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イタリア料理はイタリア人の「ソウルフード」 ー ヤマザキマリ「パスタぎらい」

「テルマエロマエ」や「プリニウス」をはじめとして、イタリアを舞台にした漫画で有名な「ヤマザキマリ」さんなのだが、はっきりとモノをいうことでも、定評があると思っている。
本書でも、それは遺憾なく発揮されていて。その舌鋒は自分が長らく住んでいる「イタリア」に対しても容赦なく

「美食国家」と言われるイタリアだが、なぜかこの国のパンはあまり美味しくない

と「美味いものはうまい、不味いものはまずい」というあたりに、本書の「正直さ」を感じるるのは私だけではないはず。

そんな筆者が、イタリア、そして日本の「食」について記したエッセイが本書『ヤマザキマリ「パスタぎらい」(新潮新書)』。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 イタリア暮らしですが、なにか?
 Ⅰ 貧乏パスタ
 Ⅱ イタリアのパンの実力
 Ⅲ トマトと果物が苦手です
 Ⅳ コーヒーが飲めません
第二章 あなた恋しい日本食
 Ⅰ ラーメンが「ソウル・フード」
 Ⅱ 世界の”SUSHI”
 Ⅲ 日本の「洋食」とはケチャップである
 Ⅳ 憧れのお弁当
 Ⅴ にぎりめし考
 Ⅵ キング・オブ・珍味
 Ⅶ スナック菓子バンザイ
第三章 それでも歌リアは美味しい
 Ⅰ 「万能の液体」オリーブ・オイル
 Ⅱ 酸っぱいだけじゃない!
 Ⅲ 優しいスタミナ食
 Ⅳ 深淵なるモツのこと
 Ⅴ 臨終ポルティーニ
 Ⅵ ジェラートとイタリア男
 Ⅵ クリスマスの風物詩
第四章 私の偏愛食
 Ⅰ 思い込んだらソーセージ
 Ⅱ 私の”肉欲”
 Ⅲ パサパサか、ドロドロか
 Ⅳ たまご愛
 Ⅴ シチリア島で餃子を頬張る
 Ⅵ 串刺しハングリー
 Ⅶ 世界の「病人食」
第五章 世界をつなぐ胃袋
 Ⅰ ワインとナショナリズム
 Ⅱ チーズと寛容
 Ⅲ ミラノ万博取材記
 Ⅳ 胃袋の外交力
あとがき

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「小牧長久手の戦」開戦。天下の帰趨は・・ ー 宮下英樹「センゴク一統記 14」

落ち武者から国持大名へ、その後、戦で大敗北して改易。そこから復活して、徳川将軍家の相談役まで昇進した戦国一のジェットコースター人生をおくった「センゴク」こと「仙石秀久」の半生記が描かれる「センゴク」シリーズのSeason3「センゴク一統記」の第14巻。

前巻で、秀吉に反旗を翻し、天下を狙う意志を固めた徳川家康と、秀吉が織田政権の継承者の地位を固めていることに我慢がならない織田信雄の連合軍と秀吉軍ががっぷり四つで戦う「小牧長久手の戦」が本格的に開始するのが今巻ですね。

【構成と注目ポイント】

構成は

VOL.117 忍耐
VOL.118 鬼武蔵
VOL.119 酔覚め
VOL.120 温情
VOL.121 三方ヶ原
VOL.122 中入り
VOL.123 奇襲
VOL.124 馬標(うまじるし)
VOL.125 つかめり

となっていて、信長亡き後の織田政権の行く末を最終的に決めることとなった「小牧長久手の合戦」が始まるのですが、信雄・家康の反乱の報を聞いて、秀吉は「本能寺の変」で見せた「大返し」を今回も見せて、家康・信雄を大慌てさせます。この「虚」のつき方が、さすが百戦錬磨の武将のなせる技ですね。

そして、こういう時の乱世の習いで、秀吉の実力に恐れをなし最初から味方について、犬山城を落とした池田恒興に続いて、織田信包、森長可といった武将たちが秀吉軍に参陣してきます。この結果、家康・信雄軍3万にたいし、秀吉軍10万とかなりの兵力差がつくことになります。

