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小氷河期末の決戦「桶狭間の戦」終結す ー 宮下英樹「桶狭間戦記 5」

「東海一の弓取り」と高く評価されていながら、天下を狙う途上で非業の戦死を遂げたせいか、現代では軽く扱われることの多い今川義元と、彼を討滅した戦国時代を集結させた「魔王」織田信長の若い頃を描く、仙石権兵衛のニェットコースター人生を描いた「センゴク」シリーズのビフォーストーリーである、「桶狭間戦記」シリーズの完結巻。

前巻で、満を持して尾張へ侵攻してくる今川軍に対し、重臣たちの反対を押し切って、今川義元の本陣への奇襲を考案した信長であったのだが、そのための重要な役割を担うはずの「熱海衆」が、今川方の勇将・岡部元信によって壊滅させられてしまい、心折れそうになっていたのを、馬廻組からの「前へ出よう」という無謀な励ましに再び力を取戻した信長が、いよいよ戦国時代の一大転換となった「桶狭間」へ向かうのが本巻。

【構成と注目ポイント】

構成は

第29話 熱田と津島
第30話 今川本陣
第31話 奇跡の雨
第32話 強さと弱さ
第33話 第一陣
第34話 完璧なるもの
第35話 天運の交叉
第36話 自らの力量を以って
最終話 人間の限り

となっていて、まずは今回の今川と織田との戦の行方について津島商人の筆頭・堀田家と熱海商人の筆頭・加藤家が話し合っている場面からスタート。

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尾張へ向け、今川義元進軍。信長どうする? ー 宮下英樹「桶狭間戦記 4」

「東海一の弓取り」と高く評価されていながら、天下を狙う途上で非業の戦死を遂げたせいか、現代では軽く扱われることの多い今川義元と、彼を討滅した戦国時代を集結させた「魔王」織田信長の若い頃を描く、仙石権兵衛のニェットコースター人生を描いた「センゴク」シリーズのビフォーストーリーである、「桶狭間戦記」シリーズの第4巻。

前巻までで父・織田信秀の跡を受け「織田弾正忠」家を継いだ後、尾張下半郡を治める守護代の三奉行のうちの一家という立場から下剋上を繰り返し、尾張全体を手中に収めるまでにのし上がった信長なんおだが、ここで、駿府・三河を支配する今川義元という当時の「大強敵」との戦いが始まるのが今巻。

【構成と注目ポイント】

構成は

第19話 唐鏡の国
第20話 商業都市 津島
第21話 寄親寄子
第22話 今川義元出陣
第23話 大高城兵糧入れ
第24話 熱田神宮
第25話 分岐点
第26話 大高道
第27話 最悪のとき
第28話 運命の地

となっていて、まずは、今川義元の治める「唐鏡の国」駿河の首府・駿府へ周辺の国から難民が流入するとともに、その危機に気づかず国主・義元が蹴鞠やら宴会やらの浮かれた暮らしをしているのを憂えた、譜代の重臣たちが諫言のため駿府の「今川館」へやってくるところからスタート。

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骨肉の争いを乗り越え、信長は尾張を統一する ー 宮下英樹「桶狭間戦記 3」

「センゴク」シリーズのビフォーストーリーである、「桶狭間戦記」シリーズの第3巻。
前巻までで、生涯資した女性「吉乃」と出会ったのだが、今川の攻勢を凌ぐため、美濃の斎藤家の息女・蝶との婚姻を余儀なくされ、また、今川と戦で破れた後の謀反をおさめたとはいっても、勢力が減退しつつある「織田弾正忠家」を継いだ信長が、一転、尾張一統を成し遂げていくところが描かれるのが本巻。

【構成と注目ポイント】

構成は

第13話 下克上
第14話 謀略の才
第15話 大和守討伐
第16話 善徳寺の会盟
第17話 雪斎の紫衣
第18話 悲運なる君

となっていて、まずは織田信長が、主君である尾張の守護・斯波氏、守護代の織田家などが顔を揃えた連歌の会に出席し、そこで、父親の葬儀での乱暴などを非難されたり、名前を間違えられたりと侮られるシーンからスタート。織田信長の物語というと、弟の誅殺というところでは彼の冷酷さが強調されるのですが、彼が家督を継いだ当時、彼の「織田弾正忠」家は、守護代の下の奉行の家の一つという家格で、彼が生き延びていくためには、尾張を支配下にいれ、「下克上」を体現していかなければ敵わなかった、ということは認識しておかないといけないようですね。

そして、彼が守護家たちから侮られていることを見たのと、今川義元の企みに唆され、織田家の家臣で鳴海城の城主である山口親子が謀反を起こします。この反乱を治めるのに活躍したのが、家臣の次男・三男で組織したの信長の「馬廻り隊」で、家を継ぐ見込みが少なく、自暴自棄になりがちな層を上手く取り込んで、自軍の増強を図る戦略なのですが、この部隊の士気を維持し続けようとすれば、軍功を立てる機会である「戦」を常に継続削しないといけなくなる、ということもでもあるように思えます。

