ヤマザキマリ」カテゴリーアーカイブ

プリニウスはアフリカへ、ネロはローマ。物語は二つに引き裂かれる ー ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス 6」

ネロはローマに留まり、プリニウスはアフリカへ、ということで、物語はここで大きく二つの流れになっていく。二つに分かれる物語の様子を反映しているかのように、プリニウスのほうは、地中海の青い海を経て、太陽の照りつける白い砂漠の中を行くに対し、ネロのほうは、明るく見えて実は陰の多い街なかでの物語の展開である。

プリニウス6 (バンチコミックス45プレミアム)
ヤマザキマリ とり・みき
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そしてプリニウスの旅は「アフリカ」を目指す ー ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス 5」

ポンペイで地震にあってローマへ引き返し、しばらくは動きがないのかな、と思いきや、あちこちを旅してきた商人の話に触発されたのか、再び旅に出るプリニウス一行である。

今回の旅は、いままでのイタリア半島の中、つまりはローマ帝国のど真ん中だけではなく、エジプトも含めたアフリカなどの「属州」まで足を伸ばす、当時の「大旅行」である。

一方、正妃・オクタヴィアを殺害した後、ポッパエアは精神状態があまりよろしくない様子なのであるが、今巻の女性のメインキャストは、彼女ではなくて、水道技師や羊毛業を営むローマの「元気で気の強い」女性たちである。

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カンパニアの地震からプリニウスは助かるが、ローマの闇はもっと深くなる ー ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス 4」

前巻でローマの悪い空気を避けて、南方で旅に出たプリニウス一行は、カンパニアで、温泉が急に湧いたり、羊が大量死したり、といった現象に出逢い不審に思っていたところ、ポンペイで大地震に見舞われるのが今巻のはじまり。

水道が壊れて水を求めて多くの人が争ったり、肉親が瓦礫の下になって呆然としている人があふれていたり、と災害の被害は昔も今とかわらず相当なものであるのだが、商売を続けるために近くの宿屋とそこにいるロバや馬を独占しようとする毛織物商人といった風景はちょっと今では想像もできないところであろう。

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プリニウスたちの再びの旅を「火山」が待ち構える ー ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス 3」(バンチコミックス)

ローマに帰還してから鬱屈が貯まるとともに、持病の喘息も悪化してきたプリニウスが、フェリクスを伴に、再びローマを離れて旅にでるのが今巻。

旅する方向は「カンパニア」の方向とあるので、今でいえばナポリの方向である。ナポリの近くには火山噴火の火砕流で滅んだ「ポンペイ」があり、この物語の底に流れる「ヴェスヴィオ火山の噴火」が時折顔をだす展開ですね。

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ネロとポッパエアは「ローマ」の退廃の象徴か ー ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス 2」

エトナ山の噴火の調査の後、カティアの町滞在中に、皇帝ネロによってローマに呼び戻されたプリニウス一行、居心地の悪さを感じながら送るローマでの生活が描かれるのが本巻。

当時、世界有数の大都市であったローマの街の様子が細かに描かれているので、そのあたりも今巻の魅力であろう。例えば、最先端技術であった「水道」であるとか、プリニウスの
従者・フェリクスの家族の住む「インスラ」と呼ばれた高層アパート、あるいは盛り場の裏道に死体が転がっているなど、雰囲気のある描写が続きますね。

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古代ローマ時代の「百科事典」をつくった男の物語がスタート ー ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス 1」(バンチコミックス)

古代ローマ時代の政治家で、天文、塵、動植物、鉱物、地理などなど当時の世界の情報を集めた「博物誌」をまとめた「プリニウス」とローマに放火して焼き尽くし、「暗君」の見本のように扱われている「ネロ」をメインキャストにした、古代ローマの「叙事詩的」物語の開始である。

筆者は「テルマエ・ロマエ」で古代ローマと現代日本を「銭湯」を媒介に行き来する、建築技師・ルシウスを主人公した物語で、コメディ的なローマの物語で一世を風靡したのだが、今回は少々シリアスな「ローマ」の物語である。

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ポッパエアが妊娠し、「ネロ」のローマ帝国も安泰か、と思いきや・・ ー ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス 8」(バンチコミックス)

古代ローマ時代のが博物学者「プリニウス」をメインキャストにすえて、当時の地中海世界の様子や、ネロ時代のロー目帝国の盛衰を描いた本シリーズも第8巻目となった。

ローマの大火の後の混乱はようやく静まってきたのだが、帝国の支配権を手に入れるために、ティゲリヌスの暗躍は続いていて、まだまだ「泰平」とはいえないローマ帝国とそんな情勢は知ったこっちゃないと北アフリカからクレタ、ロードスへの旅を続ける「プリニウス一行」が描かれるのが本巻である。

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古代ローマ人に”とりあえず、風呂!”の「生き方」を学ぶ ー ヤマザキマリ「仕事にしばられない生き方」(小学館新書)