特に森長可は、歴戦の勇将であるばかりでなく、一族もすべて討死しているので、「死兵」といっていいような捨て身の覚悟です。

しかし、小牧の戦では、これが裏目に出ます。戦場に泥酔状態で出陣し、酒井忠次ら徳川方の武将に攻撃され、敗走させられます。

ここで、森と同行していた尾藤も退却するのですが、これが後々、彼の運命を狂わすことになりますね。
もっとも、小牧の戦のすぐ後は、犬山城で、池田、森、尾藤を赦し、配下に抱え込みます。ここらの差配は、「転んでもタダでは起きない」というところですね。

そして、いよいよ戦は本番の「長久手の合戦」へと移っていくのですが、ここで秀吉は三好長吉(後の「豊臣秀次」ですね)を総大将に据え、池田恒興、森長可、堀久秀で組織する大軍に「三河の中入り」を命じます。小牧野城をスルーして三河に入ることによって、家康の本拠をたたきつぶそうという戦略で、徳川方は「三方ヶ原の再来」とおそれをなします。もっとも、筆者は、三河侵入はフェイクで、実は家康軍の包囲網をつくることが狙いだったと推理しているのですが、真相のところはどうでしょうか。

大慌てとなる徳川勢の中で、家康は自ら行軍してくる秀吉軍を観察し、一番、戦歴が浅い三好勝吉をターゲットに定めます。三好長吉を総大将にしたのはその武勇からではなく、これからの政権構想を考えて手柄をたてさせようというつもりであることと、この4人の武将では、統制のとれた行動ができないことを見抜いてのことですね。

戦のほうは、池田恒興が小牧山城の東にある岩崎城を攻めて足が止まった時を見計らって、三好長吉の軍へ、徳川きっての猛将・榊原康政を筆頭に奇襲をしかけます。長吉隊のほうは何が起きたかわからないうちに総崩れとなり敗走を始めます。ここで長吉が討たれでもしていたら、その後の歴史は徳川方のリードで進んだのでしょうが、中ほどに位置していた「孤高の名将」堀秀政治がこれに気づき、逃げる長吉を救いあげ、三好隊を吸収します。

そして、家康の本陣をみつけ、そこに向け兵を進めるのですが・・・、といったところで、ここから先は原書のほうで。

【レビュアーからひと言】

小牧の戦で、森長可隊が崩されて敗走したとはいえ、兵力的にはまだまだ秀吉勢が格段に優勢である状態の中、秀吉は家康の采配の鋭さに気づくとともに

と彼の将兵の忠誠心の強さに恐れをまし、警戒の念を強めます。現在の兵力差にしか意識のいかない他の武将たちに比べ、その聡さは並大抵のものではありませんね。この聡さと臆病さも、彼を「天下人」へ押し上げた一因のような気がします。

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秀吉と勝家の対立は深まり、「賤ケ岳の戦」開戦 ー 宮下英樹「センゴク一統記 10」

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秀吉は政権奪取。しかし戦乱の兆しはすでに ー 宮下英樹「センゴク一統記 13」

秀吉は政権奪取。しかし戦乱の兆しはすでに ー 宮下英樹「センゴク一統記 13」

落ち武者から国持大名へ、その後、戦で大敗北して改易。そこから復活して、徳川将軍家の相談役まで昇進した戦国一のジェットコースター人生をおくった「センゴク」こと「仙石秀久」の半生記が描かれる「センゴク」シリーズのSeason3「センゴク一統記」の第13巻。

前巻では、柴田勝家との「賤ヶ岳の合戦」で秀吉が勝利を収め、織田家の継承者であることを明白にしたのだが、今巻では、その戦後処理と、波が鎮まったかに思えていた政情が、織田信雄、徳川家康の思惑によってふたたび戦乱へ向かっていくところが描かれます。

【構成と注目ポイント】

構成は

VOL.108 天下人の業
VOL.109 栄達と誇りと
VOL.110 知行宛行
VOL.111 現世と幽玄
VOL.112 幽玄の智
VOL.113 織田信雄の決断
VOL.114 雌伏の刻
VOL.115 笠寺談義
VOL.116 調略の要

となっていて、まずは、勝家の北ノ庄城の炎上を前に、織田信長から天下を受け継ぎ「天下人」になったことをかみしめるシーンからスタート。ただ、天下人になった感慨以上に秀吉は

