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猫ハンドのお涼さまはいかが ー 田中芳樹・垣野内成美「女王陛下の招き猫ー薬師寺涼子の怪奇事件簿」(アフタヌーン・コミックス)

本巻は「魔境の女王陛下」の前の作品であるらしく、海外が舞台となることが多いこのシリーズには、珍しく「国内」しかも東京都が舞台である(もっとも東京都下の「島」なのだが)。ただ、この島は「猫だらけ」の島という設定で、女王陛下版「化け猫」の物語といったところであろうか。

【収録は】

第1話 波の果は猫の島
第2話 鈴々・猫々・オッドアイ
第3話 一難去ってまた一猫
最終話 夜の夢に鈴は鳴る
番外編 休日も!おまわりさん

となっていて、第1話から最終話までは、東京都の寝掛島の「ネコロジー祭」というイベントで起きた殺人事件に、我らが「お涼さま」が捜査に乗り出す話。

番外編は、「女王陛下の招き猫」とは関係なくて、日頃、お涼さまの下僕として日夜働いている泉田警部補の、ゆるい休日の一コマが描かれている。

【あらすじと注目ポイント】

本編の「女王陛下の招き猫」での事件の解決のキーは、この島に残る「唐羽長者の伝説」の長者の家とされている廃墟。島中が猫な中で、このハイ廃屋も猫の住処となっているのだが、ここに、猫を愛していると主張するクローリー・ロワイヤルという外人や片目を隠した少年やらが現れて、怪奇仕立てを整えている。

物語の展開は、殺人事件の犯人を、いつものメイド二人組が片付けるあたりで終わりかな、と思わせておいて、実は本題である、「唐羽長者」が隠したといわれる財宝探しへと誘導する筋立てである。

注目すべきは、物語の初めの方で、お涼さまが島に上陸してすぐの時。

猫ハンドの屋台の店員の代理として、お涼さまが、猫ハンドで、あれこれお戯れのところは、なんとも魅力的でありますよ。室町警視ファンは、彼女が猫アレルギーで、くしゅんくしゅんするところに、ニンマリするかもしれんですね。

番外編の方は、泉田警部補と室町警視の清く正しい図書館での休日に、お涼さまが乱入して邪魔立てをする話。当方はお涼さま派なのだが、この話では室町警視を応援したいですな。

【レビュアーから一言】

今回は、「猫の呪術」とか、「オッドアイ」の猫とか、怪奇ものの道具立ては揃えてあるのだが、軽いタッチで仕上げてあって、ホラー色は薄い方である。
ただ、このシリーズの、特にコミック版の楽しみは、ストーリーと同列で、お涼さまの姿を愛でるところにあって、そのあたりはきちんとおさえてあるので、安心してお読みください。

300歳の独身魔女の「こじらせ」ストーリー ー 「魔女は三百路から」(白泉社)

地味で年齢を重ねた、職場のお局様という存在は、漫画の主人公としてはあまり向いている方とは思えないのだが、三百路(みおじ)となった独身魔女となると、年季が入って熟した魅力が出てくるものらしい。
まあ、こんな感じの女性であるので、300歳とは思えないほど若々しい感じでありますね。

Majyo 300sai 01

【収録は】

第1夜 300年の孤独
第2夜 冒涜的夜会
第3夜 憤怒の満ち
第4夜 生涯魔女宣言
第5夜 魔女の血
第6夜 逢魔が時
第7夜 運命の悪戯

の7編なのであるが、魔女が主人公とはいっても、おどろおどろしい怪奇ものっぽいストーリーや、魔女がその魔術を使って男性を・・、といった展開を期待してはいけない。実のところ、300歳を重ねた独身(魔女)女性の「こじらせ」ストーリーである。

 

【注目ポイント】

主人公の黒川御影は、江戸時代には「月影の魔女」として恐れられた(なんで恐れられたのかは定かではないが)経歴のせいか、悲しい男性経験は積み重ねるほどたくさんあるようで、梅毒で死んだ男や、男に借金を踏み倒された話などなど、普通なら複数の女性のダメンズとの経験を、一人で経験しているのだから、その鬱積も数人分というわけである。

