投稿者「辺境駐在員」のアーカイブ

信長軍は播磨、本願寺を降し、いよいよ一統への道へ ー 「センゴク天正記 11・12」

センゴク天正記(11) (ヤングマガジンコミックス)
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落ち武者から国持大名へ、その後、戦で大敗北して改易。そこから復活して、徳川将軍家の相談役まで昇進した戦国一のジェットコースター人生をおくった「センゴク」こと「仙石秀久」の半生記が描かれる宮下英樹の「センゴク」シリーズのSeason2「センゴク天正記」の第11巻と第12巻。

前巻までで三木城の離反、荒木村重の謀反といった、織田の西国攻めの足元を揺さぶる事態に苦戦を強いられていた織田勢なのですが、一挙に攻勢に転じることになるのが、この11巻、12巻。

【構成と注目ポイント】

まず、11巻の構成は

VOL.100 不合理な戦略
VOL.101 武功の機
VOL.102 風雨の中の夜襲
VOL.103 上津の領主
VOL.104 力攻め
VOL.105 理想の国
VOL.106 一蓮坊への約束
VOL.107 肚の中の約束
VOL.108 不合理な生き物
VOL.109 稀代の軍師

となっていて、センゴクは羽柴秀次隊とともに上津城攻めに向かいます。上津城を守るのは坊主上がりの井上一連坊という人物だが、彼が意外に骨のある武将です。

半兵衛は病気療養をしているのですが、秀吉に彼の理想の国とする「惣無事の国」を語ります。これが後に秀吉の政策の中心となったような気がします。

上津城攻めのほうは、この城に三木城の城主・三木長治の長子が匿われていることをセンゴクがつきとめ、この子、兵、民衆の安堵を条件に城を明け渡すよう井上一連坊と交渉するが決裂します。

センゴクと一連坊が、その闘志の火を互いにつけあったという構図でしょうか。このため、城に籠もる城方とセンゴク勢との間で、がっぷり組んだ攻城戦が展開されます。もちろん、三木城の干殺しの戦法を体験した秀吉軍の攻め方なので、力押しに押すだけではなく、青田刈りを含めた兵糧攻めも併用した総合戦ですね。この戦の最中に秀吉軍は重要な人物を喪ってしまうのですが、そこのところは原書で。

これに続く12巻の構成は

VOL.110 不惜身命
VOL.111 城主の本懐
VOL.112 蘇る鉄血
VOL.113 恨みもあらず
VOL.114 十年の合戦
VOL.115 先見の明
VOL.116 合戦か和平か
VOL.117 流転の民
VOL.118 愛別離苦
VOL.119 石山本願寺の最後

となっていて、前巻の上津城攻め以降、包囲陣を敷くセンゴクのもとへ、上津城の守将・一連坊から、自らの命と引き換えに、別所長治の長子、民衆、兵の命を助け、城を明け渡す、という申し出がやってきます。なぜ、センゴクの当初の降伏勧告を断り、今回、降伏を受け入れたかは、原書のほうでご確認を。そして、センゴクは、このまま上津城を預かることとなります。

その後、織田軍は、信長包囲網を寸断し、とうとう荒木村重は城と家族を捨てて逃亡。本シリーズではおびえて逃げた様子になっているのですが、「へうげもの」シリーズでは、茶器の名品等を抱えて、風流に殉じての逃亡のように描かれていたように思います。まあ、逃亡には変わりはないわけで、数年後に秀吉のお伽衆として復活するのですが、武将としてはもう終わりですね。

そして、三木城の兵糧も尽き、城兵と民衆の助命と引き換えに、城主・長治が一族もろとも命を絶ち、三木城は陥落することとなります。もともと三木一族を謀反に誘導した重臣の三木賀相は最後まで抗戦を訴えるのですが、こうした精神論優先の人物が先導しても、あまり良いことはないような気がします。

この播磨の攻略を成功させた後、信長は、最大の仇敵「本願寺」へ矛先を向けます。ここで、なぜ信長が多くの犠牲を払いながら、本願寺と加賀を支配下にいれようとしたかのカラクリがわかります。それは

ということのようですが、彼の戦争が、まさに「経済のための戦争」「銭をまわすための戦争」というものであったことがわかります。この点では、荒木村重が謀反を起こす前に指摘したことはあながち間違っていない気がします。