と「決して奢(おご)っちゃあならねえ」と自分を戒めていて、内部の敵や外部の敵がまだまだいることを認識しているようです。織田信長の跡目を引き継ぐことしか考えていなかった柴田勝家や織田信雄、神戸信孝とはちょっと違って政治家の風格が出てきていますね。
もっとも、神戸信孝を攻める陣中での

といったような様子をみると、厳しめに律していないと、自分を見失ってしまって、天下統一の前に自滅してしまうこととなったかもしれません。そのあたり、秀吉は権力の魅力だけでなく、魔力にも気づいていたのでしょう。

この後、神戸信孝は降伏の上切腹、佐久間玄番は捕獲の上斬首、さらに滝川一益も降伏し、秀吉は織田政権を完全に引継ぎます。
センゴクの方は、石田三成も彼のことは気にかけていたようで、正式に淡路を治める大名に昇格することとなります。ただ、様子を見るに政権中枢内での地位は確実に三成のほうが上でになってますね。

岐阜の稲葉山城の落城のころを思うと、センゴクも「大きく」なったものと感慨無量のところがあります。

さて、信長から秀吉へと政権が移り、これで「天下も安泰」とならないのが、世の常で、毛利、北条、長曾我部といった外敵だけでなく、友軍内にも火種が燻っています。織田信雄が自分のこれから生まれる子供が男子であれば「三法師」という、織田政権の名目上の当主である信忠の子供と同じ名前をつけると言い出しますし、家康のほうへは天台宗の僧侶・隋風が訪ねてきて、彼の心中に隠れている

といった野心を表に引っ張り出してきます。この隋風というお坊さんは、明智光秀が本能寺の変後、山崎の合戦で敗れて敗走するところなど、天下の政に変化の兆しがあるときに現れてますね。実は、この「隋風」というお坊さんは、のちの天海僧正。徳川幕府の成立後、家康・秀忠・家光の三代に亘って幕府の政策に大きな影響を及ぼす人物ですね。

ここでは、家康の息子で秀吉の養子に出され名門・結城家を継いだ結城秀康も登場します。彼は、兄・信康が信長の命令で殺された後、跡目を継いでもよかったのですが、能を見ているうちに幽玄界へ彷徨い込み、信康の母親・築山殿の恨みを感じとることとなります。そのせいでしょうか、天下を狙うことを決意した家康に呼び出された時に

といった言葉をもらすのですが、このあたりの「鬱屈」が、家康が彼を嫌った原因でもあるのかもしれません。

そして、秀吉に安土城を明け渡すよう命令された信雄が腹に据えかねて、反逆を決意するところから再び戦乱の気配が濃厚となります。信雄は、徳川家康に手を結ぶことをもちかけ、家康のほうも、和睦していた北条に秀吉を討つことを通知、さらには長曾我部にも援軍を要請し

ということで、小牧長久手の合戦がいよいよ始まります。ここで流石なのは秀吉で、信雄・家康の反逆の報を受けるや、腑抜けている近臣たちをあてにせず、自ら現状と打開策を考え始めます。

このあたりは、裸一貫から、知略で戦国時代をのし上がってきた男の実力を改めて感じますね。

【レビュアーからひと言】

北ノ庄の戦で敗れた佐久間玄番は捕縛されてから、降伏して秀吉政権に仕えるよう勧められるのですが、これを断っての斬首です。彼の姿には、ある種の潔さを感じますね。

彼は、三方ヶ原の合戦以来、センゴクを「センゴク兄」と尊敬していて、北ノ庄の合戦の時も、秀吉につくか勝頼に降伏するか、心中でセンゴクに相談していたようですが、どうやら、「戦国の世」に殉じることを決断したのだと思います。

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センゴクの「四国の戦」と秀吉の勝家との対決、ここに決着 ー 宮下英樹「センゴク一統記 12」

落ち武者から国持大名へ、その後、戦で大敗北して改易。そこから復活して、徳川将軍家の相談役まで昇進した戦国一のジェットコースター人生をおくった「センゴク」こと「仙石秀久」の半生記が描かれる「センゴク」シリーズのSeason3「センゴク一統記」の第12巻。

前巻までで、四国へ渡って長宗我部元親の牽制を図っていたセンゴクが、「引田の合戦」で長曾我部軍と激突した結末と、賤ヶ岳で柴田勢と膠着状態にあって秀吉勢がいよいよ柴田勢と決着をつける「賤ヶ岳の合戦」の顛末が描かれるのが本巻。これにより、秀吉は織田家の筆頭家老にのし上がっていくことになりますね。

