コミック」カテゴリーアーカイブ

終末の世界を、二人の少女はどこへ行く ー つくみず「少女終末旅行」(新潮社)

ディストピアものの小説やコミックは、終末ヘ向かう戦争や異生物との闘争を描くものと、終末が訪れた後に残された者の物語を紡ぐものとに大別できるのだが、本書は後者の種類に属している。
その中で、本書を特徴づけているのは、廃墟となった都市群の中を、女の子二人が、「ケッテンクラート」という軌道車に乗って延々と旅をしていく、という設定である。

「ケッテンクラート」というのは、もともとは1939年に、ドイツの自動車メーカーによって開発された、前輪が車輪で、後輪がキャタピラになっているハーフ・トラックで、泥濘の多いポーランドやハンガリーといった東ヨーロッパ戦線で使われたものであるらしい。本書では、文明崩壊後、古い文献をもとに復元された、という設定になっているようですね(第一巻の最後に「図解」がありますね)。

【構成と注目ポイント】

構成は

01 星空
02 戦争
03 風呂
04 日記
05 洗濯
06 遭遇
07 都市
08 街灯

となっていて、まずは「ミナ」と「ユーリ」という二人の少女が大きなビルの中を、復元ケッテンクラートで外への出口を探して走行しているところからスタート。

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真面目な気の弱い女性がハグレてみたら恋の予感? ー コナリミサト「凪のお暇 1」

都内の家電メーカの本社に勤務する、真面目で気が弱く、ちょっと「空気読み」の傾向が強くて、いつもミソッカス扱いされ、貧乏くじをひいてしまうOLが主人公。彼女は、ある出来事をきっかけに、会社を辞め、SNSも絶ち、新しい生活へと踏み出すのだが、という展開の、「人生リセットしてみたら、なんと新しい世界が・・」系のコミック。

【構成と注目ポイント】

構成は

#一円め 凪、ドロップアウトする
#二円め 凪、暑さに溶ける
#三円め 凪、散歩する
#四円め 凪、吼える
#五円め 凪、動く
#六円め 凪、回る

となっていて、まずは主人公の「大島凪」が勤め先の会社での同僚や上司の中で、貧乏くじをひいている姿が、コミカルに描かれますね。冒頭のシーンでは、同僚からランチに誘われ、弁当を持ってきていることが言い出せないシーンがシンボリックで、

といった「凪」の表情に、気が弱くて、真面目で、いい人で、そのため、「押しの強い人」に流されて・・、というごくフツーの「女子」の姿を見せてます。

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織部の遺した「へうげ」はめんめんと続いていく ー 山田芳宏「へうげもの 25」(モーニングKC)

 

茶人大名・古田織部の戦国末期から江戸時代初期まで、武人から転じて「へうげ」を追い求めた男の物語が、今巻で完結する。

 

シリーズの後半は、豊臣と徳川との融和を図るために悪戦苦闘している姿が目立っていて、とうとう、その努力も実らず、豊臣家の滅亡を迎えてしまうのであるが、実は・・といった秘史・野史的なところもしっかり盛り込んである。このあたりは、既巻で、信長が非業の死をとげた本能寺の変の犯人を「秀吉」とした本書らしいところが随所にみられる仕上がりとなっている。

 

【構成と注目ポイント】

 

構成は

 

第二百六十三席 BOSSA NOVA
第二百六十四席 Be Free
第二百六十五席 風神RYDEEN
第二百六十六席 DRAGONへの道
第二百六十七席 Greatest GIFT
第二百六十八席 返事はいらない
第二百六十九席 RIDE on TIME
第二百七十席 FRUTA BoA
第二百七十一席 ROUTINE’S MAMA FUNK
第二百七十二席 Summer Breeze
第二百七十三席 棕櫚の影に

 

となっていて、時代的には大坂冬の陣が終結した直後、1615年5月10日の午後、大阪城の山里丸から秀頼らしき焼死体が発見されるところからスタート。

 

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道真は美しい「椿の精」の謎を解き明かす ー 灰原薬「応天の門 11」