さて、本願寺攻めのほうは、光秀の朝廷工作を通じて和睦の使者を出させるのですが、それまでの朝廷や公家たちに対する扱いがかなりいい加減になってきます。どうやら、信長はこの時点ではすでに朝廷の利用価値に見切りをつけていたような感じですね。
そして、和睦の使者を受けて、本願寺内は、和睦に傾く顕如と、徹底抗戦を主張する教如の勢力に真っ二つに分かれます。しかも本願寺の民衆の声は

といった感じで、信長へ降伏することには反対なのですが、この顛末がどうなったかは、原書のほうでご確認を。

【レビュアーからひと言】

12巻の最後のほうで、朝倉義景が織田勢に滅ぼされた後、義景の娘の侍女として、本願寺に身を寄せていた「お蝶」が再登場します。本願寺の降伏で、また落人になる境遇になります。

考えてみれば、彼女は当初仕えていた斎藤家の稲葉山城が信長によって陥落され、その後、朝倉、本願寺と彼女が行く先々が、織田勢に蹂躙される運命を辿っていて、あまり運の良い女性とはいえないですね。彼女が、これから逃れる先にも、織田勢の影が差してくるのでしょうが、なんとか幸せをつかんでほしいものです。

センゴク天正記(12) (ヤングマガジンコミックス)
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軍師・竹中半兵衛の戦略は最後の輝きを見せるか ー 「センゴク天正記 10」

センゴク天正記(10) (ヤングマガジンコミックス)

落ち武者から国持大名へ、その後、戦で大敗北して改易。そこから復活して、徳川将軍家の相談役まで昇進した戦国一のジェットコースター人生をおくった「センゴク」こと「仙石秀久」の半生記が描かれる宮下英樹の「センゴク」シリーズのSeason2「センゴク天正記」の第10巻。

西国の制覇に向けて動き出した織田軍は、但馬・播州攻略で勢いづくかと思いきや、播州侍の相次ぐ離反で、一挙に形勢が悪くなります。ここで、挽回を図る秀吉が考え出したのが、「干殺し」といった城を囲む攻城戦で、ここらから秀吉の攻め口が、確実ながらも「暗い」イメージを帯びてきます。

【構成と注目ポイント】

構成は

VOL.90 播州三木城包囲戦
VOL.91 荒木村重の謀叛
VOL.92 天下一統とは
VOL.93 勘兵衛の説得
VOL.94 勘兵衛の処断
VOL.95 家の結束
VOL.96 播州侍
VOL.97 奇襲の真意
VOL.98 半兵衛の策
VOL.99 二つ雁金と違鋒矢(ちがいほうし)

となっていて、上月城を放棄した秀吉は、三木城攻めに専念し、周囲の支城を一つ一つ陥落させる攻め方で包囲網を縮めていきます。

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上杉謙信、没す。センゴクは播州へ ー 宮下英樹「センゴク天正記9」

センゴク天正記(9) (ヤングマガジンコミックス)

落ち武者から国持大名へ、その後、戦で大敗北して改易。そこから復活して、徳川将軍家の相談役まで昇進した戦国一のジェットコースター人生をおくった「センゴク」こと「仙石秀久」の半生記が描かれる「センゴク」シリーズのSeason2「センゴク天正記」の第9巻。

「手取川の合戦」で上杉謙信によってぼこぼこにやられた柴田軍の撤退と前巻での敵前逃亡による改易をなんとか免れた秀吉の播州攻略が始まります。

【構成と注目ポイント】

構成は

VOL.80 霞越え
VOL.81 合戦と静謐
VOL.82 秋気清し
VOL.83 鉄血の播磨人
VOL.84 犠牲と平穏
VOL.85 陸の線 海の線
VOL.86 虎千代の望み
VOL.87 管領の御為に
VOL.88 西の大国
VOL.89 城主の命運

となっていて、まずは「手取川の合戦」で上杉勢の総攻撃に川べりまで追い詰められた柴田勢が、センゴクの「水がもうすぐひく」という言葉を信じ、鎧を脱いで川を飛び込む鬼柴田の「霞越え」のシーンからスタート。