【構成と注目ポイント】

構成は

VOL.99 命の使い途
VOL.100 夢の行き場
VOL.101 岐路
VOL.102 鬼玄蕃
VOL.103 抜山蓋世
VOL.104 物憂き家路
VOL.105 女の希み
VOL.106 北ノ庄の一夜
VOL.107 餞別

となっていて、前巻に引き続いて、四国の引田で、長宗我部元親の「箱網の計」によって、長宗我部軍に取り囲まれ、壊滅状態になったセンゴクの様子から今巻はスタート。

森三人衆のうち、仙石久村、仙石久春はセンゴクの退却を助け討ち死という事態を迎えます。残った一人・仙石久武らの殿軍でようようのこと窮地を脱することができます。とんでもない敗戦なのですが、せめてもの救いは、この負け戦で脱走を考えた配下が、

と彼を慕って戻ってきたことでしょうか。こうした苦難を重ねてつくったセンゴク隊の強固な結束が、後に改易され復活を果たす時に生きてくるのでしょうね。

舞台はかわって「賤ヶ岳の合戦」の場面に転換。こちらでは、信長に改易された佐久間信盛の甥の佐久間玄蕃が峰々をぐるっと回り込み、羽柴勢の中川清秀の陣に攻め入ります。中川義秀は古田織部の義理のお兄さんに当たる人で、「へうげもの」にも登場していますね。さらに、高山右近も敗走させ、一躍、武名を轟かせます。

この勢いにのって柴田勢は、勝家・前田利家が総攻撃がかけられるのですが、ここで堀久秀の守る砦を攻めあぐねているうちに、滝川一益・神戸信孝の牽制のため岐阜に向かっていた秀吉が、再びの「大返し」を見せます。

この大返しによって、羽柴勢の奥深く攻め込んだ。佐久間玄蕃のもとの柴田勝家から退却命令が下るのですが、佐久間玄番の嘆き姿は、一見、一枚岩のように見える「柴田勢」にも実は戦の帰趨を様子見する亀裂がはいっていたといわざるを得ません。そして、その退却するところを秀吉軍は襲って、玄番隊を敗走させます。せっかく、意気盛んに羽柴軍を攻撃していた味方の兵をこういう形で失うのは、戦略的に大きな痛手としかいえませんね。

羽柴勢の砦を攻めあぐねている勝家は当初、決死隊による攻め口の確保を躊躇っていたのですが、玄蕃隊の崩壊の報に正面から犠牲覚悟の攻撃を命令するのですが、前田利家の離脱を招くなど、すでに勝家は「老いた」といわざるをえない状態.

その後、勝家は。秀吉勢に押しまくられていき、北ノ庄城へ落ちのび・・・ということになるですが、柴田勝家とお市の最期は原書のほうで、お楽しみを。

【レビュアーから一言】

賤ヶ岳の戦で、勝家の退却命令を聞き、それに従うべきかどうか

と佐久間玄蕃が逡巡し、「正直、怖いんじゃわ・・・」ともらします。ここらは、三方ヶ原でセンゴクとともに武田信玄の攻撃から生還した、戦国時代の空気を色濃くまとった「武将」が抱く「予感」だろうと思います。そして、その予感は、これからの「官僚派」の台頭を考えるとあながち間違いないような気がします。

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民衆の力をもとに秀吉、光秀に勝利す ー 宮下英樹「センゴク一統記 5~7」

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秀吉と勝家の対立は深まり、「賤ケ岳の戦」開戦 ー 宮下英樹「センゴク一統記 10」

センゴク、長宗我部軍と激突。しかし、そこに「箱網」の仕掛けが ー 宮下英樹「センゴク一統記 11」

センゴク、長宗我部軍と激突。しかし、そこに「箱網」の仕掛けが ー 宮下英樹「センゴク一統記 11」

落ち武者から国持大名へ、その後、戦で大敗北して改易。そこから復活して、徳川将軍家の相談役まで昇進した戦国一のジェットコースター人生をおくった「センゴク」こと「仙石秀久」の半生記が描かれる「センゴク」シリーズのSeason3「センゴク一統記」の第11巻。

