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プレゼン能力や情報収集能力より大事な「能力」って何? ー 三浦展「「情報創造」の技術」(光文社新書)

「下流社会」や「第四の消費」などなど、日本社会を筆者独自の視点で切り取り、新しい視界をわたしたちの前に見せてくれる筆者・三浦展氏が、「情報を創造する」「ひとまねではない、オリジナルな、個性的な情報をつくる」ことについてまとめたのが、本書『情報創造の技術(光文社新書)』である。

初出は2010年で、ちょっと昔の出版である。本によってはその時間の経過が悪さをする場合もあるが、本書は、引用されている事例に古めのものはあるが、その事例に寄っかかることなく、筆者の独自の方法論などが語られていて、時間の経過はあれども、まだまだ使えるところが多いな、というのが当方の実感である。

【構成は】

序 情報創造力がないと生き残れない

第1章 情報創造はなぜ必要か

第2章 情報創造の方法

第3章 情報の収集と整理

第4章 情報創造の事例

となっていて、「情報創造」という耳慣れないワードの必要性から始まって、情報を創造するノウハウといったところまで概説している。

 

で、筆者によれば

情報を記憶したり、理解したりする力よりも、また情報を表現、プレゼンする力よりも、重要なのは情報を創造したり、情報に基づいて行動する力であることを示しています。情報を表現、プレゼンする力が大事だと思っている人も多いと思いますが、プレゼンする内容を想像する力がなければ意味がないのです(P25)

ということで、「情報を創造する」ということは、およそビジネス活動の基礎にあるといっていいもので、確かに、技術だけが先行して中身がスカスカの企画書やプレゼン資料が多い中、こうした本質のところをきちんとおさえておくべきことの大事さを教えてくれていて

本書は「まねる力」ではなく、「まねない力」をつけるための本(P12)

と断言されているあたりに、情報創造の能力の本質があるような気がしますね。

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「イヌ型」「ネコ型」、あなたはどちらのタイプ? ー 太田肇「「ネコ型」人間の時代」(平凡社新書)

人間の類型を動物に例えるのは、「人間関係に必要な知恵はすべて類人猿に学んだ」のチンパンジー・ゴリラ・オランウータン・ボノボの4類型で分析する「類人猿分類」など数々あるし、「自分を動物に例えると何?」というのは、就職面接などではすでに使い古された質問例なのだが、一般に馴染みが深いのは、本書でとりあげる「イヌ型」「ネコ型」の分類であろう。

そういう「イヌ型」「ネコ型」の性格類型を使いながら、閉塞感が依然払拭できず、なんとなく不自由感がただよう日本社会において、機嫌よく「生きていく」道筋を提案しようとしているのが本書『「ネコ型」人間の時代」(平凡社新書)』である

【構成と注目ポイント】

第1章 人を「イヌ扱い」してきた学校・会社の罪
第2章 「ネコ転」で別人に変わる
第3章 いよいよ「ネコ型」人間の時代に
第4章 人をみたら「ネコ」だと思え
第5章 京都に学ぶ「ネコ型」社会のつくりかた
となっていて、基本は「イヌ型」と「ネコ型」の人間類型の比較と、そのどちらが今の時代に求められているのか、というところが中心となる。

類型の比較のあたりは、

イヌは集団に対して、一元的に帰属し主に忠実にふるまうのに対して、ネコは複数の集団に多元的に帰属し、そもそも「主」という存在さえ認めない(P136)

といった感じで、大方の予測と同じであろう。

 

ただ、本書で、ユニークなのは

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いきもの係に増員。それに関係なく、薄ちゃんの推理は絶好調 ー 大倉崇裕「警視庁いきもの係 クジャクを愛した容疑者」(講談社)

数々の難事件を、その事件に関わる動物をキーにして、不思議な視点から解決してきた須藤・薄コンビなのだが、その活躍も4巻目となって、薄ちゃんの推理も絶好調という感じである。
このコンビの活躍も、そろそろ評判になってきて、少なくとも「警察社会」の中では、存在感を増してきたようだ。確実に、彼らが現場に行ったときの、所轄などの捜査本部の対応が違ってきているのだが、それがいいことか悪いことかはこれからの展開次第であろう。

