ブックレビュー

池井戸 潤

若手ミステリ作家の移住した「田舎」は事件に満ちていた=池井戸潤「ハヤブサ消防団」

五年前にミステリ作家の登竜門となる「明智小五郎賞」を受賞して、ミステリ作家としてデビューしたものの、最近はマンネリ状態に陥っている若手作家が、移住して「田舎生活」を父親の生まれ故郷で、消防団に加入させられたことをきっかけに、田舎の様々な行事...
池井戸 潤

銀行支店内の現金紛失事件には行員たちの「悲喜劇」がこびりついている=池井戸潤「シャイロックの子供たち」

「半沢直樹シリーズをはじめ、銀行を舞台にした企業小説の名手である筆者による、中小企業や町工場がひしめく、東京の都心にほど近い支店でおきた、行内の現金紛失事件の犯人捜しと行員の失踪事件、それに絡まる行内の出世競争や社内恋愛、たたき上げの悲哀と...
ブックレビュー

川沿いのレストランで男を誘う白い顔の怪異の正体は?=小野不由美「営繕かるかや怪異譚」その参

古い建物に憑いていて、住んでいる人の周辺にひたひたと迫ってくる怪異の数々を、祓ったり消滅させるのでなく、「なだめて」害をなさないように変質させる、建物修繕の専門家「営繕屋かるかや」が関わった怪異譚を描く建物ホラー「営繕かるかや怪異譚」の第三...
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城下町の古い家でおきる怪異譚再び=小野不由美「営繕かるかや怪異譚 その弐」

古い建物に憑いてしまい、住んでいる人の周辺にひたひたと迫ってくる怪異の数々を、祓ったり消滅させるのでなく、「なだめて」害をなさないように変質あせる、建物修繕の専門家「営繕屋かるかや」が関わった怪異譚を描く建物ホラー「営繕かるかや怪異譚」の第...
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古い城下町の「怪異」の一番の解決手段は「なだめる」こと?=小野不由美「営繕かるかや怪異譚」

家につく「怪異」というのは、そこから転居できる場合ばかりではない上に、そこに怪異が潜んでいたことが住み始めるまでわからない、という他の怪異とは違う「逃げ場のない」怖さが特徴なのですが、そんな建物に付随する「怪異」を、建物の修繕や補修をする「...
畠中恵

相場師あがりの僧侶は老舗料理屋の幽霊や老舗商店の跡継ぎ騒動の謎を解く=畠中恵「御坊日々」

幕末・維新の動乱も鎮まって、銀座の赤煉瓦街もでき、牛鍋屋も繁盛して、徳川時代の生活どころか、西欧文明が怒涛のように乱入して混乱を極めた明治初めも遠くなった、明治20年代。明治初期に、当時の住職が急死し、廃仏毀釈もあって廃寺になりかけた上野の...
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岩手・遠野で、「巷説」の「小悪党」たちが怪事を操る=京極夏彦「遠巷説百物語」

江戸末期の天保年間を無頼にして、晴らせぬ怨みや、利害や因縁がもつれあってしまった困難事を、闇の世界に救う「小悪党」たちが、「妖怪」が絡む怪事とみせかけて解決していくのが「巷説百物語」シリーズです。2010年に、上方を舞台にした「西巷説百物語...
ブックレビュー

日本の「普通」とかけ離れた地「西成」と「路上」の実態は?=「ルポ・西成 七十八日間ドヤ街生活」・「ルポ路上生活」

ドヤ街での最貧生活や路上でのホームレス生活というのは、行政による救済の対象として上からの目線でその姿や窮乏が語られることはあるのですが、本書「ルポ・西成 七十八日間ドヤ街生活」と「ルポ路上生活」は、2018年に7年間在籍した大学を卒業し、在...
畠中恵

「幸」は呉服商売に復帰し、さらなる顧客拡大に乗り出す=「あきない世傳 金と銀 12 出帆篇」

大阪近郊の村の小さな寺子屋師匠の娘・幸が、父と兄の死で実家が零泊したため、大坂・天満の呉服屋・五鈴屋の女衆として奉公に上がったの振り出しに、幾多の困難の乗り越えながら、上方から江戸へ進出し、女性実業家として成り上がっていくサクセスストーリー...
畠中恵

天の星の代替わりに巻き込まれて、若だんなは赤ん坊からリスタート=畠中恵「しゃばけ20 もういちど」

祖母の血筋のおかげで「妖」の姿を見ることができる病弱な廻船問屋兼薬種問屋・長崎屋の若だんな・一太郎と、彼を守るために祖母が送り込んだ妖「犬神」「白沢」が人の姿となった「仁吉」「佐助」、そして一太郎のまわりに屯する「鳴家」、「屏風のぞき」や貧...