有馬美季子」カテゴリーアーカイブ

お園と吉之進の恋路を邪魔する「高ピー娘」出現 ー 有馬美季子「縁結び蕎麦 縄のれん福寿5」(祥伝社文庫)

疾走した亭主の捜査行で、多摩地方まで一緒に旅をした後、そのままくっついてしまうのかな、と思えた、元同心の寺子屋師匠・吉之進と、「福寿」の女将・お園の仲は、なかなか本腰をいれた付き合いにならないままであったのだが、吉之進の実家の親戚のお嬢様・文香が登場することで、波乱が巻き起こるのが今巻。

【構成と注目ポイント】

構成は

お通し 新年料理
一品目 円やか河豚雑炊
二品目 紅白ゆで卵
三品目 石楠花の寿司
四品目 ほっこり芋金団
五品目 縁結び蕎麦

となっていて、まずは吉之進の再従姉妹(はとこ)の文香が登場するところからスタート。
彼女の実家・綾川家は「表右筆」の旗本で、そこの長女という設定。さらに、吉之進の母親の実家がこの綾川家ということになってますね。右筆というのは公文書の作成や記録などを行う文官で、幕府の決裁書類の老中や将軍の決裁の順番を差配したり、裏の実力者であるのだが、この時代、右筆の中でも奥右筆がトップエリートであるので、「表右筆」だけの家というのは、ちょっと鬱積したものがあるかもしれないですね。

続きを読む

京都料理のライバル店登場。客足を戻す手立てはあるか ー 有馬美季子「源氏豆腐 縄のれん福寿4」(祥伝社文庫)

疾走していた夫の行方を追って、東京の多摩地方を一月ほど旅をし、その夫との思い出やなんやかやをきっちりと精算することのでできた「お園」であったのだが、江戸へ帰って早々に「店の存続の危機」が起きる。
というのも、彼女の留守中に、近所に京料理の名店が店を開き、「福寿」の客はほぼ根こそぎ、その店の客になってしまっていた。
さて、この店の難局を、「お園」はどう解決するのか、というのが「縄のれん福寿」シリーズの第4弾『有馬美季子「源氏豆腐 縄のれん福寿4」(祥伝社文庫)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

お通し 近いの蚕豆
一品目 紫陽花菓子
二品目 鯔背な蕎麦、艶やかな饂飩
三品目 祝の膳
四品目 おろしやの味
五品目 源氏豆腐

となっていて、まずは、お園が江戸は帰り、店に顔を出した途端、留守を頼んでいた、八兵衛とお波夫婦から、近くにできた「京都料理」の山源に客を皆とられてしまったという話を聞くところからスタート。

続きを読む

「お園」は疾走した夫の謎を追い、東京の西半分を旅する ー 有馬美季子「出立ちの膳 縄のれん福寿3」

江戸は文政の頃、日本橋小舟町で15人くらい入れば一杯になる、小さな料理屋を営む女将「お園」を主人公にした、人情時代小説の第3弾。

数年前に失踪したままになっている、お園の亭主・清次失踪の理由が明らかになるとともに、清次の行方を追って、多摩地方へと捜索の旅を続けるのが、今巻『有馬美季子「出立ちの膳 縄のれん福寿3」(祥伝社文庫)』。
捜査旅行に同行する吉之進との仲がどう進展するかも、こうご期待ですな。

【構成と注目ポイント】

構成は

お通し 謎の食材表
一品目 和みの食
二品目 白い思い出
三品目 繋ぐ葉
四品目 折れない心
五品目 家族の味
六品目 出立ちの膳

となっていて、まずは「お園」が灌仏会の花祭りの帰り道に、男たち数人に襲われるところからスタート。

続きを読む

雪だるまの中の「人魚の腕」の謎を解け ー 有馬美季子「はないちもんめ 冬の人魚」

祖母の「お紋」、母親の「お市」、娘の「お花」の三世代で経営する八丁堀近くの北紺屋町にある、小さな料理屋「はないちもんめ」を舞台に繰り広げられる時代ものミステリーの第3弾。

第一作の「はないちもんめ」が文政五年(1822年)の5月前に始まった物語も、二作目の「はないちもんめ 秋祭り」を経て、文政6年の冬となったのが本作『有馬美季子「はないちもんめ 冬の人魚」』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一話 鮟鱇鍋で熱々に
第二話 雪の日のおぼろ豆腐
第三話 不老長寿の料理
第四話 ほろほろ甘露煮
第五話 元気に軍鶏鍋

となっていて、まずはこの巻の話を全体をリードする、雨矢冬伝という江戸時代の怪奇モノ作家の「雪達磨の中の人魚」という融けかけた雪だるまの中に入っていた「人魚の片腕」に魅せられた男の話の独演会兼食事会からスタート。

続きを読む

母親の行方探しを契機に成長する「少年」の物語 ー 有馬美季子「さくら餅 縄のれん福寿 2」

日本橋小舟町の居酒屋「福寿」の女主人・お園を主人公にした人情時代もの「縄のれん福寿」シリーズの第2弾。

前巻では、福寿の前に行き倒れていた娘・お里を助け、店の2階に泊めたところから、連続火付け事件の真相へと話が展開していったのだが、今巻も、店の2階でやっかいになる人物の手伝いをするというもので、筋立てとしては前巻と同じ。今回、福寿の2階に住むのは「鈴本連太郎」という少年で、もとの実家は高遠藩の藩士であったのだが、父親が藩の重臣を襲った罪で家は取り潰しになり、今は庄屋の家の養子となっている。彼の母親は父親が死んだ後、家を出て行方知れずになっていて、今回江戸へ母親を探しに来た、といういきさつである。