【あらすじと注目ポイント】

収録は

ピラニアを愛した容疑者
クジャクを愛した容疑者
ハリネズミを愛した容疑者

の3編。

 

まずは、「ピラニアを愛した容疑者」から。この話から1名、人員が増加される。理由は、移動にタクシーを使っていた「いきもの係」の機動性を高めるためにであるとのことだが、そこは陰謀に長けた鬼頭管理官のこと、なにを謀んでいるのかわからない。

事件のほうは、門前仲町のマンションで、男性が扼殺される。男性は、ピラニアを飼っており、その世話で須藤・薄が駆り出されたのだが、近くの公園の池にピラニアが放流されていたという騒ぎも関連するのが、この話の謎解きの鍵となるところですね。

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ミソッカスでも、天然でも、薄ちゃんの推理力はピカイチ ー 大倉崇裕「警視庁総務部動植物管理係 ペンギンを愛した容疑者」(講談社文庫)

前巻は「蜂」をテーマにした長編であったのだが、今巻は、短編集。短編であっても、薄ちゃんの「天然ぶり」は健在で、「〇〇ですよぉ」という彼女の喋りぶりも、ますますパワーアップしていますね。
さらに、この巻の第三話の前のあたりで、須藤警部補が、総務部総務課動植物係に配属される原因となった怪我の後遺症なのか、突然意識を失って警察病院へ担ぎ込まれるといったことも起きるし、薄ちゃんには、地球温暖化を研究のため南極へ派遣されるチームに参加しないかと声がかかったり、と事件の解決以外にも、少々波瀾含みの第3巻なおのである。

【あらすじと注目ポイント】

今巻の収録は

ペンギンを愛した容疑者
ヤギを愛した容疑者
サルを愛した容疑者
最も賢い鳥

の四話。

まず、「ペンギンを愛した容疑者」は、大規模な食品グループの会長の殺人事件の解決。その会長が殺されたのが、敷地500坪の豪邸の中なのだが、「パーティールーム」と称する部屋に設えられた「ペンギンの飼育室」の池で溺死していたもので、そこで飼育されているペンギンの世話に、須藤と薄が駆り出されたという次第。

犯人として疑われるのは、会長の若い妻、会社を辞めるといって最近喧嘩していた会長の秘書兼ペンギンの飼育係、会長の甥ってなところなのだが、謎解きの鍵は、「ペンギンの餌」というところ。

こうした話の場合、被害者は大抵、冷酷な経営者ってなことになるんだが、この話ではかなりの人情家であることは、ちょっと予想外でしたな。

 

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「椿木家」の次期当主が、「見初」の力を呼び覚ます ー 硝子谷玻璃「出雲のあやかしホテルに就職します 5」(双葉文庫)

「出雲のあやかしホテル」シリーズも5巻目となったのだが、今巻は、4巻目の最後で、冬緒の実家の一族である「椿木」家の次期当主が、配下の式神を引き連れて、出雲空港に降り立ったことを引き継いで、なにやら不穏なスタートである。
さらに、プロローグで、記憶を失ったらしい母親と、彼女の娘らしい存在のやりとりがなにやら「昏い」始まりで、少々、陰鬱な出だしである。

【収録は】

第一話 藍の花は枯れることなく
第二話 赤と白
第三話 青いあかりは儚く煌めいて
第四話 時は止まることなく進み続ける
番外編 テレビで学ぶストーカー撃退法

となっていて、前半は、四華の有力一族・椿木家の次期当主は、出雲にやってきた理由と、椿木家の過去のスキャンダルっぽい事件に関する話。後半の二話は、月世界の住人が出雲にやってきたり、出雲の「神在月」の話であるのだが、底のところに、「見初」の四季神としての「力」が見え隠れしていますな。

 

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女子たちによる「ふぁーっ」としたキャンプ・マンガに癒やされる ー あfろ「ゆるキャン 1」(芳文社)

