マーケティング」カテゴリーアーカイブ

大ヒットの根本には何があるのか ー 原田曜平「それ、なんで流行ってるの?」

「流行」とか「売れ筋」といったことを考えなければいけないのは、一昔前は、マーケティング関係者か商品企画関係者に限られていて、現場でものを製造したり、サービスを提供している人や管理部門に属している人たちは、決められたことをきちんとやっていけばよかった時代があったのだが、グローバリズムの波と業種・仕事の垣根がぐちゃぐちゃに壊れてしまった現代では、ビジネスマンすべてがそういった視点を持ちながら仕事をしないといけない世知辛い世の中になってしまった。

ところが、いざそういった視点を身に着けようとと思っても、「インサイト理論」がどうとかなんか小難しい話が出てきて、さっぱり・・という方も多いはず。

そんなビジネスマンに「マイルドヤンキー」とか「さとり世代」とか時代の切り取りの確かさには定評のある筆者が「広告の本質」「消費のツボ」についてわかりやすく解説してくれるのが本書『原田曜平「それ、なんで流行っているの」(ディスカバー携書)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第1章 「マイルドヤンキー」「さとり世代」はなぜ流行語になったのか?
第2章 ヒット商品に共通する、ひとつの法則
第3章 クリエイティブ・ブリーフを作ってみよう
第4章 インサイトを見つけるには
第5章 若者のインサイトを探る
巻末付録 若者トレンドにみる「インサイトフル」な事例

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「モノ」を売るためには、視点を変えることが大事 ー 川上徹也「売れないものを売る方法? そんなものがほんとにあるなら教えてください! 」(SB新書)

「良いもの」なのに売れない、PRもしっかりしているはずなのに「売れない」・・・。多くのマーケターに共通する悩みでもあるし、そんな営業部やマーケターから「この商品なんとかならないの」と謂れのない非難をうける製造部門の悲哀でもある。

そんなみんなに共通する「売れない問題」について

「物を売る」ためには、色々な小難しいマーケティング理論やフレームワークもありますが、私なりに極力シンプルに言い表すと。
「商品力」☓「売り方」
これがすべてです。

として、そのうちの「売り方」についての「指南書」である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第1章 ダムで「カレー」が、水族館で「パン」が飛ぶように売れる理由
〜「ウリ」を変える〜
第2章 なぜタクシーはのろのろ走り、たたみ屋は24時間営業を選んだのか?
〜「売る時間」を変える〜
第3章 漁港で「ケーキ」を、地球の裏側で「雨どい」を売る
〜「売る場所」を変える〜
第4章 おじさんがダメなら女子高生、女子高生がダメならおじさんに売れ
〜「売る人」を変える〜
第5章 「2割引き」と「2割キャッシュバック」どとらが売れるのか?
〜「売る値段」を変える〜
第6章 売れないならお客さんに売らせるワザもある!?
〜「売る方法」を考える〜
第7章 「もったいない」や「社会貢献」でもっと売れ
〜「売る目的」を変える〜

となっていて、前段で「指南書」と書いたのは、商品を売るための「法則」を教えてくれるというのではなく、自分が抱えている商品をどうやったら売れるのか、それぞれが考えるヒントを与えてくれるという意味を込めている。
 

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今こそ「個人ブランディング」を根っこから学び直してみよう ー 本田直之「パーソナル・マーケティング」(ディスカヴァー)

ひところ、個人の「ブランディング」ということは大流行して、自分をどう「売り込む」か、「どこに宣伝するか」といったことが、多くの人にとって「最重要課題」であった頃があって、「ブランディング」を売りにそてタレント的な活動をする人たちを多数デビューさせたり、SNSを流行らせたり、といった現象は記憶に新しいところであろう。

その「ブランディング」の大旋風の素の一つともなったのが、2009年に初刷がでた本書でもあったのだが、熱に浮かされたような「ブランディング」ブームも落ち着いた現在でも、変世の中の変化のスピードの速さは変わるところはなく、個人の「ブランディング」、本書でいう「パーソナル・マーケティング」のノウハウを押さえておくことの重要性は変わっていないと思う。

ただ、その「押さえ方」は、流行にのっかって出ていた数多い「類書」ではなく、「原液」のところを掴んでおくべきなのは言うまでもなく、本書『本田直之「パーソナル・マーケティング」(ディスカヴァー)』は、絶好の「原液」的なものといっていい。

