カテゴリー別アーカイブ: ヤマザキマリ

イタリアと日本が混合された「人生指南」 ー ヤマザキ・マリ「とらわれない生き方」

「テルマエ・ロマエ」や「プリニウス」など古代ローマを舞台にしたマンガで、一躍売れっ子になったヤマザキ・マリさんの人生の悩み相談、人生指南書が本書『「とらわれない生き方 悩める日本女性のための人生指南書」(メディアファクトリー)』である。
筆者は、若い頃単身渡欧し、イタリアでマンガを書きながら、イタリア人の詩人と結婚→離婚、その後、イタリア人研究者と結婚、彼のとても「イタリア的」な家族と同居しながら、子育てをし、という、かなり「濃い」人生を送ってきている人なので、その「人生相談」も、とても面白く、副題に「悩める日本女性もための」とあるのだが、女性専用にしておくのはもったいない。

【構成は】

1章 自分の中の「マザー」を見つける
2章 愛するほどに「空い」は満ちてくる
3章 女こそ人生を「楽しむ」責任がある
4章 人生の処方箋と「タガ」の外し方
となっていて、主に、1章が「仕事」、2章が「恋愛と結婚」、3章が「子育て」、4章が「人生全般」についての人生相談である。

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ローマの大災害の陰に、いろんな者たちが蠢くー ヤマザキ・マリ「プリニウス 7」

ローマ時代の博物学者プリニウスを主人公にした、ヤマザキ・マリによるローマものの第7巻が本訴『ヤマザキ・マリ「プリニウス 7」(新潮社)』。今巻は、第6巻の終わりのローマの大火が起きたあとを受けての、焼け果てたローマの「混沌」ぶりが主題。

目次は

ユピテル
シレノス
タツノオトシゴ
パンテオン
ピラミス
バステト
ピソ

となっているんだが、あいかわらず、読んだ後に目次の意味がわかるといった構造なので、紹介しても何の参考にもならんな、と反省。

【あらすじ】

展開的には、大火後のローマでの皇帝ネロほか宮廷内の動きと、北アフリカに留まっているプリニウス一行の旅の状況が並行する。

まず、ローマのほうでは、火事が収まったように見えて、あちこち類焼している状況の中で、キリスト教徒らしい人物の放火を仕掛けたりする暗躍がある中で、皇帝ネロは、当初、焼け出された市民への食料の提供などの善政を敷いておきながら、うかうかと宮殿の再建という甘い言葉にのっかってしまう、「お坊ちゃん皇帝」ぶりを発揮する。

一方で北アフリカに留まっていたプリニウス一行は、ローマ大火の報を受けて単独で帰ろうとする護衛フェリクスの受難や、エジプトのピラミッドの内部探検で現地部族に襲われたり、と事件はあるのだが、やはりローマの火事後の大騒動には負ける「サイドメニュー的展開」

最後の方は、プリニウス一行は現地部族の襲撃を逃れてアレキサンドリア行を目指すところと、ローマの方は、ネロの「トンデモ皇帝」ぶりに我慢ならなくなって、「ピソ」が暗殺を謀むが発覚するところまで。次巻あたりは、ネロの没落あたりまでいくんであろうか。

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プリニウスを通して描かれる「ローマ帝国」の健全さと退廃 — ヤマザキマリ「プリニウス」(新潮社)1〜6

テルマエ・ロマエで一挙に人気作家となった、ヤマザキマリ氏がとり・みき氏と組んでのローマもの。
個性ある二人の合作で、しかも題材が、稀代の博物学者プリニウスである。
物語はヴェスヴィオ火山の噴火の場面から始まるのだが、これは全体のプロローグ。第一巻は、プリニウスの書記官となるエウクレスと、噴火直後のエトナ山の麓で出会うところから始まる。
いまのところ、6巻までしか出版されていないので、全体の展開をどうこういえないのだが、プリニウスの諸国遍歴の旅の物語というよりも、プリニウスの歩く、特にポンペイを廃墟にしたヴェスヴィオ山の噴火をはじめとするローマとその周辺地域の自然と、皇帝ネロに代表される都市国家ローマの退廃が、このシリーズの主人公であるような感じ。
ただ、それらを演ずる役者たちが、プリニウスとその護衛官フェリクス、書記官エウレクスをはじめとして、哲学者にして大金持ちのセネカ、皇帝ネロ、その妻のポッペイアなどなど。塩野七生氏が火をつけた「ローマ好き」の人々には、とんでもなく垂涎モノには違いない。しかも、山や野原、街の佇まいなど、背景描写が、もう本当に精緻で唸らせられること多し。
さらには、ウニコルズス(ユニコーン)や頭がなく口と目が胸についているブレミュアエ族とか革の紐のようなヒマントポデス族とか、妙ちきりんなものもでてくるので、諸星大二郎ファンにも向いているのかもしれない。
なにはともあれ、「アナザー・ローマ人の物語」的な奇妙な魅力に溢れたシリーズであることには間違いないですな。