キャンプや登山というとむさ苦しい男たちが、大きなリュックを背負って、大汗をかきながら険しい道を登り、山中のクマでもでそうなところで、テントを張って、焚き火で飯盒で飯を炊く。目指すは、あの「山の頂」ってなシチュエーションが一昔までの定番であったのだが、昨今は豪華なホテルの脇のキャンプ場で、セッティングされたテントで、調理された料理を楽しむ、ってな「グランピング」がブームとなってきて、そのイメージも変わってきた。
ただ、「キャンプ」や「登山」というイメージを大事にすると、そういう「至れりつくせり」の設定もどうかな?、と思う人も多いハズで、そういう流行に、ちよっと一石を投じるのが、登山でいえば「ヤマノススメ」、キャンプでいえば、本書、あfろの「ゆるキャン」であろう。

【収録は】

第1話 ふじさんとカップラーメン
第2話 野クルへようこそ
第3話 ふもとのソロキャンガール
第4話 富士山と鍋キャンプ
第5話 道具を揃える所からがキャンプです
第6話 冬キャンプと山カフェ
番外編 日曜日とロッキングチェア

 

が第一巻の収録となっていて、登場人物は、メインキャストが、キャンプ初心者の「各務原なでしこ」とソロキャンプ大好きで群れない少女「志摩リン」、「野外活動サークル」略して「野クル」の先輩部員「犬山あおい」「大垣千明」といったキャストで、まあ、フツーにいそうな女子高生たちである。

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スズメバチを使った陰謀事件は薄巡査の推理により崩れ去るのであった ー 大倉崇裕「警視庁総務部動植物係 蜂に惹かれた容疑者」(講談社文庫)

警視庁総務部総務課動植物係に勤務する強面のもと刑事・須藤警部補と、制服姿でいるとコスプレ趣向のキャバクラ嬢と誤解される薄巡査部長の二人が、動物を巡っておきる難事件を解決していくシリーズの第2弾。今回は長編仕立てで、メインとなるのは「蜂」しかも、その凶暴性ゆえに、現実の世界でもあちこちで被害者が出ている「スズメバチ」である。

 

【あらすじと注目ポイント】

物語は、この動植物係をつくって二人を配属した、キレ者の警察幹部・鬼頭管理官が、新興宗教「ギヤマンの壺」の信者らしき犯人から襲われたことからスタート。このあたりは、須藤が警視庁の勤務が継続できた恩人である「鬼頭」の仇をうつ、ってな雰囲気で物語が始まるのを、ふーんという感じで読み飛ばすのが普通であろうが、実は、この物語の裏筋となっているので要注意である。

さて、物語のほうは、東京の各地で、スズメバチの目撃情報が相次ぐのだが、それはバスの中であるとか蜂と縁のないところでのものが多いのだが、そのうち、東京近郊の山中で「スズメバチ」に襲われて入院している「今尾」という男の聴取を、須藤と薄のコンビが行うことになる。彼がスズメバチに襲われた原因が、間違った山の指導標が立てられてたせいであるらしく、原因をこのコンビが調べ始めるうちに、高速道路で蜂による事故が起きたり、郊外に自然公園で蜂に母娘が襲われそうになったり、と蜂に関係する事件が頻発し始める。

どうも、この蜂関連の事件は、「ギヤマンの壺」の強制捜査が近づいてくるにつれ、頻繁に起きるようになってきて、ついには、ファミリーレストランに、スズメバチが仕込まれた箱が置かれていて、須藤・薄コンビと同行していた、県警の警察官がさされて負傷するという事件が起きる。
やはり、蜂に関する事件は偶然の事件ではなくて、「ギヤマンの壺」の強制捜査を阻止するために、教団関係者が仕組んだものなのだろうか・・・?、といった感じで展開していくのである。

ネタバレ的にいうと、「ギヤマンの壺」の信者に襲われた、鬼頭管理官の「大怪我」は偽装で、この管理官、この騒動を利用して、この教団の強制捜査に向けて舞台を整えていくのだから、一番の食わせ者であることには間違いないですね。

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幾多の謎解きは、理恵ちゃんを新しい進路へ導く ー 友井羊「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん まだ見ぬ場所のブイヤベース」(宝島社文庫)