古代ローマ帝国と現代の日本を舞台にしたタイムスリップもの的お風呂マンガ「テルマエ・ロマエ」で大ヒットし、現在は、同じく古代ローマの政治家にして博物学者の「プリニウス」を主人公したマンガを連載中の筆者が、自らの半生を振り返りつつ「仕事」「お金」についてのあれこれの雑感をまとめているのが本書。

【構成は】

はじめにーどんな場所でも行きていける私になりたくて
序章 やりたいことで生きていく
 ー母・量子の場合
第1章 働くこと、自立すること
 ージュゼッペとの日々
第2章 持てる力をすべて使って
 ーテルマエ前夜
第3章 風呂か、それとも戦争か
 ー先人たちが教えてくれること
第4章 私の働き方改革
 ートラブルから学んだこと
第5章 仕事とお金にしばられない生き方

となっていて、第1章から第2章までは、、演奏家で自由な母親と妹との幼少時代にはじまり、イタリアへの絵画留学、そこで知り合った詩人・ジュゼッペとの同棲、そして、彼と別れた後、現在は小さな出版社を経営する、歴史研究家のペッピーノとの結婚と息子・デルスの成長といった、彼女の半生記的なところ。
第3章が、「テルマエ・ロマエ」などのローマものを通じて筆者が考えた、皇帝ネロやプリニウス、ハドリアヌス帝の生き方と、古代ローマ人の「風呂好き」についての考察。
第4章が、「テルマエ・ロマエ」の大ヒットによって生じた生活や周りの環境の大変化をどう乗り越えたかといったあたり。
そして、最後の第5章が、前章までを受ける形で、お金や仕事、あるいは人生全般についての雑感という形でまとめられていて、どちらかというと主義主張を述べるというより、エッセイに近いものであるので、拾い読みをしていくよりも、読み飛ばしでもいいから、ざっくりと最初から最後に向かって読んでいく、という読み方が良いようですね。

 

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イタリアと日本が混合された「人生指南」 ー ヤマザキ・マリ「とらわれない生き方」

「テルマエ・ロマエ」や「プリニウス」など古代ローマを舞台にしたマンガで、一躍売れっ子になったヤマザキ・マリさんの人生の悩み相談、人生指南書が本書『「とらわれない生き方 悩める日本女性のための人生指南書」(メディアファクトリー)』である。
筆者は、若い頃単身渡欧し、イタリアでマンガを書きながら、イタリア人の詩人と結婚→離婚、その後、イタリア人研究者と結婚、彼のとても「イタリア的」な家族と同居しながら、子育てをし、という、かなり「濃い」人生を送ってきている人なので、その「人生相談」も、とても面白く、副題に「悩める日本女性もための」とあるのだが、女性専用にしておくのはもったいない。

【構成は】

1章 自分の中の「マザー」を見つける
2章 愛するほどに「空い」は満ちてくる
3章 女こそ人生を「楽しむ」責任がある
4章 人生の処方箋と「タガ」の外し方
となっていて、主に、1章が「仕事」、2章が「恋愛と結婚」、3章が「子育て」、4章が「人生全般」についての人生相談である。

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ローマの大災害の陰に、いろんな者たちが蠢くー ヤマザキ・マリ「プリニウス 7」

ローマ時代の博物学者プリニウスを主人公にした、ヤマザキ・マリによるローマものの第7巻が本訴『ヤマザキ・マリ「プリニウス 7」(新潮社)』。今巻は、第6巻の終わりのローマの大火が起きたあとを受けての、焼け果てたローマの「混沌」ぶりが主題。

目次は

ユピテル
シレノス
タツノオトシゴ
パンテオン
ピラミス
バステト
ピソ

となっているんだが、あいかわらず、読んだ後に目次の意味がわかるといった構造なので、紹介しても何の参考にもならんな、と反省。

【あらすじ】

展開的には、大火後のローマでの皇帝ネロほか宮廷内の動きと、北アフリカに留まっているプリニウス一行の旅の状況が並行する。

まず、ローマのほうでは、火事が収まったように見えて、あちこち類焼している状況の中で、キリスト教徒らしい人物の放火を仕掛けたりする暗躍がある中で、皇帝ネロは、当初、焼け出された市民への食料の提供などの善政を敷いておきながら、うかうかと宮殿の再建という甘い言葉にのっかってしまう、「お坊ちゃん皇帝」ぶりを発揮する。

一方で北アフリカに留まっていたプリニウス一行は、ローマ大火の報を受けて単独で帰ろうとする護衛フェリクスの受難や、エジプトのピラミッドの内部探検で現地部族に襲われたり、と事件はあるのだが、やはりローマの火事後の大騒動には負ける「サイドメニュー的展開」

最後の方は、プリニウス一行は現地部族の襲撃を逃れてアレキサンドリア行を目指すところと、ローマの方は、ネロの「トンデモ皇帝」ぶりに我慢ならなくなって、「ピソ」が暗殺を謀むが発覚するところまで。次巻あたりは、ネロの没落あたりまでいくんであろうか。

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