戦国時代」タグアーカイブ

タイムスリップした女子農業高校生、「織田家相談役」に昇進する ー 「戦国小町苦労譚3〜4 躍進、静子の村 編」

戦国小町苦労譚 躍進、静子の村(3) (アース・スターコミックス)
沢田一 夾竹桃 平沢下戸
泰文堂
売り上げランキング: 33,886

現役女子農業高校生が、戦国時代にタイムスリップして、持ち込んだ種子や後世の農業技術な器具を駆使して、尾張の信長のもとで大活躍する、時代改変もの「戦国小町苦労譚」のコミカライズ版の三〜四巻。

前巻までで、信長の厳しい作物の増産命令を難なくこなし、これで安泰か、と思いきや、信長から新たな難題が下されるし、静子の知識の秘密か引き寄せるのか、隣国から本多平八郎、前田慶次、竹中半兵衛といったこの時代を彩る新たな登物人物が静子を訪ねてやってくるし、といった展開である。

【構成と注目ポイント】

構成は、第三巻が

第十一幕 拠点
第十二幕 侵入
第十三幕 看病
第十四幕 攻城
第十五幕 八角

第四巻が

第十六章 追及
第十七章 馬廻
第十八章 鍛錬
第十九章 開発
第二十章 混乱

となっていて、まず、信長が静子の作物増産計画に味をしめたのか、彼女の村を中心に大農産物生産拠点をつくれ、という命令が下される。

続きを読む

現代の農業高校女子高生は、信長の天下統一の大黒柱となれるか? - 「戦国小町苦労譚【コミック版】1~2 農耕戯画編」

戦国小町苦労譚 【コミック版】 1 -農耕戯画- (アース・スターコミックス)
アース・スター エンターテイメント (2017-12-15)
売り上げランキング: 2,560

現代の農業高校に通う女子高生が時空を超えて、過去に迷い込む。迷い込んだのは、戦国時代後半の尾張。ちょうど織田信長がみの攻めをする前の天下一統に乗り出す前夜であった・・・というタイムスリップものが「戦国小町苦労譚」シリーズの第一巻と第二巻が、その「農耕戯画」編。

もともとは「小説家になろう」にWeb連載をされていて、評判が良くて出版化されたものの「コミカライズ版」がこのシリーズである。小説の実写化やコミカライズは、演ずる俳優さんであるとか、描かれる漫画のタッチとかで、原作との乖離とか、イメージの対立とかがありがちなんであるが、本シリーズは、原作の「蘊蓄」の煩雑さを上手く薄めながら描かれていて、読みやすい仕立てになってます。

【構成と注目ポイント】

構成は、第1巻が

第一幕 邂逅
第二幕 開梱
第三幕 狩猟
第四幕 入浴
第五幕 謁見

第2巻が

第六幕 稲作
第七幕 収穫
第八幕 栽培
第九幕 褒賞
第十幕 余興

となっていて、まずは

といった感じでタイムスリップしてしまうところからシリーズ開幕。
このシーンの前に雨粒のようなものが落ちるシーンはあるのだが、他のタイプスリップものように、マッドサイエンティストのつくった車が登場するわけでもなし、突然のストームに巻き込まれるといったこともなく、地味なタイムスリップである。
タイムスリップしたところがちょうど、織田信長が領内の見回りをしているところで、スマホをみつけた彼から、「南蛮の技術」で登用させることとなる。そこの得体のしれない女子高生を登用することに不安を言い立てる家臣に

というあたりは、お決まりながら「信長らしい」ところである。

で、信長から年貢も滞る村の采配を任され、現代から持ち込んだ

さつまいもを大量生産して村人の栄養改善を図ったり、迷い込んだ狼を手なづけた上に、

といった西洋の武器をつくって鹿などの獣害を激減させたり、大活躍である。そして、かぼちゃやさつまいもの料理に感激した信長からは、小間使の「彩」が派遣されるのあわせて、村で「米を25俵収穫しろ」という難題がくだされる。

ご想像のとおり、この「彩」は、静子の技術や知識の秘密を探るための密偵ですね。こういった素直そうな娘が派遣されるときは「裏」がありますね。

この信長が出した難題「米25俵の収穫」を達成するため、彼女は、

といった器具を使って「正常植え」の技術を駆使したり、明治時代に発明された「回転式除草機」を導入したり、と後世の技術を惜しげもなく使うのだが・・・、といった展開をしていきます。

この1~2巻は、主人公の知識や偶然、現代から、この時代にもってきた「作物」を活用して成り上がっていく展開なので、ワハワハと彼女の行動と、織田や徳川の重臣たちを驚かせたり、屈服させたりといった胸のすく行動を楽しめばいいと思います。

もっとも、歴史的事象を直接変えるのではないにせよ、後世に発明された農業機械を使って作物を大量につくったり、クロスボウを使って害獣駆除したり、普通のタイムスリップものであれば、主人公が悩みこんで躊躇してしまう「時代改変」を”ひょい”としてしまうところは、口うるさい向きは「むっ」とくるところかもしれないのだが、当方としては「あっけらかん」とした時代改変で、主人公が数々の難局を突破していく姿は、「スカッ」とするので、高く評価しておきます。

さらに加えて、話の中で、「静子が栽培に成功した「椎茸」は当時56Kg(15貫目)あれば城が買えるといわれてほどの貴重品であった」といった原作の「蘊蓄」の数々もあちらこちらに出てくるので、歴史についてのTipsを仕入れておきたい方にもおススメしておきます。

