秦と趙の中華統一を賭けた「番吾の戦い」始まる=原泰久「キングダム」71【ネタバレあり】

中国の春秋戦国時代の末期、戦国七雄と呼ばれる七カ国同士の攻防が続く中、中華統一を目指す秦王「嬴政」と、戦争孤児の下僕から、天下一の大将軍を目指す「信」が、ともにその夢の実現を目指していく歴史大スペクタクル『原泰久「キングダム」(ヤングジャンプコミックス)』の第71弾。

前巻までで六大将軍の一人「桓騎」が大軍を率いて趙国内へ侵攻し、守城の要「宜安」を攻めたものの、趙軍の総大将「李牧」の策によって退廃を喫し、桓騎をはじめ武将の多くを失った秦軍だったのですが、韓の王族・韓非子を招き、国内の統治体制を整えた後、中華統一を目指し、再び軍をあげ趙・李牧との大決戦が始まります。

あらすじと注目ポイント

第71巻の構成は

第769話 新生飛信隊
第770話 今年の軍力
第771話 雪辱戦
第772話 それぞれの武運
第773話 開戦の口火
第774話 予想の上
第775話 厄介な存在
第776話 不器用なところ
第777話 立ちはだかる敵
第778話 違和感の訳
第779話 障壁となる男

となっていて、趙北部の宜安城外で戦いで六大将軍の一人・桓騎や桓騎軍の多くを失い、戦力を大きく削がれた秦軍は、雪辱を果たすため新たに兵を募り、軍勢を立て直しています。

桓騎軍が壊滅したことで、生き残った「信」の率いる飛信隊も秦軍の主力としての地位に格上げされ、三万の軍編成となっています。この中には、六カ国連合との戦いで戦死した麃公軍の残兵、桓騎軍の生き残りの青石族や砂鬼一家など、信とともに戦い敗れた味方の軍勢が多く「信」のもとへ結集しています。

今回の派遣軍は、六大将軍の一人で、沈着冷静な采配が特徴の「王翦」将軍が総大将となり、「信」の率いる「飛信隊」、山の民を率いる楊端和軍、王翦の息子王賁の率いる玉鳳隊が連合した25万の軍勢が、先の派遣軍が大敗した宜安近くの「番吾」を目指して進軍します。

「肥下の戦」では、「狼孟」はいた青歌軍によって横っ腹をつかれて潰走した秦の北東部軍も無事、本軍へ加わり、今回の趙北部攻略軍は万全の態勢での侵攻と思われるのですが、この動きは実は秦の大軍をおびきよせ宜安での桓騎に続いて秦の主力将軍を討ち、中華統一の野望に大打撃を与えようという、李牧が周到に準備された迎撃態勢の中に飛び込むこととなりそうです。

そして、今回の趙軍で登場するのが、青歌軍を率いる「司馬昭」です。くるっくるのパーマ頭で、青歌軍の勇将カン・サロや剛将・ジ・アガより頭一つ大きな武将です。史実でも、李牧と並ぶ趙末期の名将といわれていて、この二人が粛清されたことが趙が秦に征服される原因となっています。

で、番吾の城外の平原で趙軍35万、秦軍25万が対峙します。

まず秦軍右翼の飛信隊が動き趙軍左翼の袁環軍とぶつかると、秦軍左翼の楊端和軍も趙右翼の馬南慈・舜水樹軍とぶつかります。

これを見た中央の秦の亜光軍も動き始めるのですが、彼の眼がとらえたのは右にある森林内に陣取る「李牧」の姿で・・という展開です。その姿をとらえた亜光は当然、軍を右旋回し李牧めがけて兵を進めるのですが、これは李牧の罠。そして、狙いは「亜光」ではなくて、亜光軍の動きに連動して李牧を追跡してくる「信」です。

馬を駆って離脱する李牧を追っていく信や河了貂が見たもののは平原内に急ごしらえで作られた「土塁の砦」です。ここへ逃げ込んだ李牧を捕えるため、信はこの砦を包囲するのですが・・といった展開です。李牧の最終的なターゲットは「信」をこの土塁砦に引きつけておいて、秦本軍を急襲。王翦の首を狙う作戦のようですが・・・

レビュアーの一言

最初に「結論」的なところから入っておくと、宜安での戦いの後、番吾の戦でも秦軍は趙・李牧軍に大敗し、韓・魏の国境近くまで領土を奪還されています。この当時、秦の軍勢を破ったのは李牧以外には楚の項燕のみで、秦王「政」の覇業の大きな障壁となっています。

このまま李牧が趙の政治・軍事に携わっていれば、秦の中華統一もひょっとしたら成っていないか、韓・魏を中心としたエリアの統一に止まるもっと小規模なものに終わっていたかもしれず、そうなると中国は今のような形ではなく、ヨーロッパのようないくつかの国が並立することとなっていたかもしれないですね。あ、そうなるとアジア中央部の遊牧民族たちが黙ってみているかわからないか・・。

もうひとつネタバレしておくと、史実では王翦は趙との統一戦の後、燕制圧戦、楚制圧戦でも指揮をとっていますので、李牧の企みはうまくいかないのだろうと思われるのですが、どこまで彼を追い詰め、秦軍にダメージを与えたのか次巻以降に期待です。

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