藤原北家と微妙な関係にある在原業平とつるみ始めたといっても、業平の検非違使の長としての事件捜査の謎解きといった関わりまでで、政治向きのことからは離れたところにいられた道真なのだが、そろそろそんな訳にもいかなくなったな、という気配が漂い始めるのが今巻あたりから。

【構成と注目ポイント】

構成は

第五十七話 菅原道真、山中に椿の怪をみる事 一
第五十八話 菅原道真、山中に椿の怪をみる事 二
第五十九話 菅原道真、山中に椿の怪をみる事 三
第六十話 大路に髪切る鬼の現わるる事
第六十一話 菅原道真、盗人に疑わるる事 一
番外編 天女に魅入られたる男の事

となっていて、第五十七話から第五十九話の「菅原道真、山中に椿の怪をみる事」は、前巻で道真の実家に押しかけてきた、反・藤原北家の旗手である大納言・伴善男が道真に依頼事を持ちかけてくるところからスタート。
依頼事というのは、知り合いの貴族の若者が、木に精を吸われて衰弱してるので、その者にあって助言してくれ、というもの。

もちろん、伴善雄の依頼であるので「裏」がないはずもなく、道真が引き合わされるのは、時の天皇・清和天皇の兄の「源能有」。

帝の兄でありながら即位できず、臣下である「源」姓となっているのは、生母の身分が低かったためらしい。本書では世の中から見捨てられた感じで描かれているのだが、清和天皇から宇多天皇の四代の天皇に仕え、右大臣まで出世して、政治家として辣腕をふるっていますね。菅原道真と親しかったというも史実のようですね。

で、今回の「怪」というのが、夜な夜な「椿の精」が源能有のもとに忍んできて、

とまあ、「ごにゅごにょ」といたすというものなのだが、この正体が、能有の奥方がたくらんだもので、実は・・・といった展開。

この源能有は藤原基経からも評価されていたらしく、彼の娘を奥さんにしている。この物語で登場する彼の奥さんも「名家の出で上昇志向が強い」という設定なのだが、名前が「滋子」となっているので、どうやら基経の娘その人っぽいですね。

そして源能有は、藤原基経の死後、当時の「大臣」の源融や藤原良世などが高齢であったため、政権を牛耳るのだが、そこの根源は、

といったようにこの頃からすでに心の中に潜ませていたのかもしれないですね。

そして、伴善雄や在原業平に、「政治とは関わらない」と強硬に言い張る道真に対して、

という場面に続いて放つ言葉は、才能あるがために、本人の意思に関係なく否応なく政争の渦に巻き込まれて翻弄される運命にどう立ち向かうか、を道真に投げかけるもので、次巻以降のテーマとなりそうなのだが、詳細は原書で。

第六十話の「大路に髪切る鬼の現わるる事」は、ちょっと箸休めの感のある話で、主人公は菅原家の書庫番兼女官の「白梅」。
最近、何やら色気づいてきている気配の彼女が、

という髪を切る鬼女と疑われることになります。彼女は疑いを晴らすために、検非違使庁で、被害者との面通しをすることになるのだが、彼女が疑惑を持たれたのは

という風貌のせいなのだが、犯人を見た彼女はかなりショックであったでしょうな。そして、「色気づいた」と思われた真相も、かなりオタク少女っぽいものですな。

最終話の「菅原道真、盗人に疑わるる事」では、道真が硯の強盗殺人犯の疑いで検非違使に連行されます。

詳細は次巻に続くのだが、ちょっと大事件になりそうな気配ですね。

【レビュアーから一言】

「大路に髪切る鬼の現わるる事」では、いろんな人の恋文やその返事やらを、紙や筆跡を変えて創作して、疑似恋愛を愉しむという白梅の不思議な趣味と技術が明らかになるのだが、こういった白梅のような「忘れられた女流作家」がもっとたくさんいて、彼女たちの書いた「物語」の蓄積が源氏物語につながったのかも、と本書中のコラムで推理がされている。
案外に、蓄積というよりは、源氏物語自体が、紫式部一人で書かれたものではなくて、紫式部という編集長のもと結成された「源氏物語」工房みたいなのがあって、そこに白梅のような「妄想少女」が集まって創作していた、ってなことかもしれないですね。