さて、今川義元・雪斎の尾張に向けた謀略の矛先は、今度は織田信長の 役・平手政秀へと照準があわされます。ここを崩して、織田弾正忠家をガタガタにしていけば、尾張守護・斯波家や守護代の織田家はなんとでもなる、という思惑でしょうか。
ここで取られた策は、平手政秀が横領していただの、今川と通じているなどのデマを流し、二人の間を離反させようという策で、残念なことに信長はこの噂を信じ、平手は自ら腹を切って、無実を証明するといった事態になります。よく言われるのは信長の行動を、平手政秀が死をもって諫めた、というストーリーなのですが、実は、今川義元・雪斎の謀略の犠牲者だった、と解釈することで、俄かに戦国時代らしい雰囲気が漂ってきますね。

そして、平手政英の死を、守護代・織田信友が利用して信長の暗殺を企みます。これを事前に察した信長は暗殺が企まれている茶席を欠席、反対に、暗殺の企てを、守護の斯波氏がバラしたのでは、と織田信友に疑いを抱かせ、彼に斯波義統を弑逆させます。さらに、この行為を咎めて、守護の仇を討つという名目で、信長の叔父・織田信光を引き込んで、

織田信友を攻め殺し、さらには、尾張の重鎮で家臣からも信頼の厚い叔父・信光を自らの家臣に討たせ、とうとう、尾張の下四郡を手中にすることに成功します。
さらに、美濃の斎藤道三が息子・義龍に討たれ、信長が後ろ盾を失う中、尾張の上四郡を治める守護代・織田信安との対立が表面化します。織田信安は、信長の母親・土田御前、弟の信行を味方に引き入れ、続いて、兄・信広も反旗を翻すなど、「織田弾正忠」家の内部対立に発展していきます。ここで、信長が採った作戦は「銭を中心とした経済」の実現を、土倉たちに約束し、もともと味方であった津島の堀田家に加えて、熱田の加糖家という豪商たちを味方にし、織田信安・織田信行勢を滅ぼすことに成功するのですが、その詳細は原書のほうでお読みください。

【レビュアーから一言】

本巻の真ん中あたりで、今川、北条、武田の三者が手を結ぶ「善徳寺の会盟」の場面がでてきます。
この会盟は、今まで境界争いを続けていた宿敵同志であった三さやが手を結び、今川は尾張へ、武田は越後の上杉へ、北条は北関東へとそれぞれの侵攻作戦に後顧の憂いをなくするというものなのですが、この背後に、雪斎・義元の企みで、当時の室町幕府の権門・名家で有力者である3つの家が、天下を持ち廻りで治めようという「天下輪任」の計略が会ったのでは、と筆者は推理しています。

もし、桶狭間で今川義元がうたれることがなかったら、こうした政治体制が実現していた可能性が高かったように思え、日本の歴史はおおきく違ったものになっていたように思えます。

信長は「吉乃」に出会い、織田家敗戦の中、家督を継ぐ ー 宮下英樹「桶狭間戦記 2」

「センゴク」シリーズのビフォーストーリーである、「桶狭間戦記」シリーズの第2巻。
前巻で、信長を全国級に押し上げる原因となった「桶狭間」で敗れた今川義元が、名軍師・雪斎とともに、今川家の家督を継ぎ、今川仮名目録の改定など富国強兵に強め、今川家を強大な戦国大名としたところが描かれたのだが、今巻では、彼のライバルである、信長の父・織田信秀の戦国大名ぶりと信長が家督を継ぐまでが描かれる。

【構成と注目ポイント】

構成は

第7話 吉法師
第8話 津島の悪郎
第9話 堀田右馬太夫
第10話 生駒のお類
第11話 織田三郎信長
第12話 織田弾正忠信秀

となっていて、まずは織田信長の祖父、織田信貞が津島湊を焼き払死、支配下におくシーンからスタート。

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「センゴク」のビフォー・ストーリーが開幕し、今川義元登場。 ー 宮下英樹「桶狭間戦記 1」

センゴク・シリーズの主人公である仙石権兵衛が仕える豊臣秀吉の主君。織田信長が、桶狭間で討ち果たす、今川義元の幼少期から、桶狭間の合戦までを描く、「センゴク」シリーズのビフォーストーリーが、この「桶狭間戦記」シリーズ。
シリーズの主人公は、今川義元、織田信長の二人で、TVドラマなどでは、出だしとして描かれることの多い「桶狭間」に至るまでの、駿河、三河、尾張の「戦国時代」を描き出しています。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一話 方菊丸
第二話 梅岳承芳
第三話 今川五郎義元
第四話 織田弾正忠信秀
第五話 松平次郎三郎広忠
第六話 太原崇孚雪斎

となっていて、まずは、後に今川義元を支える軍師兼宰相となる雪斎の若いころ、林材種建仁寺での修業時代から、シリーズが開幕。

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