【構成と注目ポイント】

構成は

パーソナル・マーケティングの基本戦略
 法則01 パーソナル・マーケティングがうまくいっている人の共通点
 法則02 パーソナル・マーケティングがうまくいっていない人の共通点
 法則03 パーソナル・マーケティングのポイント
 法則04 パーソナル・マーケティングのフレームワーク
自分の「強み」を洗い直す
 法則05 会社のブランドの頼らない
 法則06 キャリアアップよりもプロフィールアップを目指す
 法則07 プロフィールにストーリー性を持たせる
 法則08 将来の成功イメージから逆算する
 法則09 自分にタグを貼る
 法則10 アンチタグリストをつくる
 法則11 人に話を聞いてもらう
 法則12 転職エージェントに登録する
 法則13 モデルを決め、その人と自分を比較する
 法則14 「人に教えられること」を持っている
 法則15 「強み」は掛け算である
ターゲットを明確にする
 法則16 「誰の役に立つか?」を徹底的に考える
 法則17 うまくやっている人のやり方を分析する
 法則18 「相手はあなたに何を求めているか?」を考える
 法則19 時代のニーズを読み取る
 法則20 まず、狭いマーケットで一番になる
断片的な経験や能力を体系化する
 法則21 成功経験をリストアップする
 法則22 「たまたま」の成功を「何回でもできる」スキルに変える
 法則23 ニーズとマッチさせて「切り口」をつくる
 法則24 ロジカルにまとめる練習をする
他人との差別化をはかる
 法則25 「自分ならでは」の独自性をつくる
 法則26 キャリアをミックスさせる
 法則28 自分のキャッチフレーズをつくる
個人のプロモーション戦略を考える
 法則29 セルフメディアを持つ
 法則30 自分の名前を検索してみる
 法則31 独自の言い回しでクチコミをつくる
 法則32 マスメディアと上手に付き合う
 法則33 メディアキットをつくる
 法則34 本を出版する
個人ブランドをマネジメントする
 法則35 長期ブランディングを目指す
 法則37 ブランド接点をデザインする
 法則38 外見だけ立派にしようとしない
 法則39 状況に合わせてリブランディングする

となっていて、今回は目次を、かなり詳細目にレビューしたので、おおよその骨格はこれだけでも推測がつくところはあるのだが、できれば気になったところを原書を確認しておいたほうがよいのは、「原液」的な書籍を読む場合の「鉄則」であろう。

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「プライシング(値付け)」の秘訣を “行動経済学目線” で解き明かす ー 永井孝尚「なんで、その価格で売れちゃうの?」(PHP新書)

ビジネスの現場で常に話題にのぼるのが、「値下げしたのに、なぜ売れないの」とか「ライバル社の商品はうちより高いのになぜ売れるの」といった「価格」と「売り上げ」に関することであろう。

そんなビジネスマンの悩みに対して、「100円のコーラ」シリーズで、宮前久美という魅力的なキャラを登場させて、マーケティング理論について、わかりやすく説明してくれた筆者・永井孝尚氏が今回、「価格戦略」「プライシング(値付け)」をとりあげたのが本書『なんで、その価格でうれちゃうの? 行動経済学でわかる「値付けの科学」(PHP新書)』である

【構成と注目ポイント】

構成は

はじめに ー いくら頑張っても儲からないのは、価格戦略を知らないからだ
 第1章 水道水と同じ味なのに、100円のミネラルウォーターを買う理由
第1部 値下げしても儲かるカラクリ ー よいものを安く売る仕組みをどう作るか
 第2章 なぜミシュラン一つ星の香港点心が激安580円なのか
 第3章 参加費0円。婚活パーティーのナゾ
 第4章 服は「売る」よりも、月5,800円で「貸す」が儲かる
 第5章 1000円の値引きより、1000円の下取り
 第6章 商品数を1/4にしたら、6倍売れたワケ
第2部 値上げしても爆売れするカラクリ ー お客さんを見極め、高く売る
 第7章 大人気・順番待ちの1本25万円生ハムセラー
 第8章 価格を2倍にしたら、バカ売れしたアクセサリー
 第9章 1ドル値下げのライバルに、1ドル値上げで勝ったスミノフ
おわりに ー 価格を知ることは、人の心理を知ることである

となっていて、「はじめに」のところで

ビジネスで儲かるかどうかは、価格戦略次第だ。
どんなに苦労して一生懸命に働いても、価格戦略を間違えると、儲からない。
価格戦略がわかれば、楽しみながら儲かるようになる。

と意欲的な書きぶりがされていることを反映してか、本書では、「アンカリング」「コストリーダーシップ戦略」、「サブスクリプションモデルとリカーリングモデル」や「バリュープロポジション」など、価格戦略に関するマーケティング理論が幅広く取り上げられている。

さらには、以前の「100円のコーラ」シリーズでは、宮前久美を主人公にした「物語」仕立てとなっていて、こういうアメリカ風のビジネス書のスタイルには好みが分かれたのだが、今回は、紹介される事例が具体的なところはそのままに、マーケティングのわかりやすい「経済書」のような仕立てになっているので、生真面目な方々も安心して読めると思う。

