「ほぼ日」経営の秘訣をインタビューで丸裸にする ー 糸井重里・川島蓉子「すいません、ほぼ日の経営」(日経BP社)

伝説的なコピーライターであって、現在は作詞、エッセイ、ゲーム制作など多方面で活躍している糸井重里氏に、なうてのインタビュアーである川島蓉子氏が絡んで、”ほぼ日手帳”で有名な「ほぼ日」について、すみずみまで語らせたのが本書である。
もともと、ユニークな視点と語り口の糸井氏と、テンポよく切れ味のいい質問を投げ込んでくる川島氏とのかけあいであるので、面白くないはずがない。

【構成は】

第一章 ほぼ日と事業
第二章 ほぼ日と人
第三章 ほぼ日と組織
第四章 ほぼ日と上場
第五章 ほぼ日と社長

となっていて、ユニークな商品開発やサービスを考え出すことで定評のある「ほぼ日」のアイデアが生まれる源泉となっている組織、社員とともに仕事の進め方について語られるのが、第一章から第三章まで。
第四章は、通常の「会社組織」とは一風変わっている「ほぼ日」がなぜ株式上場したのか、といった表の話と裏話。第五章は、そんな「ほぼ日」を立ち上げから引っ張ってきた「糸井重里」氏の「経営者」観がとりあげられている。

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アウトプットは、他人との”差別化”を図る近道だ ー 成毛眞「黄金のアウトプット術 インプットした情報を「お金」に変える」(ポプラ新書)

「インプットよりアウトプットが大事だよ」といったことが、先だってレビューした「アウトプット大全」の中で主張されていたのだが、元日本マイクロソフト社長で、現代きっての論客・成毛眞氏が

今の時代、情報収集、勉強をして、知識、教養を溜め込んで満足しているようでは、もうダメだ。
得た情報をどう発信して、自分の血肉とするのか、価値あるものに変えていくのか、もっとわかりやすく言えば、「お金」に変えるのかを意識せよ。
それを強烈に意識してより良質なアウトプットができれば、センスが磨かれ、アイデアが生まれ、人脈が広がり、評価が上がり、必ず成果がついてくることだろう。

として、「効率的なインプット+効果的なアウトプット」といった観点から各種のTipsをアドバイスしてくれるのが本書である。

【構成は】

第1章 アウトプット時代の到来
 ーインプットは、もう終わりだね
第2章 書くアウトプットがいちばんラク
 ー書ければ、必ずお金になる
第3章 やるほど上手くなる!話すアウトプット術
 ー説得、プレゼン、雑談のコツ
第4章 印象を操作する「見た目」のアウトプット術
 ー戦略的ビジュアル系のすすめ
第5章 インプットするなら「知識」ではなく「技法」
 ー日常に潜む優良インプットソース
第6章 アウトプットを極上にする対話術
 ーコミュ力は今からでも上げられる

となっていて、「書く」「話す」といった主要なアウトプットのコツとあわせて、アウトプットを念頭においた「インプット」の手法についても書かれていて、結構欲張ったつくりである。

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定年後ぐらい「わがまま」に生きてみてはどうだ ー 成毛眞「俺たちの定年後ー成毛流・60歳からの生き方指南」(ワニブックスPLUS新書)

定年後を扱った本は、ファイナンシャルプランナーとか、人事コンサルタントとか、「その道」の人によるものが多く、それはそれでちゃんと参考になるものは多いのだが、どうしても「定年」ということが気になる世代向けになるので、その対象となる年齢のバンドも広くなりすぎて、フィット感がいまいちというものが多い。
本書は、成毛眞氏が、団塊世代のあとの「しらけ世代」の定年間際の人をターゲットにしたもの。いつもユニークな視点を提供している同氏のことなので、その切り口もまた、他の定年本とはちょっと違う感を出しているので、普通の定年本をある程度読んでしまった、定年近いビジネスマンにオススメかな。
 
 

【構成は】

 
はじめに
第1章 60歳になったら、新しい人生を歩みだせ
第2章 定年したら、サラリーマン的生活は捨てろ
第3章 近所を歩けば次々と楽しみが見つかる
第4章 60歳からは愛想よくしようなんて考えるな
第5章 自分を拡張する10のツールを手に入れろ
第6章 計画は壮大かつほどほど綿密に立てよ
あとがきにかえて 〜終活はしない〜
 