応天の門 11 (BUNCH COMICS)
灰原 薬
新潮社 (2019-07-09)
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都に出没する「馬頭鬼」に道真は意思疎通を試みる ー 灰原薬「応天の門 10」(バンチコミックス)

兄の死の原因が、藤原北家の一族の無茶な仕打ちであることが明らかになってきたり、在原業平をはじめとした反・藤原北家のメンバーに取り込まれそうになっていたり、とこれからの官僚生活の方向性を決めてしまうようなシチュエーションに陥りそうな菅原道真。

ただ、今巻はそんな大きな流れに巻き込まれる前の、ちょっとした「淀み」といった風情の第10巻である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第五十二話 藤原基経、道真と会遇する事
第五十三話 都に馬頭鬼のあらわるる事 一
第五十四話 都に馬頭鬼のあらわるる事 二
第五十五話 都に馬頭鬼のあらわるる事 三
第五十六話 道真、米算用をする事
番外編

となっていて、まずは前巻に続いて、仇敵となりそうな藤原基経に、源融の主催する宴会の席で出会うところからスタート。基経が道真のことを「吉祥丸(道真の急死したお兄さんですね)の弟か」と呟くので、基経が兄の死に関係しているのでは、と思い込みそうになるのだが、

といった場面に象徴されるように、むしろ兄たちが道真の兄を嘲弄するのを止めようとしていたのが真相で、ここは不幸な勘違いという方向に次巻以降進みそうな感じがしますね。

第五十三話から第五十五話の「都に馬頭鬼のあらわるる事」は、前巻まで京の夜を騒がしていた百鬼夜行に関する話。

検非違使を中心に剣を狙って、馬の頭をした真っ黒で大きな物の怪が出没を始める。どうやら、多美子入内の騒動の際に、道真が拾った湾曲刀が関係しているようなのだが、その湾曲刀はどうみても日本のものではなく、唐の先の西域のものであるらしい。

この「馬頭鬼」と「湾曲刀」の謎を解くため、道真は「馬頭鬼」をおびき出し、捕らえることに成功する。そして、その「鬼」を捕獲後、道真は彼となんとか意思を疎通しようと試み・・・、といった展開。

この「馬頭鬼」といわれる異人の出身地に、この時代の日本が意外に国際化されていたのでは、といった思いがしてきますね。

この話の最後のほう、この異人が残す言葉にどういう意味が隠されているかは、皆さん考えてくださいね。

最終話の第五十六話「道真、米算用をする事」は闇商人・昭姫のところの在庫と帳簿の整理に道真が駆り出される話。こういった事務仕事に。文章生の道真を使わなくても、もっと計数に優れた配下はいるんでしょうに、と思うのだが、ちびちびとした不正を発見してしまうのが、道真らしいところですね。もちろん、

といった昭姫からの謎掛けっぽい忠告もあって、これまた道真のこれからに影響を及ぼしそうですね。

【レビュアーから一言】

最後の「番外編」では、道真の許嫁・島田宣来子が、年頃の女の子らしいところが披瀝されてますね。しかも、彼女のお化粧に使われる小道具とか、ファッションを見ると、この時代の日本が、リスクロードの最終点らしく、民族の文化の混じり合うところであった感じが漂ってます。

応天の門 (10) (BUNCH COMICS)
灰原 薬
新潮社 (2018-12-07)
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美しい妓女と比丘尼のため、道真が詭計を講じる ー 灰原楽「応天の門 9」

兄の死の真相を知って、藤原北家への反対勢力との関係が深くなったり、学問への向き合い方に疑問をもったり、と自らの立ち位置に揺らぎが生じている道真なのだが、本巻はそういったところとはちょっと離れて、不老不死の比丘尼や、関わると周囲に不幸をもたらす美しい男の子といった謎の解決が描かれるのが本巻。

