投稿者「辺境駐在員」のアーカイブ

オーダーメイドレストランには「謎」がいっぱい ー 斉藤千輪「ビストロ三軒亭の謎めく晩餐」

東京の三軒茶屋の茶沢通りから路地裏に一歩入ったところにある、小さなレストラン「ビストロ三軒亭」は、決まったメニューというものがなく、客が好みや希望をギャルソンに伝えると、」シェフがそのテーブルだけのオリジナルコースをつくってくれるという、「オーダーメイドレストラン」。

そんなユニークなレストランに勤務する新米ギャルソン・神坂隆一を主人公にして、店の客が関係する様々な出来事や揉め事の謎を解き明かすミステリーと、その過程で成長していく俳優志望の主人公の姿を描いたのが本書『斉藤千輪「ビストロ三軒亭の謎めく晩餐」(角川文庫)』

【構成と注目ポイント】

構成は

プロローグ
1 entrecôte 〜アントルコート〜
2 Dinde aux Marrons 〜ダンジョーマロン〜
3 raclette 〜ラクレット〜
4 La quiche lorraine 〜キッシュ・ロレーヌ〜
エピローグ

となっていて、主人公の隆一は、所属していた劇団が解散しニート生活を続けていたのだが、姉・京子の企みで、この「ビストロ三軒亭」に食事に連れていかれ、その流れで、ギャルソンとして雇われることになる。その三軒亭、決まったメニューがないというのもユニークなのだが、従業員も、屈託のない明るさとルックスと話術で女性に人気のギャルソン・岩崎陽介、色白で端正な顔立ちをしてお客の健康チェックから食材の栄養知識をもとにしたメニューのアドバイスをするギャルソン・藤野正輝、格闘家のような体型をしながら喋るとオネエ言葉のソムリエ兼バーテンダーの室田、クリスティのポアロものの大ファンで、客のオーダーに対応して料理をつくる名シェフ・伊勢、と個性派ぞろい、という設定。

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バードの旅は山形を北上し、伝統の技と儀式に出会う ー 佐々大河「ふしぎの国のバード 6」

山形でマリーズからバードの脊椎の持病のことを教えられ、さらに盲目のイタコから彼女に同行すると「目の前で人がおっ死ぬことのなるず。」と告げられ、その後、(山形の)金山でも漢方医から蝦夷行きを止めるよう警告され、二人で北海道まで旅をしていくことに暗雲が漂う。そんな中、羽州街道を北上し、今は米沢市に編入されている「六郷村」へと進んでいくイザベラ・バードと通訳の伊藤の旅行記が描かれるのが、「ふしぎの国のバードシリーズ」の第6弾となる本巻。

【構成と注目ポイント】

構成は

第25話 院内
第26話 湯沢
第27話 十文字
第28話 六郷①
第29話 六郷②

となっていて、イタコや漢方医の不吉な警告もあるのだが、マリーズの脅しともとれる忠告のため、バードへの随行を悩み、体調を崩していくところからスタート。

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道真と業平。平安の反「藤原氏」の旗手の推理の冴えをみよ ー 灰原薬「応天の門 1」

平安時代、それも藤原氏が宮中を支配する最初の頃の時代というのは、時代小説でも描かれることが少ないせいか、かなり縁遠い時代であろう。

 

 

それに加えて、菅原道真とくると、受験の時には「お世話」になるもとも多いのだが、受験が終わって喉元過ぎると、ちょっとこういう「学問の神様」と親しくお付き合いするのはどうかねー、というのが正直なところ。

 

本巻から始まる「応天の門」シリーズは、そんな菅原道真が若い頃の、成長してからの「学問の神様」から想像される生真面目なイメージとは全く違った、頭はキレるがちょっと乱暴な、道真の活躍を描いた平安時代ミステリーである。

 

【収録と注目ポイント】

 

収録は

 