長宗我部軍が四国の統一を完成させるため、讃岐・阿波へ向けて動き出したとの報を受け、それを抑えるために四国へ渡ったセンゴクたちが、いよいよ長宗我部本隊と向かい合うことになります。戦国時代一、二を争う乱暴れ者のセンゴクのこと、意気込むは十分で長宗我部軍もそこは圧倒するのですが、深謀遠慮の塊の長曾我部元親に彼の力が通じるかどうかが試されるのが本巻。

【構成と注目ポイント】

構成は

VOL.90 引田着弾
VOL.91 忠義と政略
VOL.92 同日開戦
VOL.93 機先
VOL.94 箱網
VOL.95 二辰刻半
VOL.96 巨京(くじら)狩り
VOL.97 箱網の底で
VOL.98 忠実な奴ら

センゴク、引田城近くへ布陣。味方の兵は二千。対する長曾我部軍は二万以上。およそ十数倍の兵力差です。
その中で

というのは、今まで戦国の世を生き抜いてきたセンゴクならではの言ですね。
一方、長宗我部元親は、羽柴ではなく、柴田に味方することを決意。

秀吉に信長と同じように「戦乱を求める臭い」を感じた、という理由ですが、案外、武功一点張りの勝家のほうが後日、扱いやすいと思ったのかもしれません。そして、秀吉の精神的なダメージを与えるため、センゴクを討つことを決めます。

ここでセンゴクに従う津田妙算が、この段階で、四国を統一する意思はあっても、畿内ヘ向かい、天下を狙うつもりのない長宗我部をあえて刺激するようにセンゴク隊が派遣された理由を

と推理するのですが、もし本当とすれば、センゴクは体の良い捨て石ということになるのですが・・・。

そして戦のほうは、引田城へ向け、長宗我部の別働隊・香川信保らが五千の兵が進みます。ここで香川の兵は、引田城が「空城」と思っているので、完全に油断している状態です。センゴクは彼らの油断につけこんで、山中に潜み、一本道を行軍する彼らの軍に銃撃を浴びせます。印象的には「明智の殺し間」のような戦法ですね。

センゴクの銃撃により、香川信保の軍は乱れ敗走するのですが、長宗我部元親は

と慌てません。彼の前には箱網の模型が置かれていて、どうやらとんでもない企みが隠されているようです。

長宗我部に別働隊を退却させたセンゴクは森村吉から預かった森三人衆の熱心な要請に負け、追撃を決めます。この追撃を意気に感じた十河存保も城を出て出陣するのですが、ここの元親のしかける「箱網の計」が仕掛けられているとは、この二人の武将いずれも思いもよらないことだったと思います。

合戦の行方は、與田へ布陣する長宗我部元親の本隊へ向かって逃げる香川の別働隊を追う、センゴク・十河勢の後ろを元親の弟・香宗我部親泰の軍勢が後ろを塞ぎます。センゴク・十河勢が包囲されたことを見極め、元親の本隊が押しつぶすように攻めかけてきます。

センゴク。十河存保ふたりとも討ち死にか?ということろで、森三人衆がセンゴクの危機を捨て身を救うのですが、ここから先は原書で。

【レビュアーから一言】

秀吉の軍隊と対峙する柴田勝家軍には、三方ヶ原の合戦で、センゴクとともに徳川家康の退却を助け、それ以来、センゴクのことを「ゴン兄」と尊敬する佐久間玄蕃が参陣しています。
彼は対峙したまま、膠着した戦を動かすため、

と柴田勝家に決死覚悟の策を提案します。どうやら、三方ヶ原の時は臆病者の気配のあった、この武将にセンゴクが付けた「炎」はまだ点いたままのようですね。

この三方ヶ原のシーンは「a href = “https://takafam.com/weblog/2019/10/24/sengoku-10/” target = “_blank”>三方ヶ原で織田・徳川軍、あわや全滅。その時信玄の身に・・ ー 宮下英樹「センゴク 10」」でどうぞ。

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秀吉と勝家の対立は深まり、「賤ケ岳の戦」開戦 ー 宮下英樹「センゴク一統記 10」

落ち武者から国持大名へ、その後、戦で大敗北して改易。そこから復活して、徳川将軍家の相談役まで昇進した戦国一のジェットコースター人生をおくった「センゴク」こと「仙石秀久」の半生記が描かれる「センゴク」シリーズのSeason3「センゴク一統記」の第10巻。

