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横浜で起きる「連続火災」に隠された「謎」を解け ー 佐藤青南「灰と話す男 消防女子!!高柳蘭の奮闘」(宝島社)

前作「消防女子」では、男社会の中でのしごきや、酸素ボンベのエア抜き事件などを乗り越えて、父親譲りの「消防魂」を発揮して大型客船火災で大活躍をした主人公・高柳蘭であったが、横浜市湊区内で連続して起きる「火災」の原因究明に乗り出すのが今巻である。

 

【あらすじと注目ポイント】

物語の出だしは、四階建てマンションの家具とかなにもない部屋から火事がおこるシーンからスタートする。この火事で、蘭たちは、部屋に取り残された赤ん坊や、オタクの男などを救出するのだが、その火事の原因をめぐって、警察と消防とがいがみ合うという滑り出しである。

というのも、この湊区管内で二ヶ月内に42回の出動をしているのだが、そのうち、16件が半径1.5キロ圏内に集中し、出火原因すら明らかになっていないからで、放火を疑った警察が「マルツウ」を隔離して尋問を始めたため、同じく原因を調べている消防の方と軋轢が死生じた、という次第。この場面で、今巻の「敵役」として、いい味を出している神奈川県警本部の松永という刑事が登場するのだが、いかにも、といった悪役ヅラで登場するので、しっかり記憶にとどめておきましょう。この時、警察とあらそうのが、現場検証では凄腕の、蘭の父親の同僚・木場で、この人の通称が「灰と話す男」なんですな。
ちなみに「マルツウ」というのは、消防の隠語で「火事の通報者」のことであるらしい。

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大規模客船火災に立ち向かう、新米女性消防士「蘭」に声援をおくろう ー 佐藤青南「消防女子!! 女性消防士・高柳蘭の誕生」(宝島社文庫)

女性進出が進んできて、多くの職業では女性の「就業比率」ではなく「女性の管理職比率」が話題になることのほうが多いのだが、未だに、その危険性などから女性の就業比率が少ない職業は厳然として存在する。それは、公務員の中では、消防、警察、自衛官といった職で、それぞれ職員総数に占める女性の割合は

消防 2.6%(H29.04.01)
警察 8.5%(H28.04.01)
自衛官 5.9%(H27年度末)
海上保安官 6.2%(H27年度末)

といった数値で、本書の主人公の職業である「消防士」は「女性の少ない職場」の代表といっていい状況である。
本書は、そんな「男社会」の中で、奮闘する新米・女性消防士の物語なのだが、けして「女性の成り上がり」物語ではなく、若い女性消防士が、火災への出動や救助活動を通じて成長していく物語である。元気な「蘭」の活躍に声援を送るうちに、こちらが元気づけられる物語でもある。

【構成と注目ポイント】

構成は

プロローグ
第一出場
第二出場
第三出場
エピローグ

となっていて、これだけ見ると味も素っ気もないのだが、まず、プロローグは主人公・高柳蘭の誕生のシーン。当直勤務の終わり頃に、妻が産気づいたという報せをうけた、蘭の父親・高柳暁がかけつけるあたりに若い父親の喜びを感じるとともに、主人公「蘭」の名前が、花の蘭の英語名「ファイアーウィード」に由来しているあたりが、「消防女子」の誕生を暗示していますね。

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