第一話 在原業平少将、門上に小鬼を見る事 一
第二話 在原業平少将、門上に小鬼を見る事 二
第三話 在原業平少将、門上に小鬼を見る事 三
第四話 都を賑わす玉虫の姫の事 一
第五話 都を賑わす玉虫の姫の事 二

 

となっていて、最初の三話は、このシリーズのキャストの紹介も兼ねたオープニング・ストーリー。

 

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”デザイン思考”の大御所が語る佐藤可士和「世界が変わる「視点」の見つけ方 」

佐藤可士和さんといえばビジネス現場で「デザイン」というものが語られるようになった、その大元締めというか元祖的なイメージが当方にはある。

その佐藤可士和氏の「デザイン論」を語った第一章と第三章の間に、慶応大学で氏が「未踏領域のデザイン戦略」というテーマで講義と実習を行ったときの記録を挟めた、デザイン思考お理論と教育を語るといった感じに仕上げられているのが本書『佐藤可士和「世界が変わる「視点」の見つけ方 (集英社新書)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

巻頭言 デザインの可能性について
第一章 「デザイン」を広義に解き放つ
第二章 「未踏領域」をデザインするー慶應SFCでの実践記録ー
 1 授業の組み立て
 2 学生たちのプレゼン事例
 3 学生たちの感想
 4 Q&A
 5 対談 佐藤可士和×オオニシタクヤ
第三章 「視点」をつかむためのヒント

となっているのだが、今回は、第一章と第三章を中心にレビュー。
当方が、まず注目したのは

アウトプットがグラフィツクでも、プロダクトでも、あるいは空間でも、僕の場合、常に核に置いているのは「コミュニケーション」です。
いい換えれば、僕のデザイナーとしての専門領域は「コミュニケーションのデザイン」であり、そのコミュニケーシヨンを最大化するメディアとして、グラフィツクや空間がある、という思考プロセスになります

というところで、「デザイン」というとどうしても「ビジュアル」なアート的なものを思い浮かべるのだが、佐藤可士和氏の「デザイン」とはそれとは違って、よりビジネス活動や日常生活の活動に近いところにあるようである。

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限界を超えるためのアスリートからのアドバイス ー 為末大「心のブレーキをはずす」

自分の夢や希望をかなえようと頑張った経験のない人はいないと思うのだが、夢を追いかけていると、立ちはだかってくるのが、「自分の限界」というやつで、これのせいで夢をあきらめてしまった人は多いはず。

そんな「自分の限界」に対して

「限界とは、人間のつくり出した思い込みである」
「人は、自分でつくり出した思い込みの橘に、自ら入ってしまっている」

として、その「限界」の超え方をアドバイスしてくれるのが本書『為末大「心のブレーキをはずす」 (朝日文庫)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

序章 うまくいかないのは、能力のせいじゃない
第1章 考え方を変えるふだけで結果は変わる
第2章 「自分にはできる」と信じていないのは自分だけ
第3章 自分の見えない檻から脱出する
第4章 「限界の正体」を知り、自分の可能性を拓く

となっているのだが、思うに、「限界の超え方」のアドバイスを受けるのに最適なのは、自らその限界に突き当たって、苦しみつつ限界を乗り超えてきた人からのもので、その意味で、アスリート、それも百メートルからハードルに転向し、さらには陸上選手のすべての最終目標のオリンピックでの金メダルを目指しつつも「銅メダル」に終わりつつも、今なお他分野ながら元気に活躍している筆者のアドバイスは最適なもの、といっていいだろう。

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鳥取県鳥取市「たかや」で「おろし(蕎麦)」を食す+鹿肉の大和煮の缶詰

弟が名古屋からやってくる、ということでお土産でもってかえってもらう「ジビエ」ものを物色しに若桜町の道の駅に向かう途中、ここの店で昼食をとる。

もともと鳥取市を中心とした「因幡地方」は「蕎麦」の店が少なくて、あっても出石蕎麦か出雲そばという、他所のところの名物をが中心である。隣国の「伯耆」や「出雲」では蕎麦店も多いのになぜかは、当方の浅い知識の中にはない。