前巻までで、本能寺の変で信長が斃死した後、山崎の合戦、清須会議と続き、なんとか織田政権の混乱も収まったかに見えたのですが、やはり両雄並び立たずということで、政権内の主導権を巡って再び「戦乱」へと向かっていくのが本巻。

【構成と注目ポイント】

構成は

VOL.81 合縁奇縁
VOL.82 時化の海路
VOL.83 日輪の下
VOL.84 織田家分断策
VOL.85 ややこい合戦
VOL.86 古豪の真価
VOL.87 築城合戦
VOL.88 膠着
VOL.89 合戦の主役たち

となっていて、秀吉と勝家との間がかなり険悪になっていて、一触即発という状況になっています。

ここで大きな役割を果たすのだが「お市の方」で、彼女が勝家を

と励ました後、「ネズミが憚るならば、殺しておしまい」とそそのかします。ここらは浅井長政が唆されたのと同じノリで、彼女の「天下統治の夢」はまだまだ衰えていなくて、かなり上昇志向の強い女性であるようです。乱世を後ろから煽っていたのは、実はこういった女性たちだったのかもしれませんね。

この後、信長の葬儀を断行した秀吉に対し、神戸信孝が怒りを露わにするのですが、柴田勝家は、信孝を支えるのではなく、自ら織田家を継承することを決意します。どうやら「お市の方」の誘導が見事に成功したようですね。

ただ、ここに至っても、

と羽柴秀吉の専横を諫めるというスタンスで止まっていて、織田家あるいは織田領の統治をどうするか、そして周囲の毛利や北条、上杉、長曾我部といた勢力とどう関係を結ぶか、経済政策はどうするか、といったことは明らかではありません。もっとも「お市の方」自身も「天下をとりなされ」というばかりで、ここらの統治論は全く見えてこないので、なんとなく「マウンティング」には熱心で武将としては有能でも、統治者としては失格なような感じがします。

これに対し、秀吉は丹羽長秀、池田恒興らと示し合わせて織田信雄を擁立して、柴田たちに対抗します。そして堺衆も

と味方に取り込み、神戸信孝の攻撃を始めます。単なる「戦働き」ではなく、商人たちに利を与える経済戦略を考えているあたりが、武将としては柴田に負けていても、政治家としての「格」は秀吉のほうが相当優れていたような感じがします。
そして、秀吉は

と天下取りに名乗りをあげます。どうやら、戦国時代がずっと育んできた「下剋上」の”完全体”が誕生したようです。

秀吉勢の攻撃に神戸信孝は降伏、その勢いをかって、冬季のため柴田勝家が北陸から動けないことをいいことに、滝川一益へと矛先を向けます。北陸に籠っている勝家のほうは、お市の方と夫婦の情愛を固くして「ともに織田家と信長を断とう」と決意するのですが、すでに「信長」の時代を超えて新しい時代を体現し始めた秀吉に対し、「旧勢力」という印象を拭えませんね。

物語のほうは、羽柴と柴田との一大決戦地「賤ケ岳の合戦」へと移ります。経済戦略などでは秀吉に敵わない勝家なのですが「戦」となると、秀吉は残念ながら劣勢です。
この劣勢を挽回するために、秀吉が採ったのが「若手への丸投げ」の戦略です。秀吉と勝家という主将の戦闘能力ではなく、羽柴勢と柴田勢という「チーム戦」で乗り切ろうという作戦ですね。ここらは「人蕩らし」の秀吉の能力全開というところでしょうか。

また、この「賤ケ岳の合戦」は、通常言われる「白兵戦」ではなく、筆者は「城塞群同士の戦」とみているようです。
さて、このがっぷり四つの戦で、堀秀政ほかの秀吉勢いの若手が立てた軍略に対し、秀吉は
と称賛を贈ります。さて、その戦略と結末は、というところは原書のほうでお楽しみを。

【レビュアーからひと言】

天下の帰趨を決める「賤ケ岳の合戦」をよそに、センゴクのほうは、長曾我部に攻められ追い詰められている三好の残党・三好三郎(十河存保)の救援のため、四国へ向かいます。後のことを考えると、センゴクと秀吉の間が薄皮一枚入ったような関係となるのは、ここらあたりからかもしれません。