時代的には「文政6年(1823年)」の設定になっていて、連太郎の故郷の「高遠藩」は第七代藩主の内藤頼寧(ないとう、よりやす)というお殿様が家督を継いで3年目のあたり。このお殿様は産物会所をつくって産業奨励をしたり、藩直営の桑園経営などけっこう斬新的なことをやっていて、百姓一揆とかはあったにせよ、若年寄まで務めた名君と言われる人であったらしい。文政3年ごろに農民に御用金を課す制度の創設で騒動が起き、郡代が処分されている事件はあるのだが、本書とは余り関係ないようで、高遠藩のお家騒動というような展開は期待しないでくださいね。

続きを読む

着物品評会での毒殺事件は大店の娘誘拐事件へとつながる ー 有馬美季子「はないちもんめ 秋祭り」

三世代で経営する日本橋の居酒屋を経営する「お紋」「お市」「お花」の三人と店の常連の同心・木暮といったキャストで展開される居酒屋捕物帳「はないちもんめ」シリーズの第2弾である。
今話では、奥さんの尻の下に敷かれている上に、はないちもんめの三人にもいいようにからかわれている同心・小暮の下っ引きの大男・忠吾のカミングアウトした姿と、同僚の同心・桂の名前通りの「頭」の秘密がでてくるのでお見逃しなく。

【収録と注目ポイント】

収録は

第一話 秋刀魚飯で〆まんさ
第二話 食べ物柄の着物
第三話 南瓜すいとんの秘密
第四話 団子に枇杷で不思議哉
第五話 けんちん汁でほっこりと

となっていて、今巻は、儲かっている商家の娘が連続して誘拐される事件の謎解き。「序」のところで、誘拐された娘が意識が薄れる中、チクチクと刺す痛みを感じるのだが、これが犯人の歪んだ嗜好に関係しているので、最後のほうまで覚えておきましょう。

続きを読む

居酒屋の三世代経営者が絵師の失踪事件の秘密を解き明かす ー 有馬美季子「はないちもんめ」(祥伝社文庫)

文政時代の日本橋の居酒屋の女将・お園が自慢の料理と少しばかりのおせっかいで、市中の事件の謎を解いていく「縄のれん 福寿」をおくり出した筆者が、今回は祖母、母親、娘の三世代で切り盛りする料理屋「はないちもんめ」を舞台に、江戸の市中の事件を解決していく物語がこの「はないちもんめ」シリーズ。メインキャストとなるのは、この店の三代、祖母の「お紋」、母親「お市」、娘「お花」に、京都で修行をしていた通いの板前の「目三郎」の四人で、これをあわせて「はないちもんめ」という語呂合わせである。そして、お紋、お市はすでに亭主と死別、お花はまだ未婚ということで、それぞれに個性もあるが遠慮はなし、ただし、それぞれに秘密は抱えているという騒がしい女所帯が舞台となっている。

「はないちもんめ」のある場所は「北紺屋町」で八丁堀の同心たちの役宅の近く、現在の八重洲二丁目、京橋三丁目のあたりである。第一巻の時代設定は、文政五年(1822年)となっているので、「縄のれん 福寿」と同じ頃となっている。この時代は、ちょうど寛政の改革と天保の改革の間で、「化政文化」華やかなりし時で、緊縮ムードはほとんどないので、料理や生活も派手になっていた反面、貧しい者はその分悲哀も一層強かったであろう時代ですね。

続きを読む

居酒屋の美人女将が、自慢料理で謎を解く ー 有馬美季子「縄のれん福寿 細腕お園美味草紙」(祥伝社文庫)

江戸時代後期の文政の時代の日本橋小舟町にある「縄のれん福寿」を舞台にした、料理もの時代小説である。主人公は、料理人だった亭主・清次に疾走された後、この小舟町で小さな居酒屋を切り盛りしている「お園」という女性で、本書の最初のほうの

女将であるお園は、その美しいうりざね顔には似つかわしくないほど、大きな声で威勢良く言った。
粋な雀茶色の着物を纏った躰は細っそりと柳腰灘、凛とした身のこなしからは芯の強さが窺える。

といったところからは、美人で少々気の強そうな女性が居酒屋に持ちかけられる様々な事件や揉め事をちゃきちゃきっと解決する姿が目に浮かぶのだが、けして元気なだけでなく、悲しい出来事を乗り越えて奮闘する「女将」さんが活躍する、料理と謎解きが中心の時代劇ミステリーである。

時代背景的には、「文政5年」の頃とあるので、厳格に倹約を推奨し奢侈を取り締まった「寛政の改革」も終わり、寛政の改革の反対派で田沼意次派の「水野忠成」たちが幕府の実権を握っていた頃でありますね。将軍自体が「贅沢」な生活をおくりはじめ、老中首座となっていた水野忠成も「賄賂を公認」していた頃のようだから、政治の綱紀は乱れ、でも世の中は贅沢に流れて、といった金絡み、権力絡み、色絡みの各種色とりどりの事件がおこりそうな、時代劇にもってこいの時代である。ただ、主人公は町人の女性、周囲の人物も引退した左官の棟梁とか、瓦版屋といったところが中心で、剣を交える「バトル」は少ないので、剣豪ファンはそのつもりで読んでくださいね。

続きを読む