行きついたのは、こんな店。旧国道に近い、鳥取市の田園地帯の中にあって、昔の蔵を使ったかのような風情である。

当日は従業員の人出が薄いということで、「もりそば」「おろし」「やまかけ」の三種のみの提供である。
ここの「おろし(蕎麦)」は

といった大根を使っていて、結構、辛みが強いのである。しばらく待ってやってきたのは、こんな出で立ち。

蕎麦に辛み大根のおろしとかつおぶしのかかったシンプルな様子である。

早速、そばつゆをかけまわしていただきます。壁のチラシには、まず大根だけを少し食べて、その辛みを味わって・・・とあるのだが、蕎麦と一緒に食しても十分その辛みは確認できる。手打ち蕎麦で手切りであるので、少々形は不揃いだが、そこはまた「手打ち」の良さというものである。蕎麦は腰もあって、程よく冷えていて、よいお味である。

上から見るとそんなに量は多くないように見えるのだが、実際食してみるとかなりボリュームはある。プラス300円で大盛にできるのだが、レギュラーサイズにしておいて正解である。特に蕎麦の場合は、味が変わらないせいか、大盛だと飽きてしまうんだよね。

最後に、蕎麦湯をいただいて〆といたしました。

ちなみに、うちのカミさんは、「もりそば」

娘は「やまかけ」

いずれの品も「好」とのことでありました。

【追記】おまけ 鹿肉の大和煮の缶詰

土産でもたせるため、鹿の燻製とかあれこれ買ったのだが、自家消費用に「鹿肉の大和煮」を購入

缶から出して皿に盛ったときの出で立ちはこんな感じ。
かなり「脂っ気」が強い感じですね。

食した感じは、昔食べた「クジラの大和煮」に似た感じ。最初のほうは牛肉の大和煮と同じく、甘めのタレの味わいが強いのだが、最後のほうに、「獣風味」が漂うという感じである。

鹿肉というと、イノシシ肉よりさらに「獣」感が漂う印象があるのだが、この缶詰は、そんなに身構えずに食せますね。ジビエ・デビューにはここらから始めるといいかもしれないですね。

関連ランキング:そば(蕎麦) | 津ノ井駅

食べログ

お園と吉之進の恋路を邪魔する「高ピー娘」出現 ー 有馬美季子「縁結び蕎麦 縄のれん福寿5」(祥伝社文庫)

疾走した亭主の捜査行で、多摩地方まで一緒に旅をした後、そのままくっついてしまうのかな、と思えた、元同心の寺子屋師匠・吉之進と、「福寿」の女将・お園の仲は、なかなか本腰をいれた付き合いにならないままであったのだが、吉之進の実家の親戚のお嬢様・文香が登場することで、波乱が巻き起こるのが今巻。

【構成と注目ポイント】

構成は

お通し 新年料理
一品目 円やか河豚雑炊
二品目 紅白ゆで卵
三品目 石楠花の寿司
四品目 ほっこり芋金団
五品目 縁結び蕎麦

となっていて、まずは吉之進の再従姉妹(はとこ)の文香が登場するところからスタート。
彼女の実家・綾川家は「表右筆」の旗本で、そこの長女という設定。さらに、吉之進の母親の実家がこの綾川家ということになってますね。右筆というのは公文書の作成や記録などを行う文官で、幕府の決裁書類の老中や将軍の決裁の順番を差配したり、裏の実力者であるのだが、この時代、右筆の中でも奥右筆がトップエリートであるので、「表右筆」だけの家というのは、ちょっと鬱積したものがあるかもしれないですね。

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大阪夏の陣前夜。織部の願い虚しく豊臣方の陣営乱れる ー 山田芳裕「へうげもの 23服」(モーニングKC)