【構成と注目ポイント】

構成は

第四十六話 菅原道真、遊行する比丘尼と会う事 二
第四十七話 菅原道真、遊行する比丘尼と会う事 三
第四十八話 菅原道真、遊行する比丘尼と会う事 四
第四十九話 禍いを呼ぶ男の童の事 一
第五十話 禍いを呼ぶ男の童の事 二
第五十一話 源融、別邸にて宴を催す事 

となっていて、第四十六話から第四十七話は、前巻の最終話からの続き。昔の都があった長岡京にやってきた道真と業平が、困窮している百姓に、自分の手から米や砂金をひねり出す比丘尼に出会うところからスタート。

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「大坂夏の陣」終わる。秀頼と織部の運命はどうなる ー 山田芳裕「へうげもの 24」

古田織部が豊徳和睦の最後の策であった、二条城での秀頼・家康会談が、織部の息子・古田山城守と大坂方による家康襲撃の陰謀が明らかになり、豊臣家が滅亡へと向かう、「大坂夏の陣」へとまっしぐらに進む1615年4月30日から、真田幸村はじめ有力諸将が討ち死にし、淀殿はじめ大阪方の首脳陣が自決した1615年5月8日の午後までが描かれるのが本巻。

豊臣家がぐらりと倒れるのと並行して、それが象徴する世界を根こそぎ引っこ抜いてしまおうとする家康派の、古田織部も家康暗殺に加担した疑いをかけて、一気に消し去ってしまおうという陰謀が動き出すところでもある。

【構成と注目ポイント】

構成は

第二百五十二席 空に星があるように
第二百五十三席 Perfect Human
第二百五十四席 優しさにつつまれたなら
第二百五十五席 河内のオッサンの唄
第二百五十六席 SHALALA
第二百五十七席 CHERRY PIE
第二百五十八席 ブルーブルースカイ
第二百五十九席 Dear GOD
第二百六十席 どでかい青春
第二百六十一席 トドメを派手にくれ
第二百六十二席 New Bowl World

となっていて、家康襲撃の陰謀の黒幕となっていた、織部の息子・古田山城守重嗣が自害を図るところからスタート。彼の自害を止めて、秀頼親子の亡命の手配をするよう、屋敷から逃すのだが、

といったところをみると、これから自分をはじめ古田一族を襲う徳川の謀略を予期しての行動であったのだろうな、推察しますね。
このあたりに関係しては、織部の屋敷を薩摩の連歌師・如玄が尋ねていたことを聞いての

と言う表情に現れた家康派の過激さとセットで考えると、織部と大坂方を抹殺しないと治まらないのだな、と痛感するところですね。

ここで、「家康派」と今巻で表現したのは、この勢力が徳川全体のものではないということで、

と、古田織部の無実を家が危うくなることを承知で諫言する細川忠興や、織部の案をもとに作った具足と陣羽織で出陣する秀忠といった政権中枢にも家康派の動きに納得していない動きがある。
さらには、

という松平忠輝や

松平忠直のように、子どもや孫にもそうした勢力が広がっていて、ここらは、「へうげ」を忌み嫌う家康にとっては、かなり腹ただしいことであったでしょうな。

話のほうは大坂夏の陣の集結に向かって展開していく。家康の本陣めがけて一気に攻め込んで、一発逆転を狙う真田幸村も陣幕の中に隠した鉄砲隊に銃撃されて倒れるのだが、最後に

といった謎の言葉を残すのだが、この言葉の意味することは何か、それぞれに推理してみてくださいな。


そして、大坂城落城の場面は、淀君・大野治長・大蔵卿が城内で最後の茶席を催すところがクライマックス。
大野治長の

という言葉が、織田・豊臣がもたらした「時代」が終わりを告げたことを表現しています。腹を切って介錯して、といった武張ったものでないのが、織豊時代の「華」というものでしょうか。

