【総解説】キングダム60〜61「楚「什攻城」侵攻編」=秦軍は魏との同盟の餌に楚を侵攻する

中国の春秋戦国時代の末期、戦国七雄と呼ばれる七カ国同士の攻防が続く中、中華統一を目指す秦王「嬴政」と、戦争孤児の下僕から、天下一の大将軍を目指す「信」が、ともにその夢の実現を目指していく歴史大スペクタクル「キングダム」シリーズ第60弾~第61弾を総解説します。

前巻までで、魏の第二の都市「鄴」を陥とし、ここを中心とする趙の南西部を支配下においた秦国なのですが、秦を苦しめ続けた「李牧」が国王の不興をかって失脚中に、宿敵「趙」を徹底的に叩くため、魏と一時的に和睦することを決断。和睦の見返りに、秦・魏共同で「楚」へ侵攻します。

あらすじと注目ポイント>魏との同盟の「餌」に楚を侵攻するのか・・

第60巻 秦・魏連合軍の什虎城攻略戦開始

第60巻の構成は

第647話 河南の動き
第648話 大王の問題
第649話 条件次第
第650話 開戦の日
第651話 人気の戦場
第652話 主からの言葉
第653話 共闘せよ
第654話 楚にあらず
第655話 新たな戦術
第656話 興味がある
第657話 解放の意味

となっていて、前巻で郭開と前王の悼襄王の企みによって、頼みの綱の太子「嘉」ではなく、末子の「遷」に王位が継がれたことによって、李牧は政権の座への復活の道を閉ざされ、反逆者として追われることになります。

李牧の腹心・舜水樹は李牧軍をまとめて邯鄲をつき、太子「嘉」をたててクーデーターをおこすか、李牧が王朝を簒奪するかそそのかすのですが、李牧はのりません。

彼が向かったのは半独立的な立場を保っている司馬尚のいる「青歌」、ここに潜伏し、時期を待つことを選択します。

秦のほうでは、再び「呂不韋」問題が再燃。彼のもとに元丞相の竭氏の残党、嫪毐と太后の残党が吹き寄せられ、もとの呂不韋の勢力と反対勢力を結集している。政は、呂不韋と直に話しあうが、呂不韋の政に対する忠告とそれを聞いた呂不韋がとった道は・・という筋立てです。

膠着状態にある中華統一戦の緒をつけるため、昌平君がとった手は秦と魏の同盟です。魏に楚の什虎城を渡すことを条件に期限付きの同盟を結び、秦にとっての仇敵・趙の攻略に専念するという作戦。

少しネタバレをすると、史実では企みはあったものの秦・魏同盟は途中で頓挫しているのですが、このシリーズのほうでは、秦・魏同盟が結ばれ、共同で什虎城を攻略することになります。

対抗する楚軍の主力は什虎城の守将「満羽」と「千斗雲」+軍師「寿胡王」、これに「蒙武」と「騰」の秦軍に呉鳳明率いる魏軍が加わり、真っ向からぶつかります。

もっとも、今まで激しい領土争いを繰り広げ、六カ国軍との攻防戦では呉鳳明率いる魏軍によって函谷関が破られるかも、といったところまで追い詰められていたこともあり、双方が相手に疑いを持ちながら、手を結んでいる、という状況にあることは間違いありません。

戦いのほうは、秦と魏の有名どころが率いる軍なので、楚の無名に近い将軍と軍師が率いる什虎城軍は簡単に蹴散らされると思われていたのですが、互角の戦いを繰り広げます。

この状況を見て、軍師・呉鳳明は自らの「魏軍」を助攻として、楚軍を防ぎ、秦軍の攻撃を助けるという「急ごしらえの連合軍」では難しい戦術を展開します。このあたりの冴えはさすがです。

そして、戦闘のメインイベントは、蒙武と満羽の一騎打ちとなっていくのですが、秦軍でも個人の武勇では、一、二を争う蒙武が満羽によって落馬させられるという事態がおき・・という展開です。

十虎城兵が秦・魏連合軍と互角に戦えている秘密は、満羽の言う

にあるようなのですが、詳細は原書のほうで。

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第61巻 羌瘣の命を狙って、新・蚩尤「羌礼」がやってきた