この戦いでのセンゴクの加勢と進言のおかげでからくも逃げ切れた柴田勝家が、信長の秀吉の赦免をとりなすことが、秀吉が改易・追放を免れた要因の一つでもあるのですが、ここでのセンゴクの働きについては、後の秀吉のセンゴクへの扱いをみると、知らなかったか、忘れていたかのどちらかでは、と思います。

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あくどいライバル・氷川屋に経営危機勃発。なつめの慕う「菊蔵」の運命は ー 篠綾子「ほおずき灯し」

徳川綱吉の時代を舞台にして、駒込の菓子屋・照月堂を舞台に、京都で御所侍をしていた両親と兄を火事で失い、江戸の了然尼のもとに身を寄せながら、女性職人見習いの「なつめ」の歌詞職人修行を描く「江戸菓子舗照月堂」シリーズの第6弾。

前巻で菓子勝負での冷や汗ものの勝利を収めた照月堂のライバル氷川屋から引き抜きのアプローチを受けて、悩みながらも、照月堂へ残留することを決めた「なつめ」は再び菓子修行に励むのだが、行方不明の兄の「怪しげな」情報が出てきたり、氷川屋の商売の足元がすくわれる事態がおきたり、といった新展開があるのが第6巻「ほおずき灯し」である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一話 ほおずき灯し
第二話 松風
第三話 女郎花
第四話 喜久屋の餡

となっていて、まず第一話の「ほおずき灯し」は、照月堂の子どもの亀太郎のお話。彼は佐和先生というかなり厳しい武家上がりの女性師匠の経営する寺子屋に通っているのだが、そのお師匠さんが育てている「ほおずき」が見事な大ぶりの実を実らしている。それをこっそり見にいった亀次郎は、そこで同級生の悪ガキと遭遇し、彼ともみ合っているうちに、そのほおずきの実がもげてしまい・・・、といった展開。若干、説教臭い筋立てではあるのだが、まあ、安心して読める人情物ですね。

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柴田勢と上杉軍の激突の寸前、藤吉郎は逃亡。センゴクどうする ー 宮下英樹「センゴク天正記 8」

落ち武者から国持大名へ、その後、戦で大敗北して改易。そこから復活して、徳川将軍家の相談役まで昇進した戦国一のジェットコースター人生をおくった「センゴク」こと「仙石秀久」の半生記が描かれる「センゴク」シリーズのSeason2「センゴク天正記」の第8巻。

越前・七尾城の籠城戦をめぐって、織田と上杉との大激突する「手取川の戦」が描かれるのが本巻。もちろん、「戦の名手」として知られる上杉謙信のことですから、単純な城攻めではなく、あちらこちらに目を配りながら、周到な戦準備と謀略、そして時機をとらえることの巧みさがよくわかる展開です。

【構成と注目ポイント】

構成は

VOL.70 織田か上杉か
VOL.71 北進
VOL.72 秀吉の策
VOL.73 織田軍の選択
VOL.74 背水の陣
VOL.75 織田軍撤退
VOL.76 総大将 柴田勝家
VOL.77 生存の道
VOL.78 堀之介
VOL.79 電戟と軍神

となっていて、織田に敵対することを決めた上杉謙信の軍が、越前・七尾城を包囲しているところからスタート。城方で城主畠山春王丸を要する遊佐続光は上杉に降伏して、自らがこの越前を支配する気満々なのですが、越前畠山の重臣・長一族は信長に救援を求めることになります。幼君を利用する悪臣に、主家を守ろうとする忠義の旧臣といった構図ですが、遊佐一族は、後に長一族に滅ぼされているので、本当のところはどうでしょうか・・。このあと、城兵や領民のことを思った春王丸の行動が彼に悲劇を招き寄せるので、なおさら真相をわからなくしているような気がします。

対する、織田勢のほうは見た目は、柴田勝家を中心に軍をまとめているようですが、

という援軍を受け入れた時の信長の発言がある上に、実は織田軍の宿命の「功名争い」が蠢いています。もちろん、その主役は「羽柴藤吉郎」で、柴田、明智を飛び越して筆頭家老狙いの、七尾城調略を企画し、その役目につくのが、「センゴク」です。彼は、能美の地侍の堀才助という人物に接触するのですが、その成果は・・・???ということになりますね。
そして、羽柴と柴田の対立はとことん最悪になります。陣幕の中で、この戦が謙信の謀略ではないかと語っているのを、柴田勝家が聞きつけ、臆病者の戯言と激怒します。