となっていて、定年本にお決まりの、定年後の再就職や、生活のためのファイナンスの話は薄めである。ファイナンス面では、株は100万円をゲームを楽しむ感覚でやれ、という感じで、この面での具体的なアドバイスを求めてはいけないようだ。
 
むしろ、本書は、そうしたことは他の本で知識を得ておいて、それを踏まえて、心のスキマをどうっちゃるか、どうやって知的な活動を続けていくか。あるいは始めるか、といった視点で読んだほうがよい。
 
 
 

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インプットよりアウトプットが大事 ー 樺沢紫苑「学びを結果に変える アウトプット大全」(sanctuary books)

「学び」というと、いかに効率的に学習するか、いかに知識を取得するする時間をつくるか、あるいは、いかに快適に学べる環境をつくるか、といった「インプット」の側面が重視されるもので、書店にいけば、インプットに関するビジネス書は、わんさと積んである。

これに対して「圧倒的に結果を出し続けている人は決まって、インプットよりアウトプットを重視しています」と、アウトプットの重要性を主張するのが本書。

【構成は】

CHAPTER1 アウトプットの基本法則
CHAPTER2 科学に裏付けられた、伝わる話し方
CHAPTER3 能力を最大限に引き出す書き方
CHAPTER4 圧倒的に結果を出す人の行動力
CHAPTER5 アウトプット力を高める7つのトレーニング法

となっていて、筆者によれば「仕事や勉強をアウトプット中心に切り替えるだけで、あなたの自己成長は飛躍的に加速し、計り知れない能力を発揮することができるのです」ということのようで、本書では「TALK(話す)」「WRITE(書く)」「DO(行動する)」の3つの側面からアウトプットの手法やアウトプットをする環境づくりについてのアドバイスがされている。

 

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日本の「定食文化」が元気なら日本経済も大丈夫 ー 今 柊二「ニッポン定食散歩」(竹書房)

ミシュランガイドの日本版に近くの店が掲載されたなどなど、TV番組や雑誌でもグルメ系の番組や特集の人気は衰えるところをしらないのだが、この美食ブームは、景気の良し悪しに左右される、とても移り気な感じがしている。
これに対し、限られた時間と限られた予算で、できるだけ、大盛りで美味なものを探す「定食愛」は、いつの時代でも色褪せない不動のものであろう。
そんな「定食愛」に突き動かされるように、日本全国の「定食」を食べ歩き、秀逸な定食をレビューしてくれる今柊二さんによる「定食ニッポン」の続編ともいえるのが本書である。

【構成は】

はじめに「定食・散歩でおいしさ倍増」
第1章 山手線一周 定食ぶらぶら散歩
第2章 何度でも通いたい!ワクワク洋食巡り
第3章 みんな大好き生姜焼き定食
第4章 安定の美味しさ チェーン系定食屋&中華屋
第5章 北から南へ定食漫遊 全国食べ歩き
第6章 ステキな一杯を求めて 立ちそば巡礼は続くよ
おわりに「定食と音楽」

となっていて、まずは「定食ニッポン」が刊行されてから10周年を記念しての山手線一周の定食旅に始まり、「洋食ウキウキ」(中公新書ラクレ)の未収録店、定食メニューの”大定番”生姜焼き定食の名店、安価で安定した味の庶民の味方・チェーン店、北は札幌から長崎までの全国の定食の名店が紹介される、という、まあ定番の定食行脚が展開されている。

 

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バンコクの「今昔」をベテランの旅行記で味わってみる ー 下川裕治「週末バンコクでちょっと脱力」

(この記事は2018.12.09にリライトしました)

旅行記あるいは滞在記というのは、時間に大きく影響されるところがあって、特に政変の多い国であると書かれていることが全くあてはまらなくなり、何かの昔話を読んでいるようなことになる恐れがある。この旅行記も例外ではなくて、本書では赤シャツ派と黄シャツ派の対立の時代なのだが、それが行き過ぎて軍によるクーデターを招くなど、これが書かれた頃にはちょっと思いもつかなかったことだと思う。ひょっとすると本書に書かれた場所もすでに荒れているのかもしれない、とは思う。

さりはさりとて、下川風の「タイ」「バンコク」である。風情はゆったりとしていて、喧噪と仕事、浮き世のあれこれに追いまくられている身には、ひとときの涼風、いや小春日和の日差しのような感すらする。

