第4巻は短編仕立てであったのだが、第5巻は従前に戻って長編仕立てと、京都風味が復活している。
ただ、今までの巻と違うのは、今の巻のメインキャストは「アオヤマ」くんで、しかも、美星バリスタへの恋模様ではなくて、彼の中学生時代の年上の女性への初恋から始まり、現在での再会というストーリーで、いつも妙な推理をして美星に叱られている彼らしくなく、リリカルな仕立てになっている。
【構成と注目ポイント】
構成は
プロローグ 大きな川の流れる風景
第一章 少女のショートカットはなぜ魅力的だったのか
第二章 猿が辻にて濡れる袖
第三章 ワールド・コーヒー・ツアーズ・エンド
第四章 コーヒードール・レゾン・デートル
第五章 大長編は幕切れの地へ
第六章 嵐に夜に浮かぶ舟
エピローグ この鴛鴦茶がおいしきなりますように
特別収録:このアップルパイはおいしくないね
となっていて、本編は、まず、プロローグで、アオヤマくんが、年上の初恋の人・眞子さんに出会うところからスタート。ここのところで、彼が何故、理想のコーヒーを探すようになったのか、その理由が明らかになる。もっとも、ご想像のとおり、彼女の気を惹くためという邪心ゆえなんでありますがね。
筋立てのほうは、まず第一章で、アオヤマくんが眞子さんとの再会に続いて、中学生時代、学校に馴染めずに孤立していた時に、彼女の機転によって救われるエピソードが示される。このエピソードが、傘の取り換えであるのが第一話のタレーランでの逸話へと続く、といった雰囲気を漂わせていますね。