これが原因で藤吉郎は帰陣するのですが、これが藤吉郎の「改易」の危機を迎える原因となる事件です。

で、戦のほうは七尾城で幼君を助け、信長に救援を求めてきていた長続連一族が殺されていたことが判明し、援軍する理由を失った柴田勝家は、撤退を決意します。ところが織田軍の前に立ちはだかるのは雨で雑炊した手取川(湊川)で、立ちすくむ柴田勝家に率いられる織田勢に謙信軍が総攻撃をしかけます。


ここにおびき寄せた謙信の計略は見事なものですね。
ただ、敗色濃厚な場面で、一番さまになるのは

と号令する柴田勝家で、勝敗は別として、こういった剛将は、なかなか得難い人材ですね。そして、ここでセンゴクはどんな働きをするかは、原書のほうで。

【レビュアーから一言】

今回、柴田勝家を主軸にして、丹羽、滝川、前田、佐々といった武将たちが寄騎としてついて、信長本軍とは遠く離れて、上杉謙信に対峙した体制が、織田軍を特徴づける「方面軍」のもとになったとの話があるのですが、緒戦は苦いものになってます。

ただ、このアイデアのおかげで、主君の信長がいちいち先頭に立たずとも、多方面にわたって軍を展開できるわけで、楽市楽座などによって経済力はあるが、四方八方を取り囲まれている織田軍にとっては起死回生の戦術であったと推察いたします。

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人出不足の解消のコツは若者への「攻めの人事」への転換にある ー 原田曜平「若者わからん! 「ミレニアル世代」はこう動かせ」(ワニブックスPLUS新書)

「若者論」というと、彼らの消費行動であるとか、生活様式などについての論述が多くて、一緒に働いていく、部下ないし同僚としてビジネスをする、という視点で書かれたものは、おどろくほど少ない。
さらに、最近の人出不足の状況の解消の場面でも、外国人労働者の議論は多くなってい入るが、最近の「若者」の行動特性を踏まえながら、働きやすい仕事環境について正面から論じているのは、

本書で取り上げるのはこの「消費者」としての若者ではなく、前述したうちの二、「採用対象者」としての若者と三、「育成・管理対象者」としての若者である。

としている本書ぐらいではなかろうか。

【構成と注目ポイント】

構成は

はじめに
第1章 若者に目を向けない企業は消えていく
第2章 こんな社員に困っている!ーミレニアル世代の特徴ー
第3章 好かれる上司、嫌われる上司
第4章 企業が取るべき若者対策
おわりに

となっていて、本書の対象とするのは、いわゆる「ミレニアム世代」「スーパーゆとり世代」で、本書によれば「極端に上昇志向が減退」し、「極端な個人主義」が進んでいて

表面の柔らかで調和的な態度と、内面の頑固さと個人主義のギャップが、ミレニアル世代の特徴なのだ

という世代的特徴を有していて

表面上は大変素直で穏やかに見えるが、彼らの「本質」とそれとのギャップは大きく、上の世代の彼らへの理解をいっそう難しくさせている。

ということから、昨今の世代間ギャップの拡大を生み出しているようなのだ。
 

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ハロウィンに現れたコアラ・マスクの殺人狂を追い詰めろ ー 佐藤青南「ハロウィンの花 犯罪心理分析班 八木小春」

警視庁捜査一課の新米女性刑事・八木小春を主人公にして、ASD傾向の警視庁科学捜査研究所所属のプロファイラー・土岐田秀一、サイコパスの警察庁公安部所属の捜査官・塚本拓海、コンピュータを使った情報収集・分析を担当するハッカー・エイジ、小春の先輩刑事・間柴という一癖も二癖もある警視庁プロファイリングチームの活躍を描く、「犯罪心理分析班 八木小春」シリーズの第三弾が、『佐藤青南「ハロウィンの花 犯罪心理分析班 八木小春」(富士見L文庫)』。