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民衆の力をもとに秀吉、光秀に勝利す ー 宮下英樹「センゴク一統記 5~7」

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信長後の体制が固まり、長曾我部との戦開始 ー 宮下英樹「センゴク一統記 8・9」

落ち武者から国持大名へ、その後、戦で大敗北して改易。そこから復活して、徳川将軍家の相談役まで昇進した戦国一のジェットコースター人生をおくった「センゴク」こと「仙石秀久」の半生記が描かれる「センゴク」シリーズのSeason3「センゴク一統記」の第8巻と第9巻。

前巻までで、「本能寺の変」、その後の「山崎の合戦」を経て、秀吉が織田政権の中での発言力を大きく伸ばすこととなります。第8巻の前半部分では、その端緒となる清須会議での秀吉・勝家の対立が描かれ、第8巻後半と第9巻では、長曾我部元親の半生記が語られた後、センゴクが四国にわたって長曾我部元親と激突する前夜までが描かれます。
多くの戦国ものでは、畿内から東海までを制圧した織田軍が、毛利との戦いの前に抑えておこうとした四国で突然出現した怪物みたいな印象が多いのですが、民の平穏を維持するために、四国統一を目指した長曾我部にしてみれば、織田勢のほうこそ、畿内から四国へ攻め込んできた「蛮族」みたいなイメージだったのでは、と思える展開です。

【構成と注目ポイント】

第8巻の構成は

VOL.63 筆頭家老
VOL.64 切り札
VOL.65 清洲会議
VOL.66 旧懐の情
VOL.67 忠節の輩
VOL.68 疑惑
VOL.69 阿波の天狗
VOL.70 心得
VOL.71 夢想

となっていて、明智光秀を倒した後の織田政権の行く末を決める清須会議の開催されるところからスタート。

山崎の戦で光秀を倒した秀吉は、自らの戦功が第一と考えているので、この会議を仕切ることを目論むのですが、三法師の生母・鈴も神戸信孝も柴田勝家に信頼を置いているうえに、会議の席に到着した柴田勝家の迫力に押されっ放しになります。戦に勝ったのは秀吉なのですが、武将としての「格」の差がでた感じですね。

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民衆の力をもとに秀吉、光秀に勝利す ー 宮下英樹「センゴク一統記 5~7」

落ち武者から一国持ち大名になりながら改易、それからさらに復活という戦国時代随一の復活劇を演じた仙石秀久こと「センゴク」の一代記を描いたシリーズのSeason3「センゴク一統記の第5巻から第7巻。

本能寺の変で明智光秀が織田信長を討った後、光秀は着々と畿内の統治をまとめ、信長に代わる戦国の統一者として道を進もうとしているのですが、「民衆による統治」という当時には斬新すぎる統治策が災いして、まだ完全な体制へは程遠い状況です。ここに毛利攻めの最中にその情報を得た秀吉が、大反転をして明智攻めに向かう「中国大返し」、そして光秀・秀吉の大激突が描かれます。

【構成と注目ポイント】

第5巻の構成は

VOL.36 急報
VOL.37 大いなる決断
VOL.38 和睦交渉
VOL.39 中国大返し
VOL.40 巡る天運
VOL.41 理性と変革
VOL.42 分水嶺
VOL.43 別々の戦場
VOL.44 風聞の虚実

となっていて、本能寺の変の情報は秀吉軍へ伝わり、秀吉軍の上層部は大騒ぎとなります。今まで、精神的な主柱であった信長が討たれた、しかも、織田勢の筆頭家老ともいえる光秀に手で、ということなので大混乱するのは無理もないですね。

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本能寺の変、勃発。光秀の統治策の真相は・・ ー 宮下英樹「センゴク一統記 3・4」

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落ち武者から一国持ち大名になりながら改易、それからさらに復活という戦国時代随一の復活劇を演じた仙石秀久こと「センゴク」の一代記を描いたシリーズのSeason3「センゴク一統記」の第3巻と第4巻。

いよいよ光秀が謀反し、本能寺で信長を討つという戦国時代最後のクライマックスへ。
この光秀の起こした本能寺の変は、昔から彼の動機が理解不能な部分があって、そこに光秀の「心身症による錯乱説」であるとか朝廷をはじめとした「黒幕説」が絶えない。
本書でも、日本統一の後、明国をはじめとした「唐入り」などの海外征服へ乗り出すときに、自分の腹心として日本を任すという設定になっているので、光秀が叛意を抱いた真相が気になるところであります。