とはいうものの、おひとりさま結婚式を挙行したり、過去の片思いの相手・高杉晋作の生まれ変わりらしい同僚のに鰹節まみれの姿を見せて自己嫌悪に陥ったり、とか、かなり痛々しい行動がつづくわけで、
第一巻の結末は

Majyo 300sai 02

ということなんである。

【まとめ】

今後の展開はどうなることやら霧の中なんであるが、まあひとまずは、300歳魔女の「おひとり様」継続中のあれやこれやと気楽に読んでおきましょう。

女性冒険家誕生の瞬間を垣間見る ー 佐々大河「ふしぎの国のバード 5」(HARTA COMIX)

明治の女性探検家・イザベラ・バードを主人公に彼女の横浜から蝦夷地までの日本の奥地探検をテーマにした「ふしぎの国バードシリーズ」の第5巻。

前巻までで、江戸から出発して、日本海側に抜け、新潟、山形あたりまでたどり着いたのだが、案内役をつとめる伊藤に、プラント・ハンター・マリーズからの強い引き抜きの動きのある中、彼女の持病の腰は悪化する一方で、ということで前途に暗雲漂う中での、秋田へ向かって旅を続ける第5巻のスタートである。

【収録は】

第20話 金山①
第21話 バードの記憶①
第22話 バードの記憶②
第23話 バードの記憶③
第24話 金山②

となっていて、旅的には山形県の「金山」を舞台にしながら、蜂毒で倒れたバードの意識の中に、過去のエピソードを思い出させることによって、バードがなぜ旅を志ざしたか、あるいは、バードが旅行家として果たそうとしたことは何かといったことが明らかになってくる。

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カルルクは弓の修行に頑張る。スミスには春が来たか? ー 森 薫「乙嫁語り 10」

前巻で、「強くなりたい」と、アミルから弓を習い始めた、カルルクが、彼女に格好良い所を見せたい、という欲望に忠実になって、彼女のもとからしばし離れて、修行を始めるのが『森 薫「乙嫁語り 10」(ビームコミックス)』。
 

【収録は】

 
第六十二話 狩猟肉
第六十三話 イヌワシ
第六十四話 母親
第六十五話 騎馬鷹狩猟
第六十六話 馬を見に
第六十七話 国境いの村
第六十八話 山道にて
第六十九話 再会
 
となっていて、弓を習うためにアミルの兄・アゼルたちのテントに泊まってカルルクが修行するのが前半。民俗学者のスミスの旅行記が後半、というつくりになっている。
 

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パミルの恋の行方は、果たしてどうなる・・・ ー 森 薫「乙嫁語り 8・9」

アミルの一族による街の襲撃や、民俗学者のスミス氏のペルシャを通ってのアンカラへの旅の途上での様々な事件などが、このシリーズの話の華のところをとっていて、味のあるいいキャラを持ちながら、ちょっと日陰の存在であった「パリヤ」さんに「春がやってきた)的な「恋バナ」が展開されるのが『森 薫「乙嫁語り 8」(ビームコミックス)』と『森 薫「乙嫁語り 9」(ビームコミックス)』である。

【収録は】

第8巻が

第四十四話 ばらの花咲くころ
番外編 ガゼル
第四十五話 パリヤの刺繍
第四十六話 北の平野へ
第四十七話 櫛入れ
第四十八話 ウマルが来た
第四十九話 ふたりで遠駆け
第五十話 最悪の想像
第五十一話 パリヤの決意

第9巻が

番外編 いきものがたり
第五十二話 パリヤのパン
第五十三話 ウマルはどんな人?
第五十四話 語らい(前編)
第五十五話 語らい(後編)
第五十六話 盤上遊戯
第五十七話 帰途
第五十八話 仮軸
第五十九話 尋ね人
第六十話 友だち
第六十一話 これからのこと

となっていて、アミルの一族の襲撃後、壊れてしまった街の修理に、カルルク一行がスミス氏の救出に赴いたカラザの街のウマルの一家が手助けに来ている間のパミルとウマルの「恋バナ」に、アミルの兄弟たちのその後の動向が切れ目切れ目に挿入されるという構成。