シリーズものも冊数を重ねると、登場人物や、彼らを取り巻く環境が、どんどん変化していく時があるもので。これは筆者がそうするというよりも、「物語」や「物語の主人公」が勝手に動き始めることで起きているような気がしてならない。
もちろん、「錯覚」ではあるのだが、話を積み重ねているうちに、作者がシリーズ開始の頃は思ってもみないほうに進んでいってしまうことはありそうで、今巻の最後の話あたりは、「しずく」の店主との恋愛がなかなか進展しない中で、物語自体が「新基軸を求めた」といっても良いような気がする。

【収録は】

第一話 おばけが消えたあとにおやすみ
第二話 野鳥の記憶は水の底に
第三話 まじわれば赤くなる
第四話 大叔父の宝探し
第五話 私の選ぶ白い道
エピローグ

となっていて、第一話と第三話は、「しずく」の店主の娘・露とその同級生、第二話は理恵の部下の「伊予」の友達、第四話は、理恵の従姉妹といったように、探偵役はしずくの店主であることは変わらないものの、メインキャストが当初の登場人物からだんだん周辺に広がっているのは、「新基軸」を欲しがる見えない意思が働いてるような気がする。

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マイナスの「感情」をおし殺さずに働ける方法はコレ ー 関屋裕希「感情の問題地図」(技術評論社)

沢渡あまね氏を中心に展開されている「問題地図」シリーズであるのだが、今回は臨床心理士で「産業精神保健「「職場のメンタルヘルス」を活動テーマの中心として活躍している筆者によるのが本書『関屋裕希「感情の問題地図」(技術評論社)』。

心理学の専門家によるものであるせいか、今まで「仕事」「働き方」「システム」「マネージャー」といった外形的につかめるものを中心に分析・提案されていた「問題地図」シリーズなのだが、今回は、ぐっとパーソナルな話題に踏み込んで、職場で働いてる時の、我々に巻き上がってくる「感情」の問題にスポットライトを当てている。

【構成は】

はじめに
 〜「感情的にならない」「感情をなかったことにする」
  そんな感情との付き合い方は、もったいない
1丁目 怒り
2丁目 哀しみ
3丁目 落ち込み
4丁目 不安
おわりに 感情とうまく付き合うための4つのコツ

となっていて、本書の対象としているのは、働いていて「かーっ!」であったり「う〜っ!」や「く〜っ!」といった「マイナスの感情」の取説が扱われている。
で、本書の「おっ」と思うのは冒頭のところで「感情は悪くない」とした上で

心理学の研究で、感情は、私達が生き延びるために必要で大事な機能だということがわかっています。(P6)

として、よくある「職場の心理学」本のように、じっと我慢させたり、相手の心を配慮させたりして、自分の感情をぐっと押し殺させる方向に行かないのがよいですね。

 

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ホテル櫻葉に新しい「ハウスキーパー」が誕生いたします ー 硝子谷玻璃「出雲のあやかしホテルに就職します 4」(双葉文庫)

今巻以降の注目点は、

触れるだけで妖怪や幽霊、神様の力、感情までも操ってしまう。そんな能力を有していた陰陽師の一族、四季神家。見初はその四季神の血を引いているだけでなく、不完全ながらもその『触覚』の能力を使うことができる。
しかも、現在の四季神家の中で、その力を使えるのは見初ただ一人。

と前巻で明らかになった「見初」の能力がどういう波紋を巻き起こすか、というところであろう。前巻では、すでに失われていた「能力」ということであるので、これがどういう具合に展開されていくかは楽しみですな。

【収録は】

プロローグ
第一話 蓮沼家の人々
第二話 一輪の華と二人の男
第三話 深き山の中で山神が一人
第四話 狸の嫁入り
エピローグ

となっていて、今巻では、「見初」力の披瀝は、今巻ではちょっと少なめ。
最終話でこの力の威力が垣間見えるのだが、小さな女の子の山の神・柚枝の力を暴走させる方向え発揮されているので、手当たり次第にマシンガンを連射している状態で、危なくて仕方がない状況である。
そして、プロローグで永遠子が熱中症にかかる話の滑り出しに使われる程度に、そんなに大きな意味はありませんので念の為。

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