月別アーカイブ: 2016年6月

たかぎなおこ「ひとり暮らしな日々」

私のような地方の年配者は、学生時代やしばらくの独身時代を過ぎると、「一人暮らし」という単語とは程遠くなり、子どもの大学進学で再び遭遇。そして自らの単身赴任生活で、我が事として実感というのがよくあるところ。

当方も今年春から、そういった境遇となって、一人でいることの気楽さと所在なさを味わいながら、ふとKindleのセールで買ったのが本書。

構成は

はじめに

どきどきお部屋探し

ひとり暮らしの契約書

玄関開けたら3歩でベッド

ひとり暮らしあるある劇場

幸せのひとりごはん

自分流インテリア

ひとり暮らしな日々

 

となっていて、筆者が地方から「絵を描いて暮らしたい」と今までのの仕事も辞めて上京し、学校に再入学し、今にいたるまでの、借家遍歴や定職がないといろいろ苦労する家探し、そして少々雑駁ではある一人暮らしの日々の雑記と思い出、というところが内容。

 

まあ、この種のコミックは、寝っ転がって、「あ〜、あるよな」といった風にお気楽に楽しむのがよろしくて、あれこれ小難しいことを考えるのはよくない。若いころの自分の姿を思い出しながら、一人でポテチでも片手にだらり、と読むのがよろしいですな。

近藤史恵「キアズマ」(新潮社)

「キアズマ」とは染色体の交換が起こった部位をさす、といったことは本書の冒頭にあって、ちょっと面食らうのだが、どうやら「他者との交流」とか「人と人との接点」といったことと考えればよいらしい。

 

で、本書は近藤史恵のライフワークっぽくなってきた「自転車小説」の中で、謎解きやレースのどろっとしたかけひきとかがかなり少ない、自転車スポーツの青春小説といったもので、読む口は結構爽やか。

 

粗筋はというと、大学に入りたてのフランスからの帰国子女である「岸田正樹」が、大学へモペット(原付きにペダルがついている「原動機月自転車」といったものらしい)で通学途上に、大学の自転車部のロードバイクと事故ってしまう。それが縁で、自転車部に勧誘され、意外とロードバイクの才能があることが発見され、レースに出、といった筋立て。

そして、こういうスポーツ青春小説は、というと、クラブ内の確執があって、他校のライバルとの切磋琢磨があって、はてまたほぼ同い年か少し年上の、どういうわけか美人との恋愛っぽいやりとりがあって、といったものだが、残念ながら、そういったものはほとんどない。

かといって、ストイックな求道風かというと、そこは「ロードバイク」という今風なものを題材にしているだけあってそういうわけでもない。「ロードバイク」と「ロードレース」の魅力に順々と引き寄せられながら、自らの精神も脱皮・成長していくという、青春小説の「髄」のところはきちんとおさえてあるので、むしろ余計な不純物のない、削ぎ落とされた風合いで、良質の「スピリッツ」をキンと冷やして飲み干すような心地ではある。

 

するすると読めるスポーツ青春小説でありますな。気分がクサクサしている時の良薬でありますかも。

米子のバーガーフォーラムで御当地バーガーを食す

毎年10月頃に鳥取県の大山町で「とっとりバーガーフェスタ」という全国の御当地ハンバーガーコンテストが開催されるのだが、その前哨戦といもいうような「ご当地バーガーフォーラム」にやってきた。

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フォーラム自体は、トークセッションあり、パネルディスカッションありという、まあ普通の構成であるのだが、呼び物はご当地バーガーの試食ができること。

ナッツを散らしたものや

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宮城のホタテと鳥取の牛肉をコラボさせたもの

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と数々あるのだが、変わり種は、蒸した餅米をライス・バンズにした「禅」バーガー。鳥取県の大山町大山寺というお寺さんの住職さんの一人がつくっている。

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中身はこんな感じ

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餅米を使っているので、少々モッチリ感が強く、好みが分かれるところかもしれないが、野菜は山菜が使ってあったり変わり種として一回は食してみてもよい。腹持ちはかなりよいですな。

今年、日本一を目指しているという。昨年二位の「奥日野コンフィバーガー」は列が長くて残念ながら食せなかったので、これはお店で食すか、と会場を後にしたのでありました。

日南町 アメダス茶屋で日替わりのランチを食した

出張で鳥取県の日南町を訪れた。「アメダス茶屋」という農家レストランで昼時をあわせることとして、日替わりランチ1200円を予約しておいた。もともとは日南町茶屋というところに気象庁の気象観測システム「アメダス」があることから名付けられたもので、茶屋は鳥取県の冬場の天気予報では県下の最低気温を叩き出すことで定番の地。

仕事で店の前を行き交うことはあるのだが、食事をするのは初。

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店はテーブル4つぐらいの小ぶりなふうなのだが、中国山地のてっぺんに近いところに位置する店としては、まずまず広い方というべきであろう。

まず出てきたのは前菜。肉の種類は不明であるがかなり濃厚なお肉。ズッキーニにハムを載せたものも同様であるが、豆と玉ねぎとマカロニのマリネっぽいのはあっさり目。

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半藤一利「日本型リーダーはなぜ失敗するのか」(文芸春秋)

昭和史をはじめ近世日本の歴史評論の名手である半藤一利氏によるリーダー論。

リーダー論というものは、ビジネスの現場には付き物で、大概のビジネスマンが、出処進退あるいは何か組織内の自分の立ち位置や行動を起こす時や上司の批評をする時にそこかしこに顔を出してくるものではある。そういう時によくあるのが「戦国武将」や「三国志の英雄」になぞらえて人物批評をしたり行動を模索したりといったところで、太平洋戦争の際の◯◯司令官に、なぞという人はあまりいない。

構成は

第一章 「リーダーシップ」の成立したとき

第二章 「参謀とは何か」を考える

第三章  日本の参謀のタイプ

第四章 太平洋戦争にみるリーダーシップⅠ

第五章 太平洋戦争に見るリーダーシップⅡ

となっていて、近代史の語り手らしく、太平洋戦争の際の陸軍・海軍のリーダーたちを引っ張り出してきた、どちらかといえば反面教師的なリーダー論といっていい。

そのあたりは「参謀が大事」という日本型リーダー論の無責任な側面を指摘するとともに、「参謀」を『「軍事オタク養成機関」「軍事オタク」が優等生になった、と考えていい』(P85)といったあたりや日本の場合参謀の任命権は参謀総長がもっていたがアメリカでは大統領が軍事統帥権をもっていて強力なリーダーシップを発揮できた(P91)

といったところや

山本五十六連合艦隊司令官の欠点は「真の目的を部下と共有」できなかった点で、真珠湾攻撃を何のためにやるのかということを、もし機動部隊の指揮官に言い、その参謀たちにも言い、さらには作戦を統轄する軍令部の参謀たちにもキチッと伝えていたならば、太平洋戦争緒戦の戦い方は自ずと違っていたでしょう

といったあたりはかなり手厳しいのであるが、太平洋戦争という日本が負けた戦の中に数々のリーダーのあり方の反省や示唆を捜すのは「失敗に学ぶ」という意味で気が重くはあるが大事であろう。

本書によるリーダーの条件は

・最大に仕事は決断にあり

・明確な目標を示せ

・焦点に位置せよ

・情報は確実に伝えよ

・規格化された理論にすがるな

・部下には最大限の任務の遂行を求めよ

でという。太平洋戦争時の失敗例を噛み砕きながら、リーダーの姿を考えてみるのも、ちょっと仕事の行く末に悩んでいる時にはよろしいかと。