【あらすじと注目ポイント】

今回の事件は、ハロウィンの夜の渋谷のスクランブル交差点で、群馬からこのイベントを目当てにやってきた女性が殺される、というもの。犯人と思われる人物は、ラテックス製のコアラのマスクで顔を隠しての犯行なのだが、たくさんの人出の中で、その女性を「13箇所」も刺して殺すという残虐性で、まさに「シリアル・キラー」の犯行間違いなし、という事件で、ここは「プロファイリングチーム」の出番となるはずなのだが、そこは警視庁の反対派が邪魔をして、操作情報すら届かない・・・、といったスタートである。

まあ、ここらは捜査本部の内通者というか協力者の間柴刑事が、操捜査情報とかも持ち込んできて、土岐田チームが捜査活動を開始、という前巻と同じような動きなのだが、ちょっと違うのは、前巻で土岐田たちと顔見知りになっている間柴が、プロファイリングチームの秘密のラボに頻繁に出入りするようになったこと。さらには、チームのメンバー・エイジも、違法捜査の様子を、間柴に隠そうともしなくなっていて、チームの秘密がバレバレになってしまうのでは、と心配になる筋立てである。

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大店の経営の危機は、二人の中を引き裂くか? ー 知野みさき「巡る桜 上絵師 律の似面絵帖」

江戸の神田相生町に住む、女性の上絵師・律を主人公に、彼女が描く「似面絵」(似顔絵)による事件や揉め事解決と、幼馴染の葉茶屋の跡取り息子・涼太との恋バナと絵師修行の姿が描かれる「上絵師 律」シリーズの第四巻が『知野みさき「巡る桜 上絵師 律の似面絵帖 3」(光文社文庫)』。

前巻で着物の上絵をてがけたもののまだまだ一人前の絵師には程遠く、注文主の呉服屋・池見屋の女将の皮肉は続くし、幼馴染の涼太との恋バナは、涼太の母親が反対気味という八方塞がりの中での第四巻である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 混ぜ物騒ぎ
第二章 父二人
第三章 春愁
第四章 巡る桜

となっていて、第一章の「混ぜ物騒ぎ」は、「律」は前巻で、池見屋の女将の妹・千恵の椿の上絵を引き受けたために、主な収入源の「巾着絵」の出来がイマイチになって、注文を減らされた上に、ライバル絵師が登場するし、「涼太」のほうは、生家の茶葉屋・青陽堂が得意客に売った商品からいくつも、古い茶葉が混じったものが見つかったという、二人ともかなりのアゲインストの状態から幕開け。

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タイムスリップした女子農業高校生、「織田家相談役」に昇進する ー 「戦国小町苦労譚3〜4 躍進、静子の村 編」

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現役女子農業高校生が、戦国時代にタイムスリップして、持ち込んだ種子や後世の農業技術な器具を駆使して、尾張の信長のもとで大活躍する、時代改変もの「戦国小町苦労譚」のコミカライズ版の三〜四巻。

前巻までで、信長の厳しい作物の増産命令を難なくこなし、これで安泰か、と思いきや、信長から新たな難題が下されるし、静子の知識の秘密か引き寄せるのか、隣国から本多平八郎、前田慶次、竹中半兵衛といったこの時代を彩る新たな登物人物が静子を訪ねてやってくるし、といった展開である。

【構成と注目ポイント】

構成は、第三巻が

第十一幕 拠点
第十二幕 侵入
第十三幕 看病
第十四幕 攻城
第十五幕 八角

第四巻が

第十六章 追及
第十七章 馬廻
第十八章 鍛錬
第十九章 開発
第二十章 混乱

となっていて、まず、信長が静子の作物増産計画に味をしめたのか、彼女の村を中心に大農産物生産拠点をつくれ、という命令が下される。

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現代の農業高校女子高生は、信長の天下統一の大黒柱となれるか? - 「戦国小町苦労譚【コミック版】1~2 農耕戯画編」

戦国小町苦労譚 【コミック版】 1 -農耕戯画- (アース・スターコミックス)
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現代の農業高校に通う女子高生が時空を超えて、過去に迷い込む。迷い込んだのは、戦国時代後半の尾張。ちょうど織田信長がみの攻めをする前の天下一統に乗り出す前夜であった・・・というタイムスリップものが「戦国小町苦労譚」シリーズの第一巻と第二巻が、その「農耕戯画」編。

