイナーなものに目をつけて物語に仕立て上げた筆者の目の付け所はさすがであろう。

物語の舞台となるのは明治の初期。当時の灯台の多くは、光の到達距離の短い灯明台や常夜灯の設置がされていたのみで、日本の近海は暗礁も多く、「ダーク・シー」と呼ばれて恐れられていたようだ。
この状態は基本的には、高度経済成長の頃まで続き、結構長く続くのだが、本書は近代海洋国家・日本の黎明期で奮闘したお雇い外国人と日本人との挑戦の物語である。

【あらすじと注目ポイント】

物語は、「丈太郎」という英国人と日本人の間に生まれた「緑の目」を持つ少年が、雇い主のお雇い外国人技師・リチャードともに長崎港へ入る所からスタート。

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