【総解説】キングダム49〜50「趙「鄴」攻略戦」その2=秦と趙の朱海平原と橑陽での激戦開始

中国の春秋戦国時代の末期、戦国七雄と呼ばれる七カ国同士の攻防が続く中、中華統一を目指す秦王「嬴政」と、戦争孤児の下僕から、天下一の大将軍を目指す「信」が、ともにその夢の実現を目指していく歴史大スペクタクル「キングダム」シリーズ第49弾~第50弾を総解説します。

趙の国都圏の関所ともいえる「列尾」を陥落させたものの、そこに仕掛けられた李牧の罠に気づいた王翦将軍が「鄴」攻略の奇手をうったのが前巻。「鄴」の包囲を桓騎に任せ、楊端和によって橑陽攻めをさせつつ、朱海平原での李牧との直接対決が始まります。

あらすじと注目ポイント>秦と趙の朱海平原と橑陽での激戦開始

第49巻 李牧の奇襲で崩れる秦の左翼陣を蒙恬がリカバリー

第49巻の構成は

第526話 槍と鉄槌
第527話 橑陽の牙
第528話 犬戎の末裔
第529話 端和の勇
第530話 必殺の別動隊
第531話 潮目
第532話 信の刃
第533話 失われた士気
第534話 日没まで
第535話 格不足
第536話 二度目の初日

となっていて、朱海平原で王翦本軍と李巻本軍がぶつかり合い始めた頃、そこから南西の地で、趙の「橑陽」軍と秦の楊端和軍との戦いが始まります。

しかし、遅れて到着した橑陽軍の総大将「舜水樹」が命じたのは「退却」。それも太行山脈の麓に築かれた「橑陽城」まで退いて、楊端和軍をそこまでおびき寄せていきます。

この「橑陽城」を根拠地にしているのは、かつて中華を治めていた「周」王朝を滅ぼした犬戎の末裔たち。周を滅ぼした後、北方へ移動せず、中華に残った一族が趙によって、この「橑陽」周辺に自治領を形成していたという設定で、この犬戎の支配地に秦の楊端和たち山の民軍を引き込み、犬戎のロゾ王にぶつける作戦です。悪く言うと、異民族同士でつぶしあいをさせようという魂胆ですね。

一方、朱海平原のほうでは、双方の本陣がぶつかり合う中、王翦は「信」に別働隊となって本陣にいる紀彗を襲撃し仕留めるよう密命を下します。飛信隊は、黒羊丘で斃された劉冬の元親衛隊たちの猛反撃を受けながらも、真っ向勝負で進んでいきます。

しかし、この本陣同士がぶつかり合う乱戦を利用して奇襲をかけようと考えるのは、王翦だけではなく、趙軍は総大将・李牧みずからが兵を率いて出撃。王翦の第二武将・麻鉱を仕留めてしまいます。

軍の中心・麻鉱を斃され、秦軍の左翼勢は一気に形勢不利となり、このまま崩壊してしまうと予測されたのですが、これをくい止めたのが、蒙恬です。彼は崩れかかっている麻鉱軍の真ん中に躍り込み、麻鉱が生きていると嘘を広め、さらには彼がピンチの時に自軍をふるいたたせた「立って戦え」という言葉を思い出させ、なんとか左翼勢を持ちこたえさせます。

この功績により、その夜、蒙恬は臨時的に「将軍」に格上げ、左翼勢の全指揮をとることとなります。

ここで、朱海平原の戦いは二日目に入ります。

戦の初日では、秦の左翼の中心・麻鉱が趙軍によって討たれ、あわや総崩れというところまで追い詰められたのですが、趙軍は、二日目は同じ混乱を右翼でも起こそうと考えています。その標的となるのは主将の亜光ではなく「王賁」・・といった展開で次巻へ続きます。

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第50巻 信は藺相如の遺臣・堯雲と対決。本能型同士の対決の行方は?