もともとは「小説家になろう」にWeb連載をされていて、評判が良くて出版化されたものの「コミカライズ版」がこのシリーズである。小説の実写化やコミカライズは、演ずる俳優さんであるとか、描かれる漫画のタッチとかで、原作との乖離とか、イメージの対立とかがありがちなんであるが、本シリーズは、原作の「蘊蓄」の煩雑さを上手く薄めながら描かれていて、読みやすい仕立てになってます。

【構成と注目ポイント】

構成は、第1巻が

第一幕 邂逅
第二幕 開梱
第三幕 狩猟
第四幕 入浴
第五幕 謁見

第2巻が

第六幕 稲作
第七幕 収穫
第八幕 栽培
第九幕 褒賞
第十幕 余興

となっていて、まずは

といった感じでタイムスリップしてしまうところからシリーズ開幕。
このシーンの前に雨粒のようなものが落ちるシーンはあるのだが、他のタイプスリップものように、マッドサイエンティストのつくった車が登場するわけでもなし、突然のストームに巻き込まれるといったこともなく、地味なタイムスリップである。
タイムスリップしたところがちょうど、織田信長が領内の見回りをしているところで、スマホをみつけた彼から、「南蛮の技術」で登用させることとなる。そこの得体のしれない女子高生を登用することに不安を言い立てる家臣に

というあたりは、お決まりながら「信長らしい」ところである。

で、信長から年貢も滞る村の采配を任され、現代から持ち込んだ

さつまいもを大量生産して村人の栄養改善を図ったり、迷い込んだ狼を手なづけた上に、

といった西洋の武器をつくって鹿などの獣害を激減させたり、大活躍である。そして、かぼちゃやさつまいもの料理に感激した信長からは、小間使の「彩」が派遣されるのあわせて、村で「米を25俵収穫しろ」という難題がくだされる。

ご想像のとおり、この「彩」は、静子の技術や知識の秘密を探るための密偵ですね。こういった素直そうな娘が派遣されるときは「裏」がありますね。

この信長が出した難題「米25俵の収穫」を達成するため、彼女は、

といった器具を使って「正常植え」の技術を駆使したり、明治時代に発明された「回転式除草機」を導入したり、と後世の技術を惜しげもなく使うのだが・・・、といった展開をしていきます。

この1~2巻は、主人公の知識や偶然、現代から、この時代にもってきた「作物」を活用して成り上がっていく展開なので、ワハワハと彼女の行動と、織田や徳川の重臣たちを驚かせたり、屈服させたりといった胸のすく行動を楽しめばいいと思います。

もっとも、歴史的事象を直接変えるのではないにせよ、後世に発明された農業機械を使って作物を大量につくったり、クロスボウを使って害獣駆除したり、普通のタイムスリップものであれば、主人公が悩みこんで躊躇してしまう「時代改変」を”ひょい”としてしまうところは、口うるさい向きは「むっ」とくるところかもしれないのだが、当方としては「あっけらかん」とした時代改変で、主人公が数々の難局を突破していく姿は、「スカッ」とするので、高く評価しておきます。

さらに加えて、話の中で、「静子が栽培に成功した「椎茸」は当時56Kg(15貫目)あれば城が買えるといわれてほどの貴重品であった」といった原作の「蘊蓄」の数々もあちらこちらに出てくるので、歴史についてのTipsを仕入れておきたい方にもおススメしておきます。

【レビュアーからひと言】

「おっ」と思った”蘊蓄”は、主人公が、信長に城に呼ばれて、他の家臣たちと年賀の儀式に参列するために城の廊下を一列になって歩く

といったところで、当時の人からみたら、現代ではフツーの背格好の彼女でも「大女」で、かなりの迫力がある女性に見えたのだろうな、と推測。きっと、巴御前とか古の女性英雄が出現といったぐらいのショックがあったに違いなく、主人公の静子が村人たちや信長の武将たちを圧倒できたのも、案外、こういう「体格の良さ」のおかげもあったのかもしれません。

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【参考サイト】

「戦国小町苦労譚」の原作はこちらのサイトで読めます。

小説を読もう 戦国小町苦労譚

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Webだと読んだ気がしない。やっぱり小説は「本の形」で読みたい、という人はこちらでどうぞ。

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