【レビュアーから一言】

大阪城最後の茶席で、三人が茶菓子として食するのが

といったもの。利休の考えた「麩の焼き」というもので、今で言う「クレープ」でしょうか。現代なら生クリーム、当時は、甘い味噌を付けて巻いて食べるのが通例なのだが、この場面で、当時、武人が戦時に食べることを禁じられていた「河豚の肝」を味噌で和えたもので食しているのが、滅ぼる一族の最後の晩餐としてはなんとも意味深いですね。

道真は、学問へのスタンスの”甘さ”を痛感する ー 灰原薬「応天の門 8」(バンチコミックス)

都で起きる様々な怪異の謎を解いたり、打倒・藤原の旗手・伴善雄の生命を救ったり、さらには、藤原北家の一員・藤原良相の娘の入内を助けたり、と本人が望まなくても、その鬼才ぶりがだんだんと世に出てきている道真。
今巻は、そんな道真の鼻をへし折るように、彼の学問に対するスタンスや世の中への処し方が揺さぶられ始める筋立てである。

【構成と注目ポイント】

構成は

第四十話 都で流行りたりける暦の事 一
第四十一話 都で流行りたりける暦の事 二
第四十二話 大学寮にて騒ぎが起こる事 一 
第四十三話 大学寮にて騒ぎが起こる事 二
第四十四話 大学寮にて騒ぎが起こる事 三
第四十五話 菅原道真、遊行する比丘尼と会う事 一
番外編 白梅、菅原門前にて仔犬を拾う事

となっていて、第四十話・第四十一話の「都で流行りたりける暦の事」は、都で「暦」が大流行する陰で巻き起こる、連続窃盗事件の謎を解く話。
この「暦」というのは、単なるカレンダーというものではなく、「こんなことをすると運気があがる」といったことが日にちごとに書いてある、平安版「星占い」のようなものですね。
この連続窃盗の被害者が同じところから「暦」を買っていて、そのアドバイスに従って外出させたりすることで、盗みをしやすくさせていた、という高等なワザである。
もちろん、暦自体はそんなにいい加減なものではなく、陰陽寮の元下級役人が関わっていたのだが、彼の犯行の動機についての

といった陰陽頭の発言や

といった犯人の発言に、道真の学問に対するスタンスがグラグラし始めます。

第四十二話から第四十四話の「大学寮にて騒ぎが起こる事」は、彼の学問観をさらにグラグラ揺さぶる話。
前話までで、「お前はいいなあ。なんでも出来るし、何にでもなれるんだよな。明日食い詰める心配がないからな」と連続窃盗犯に言われ、道真は、得業生の大学寮内の模擬テストを受けることを志願する。これは、彼のぐらつき出した学問へのスタンス確認のためなのだが、同じ模試を、苦学して通っている年上の文章生・安野有兼と一緒に受けることになるあたりから、道真に不満を抱くメンバーが安兼に接近しはじめ、何やら不穏な気配と漂っていく。
そして、試験当日、安兼の不可解な動きに、道真が気づき・・・、といった展開。


試験の結果は、二人とも落第なのだが、道真の学問に対する「置きにいく」考えがここで大きく揺らいで、

といった感じで、部屋に閉じこもって悶々と悩むこととなっていきます。

ここらは第四十五話の「菅原道真、遊行する比丘尼と会う事」で、

こういう色っぽい妓女をしながら、実は「比丘尼」らしい人物と出会うことで、再び次のレベルアップの段階にきているようですね。

【レビュアーから一言】

前巻といい、今巻といい、元「玉虫の姫」の侍女で、今は菅家のし書庫番をしている。漢学娘「白梅」がなんともいい味を出してきてます。なにかというと

といった風に「キョドる」姿が可愛いですね。

応天の門 8 (BUNCH COMICS)
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灰原 薬
新潮社 (2017-12-09)
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道真が、多美子入内のために考案した策は・・ ー 灰原薬「応天の門 7」(バンチコミックス)

前巻で、人柄穏やかに見えて、藤原北家の一族らしく、良房・基経親子の隙をついて、娘の多美子の入内の約束を取り付け、勢力拡大を一歩進めた藤原良相。
ただ、息をするように謀略を企む平安貴族の典型である良房・基経親子が黙っているわけもなく、今巻では、多美子の入内を巡って、平安時代らしい、呪詛やら毒殺やらの陰湿な妨害とそれを阻止する道真の活躍が描かれる。