第50巻の構成は

第537話 大将軍の景色
第538話 亜花錦
第539話 戦の相手
第540話 消耗戦
第541話 預言の地
第542話 楔
第543話 主戦場へ
第544話 新人戦
第545話 直感
第546話 大炎の地
第547話 矛の嘆き

となっていて、馬南慈と岳鳳の標的となった王賁は囲んでくる趙軍の隙間をついて脱出を図ります。

持ち前の突進力で密集した趙軍を抜け左旋回して、本隊から援軍としてかけつけた亜光援軍に逃げ込もうとしていると趙軍は芳区したのですが、なんと王賁は直進。趙の本陣を大きく回り込み、趙の右翼軍の左端を裏側から急襲し、趙軍を左端から混乱に陥れます。

一方、橑陽戦のほうでは、双方の勢いが拮抗する中、第一線から離れて戦場を調べていた舜水樹によって秦軍への大打撃がくらわされます。地下道をつたって、隠密裡に「壁」軍の食糧庫近くまで潜入し、貯蔵していた食糧の約半分を焼失させてしまいます。限られた兵糧しか持たない、秦軍にはボディーブローのように効いてくる攻撃です。

場面は代わり、朱海平原の三日目の戦いに、趙の三大天・藺相如の「武」を担っていた「堯雲」と藺相如に「智謀」を教え込まれた「趙我龍」が登場します。彼らは十数年前に病死した藺相如の遺志を受け継いで、中華を統一しようと考える者を屠るために、李牧の要請によって表舞台にでてきたというわけで、早速、秦軍の右翼を蹴散らしていきます。

この勢いに右翼にいる玊鳳隊も粉砕されていくのですが、このピンチを救ったのは、王翦将軍により右翼に派遣されていた「信」たち飛信隊です。王翦はこの朱原平原の戦いのキーポイントは、この右翼にあると見抜いているようです。

王賁のピンチを救った信だったのですが、玊鳳隊に替わって堯雲軍と対戦した飛信隊の作戦はことごとく裏目にでて、防戦一方になってきます。打つ手が見抜かれ続ける軍師・貂は焦りまくるのですが、ここで堯雲が”本能”型の武将であることを見抜いた羌瘣の提案で、「信」自らが隊の指揮をとることにします。

指示自体はその場しのぎの連続なのですが、これによってなんとか、堯雲の繰り出す攻めに対応していき、堯雲が、渕副長の持ち場を狙って、そこを切り口にして飛信隊を切り崩していこうとするのを見抜きます。

ただ、一番の手柄は、「信」の勘で、この主攻に迷わされることなく、堯雲自らによる飛信隊の「本陣急襲」を見抜いたところですね。暁雲の急襲には「信」が応じ、本隊の攻めは「羌瘣」が対応するという二重の防衛陣で、飛信隊へ猛攻を加え続けていた堯雲軍を防ぎ切ることに成功します。

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レビュアーの一言>犬戎王・ロゾへの代償「羊の肉」は本当は何?

李牧の幕僚・舜水樹は、楊端和軍を「橑陽城」の近くまでおびき寄せたところで、「橑陽城」を根城にしている犬戎王・ロゾに趙に協力して秦軍と戦うよう説得し、味方に引き入れるのですが、その代償として舜水樹が約束するのが

ということで、かなりショボい代償なので、なぜロゾが納得したのか疑問視する声をあちこちに見かけます。
実はこの前段に、李牧は毎年、橑陽へやってきて「雁門」のうまい羊をふるまってくれるとロゾが言っています。「雁門」というのは中国の山西省の北部に昔からある北方からの異民族を防ぐ関所で、李牧は趙の将軍として長く北方の匈奴と戦ったきたことを考えると、ロゾに提供されるのは、単なる「羊肉」ではなく、それが象徴する匈奴からの戦利品、財宝であったり、戦で捕虜にした匈奴の民のことでは、と推測するところです。そこには当然、匈奴の美女も入っていたのかも・・。舜水樹も匈奴出身であるようですし、李牧の勢力の源泉は匈奴からの略奪品にあるのかもしれません。

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