物事をなかなか決められずにチャンスを逃してしまった、という経験は誰しもあることだろう。「すばやく決断し、すばやく行動する」っていうのが、現代のビジネス環境の中で成功していくのが大事だとはわかっていても、失敗した時のダメージとか、周囲の目線とかが気になって、なかなか決められない、行動できないと悩んでいるあなたに、ライフネット生命の創業者で、現在は立命館アジア太平洋大学学長の筆者が「決断のコツ」をアドバイスするのが本書『出口治明「早く正しく決める技術」(実業の日本社)』である。
出口治明さんといえば、多忙な日々の中での読書や歴史などへの造詣の深さなどで有名なのだが、日本生命に長年勤務し、退職後はその系列会社の取締役という安定した地位にありながら、当時は、海のものとも山のものともわからない「インターネットベースでの生命保険ビジネス」に会社を辞めて飛び込んだ、という「決断」えおした経験の持ち主で、実践に基づく「決断力」のあれこれが期待できる。
【構成と注目ポイント】
構成は
序章 決められる人が物事を進められる
Chapter1 なぜ正しく決断できないのか
Chapter2 「数字」「ファクト」「ロジック」で物事を組み立てる
Chapter3 チームで決めるためのルールの作り方
Chapter4 働きながら完成させる
Chapter5 1%の直感に従うために
終章 人生の30%に過ぎない仕事で、どう決断していくか
となっていて、まず最初に釘をさされるのが
決断力の弱さを、日本人の特徴として捉える見方があります。
おおざっばにいって、曖味なままにしておくことを好む民族だという話です.しかし僕はこれには大いに異論があります。
日本人の決断力が仮に弱いとしたら、それは日本人の特徴ではなく、いわゆる戦後の1940年体制、高度成長のもとで、たまたま決断力が弱まっているだけだと思うのです。
というところで、筆者によれば日本人が決断しないのは、高度成長時代の黙っていても社会全体の成長の恩恵を受けていればよかった時代の名残にすぎなくて、それ以前は、日本人もリスクをとって決断してたし、ゼロ成長時代に突入した現在では、「アタマを使ってよく考えて頑張った人にはリターンがあるし、サボった人は損をするという至極真っ当な社会」になったのだから、「自ら決断する」癖をつけないと沈んでいく一方ですよ、と決断できないことを、外部環境のせいにしたがる我々に厳しい「お小言」があります。