【構成は】

第一章 日本からバンコクへー北回帰線通過を飛行機の座席で祝う
第二章 空港から市内へータイ式倫理観が漂うタクシーは正しくぼる
第三章 ホテルー中級者向きホテルバンコクにようこそ
第四章 運河と寺院ーバンコク最後の運河タクシーじいさん。そして九テラめぐり・・・
第五章 道端夕食ー歩道のフードコートで孤独のグルメ
第六章 酒場ーいつも土の匂いのタイフォーク。レインツリーの二十年
第七章 早朝ー朝飯前のバンコク式マラソン。「ゆるゆる」の一時間三十七分
第八章 最後のテーブルーアジアティックから川沿い食堂。最後は川風に吹かれたい
第九章 バンコク在住者が提案する週末バンコク 

となっていて、氏の他の著作のような「沈没」系ではない。日本、成田からバンコクを訪れ、数日間を過ごし、そして帰国、というパッケージツアーというわけではないけれど、行き帰りの航空便は決まっているが、その間はフリーのツアー、といった感じである。


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アジアのゆったり鉄道旅 ー 下川裕治「不思議列車がアジアを走る」

(この記事は2018.12.09にリライトしました)

おなじみ下川裕治氏の旅本、ひさびさに「鉄道」である。

LCCなど飛行機での旅の話に比べ鉄道の場合は、同じ「移動」であっても時間がゆっくりと流れている気がするし、バスと違って、その移動環境が過酷でないのが文章ゆったり、のびのびとした感覚を与えてくれる。 

氏の旅本のほわんとした感覚は、どちらかというと、タイなどのアジア諸国の「滞在記」でとりわけ顕著なのだが、どうかすると一カ所に沈没してしまう風情が多く、「旅」という移動による視点の変化を旅行記に求める人には、こうした「鉄道の旅」の話の方が口にあうのかもしれない。

【構成は】

第一章 インドネシア ジャカルタ環状線とボゴール線
第二章 中国南疆鉄道 ウルムチからカシュガルへ
第三章 ミャンマー ヤンゴン環状線
第四章 台湾 内湾線と西部幹線旧山線
第五章 タイ国際列車 バンコクからタナレーンへ
第六章 韓国 慶全線と廃線の街 群山
第七章 サハリン ユジノサハリンスクからノグリキへ

となっていて、アジアと言っても、過酷そうな西アジア、南アジアではなく、北東アジアから東南アジアにかけての鉄道旅、となっているのが安心できるところではある。

【注目ポイント】

ただ、安心できるとはいっても、全て「各駅停車」と決めているようなので、中国の高速鉄道や韓国のKTXといった現代的な車両には及びもつかない列車ばかりで、インドネシアのように物売りが乗り込んでくる列車であったりミャンマーの木造でさとうきびが一杯積まれている列車(けして貨車というわけではない)であったりして、もちろん亜熱帯であっても冷房などはなく、アジア特有の「街の雑踏」をそのまま持ち込んだ状態なのである。

そして、そういった混沌の話を読むのが、アームチェア・トラベラーの醍醐味と言ってよく、韓国の列車のように保育園児がたくさん乗り込んできたり、運転席にのせてもらえたりするといったレベルでは少し物足りなく感じるのも事実である。

【レビュアーから一言】

とりたてての美味や、とりたてての冒険談が載っているわけではないが、目的のない旅や子供や家族というしがらみのない旅に出るのがなかなか難しいアームチェア・トラベラーがひととき日常から離れてぼんやりと時をうっちゃるのに良い旅本である。

業界の裏事情的なネタも楽しい「絵画ビジネス」殺人事件をどうぞ ー 一色さゆり「神の値段」(宝島社文庫)

芸術大学出身で、学芸員もしている筆者による「絵画ビジネス」の絡んだミステリーである。一般の人にはとんと縁遠い「絵画ビジネス」の世界を舞台にしたミステリーはあまり見かけたことがないので、絵画業界の裏事情的なところを垣間見せてくれるだけで、設定としては十分魅力的な仕立てである。
 

【構成は】

 
章立てにはなっていないが
 
・主人公がインク・アートの画家・川田無名の専属ギャラリーのブラックで泣きそうな環境にめげずに働くところ
・画廊の主人の永井唯子の死亡と旦那・佐伯が彼女の事業の承継
・無名の未知の大作「1959年」の香港オークションでの入札
・唯子のギャラリーの店仕舞と唯子を殺害した犯人の判明
 