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ペルシャの「百合」の物語 ー 森 薫「乙嫁語り 7」

第1巻から第6巻までは、中央アジアのウズベキスタンとかを舞台にしていたせいが、いろいろな意味で、ごく健全な印象が強かったのだが、舞台が、歴史の長い集積のあるペルシャ(イラン)に移ると、少々風合いが変わってくる。シリーズの前巻までとは、ちょっと異質に思えるのが本書『森 薫「乙嫁語り 7」(ビームコミックス)』

【収録は】

第三十六話 水の園
第三十七話 姉妹妻
第三十八話 男湯
第三十九話 はじめまして
第四十話 シーリーン
第四十一話 契りの儀式
第四十二話 あなたなら
第四十三話 ふたりの園
番外編 熱

となっていて、本巻のほとんどが、民俗学者のスミスが訪ねたペルシャの大富豪のところの奥さんとその女友達の話である。

 

【あらすじ・・・】

あらすじ的には、大富豪の奥さんであるアニスと、彼女が銭湯で知り合ったシーリーンが、この地域の風習である「姉妹妻」の契約を結び、アニスの旦那の家で一緒に暮らし始める、といった展開。

この姉妹妻というのは、

結婚して子供のいる情勢同士が、姉妹妻の契りを交わすもjので、お互い以上に仲の良い相手はつくらない。

嬉しいことも、悲しいことも悩みもなんでも話して、お互いの心の本当の理解者になる

一生の親友

といったものであるらしいのだが、今までの中央アジアの物語でが出てこなかった話なので、歴史が堆積し、爛熟した地「ペルシャ」ならではのものであるのだろうが、アニスが銭湯でシーリーンに再会するところとか、はにかみながら距離を縮めていく姿であるとか、うーむ、これは、友情物語といった類ではなくて、「百合族」の世界の話ではないのか・・・と思えてくるのである。

もっとも、奥方のアニスは、もともとが裕福な生まれっぽくて、生活の苦労なぞしたこともないような印象。その彼女が、旦那にいかに優しくされても、心の空洞は大きくなるばかり、といった描写があちこちあるので、満ち足りすぎた生活の中に忍び込んでくる「虚無」のお話、といった風に解釈できないこともないのだが、今巻はやたらと「裸」のシーンが多いので、やはり「百合」の世界に行ってしまうよね、と思わざるをえないですね。

【レビュアーから一言】

アニスの胸は薄く華奢なヌードとか、シーリーンのグラマラスな姿とか、女湯の描写とか、とにかく「裸」が多い。

そのせいもあってか、他の巻とはかなり印象をことにするので、好き嫌いが別れてしまうかもしれない。まあ、アニスの綺麗さに免じて「了」としておきましょうかね。

アミル、親父との永遠の別れ。でも親父の死は自業自得と思う ー 森 薫「乙嫁語り 6」

アラル海の近くの漁村の婿取り・嫁取り騒動で、騒々しいが楽しい話が続いていたのだが、晴れる日はそう長くは続かないのが世の習いである。
カルルクとアミルの住む町に、再び、アミルの実家の一族・ハルガルが襲撃し、再び抗争になるのが本書『森 薫「乙嫁語り 6」(ビームコミックス)』

【収録は】

第二十八話 背くらべ
第二十九話 放牧地
第三十話 バダンとの会談
第三十一話 砲撃
第三十二話 騎馬の襲撃
第三十三話 アゼルの攻勢
第三十四話 後ろ盾
第三十五話 報い

となっていて、第二十八話以外は、アミルの実家一族とカルルクの住む街の人々との抗争にあてられている。

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アラル海の漁村のウエディング・ストーリー ー 森 薫「乙嫁語り 4・5」

19世紀の中央アジアを舞台に、カルルクとアミルという若い夫婦を中心に据えて、町の人々の暮らしや、闘争などを描いた本シリーズであるが、ちょっと脇道に入ったウェディング・ストーリーとなっているのが『森 薫「乙嫁語り 4・5」(ビームコミックス)』。