【構成と注目ポイント】

構成は

第三十四話 藤原多美子、入内の事 一
第三十五話 藤原多美子、入内の事 二
第三十六話 藤原多美子、入内の事 三
第三十七話 藤原多美子、入内の事 四
第三十八話 藤原多美子、入内の事 五
第三十九話 藤原多美子、入内の事 六

となっていて、まずは、良相が良房を出し抜いたことを喜ぶ伴善雄の大笑いからスタート。もちろん、彼は打倒・藤原派であるので、心から喜んでいるわけではなく、藤原北家内の内部争いに喜んでいいるに過ぎないのが食えないところ。

まあ、業平の想い人・藤原高子と多美子の仲が姉妹のように仲がいいのが救いではある。

これが表面(うわべ)だけのことであったら、ちょっと怖い展開になるのだが今のところはそういう気配もなく、多美子の部屋の床の下から怪しい音がする、という話を聞いた高子が、探索を道真に頼むところから、本巻の謎解きがスタート。

道真自らが乗り込むことができるはずもなく、こういう「女性向け」の探索行は、いつものように「白梅」の任務となる。そして、この漢学娘が床下に潜って見つけるのが

といった「平安」らしい呪詛のシンボル。こうした白梅のガチャガチャした動きが、多美子暗殺のために潜り込んでいる基経のスパイをあぶり出すことにつながるので、この娘はそれなりに良い働きをしております。

もうひとり良い働きをするのが、いつも能天気に暮らしている紀長谷雄で、昭姫のところで店で暴れようとする、良房に弓を射掛けた犯人でもある「紀豊城」を撃退したり

牛車を襲う豊城の目を誤魔化したり、道真たちにまんまとのせられてのことなのだが、多美子が宮中に入るアシストを無事務めることとなる。

そして、業平と藤原高子に頼まれて、道真が知恵を絞った今回の仕掛けは、多美子が住んでいる家から、入内を勅使を迎える父親・良相の家まで、無事に移動させる方策なのだが、昼間を避けてあえて「夜」の移動を考案するのだが、その仕掛けのほどは原書で確認してくださいな。

【レビュアーから一言】

今回の騒動で、藤原常平が、在原業平と道真がつるんでいるのでは、ということに気づき始める。常平は、基経ほどの権力亡者ではないようだが、やはり藤原一族らしく、藤原ファーストの思想の持ち主であるのは間違いなくて、これがこの後の展開にどう関係してくるかは予断を許しませんな。

応天の門 7 (BUNCH COMICS)
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灰原 薬
新潮社 (2017-06-09)
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道真の推理の冴えは、反・藤原への一本道 ー 灰原薬「応天の門 6」(バンチコミックス)

前巻までで、兄の死と藤原一族との関係を知ったり、プレーボーイで検非違使の取りまとめをしている在原業平、打倒・藤原北家の旗頭で粗雑ながらエネルギッシュな伴善雄などとの親交が深まっていって、反・藤原派のレッテルを貼られそうな道真であるのだが、当人としては、政争からは遠ざかっていたい気持ちなのだが、その知識と頭のキレの良さで世の中が放っておかない、いう気配が濃厚になってきている本シリーズ。

本巻では、京都市中で闇商売をしている「昭姫」の秘密や、道真の師匠で、許嫁の宣来子の父親・島田忠臣がなぜ菅原を離れ、藤原基経についたか、といった謎があかされていく。

【構成と注目ポイント】

構成は

第二十七話 長谷雄、唐美人に惑わされること 二
第二十八話 長谷雄、唐美人に惑わされること 三
第二十九話 島田忠臣、菅家廊下につとむる事 一
第三十話 島田忠臣、菅家廊下につとむる事 二
第三十一話 源融、庭に古桜を欲す事 一
第三十二話 源融、庭に古桜を欲す事 二
第三十三話 源融、庭に古桜を欲す事 三

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