【構成と注目ポイント】

第3巻の構成は

VOL.18 偽りの世
VOL.19 平穏と獣
VOL.20 天命を求めて
VOL.21 天道
VOL.22 信長包囲網
VOL.23 光と闇
VOL.24 生きる真意
VOL.25 愛執
VOL.26 答え

となっていて、まずは、本シリーズのお決まりの、何か大イベントがある前に、関係者の回想シーンということで、光秀の幼少期から青年時代までが描かれています。

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徳川への陣借りで、センゴクは復活へ一歩前進 ー 宮下英樹「センゴク権兵衛 17」

美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第4Seasonの第17巻。

前巻で小田原に参陣したものの、秀吉からは声もかけられることなく少々くさり気味であったセンゴクが、徳川家康の跡継ぎ・秀忠に出会い、まだ幼いながらも聡い彼と心を通わせた後の展開が描かれるのが本巻。

【構成と注目ポイント】

構成は

VOL.136 試し合戦
VOL.137 軍使権兵衛
VOL.138 力攻め
VOL.139 ヤマイヌ集め
VOL.140 川渡し
VOL.141 早川に臨む
VOL.142 闇夜の仕寄り
VOL.143 友を見る目
VOL.144 どう生きる

となっていて、大軍で、小田原城を包囲している秀吉軍ではあるのだが、陣借り先もないせいか、すでに陥落した横山城で「試し合戦」こと、攻城戦の練習をするところからスタート。センゴクのいうことには

ということで、横山城より堅い守りの小田原城攻略での犠牲を減らすため、という理屈をつけています。一見、荒唐無稽のように思えるのですが、黒田官兵衛が評価をしていることを見ると穴が的外れではないようです。

そして、ここで今までセンゴクが関連してきた様々な「縁」が結びつこうとしています。相模湾では、淡路でセンゴクと争った菅平右衛門、根来で彼と別れた鉄砲の名手・津田妙算(らしき人物。津田妙算との別れはこのシリーズの第一巻や第二巻をみてくださいね)、そして、三方ヶ原での出会いを思い出した徳川家康といった面々ですね。

ここで、徳川家康によって、陣借りを許され、徳川の臨時軍使を務めることになるのですが、この顛末は原書のほうで。

そして、小田原攻めのほうは、秀吉が4月のはじめに包囲陣を形成したものの食料も豊富で、民衆の戦意も衰えない北条勢に対し、秀吉軍はなすすべもなく時間だけが経過していくことになります。このため、戦況打開のために、「力攻め」を計画するのですが、横山城の攻略で多くの犠牲を出した諸隊が渋る中

ということになるのですが、条件は、徳川が攻め入るために、四方から豊臣勢が攻め立て北条勢を混乱させるよう調整をとるということ。北条勢の守りの固さに躊躇する諸将ばかりなのですが、堀秀久だけは承知をしてくれます。ただ、承知はするがセンゴクとも官兵衛とも会わないということで、徳川勢は当然不審を抱きます。しかし、今まで堀秀久こと「ホリキュー」とシリーズ開始の稲葉山城の落ち武者として信長に会った時以来のつきあいであるセンゴクは

と彼への信頼が揺るがないのは流石の「腐れ縁」ですね。

そして、センゴクは堀隊ととともに「早川口」に、闇夜に紛れて「仕寄り」という攻撃のための足場をつくる攻撃に参加します。
荒れる波濤のなか、仕寄りをつくりあげ、夜明けを待つセンゴク隊に、堀秀久隊から、あっと驚く報せが届くのですが・・・、という展開なのですが、ここから先の詳細は原書のほうでお楽しみを。

【レビュアーから一言】

この巻で、小田原合戦で彼が「鈴鳴り武者」と異名をとった鈴を一面に縫い付けた陣羽織が登場しています。

敵兵を引きつけるために身に着けたといわれるもので、本書では「早川口」の夜襲のときも身につけた設定になってますね。
当時、改易されて浪人の身の上のセンゴクなので、とにかく目立って「ここにいる」という証をたてることが必要であったのでしょう。

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