第61巻の構成は

第658話 一つの覚悟
第659話 次会う日まで
第660話 善か悪か
第661話 利有り
第662話 苦戦の理由
第663話 羌瘣の噂
第664話 妹分
第665話 礼の目的
第666話 闇の淵
第667話 三日後
第668話 裏切り

となっていて、戦闘開始から、秦・魏連合軍と互角の戦いをしてきた什虎城兵軍なのですが、ここで突然、寿胡王は楚兵の退却を命じます。

しかし、城攻めのほうは魏軍の持ち込んできた井闌車が城壁に仕掛けられ、あっけなく落城してしまう、という予想外の展開をします。

ここで、退却先を失った楚軍は、秦の騰軍の侵入を許してしまい、軍師・寿胡王が捕虜となってしまいます。騰が彼の首を切らずに捕虜としたのは、什虎城兵の将兵が秦・魏連合軍と互角に戦える「秘密」を聞き出すためでした。

彼の口からは、満羽、千斗雲二人とも、「楚」に滅ぼされた汨と暦という小国の将軍で、ふたつの国が陥落しなかったのは、二人の武勇ゆえであったのですが、楚との絶え間のない戦乱によって国土は荒廃し、国民の多くが戦士していきます。このため、汨王は楚に降伏するのですが、満羽は義勇軍を率いて楚に抵抗を続けます。しかし、抵抗戦の中で、満羽が斃した兵士たちは楚の兵士だけでなく、元汨国の若者も含まれていて・・という話が語られていきます。

なんにせよ、騰・呉鳳明連合軍によって、魏と約束していた「什虎城」周辺の地域を魏領とすることに成功し「銀・秦同盟」は成立。秦軍は後顧の憂いなく「趙」との対決へ集中できる体制は整ったことになります。

ただ、この同盟も3年間という期限付き。騰の

という発言と呉鳳明の

という発言が、同盟関係が「かりそめ」であることをよく現していますね。

ここで、物語のほうは「羌瘣」の話に移ります。

第59巻での秦・趙戦争の際、「龐煖」との戦いであの世にいきかけた信を蘇生させた秘術の反作用で、羌瘣はその力を減衰させています。

そこへあらわれたのが、一族の「羌礼」。彼女は飛信隊に加わり、その剣技で敵を蹴散らしていくのですが、「殺戮」することを人生の目的とする「蚩尤」に変身していることがわかります。その秘密は、羌瘣が前「蚩尤」であった幽連を斃したことが里に知れ、新しい「蚩尤」を決めるための「祭」の儀式で、羌礼の親友「羌識」が死んだことにあるようなのですが・・、といった展開です。

羌礼の働きによって趙軍に押し込まれていた前線を押し上げることに成功するのですが、投降兵を斬ったりと蛮行や軍律違反が続くため、歩兵長の崇源と対立し、一触即発の状態となります。

ここで止めに入った羌瘣に羌礼の本当の目的は、一族から抜けた羌瘣を殺すことにあると告げ、ここから二人の死を賭けたバトルが始まります。

さらに第62巻収録の「第669話 識」「第670話 致命的なこと」では、その戦いの中で「祭」の儀式の中で、幼馴染の羌識がわざと羌礼に自分を殺させたことを彼女から告白されるのですが、羌瘣は羌識が羌礼に告げた本当の気持ちを思い出させ・・といった展開です。Amazonの書評では「青春ものが過ぎる」と評判のよくないものもあるのですが、当方は、これはこれでジャンプマンガらしくで良いと思います。

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レビュアーの一言>楚の亡国の原因は、国の成立過程にある

満羽の故国であった「汨」国が実在したかどうかは「キングダム第657話考察・解放の意味」というnoteで調査がされていて、歴史上は実在しないものの現在「汨羅市」あたりにあった「罗」という国では、と推測されています。

もともと楚の国は、春秋戦国時代を通じて、小国を併合しながら巨大化した国で、王族や豪族の勢力が強く、他の戦国6カ国に比べて国王の権力基盤がぜい弱なところなので、滅亡させた国の兵が反乱を起こさないよう、国境近くの「小城」に押し込んで封じ込めておくこともあり得るような気がします。

ただ、滅ぼした国の軍師や武将をあちこちに押し込めておくと、今回のように他国が攻め込んできたときに、ぽろぽろとこぼれていく城市がでてきそうな気がします。ひょっとすると、項燕などの剛勇の武将を抱えながら、結局、秦に敗れたのはこういうことも原因だったのかもしれません。

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