【収録は】

第4巻は

第十八話 訪れ
第十九話 アラル海のふたり
第二十話 狙うは大物
第二十一話 ふたりの相手
第二十二話 短期集中花嫁修行
番外編 馬市場

第5巻は

第二十三話 祝宴(前編)
第二十四話 祝宴(中編)
第二十五話 祝宴(後編)
第二十六話 日暮歌
 番外編 岩山の女王
第二十七話 手負いの鷹

となっていて、今回は、アミルとカルルクの話はちょっと脇役。
主筋は、民俗学者のスミスがアンカラへ向かう途中の漁村で出くわす、嫁取り・婿取り話である。

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「妻が死んだふりを・・」のアナザーストーリー ー 「家に帰ると妻がカフェをやりたがっています。」

「家に帰ると妻が死んだフリをしています」を作画したichoda氏による「家に帰ると妻が」シリーズのアナザー・ストーリーが本書『ichida「家に帰ると妻がカフェをやりたがっています。」(PHP)』。といっても、「死んだふり」の夫婦と関連があるわけではなく、都会に暮らす「多く」の若い夫婦たちのそれぞれのショートストーリー。

【収録は】

下町夫婦

ルームランナー夫婦

カフェ夫婦 1

カフェ夫婦 2

カフェ夫婦 3

仕立て屋夫婦

どうでもない絵の夫婦

妻はイラストレーター

の6作。

 

【あらすじ】

あらすじといっても、短い物語ばかりなので、詳しいレビューなんぞをした日には、本書を読んでもらい邪魔になrだけなので、簡単な設定紹介を少しばかりと当方の感想を。

◯下町夫婦

下町に暮らす夫婦が、街を散歩する中で見つけた、小洒落たカフェを舞台にした物語。カフェに女主人と妻のかけあいが中心であるのだが、人の話にすんなりと入っていけない妻の姿に、地方から状況してそのまま東京に住んでしまった、「地方人」の不器用さを感じますね。話の舞台は「下町」といっても、浅草とか葛飾とか、「下町そのもの」のところではないな。当方的には下町というより、高円寺とか中野とかのあたりを思い浮かべながら読みましたな。

◯ルームランナー夫婦

夫が知人からルームランナーをもらってくるあたりからスタートするのだが、けして、ダイエットものではない。ルームランナーを媒介にしながら、夫婦の老いた姿へとつながる展開が、ちょっとシュール。

◯カフェ夫婦

みかんのゼリーを作ったのがきっかけにスイーツ屋を開こうと事業計画をねったり、あちこちの不動産屋を巡ったり、さらには起業するといって、人の話をただ聞く「話聞き屋」を始めたり、カフェの学校に体験入学したり、といった、「妻」の「起業ごっこ」と、それにつきあわされる夫の日々を描いたもの。ドラマがあるようでないのだが、不思議な味わいですな。

◯仕立て屋夫婦

年老いた、町の仕立て屋夫婦の夫婦喧嘩の話なのだが、夫の妄想と、妻への謝り方が怖い。日常に狂気が忍び込んでくる、といったホラーな感じがしわしわと漂いますね。

◯どうでもない絵の夫婦

新居に越してきた夫婦の日常なのだが、この奥さん、なんとなく「妄想癖」があるようで、これからの将来について描くものが、結構「暗鬱」。これからの予言というわけではなく、二人で新しい生活を始める「漠然とした不安」の現れであろうか。ただ、思ったことは叶う、という説もある。良くない未来は、リアルに想像しないほうがよいかも。

◯妻はイラストレーター

イラストレーターをしている妻と会社員の夫婦の、まあ、いちゃいちゃした日常。なんか展開があるんか、と読み進めると、最後の種明かしにひっくりかえりますな。それにしても、「イラストレーター」というのが謎の存在であるのは、当方だけではなかのだ、というのが収穫の一つではある。