という4つのパーツに分かれている。
主人公は田中佐和子という女性で、美大出身者。就活中に、川田無名の専属ギャラリーの経営者・永井唯子にスカウトされ、唯子のギャラリーの駆け出しから中堅へ移行中の画廊スタッフである。彼女の父親は京都の美術館の館長で、彼女が学芸員にならずにギャラリーに勤務したことを残念に思っている、という設定であるのだが、特段、佐和子に不思議な才能が隠されているわけでもなく、ミステリーのメイン・キャストとしては平凡である。
ただ、本書が異色であるのは、学芸員出身の著者の知識や経験が存分に散りばめられているところで、画家の専属ギャラリーを中心とした、一般には知られていない「絵画ビジネス」を内側から描いている上に、その内容もかなり微細な部分にも及んでいるところは、門外漢には目新しい聞いたこともない知識に目がくらんでくる。
どちらかというと「役柄」より「舞台」で読ませるミステリーといっていいかな。
 
 

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楓の強さと健気さにあらためて感心いたしました ー 成田名璃子「東京すみっこごはんー親子丼に愛を込めて」(光文社文庫)

駅前の再開発騒動で、常連メンバーに中に亀裂が入りそうであった、第二巻の危機を乗り越えてどうにか順調な運営が保たれ始めた「すみっこごはん」。
今巻もいつもと変わらない「人情噺」が展開されていくのだが、奈央と一斗の結婚がそろそろ決着か、というところと、楓が再びいじめにあっているというのが、今巻の心配の種である。
 

【収録は】

 
「念のための酢豚」
「マイ・ファースト鱚」
「明日のためのおにぎり」
「親子丼に愛を込めて」
 
の四編で、「明日のためのおにぎり」のところで、ボクシングジム経営者で人相の悪い「柿本」の口から、再開発は頓挫しそうだ、ということが明らかにされるので、先にネタバレしておく。
 
 
 

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人生設計に「マーケティング理論」を使ってみる ー 永井孝尚「「あなた」という商品を高く売る方法」(NHK出版新書)

「100円のコーラを1000円で売るには」シリーズや「それ、どうやったら売れるんですか」など、マーケティング理論をわかりやすく説明する概説書を提供してくれていた筆者なのだが、今回は、その「マーケティング理論」を自己啓発、あるいは自分のブランディングに応用してみたらどうなるか、という視点でとらえてみたのが本書『永井孝尚「「あなた」という商品を高く売る方法 キャリア戦略をマーケティングから考える」(NHK出版新書)』である。
 

【構成は】

 
はじめにーこれからのビジネスパーソンに必要なのは、「自分という商品づくり」だ
第1章 「競争しない」ための戦略
 ー競争戦略論
第2章 AIに仕事を奪われない方法
 ーイノベーション
第3章 「戦わずして勝つ」のが真の戦略
 ーバリュー・プロポジション
第4章 「あなたの強み」を育てる
 ー強みの構造とセレンディピティ
第5章 リスクを下げて何度も挑戦する
 ーリアルオプション理論
第6章 没頭すれば一流になれる
 ー内発的動機付けとフロー理論
第7章 あなたの物語が奇跡を生み出す
 ーセンスメイキング理論
第8章 失敗があなたの武器になる
 ー仮設検証とアダプト思考
第9章 コンフォートゾーンから脱出せよ
 ーダイナミックケイパビリティ
第10章 「自分のため」から「社会のため」へ
 ーソーシャル・ネットワーク理論と利他的動機づけ
 
となっていて、筆者の「あとがき」によれば
 
本書で、個人の商品づくりについて書いた理由は、二つあります。
一つ目の理由は、自分の将来について悩む人が世の中にとても多いのに、戦略を持っている人が少ないことです。本書で書いたように、マーケティング戦略の考え方を応用すれば、自分という商品づくりの戦略を立てることができます。
 
となっていて、ビジネスパーソンが自らの将来設計を考える際に、「生きがい論」とか「モチベーション」の観点ばかりが強調されることへの警鐘でもあるようだ。
 
そして、筆者の他の著作で、商品開発や製品のブランディング戦略を練るツールとして解説されていた「マーケティング理論」が、ビジネススタイルやライフスタイルを考える際に応用してみると、結構、斬新で、「ほぉ」という感じが生まれてくるのは間違いない。
 

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