大阪冬の陣が終了し、戦後処理にあたって和約に反して堀を徳川方が埋め立てるなど、次の戦争に向けて着々を手を打っていく徳川家康。今巻では1615年3月から1615年4月までのほぼ2ヶ月間が描かれる。たった2ヶ月間であるのだが、大阪夏の陣の勃発戦となる「道明寺・誉田合戦」が5月に起きているので、最後の大戦前夜、といった風情であろうか。

【構成と注目ポイント】

構成は

第二百四十二席 夏なンです
第二百四十三席 カム・トゥゲザー
第二百四十四席 俺たちのGOLD
第二百四十五席 岩の庭
第二百四十六席 僕の瞳はマリンブルー
第二百四十七席 男のこころ
第二百四十八席 クーデター倶楽部
第二百四十九席 不敵なラブリーボーイ
第二百五十席 ジェラシー
第二百五十一席 さだめ河

となっていて、まずは徳川方が次の戦に持ち込むための策を着々を講じているところからスタート。

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家康は豊臣を着々と追い詰める。織部正どうする? ー 山田芳裕「へうげもの 22服」(モーニングKC)

いよいよ、大坂冬の陣の豊臣方と徳川方の戦闘が始まった1614年12月から、冬の陣の戦後処理が終わった1615年3月までが描かれるのが本巻。

史実でご承知のように、大坂冬の陣で和睦条件をのんだ豊臣方を騙して、外堀だけでなく、二の丸・三の丸の内堀を徳川方で埋めてしまうという悪辣なやり口で家康の不人気を確定させた戦後処理なのだが、この陰に秀忠の苦悩があったり、豊臣方が叛意を失っていなかったり、と歴史に埋もれてしまったものが描かれている巻でもある。

【構成と注目ポイント】

構成は

第二百三十一席 SURVIVOR
第二百三十二席 巨人軍の譜
第二百三十三席 HITORI
第二百三十四席 2人の新世界
第二百三十五席 JUST DO IT.
第二百三十六席 Art School Men
第二百三十七席 A HAPPY LAND
第二百三十八席 桂ドリームランド
第二百三十九席 ラブレターズ
第二百四十席 男どアホウ乙紙面
第二百四十一席 父よ貴殿は強かった

となっていて、まずは真田丸での攻防戦からスタート。

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「艦これ」にも登場する軍艦内で起きる事件を「解決セヨ」 ー 山本巧次「軍艦探偵」

太平洋戦争が終結してから、2019年で74年を経過していて、当時のことを実体験として経験した人々も少なくなっているのだが、当時の海軍の軍艦を舞台に、元会計士出身の「短期現役士官」の主計将校の池崎幸一郎が、渡り歩いた軍艦の艦内で起きる事件の数々を解決していく、という筋立てなのが、本書『山本巧次「軍艦探偵」(ハルキ文庫)』である。

「短期現役士官」というのは、本書によると「大学た高等専門勝っ号の法学・経済学部卒業生の中から、志望者を募り、海軍経理学校終了後に、海軍主計士官として任官される」というもので、「主計」というのは、砲弾や燃料の供給から衣食住の提供・給料の支払い、備品や消耗品の調達など全ての雑多な仕事を請け負う、今で言う総務課+経理課といったところの仕事である。そんな部署の「課長補佐」さんが、各支店内でおきる事件の数々をサクサクと解き明かす、といったイメージで読んでもらえばいいだろう。

【構成と注目ポイント】

構成は

プロローグ 昭和二十九年六月
第一話 多すぎた木箱 ー戦艦榛名ー
第二話 怪しの発光信号 ー重巡最上ー
第三話 主計科幽霊譚 ー航空母艦瑞鶴ー
第四話 踊る無線電話 ー給糧艦間宮/航空機運搬艦三洋丸ー
第五話 波高し珊瑚海 ー駆逐艦岩風ー
第六話 黄昏の瀬戸 ー駆逐艦蓬ー
エピローグ 昭和三十年五月

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