【ネタバレあり】戦国七雄の「韓」、秦の侵攻に屈すー「キングダム」76・77

キングダム

中国戦国時代の末期、中華統一を目指す秦王「政」と戦争孤児の下僕からはいあがり、天下の大将軍をめざす「信」の属する秦国と周辺諸国の武将たちとの戦いを描く中華大スペクタクル「原泰久 「キングダム」(ヤングジャンプコミックス)の第76巻〜第77巻。

昌平君による「三本の柱」により軍を再建した秦国は、三度、中華統一の戦いに乗り出しました。
まずは趙と魏の間に位置する旧晋三国の一つである「韓」の攻略を始めます。前巻で、韓の西の要所・南陽城を無血開城させ、秦と韓の新しい統治のあり方を作り上げた後、その「融和」の姿をバックに韓の都・新鄭へと軍を進めていきます。

構成と注目ポイント

第76巻 英呈平原・東砂平原の決戦は秦勝利。韓王室は風前の灯

構成は

第824話 役割
第825話 南陽石
第826話 質の差
第827話 遺産の存在
第828話 騰軍の傑物
第829話 英雄の名
第830話 新鄭の混乱
第831話 東砂の戦況
第832話 激戦の東砂
第833話 重要な進言
第834話 韓軍の士気

となっていて、冒頭は75巻に引き続き、英呈平原での韓の副将・博王谷と「信」との一騎打ちです。
「ヨコヨコ」の応援をえて、「信」を追い詰める博王谷なのですが、「信」のほうも飛信隊の崇原隊長たちの加勢によってほぼ五分まで持ち直します。この英呈平原での戦いの帰趨が「信」と博王谷との一騎打ちにかかっているため、両者一歩もひけない場面ですね。

この拮抗を破ったのが、「信」たちが南陽城を出発する時に、南陽城の住民たちから贈られた南陽石のお守りです。韓では有名な矢刀をよけるお守りを敵であったはずの秦軍の兵士が持っているのをみて、韓の軍兵は動揺します。

これらの想いを背景に、「信」の王騎由来の鉞は博王谷へ向かって振り下ろされ・・という筋立てです。

そして、この二人の勝負の結果は、英呈平原での秦vs韓の勝敗の行方にも影響を及ぼします。
今まで、騰、録鳴未、隆国の軍勢を分断し、戦いを有利に進めていたと見えた洛亜完だったのですが、右方から飛び込んできた、戦死したと思われていた干央によって陣を乱され、一気に形勢が不利になっていきます。形勢不利の中でも、洛亜完はあくまで騰の首を狙うのですが、博王谷の元から駆けつけた「ヨコヨコ」によって諌められ、軍を退くことを決断します。

秦・韓決戦の第1戦は秦軍の勝利となるのですが、この敗戦が今まで戦争に巻き込まれることが少なかった韓王宮を震撼させます。東砂平原で秦軍を迎え撃つ作戦を取ろうとする洛亜完を、王都へ戻し、守備につかせろなどといった意見が飛び交います。

さらには秘密裏に他国への亡命を模索する王族も出始めます。もともと「韓」は、春秋時代に「春秋五覇」の一つであった「晋」国が趙、魏、韓の三国に分かれたものなので、王族であれば魏や趙と縁戚関係の一つや二つあるのは当たり前であったでしょう。ただ、本来であれば国を守る主体となるべき王族がこの体たらくであれば、必死に王族や貴族の動揺を沈めようとする寧姫もたまったものではないですね。

そして東砂平原での敗戦による韓の敗色は濃厚になり、新鄭籠城を決意します。そこで俄かに力を持ち出したのが、治安維持軍を率いる夏候龍です。彼は宰相の許可が出たことを盾に宮廷内だけでなく、新鄭城内へも恐怖政治を展開していきます。こうした秘密警察が実権を把握してしまうのは、国が滅びる最終段階ですね。