【レビュアーからひと言】

「おっ」と思った”蘊蓄”は、主人公が、信長に城に呼ばれて、他の家臣たちと年賀の儀式に参列するために城の廊下を一列になって歩く

といったところで、当時の人からみたら、現代ではフツーの背格好の彼女でも「大女」で、かなりの迫力がある女性に見えたのだろうな、と推測。きっと、巴御前とか古の女性英雄が出現といったぐらいのショックがあったに違いなく、主人公の静子が村人たちや信長の武将たちを圧倒できたのも、案外、こういう「体格の良さ」のおかげもあったのかもしれません。

戦国小町苦労譚 【コミック版】 2 -農耕戯画- (アース・スターコミックス)
アース・スター エンターテイメント (2018-04-12)
売り上げランキング: 2,701

【参考サイト】

「戦国小町苦労譚」の原作はこちらのサイトで読めます。

小説を読もう 戦国小町苦労譚

【スポンサードリンク】

Webだと読んだ気がしない。やっぱり小説は「本の形」で読みたい、という人はこちらでどうぞ。

戦国小町苦労譚 1 邂逅の時 (アース・スターノベル)
アース・スター エンターテイメント (2016-02-25)
売り上げランキング: 6,491

巨木が倒れる時、周辺の草花は — 伊東 潤「戦国鬼譚 惨」(講談社文庫)

戦国ものの小説やドラマ、はては歴史講座などは、どうしても景気のよい勝者の立場からのものが多いのだが、その際、敗者となった者は、ことさらに無能力や傲慢を指弾されたりするもの。特に、織田、豊臣。徳川といった戦国の代ヒーローたちに攻め滅ぼされたものは、そうした憂き目にあうことが多い。

本書は、そういうものの典型で、長篠の戦の後、織田軍の攻め込まれ、滅亡へと進む「武田」家の物語。しかも、滅亡の主役である武田勝頼を始めとする「武田家本家」ではなく、その周辺の物語である。

収録は

木曾谷の証人

要らぬ駒

画竜点睛

温もりいまだ冷めやらず

表裏者

となっていて、概括すると、織田勢から攻め込まれる木曾谷に始まり、武田家滅亡後、本能寺の変を経て、穴山梅雪が土民(本書では、土民ではないのですがね)に討ち取られるまで。

もっとも、本書の著者の伊東 潤氏は、「敗れた者」を描いたら手練の小説家。織田ー武田家の争いの中で、翻弄され、あるものは人質のカ家族を思いつつも織田に転じたり、信玄死後、勝家によって疎んじられた鬱憤から主家を裏切ったり、とか、滅びる時はかくあるかな、と思わせるような、武門の家が「崩れていく姿」を描いてくれるのである。

で、本書がおすすめなのは、失意の最中ではないがまだ傷をおっている時で、天下をとるために駆け上がっていく物語ではないので、精神を鼓舞されることはないのだは、心の傷口がまだひりひりしているときに、家の滅亡を取り巻く様々な生き方を見て、なんとなく慰められるところであろう。

「勝ち抜いていく」ことばかりが、おすすめの生き方ではないようであるような気がしてくる短編集でありますな。

こういう類の忍者の話は今までなかった — 和田 竜「忍びの国」(新潮社文庫)

しばらくは歴史・時代小説から離れていたのだが、映画化がされるということで久々に読んでみたのが、この「忍びの国」

時代背景は、織田信長が天下統一に乗り出している時で、場所は「伊賀」。

伊賀は、当方のような年代にとっては、横山光輝氏の「伊賀の影丸」であったり、白戸三平の「サスケ」の故郷、甲賀の敵方であったりとか、忍者者の舞台として、史実は別として馴染みの深い国名ではある。

筋立ては、伊賀の国の隣国「伊勢」の名門、北畠家の当主で、織田信長の息子、信雄を養子にさせられている北畠具教が、譜代の部下たち、長野左京亮、日置大膳らによって誅殺されるところから始まる。

この長野、日置は物語の重要な相手方の役割を果たしていて、いわば、伊賀の国に代表される「忍び」の対極にある存在といっていい。

で、話を大筋は、これをきっかけにして、織田信雄が伊賀の国に攻め込まざるをえないように仕向けられるのだが、伊賀の忍者たちが、どうやって伊勢の大軍を退けたかというもので、「のぼうの国」と同じような感じではあるのだが、主人公が手練の忍者「無門」であるせいか、伸びやかな感じは薄い。その一方で、忍びの技を伴う戦闘の迫力や、権謀術数の数々は、本書の方が上手で、このへんは好みがわかれるところであろうか。

もう一つ言うと、「銭」しか信用しないはずの下忍が一人の女性の歓心をかうために、我が身を賭け、戦争をリードするようになるあたりは、フィクションとはいえ、「男」の哀しさが滲み出ている感がある。

史書も物語の随所に引用されていて、どこまでがフィクションなのか定かではなくする工夫も十分生きてはいるのだが、まあ、難しく詮索せず、筆者の掌で、お話を楽しんだほうがよいですな。

さらには、「天正伊賀の乱」という、通常の国盗り物語の中では、殆ど語られることのない、忍者宇野国の戦争譚は、ウンチクの種としても使えそうな気がいたします。