【まとめ】

「家に帰ると妻が死んだふりをしています」ほどのシュールさはないが、どの夫婦も、結構「奇妙な味」を醸し出しているのは間違いない。

どこにでもありがちで、実はそうではない夫婦像ばかりなのであるが、案外にどこの夫婦もこういう奇妙なところを隠し持っているのかもしれんですね、と思わせる短編集であります。

 

 

「砂漠」の中の”タラス”と”スミス”の恋物語 ー 森 薫「乙嫁語り 3」(エンターブレイン)

カルルクとアミルの物語も、アミルの一族の襲撃を撃退して一段落したところで、次の展開へ至るまでの、ちょっとした幕間の劇というところなのが、本書『森 薫「乙嫁語り 3」(エンターブレイン)』である。

【構成は】

第十二話 逗留
第十三話 懇願
第十四話 タラスの想い
 おまけ パリヤさんはお年頃
第十五話 再会
第十六話 市場での買い食い
第十七話 アンカラへ向かって

となっていて、民族学者のスミスが旅の途中で出会う「砂漠の中の美女」との「恋」が本巻の主筋。

【あらすじ】

◯砂漠の中の美人・タラス

本巻の物語の最初は、カラザという砂漠の中のオアシスっぽい街からスタート。この街で、カルルクの家に居候していた民族学者・スミスがアンカラまで一緒に行く案内人を待っている間に、馬を盗まれてしまう。この時、同じように馬を盗まれたのが、今巻で、スミスと恋仲になる「タミル」という未亡人。

未亡人とはいいつつも、この土地の風習で、長男に嫁いできたのだが、その長男が急死し、その兄弟に再嫁するが、次々と兄弟が死に、今は義母と砂漠の中で遊牧しながら暮らしている、という設定。日本でも昔は夫の死後、兄弟に嫁ぐということはあったのだが、さすがに兄弟5人に嫁いで、しかも全てが若死にするというのは、いくら衛生状態が悪く危険も多い、19世紀の中央アジアとはいえ、運のよいほうではないな。

話としては、市場長の差配で、馬を取り戻したスミスが、タラスのお礼の気持ちから、彼女のテントへ宿泊させてもらうことで、今回の恋愛譚が進展。一人残されて老人の世話をさせられているタムルの身を案じた義母が、スミスに彼女を嫁にもらってくれ、といいはじめ、彼女も・・・、といった展開。もっとも、森薫さんのマンガなので、くれぐれも◯◯い場面は想像しないように。

ネタバレ的に言っておくと、結ばれない恋なのは間違いない。
タミルの想いを感じながら、彼女のもとを離れ旅を続行しようとするスミスが、カラザの街でスパイの疑いで、牢に入れられたり、その噂を聞いた「タミル」が駆けつけたり、といった恋の成就へ向かって盛り上がっていくのだが、まあ、最後のところは・・・、という展開。
といっても、沈かに沈潜させておいて、どこかで、といった含みは残っているので、すこし期待しておこうか。

◯「パリヤさん」に新展開?

主筋は、スミスとタリスの恋愛譚なのだが、実は、もう一つの恋愛譚が、裏筋に隠されていて、それが「パリヤ」の話。

スミスが街の守備兵に軟禁されているところに、カルルクとアミル夫婦が救出に向かうのだが、それに彼女も同行する。そして、カラザの街の市場で、一同、盛大な昼食をとるのだが、その際に同席した街の商人に同じ年頃の男性がいて、といった接待が忍び込まされている。
今巻では、大きな進展はまだまだなのだが、先行き楽しみなのを暗示していますね

【まとめ】

舞台が強国ロシアを含め列強の思惑が交錯する地とはいえ、どちらかというと辺境である「中央アジア」なので、物語の展開が血湧き肉躍る戦乱サスペンスみたいなものにはならないのだが、「エマ」で「古き良き英国」を舞台に典雅な物語を紡いだ森薫氏の作品らしく、若夫婦の情愛や、悲恋物語を散りばめながらの物語がだんだんと円熟してきた感がある。

ここで、意外な伏兵となりそうなのが、「パリヤ」の存在で、これからコミカルな味を加えてくれそうな予感がして楽しみなところですね。