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第77巻 七雄の一つ「韓」、秦のもとに降伏す

構成は

第835話 ふつうの人
第836話 王族の役目
第837話 東龍の鐘
第838話 入城
第839話 反逆行爲
第840話 譲渡
第841話 大きな歪み
第842話 業の重さ
第843話 巨大法治国家
第844話 想像を超えた武将
第845話 閼与の軍勢

となっていて、まずは東砂平原での敗戦後、韓王都に秦軍が迫ってくる中での韓王宮の様子が描かれます。

治安維持軍の夏侯龍将軍による恐怖政治が続く中、韓の安王は娘の寧に、城の東にある東龍の塔の鐘をならせば、守備兵たちが門を開き、秦軍を迎え入れる段取りになっている、と打ち明けます。
籠城し、秦軍と戦えば、城内の兵ばかりでなく住民も犠牲になるのは目に見えているのですが、170年余の歴史を有する韓王朝の歴史を自ら閉じる恐れと、韓を守るため、一般市民を兵士として動員し、最後まで戦う決断もできない中で悩みこんでいる父親の姿に、娘の寧姫も王族としてどうすべきか悩むこととなります。

そして、彼女がとった結論は・・というのが前段の読みどころですね。

ちなみに原書内で、韓の安王が「秦王は、・・演説し、一般市民を兵士化した。そして何とその半分を死なせた」といっているのはキングダム第30巻の諸国の包囲軍に秦国が包囲され、亡国の危機に陥った時のことですね。

ネタバレをしておくと、寧姫は父王とともに東龍の塔の鐘を鳴らし、秦軍へ降伏する決断を下すのですが、彼女の功績はそれだけでなく、城内であくまでも秦軍と戦おうとする洛亜完の軍隊を宥め、平和裡に秦軍へ、新鄭の統治を移譲したことですね。彼女の行動がなければ、秦韓戦争はもっと長期化していたものと思われます。

巻の後半は、降伏後の韓王家、特に寧姫の苦悩が描かれます。秦に降伏し、韓の住民を戦乱から守った彼女だったのですが、その後、韓を慕って身を投げる住民たちの姿に心を壊されていきます。そして、住民たちや戦死した兵士たちに詫びるため、城壁から身を投げた彼女を救ったのは、騰将軍で・・という筋立てです。

この時の負傷で騰将軍は一線から退き、「信」たちが今後の中華統一戦の主役となっていきます。そして、趙の李牧に敗れてから力を蓄えてきた王翦将軍の軍勢も復活を遂げていて・・という展開で次巻へと続いていきます。

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レビュアーのひとこと

韓滅亡の際、韓軍を率いていた洛亜完は秦軍と戦おうとする残党兵をまとめて新鄭城を出て蘭城に立て篭もり最後の抵抗戦を試みるのですが、その時、彼に付き従ってきた「ヨコヨコ」に残された韓兵を託していきます。
その時、「ヨコヨコ」は仮面をとり傷だらけの顔をだし、洛亜完に対し「旧い血筋のせいで二つの旧国の勢力から賞金首をかけられ、全てを失い行き場を無くした私と家族を助けてくださった」と洛亜完に感謝をしています。
彼の正体についてネットでも話題になっているのですが、当方は「旧い血筋」「二つの旧国」というところから、韓、趙、魏の宗主国とも言える「晋」の王族ないしは有力者であった「知氏」の縁者ではなかったか、と推測します。
晋国が韓、趙、魏によって滅亡し、三国に分割したのが紀元前376年、韓滅亡が紀元前230年で、およそ140年の開きがあるので晋滅亡の直接の関係者とは思えないのですが、その血筋を魏や趙の不満勢力に利用されていたと考えていいかもしれないですね。
「ヨコヨコ」は洛亜完に残った韓兵を託され、飛信隊に合流するようですが、これからの趙、魏攻略戦の強い味方になるのかもしれません。

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