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”宮前久美”、イノベーションを学んでグレードアップする ー 永井孝尚「100円のコーラを1000円で売る方法 3」(中経出版)

宮前久美という、美人なのだが、とても気が強くて負けるのが大嫌いな女性を主人公に、第一巻は「マーケティング全般」、第二巻は「競争戦略」をテーマにしていた「100円のコーラ」シリーズも最終巻である。
今巻は、第二巻の最終章で、「ガンジーネット」という会計ソフトのグローバル企業の日本法人社長となった、駒沢商会の上司で、マーケティングの指導者でもあった「与田」を相手のバトルを通じて「イノベーション」について物語仕立てでレクチャーしてくれる。

【構成は】

Prologue ガンジーネット・ジャパン社長・与田譲
Target1 破壊的なライバルは外からやってくる
 ーグローバル市場の怖さ
Target2 iPhoneやKindleはなぜ世界中で使えるのか?
 ー個別カスタマイズから標準品へ
Target3 企業メッセージの99.996%はスルーされる
 ー共感の時代のマーケテイング戦略
Target4 無料でも儲かる仕組みとは
 ーフリーミアムのビジネスモデル
Target5 トランジスタラジオが真空管ラジオを駆逐した理由
 ーイノベーションのジレンマ
Target6 買収するほうは立場が強いとはかぎらない?
 ー交渉の成否を握るBATNA
Target7 なぜグーグルはYouTubeを買収したのか?
 ーM&Aを成功させる方法
Target8 アップルがiPadでパソコンを否定した理由
 ーイノベーションの作法
Target9 有料で1万人に売るか、無料で100万人に使ってもらうか?
 ー数が生み出す新たな価値
Target10 動きながら考える
 ーイノベーターの素養
Epilogue それぞれの新天地へ
あとがき 現状維持は破滅

となっていて、大筋的には、グロバール企業のガンジーネットが、そのフリーミアム戦略で、「駒沢商会」はおろか、市場大手で大企業のシェアのほとんどを持っている「バリューマックス社」の経営を脅かすようになっっている状況下で、両社が共同して、自社製品の、画期的なイノベーションを行って、商品ラインナップから業態まで、がらっと変えてしまう、というもの。
あいかわらずの「宮前久美」流の大騒ぎは健在で、まるで、ジェットコースターに乗ってアップダウンしているようなストーリー展開なのだが、爽快感のある展開で、「久美」の乱暴な活躍を楽しみながら、経営理論の知識が手に入るのは、儲けものには間違いない。

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宮前久美と一緒に「競争戦略」を学んでみよう ー 永井孝尚「100円のコーラを1000円で売る方法 2」(中経出版)

会計ソフトを扱う「駒井商会」を舞台に、美人だが鼻っ柱の強い「宮前久美」を主人公にして、マーケティング理論などを、ストーリー仕立てで描く「100円のコーラ)シリーズの第2弾。本書のテーマは「競争戦略」である。 2012年の刊行なので、今までのビジネス界につきものの栄枯盛衰はあるので、例示されている「企業名」の違和感を感じる向きもあるかも知れないが、その当時の、その企業の戦略の評価と考えて読み進めよう。

【構成は】

Prologue 宮前久美再び 1st Match 業績悪化の真犯人は誰だ? ー日本型コンセンサスの落とし穴 2st Match なぜマクドナルドはリーダーであり続けるのか? ー弱者の差別化戦略と強者の同質化戦略 3st Match 実験は「結論」から始めろ ーPDCAの本質とストーリー戦略 4st Match ”あらゆる事態”に備えるな ー網羅思考のワナ 5st Match 「平等から公平へ」シフトしたパナソニック ー仮設思考と論点思考 6st Match マツダがガソリン車でハイブリッド車に対抗できた理由 ー弱者に不可欠な「選択と集中」 7st Match ローコストキャリアが大手航空会社に勝つ方法 ー「やらないこと」を決める差別化戦略 8st Match 「1+1+1=3」を超えるチームづくり ーミンツバーグの創発戦略 9st Match 撤退する勇気 ートレードオフの見きわめ方 10st Match 社員14人で業界シェア80%を握るコミーの戦略 ー参入障壁の築き方 Epilogue 与田誠の転身 あとがき 成功体験からの脱却

となっていて、あらすじは、「社長の会計」というクラウド型の会計ソフトを売り出して順風満帆に見えた「駒井商会」なのだが、ライバルの大手企業・バリューマックス社が類似のソフトを売り出し、業績に暗雲が漂い始める。 この事態を重くみた新社長から、久美は「社内タスク・フォースチーム」の責任者に任じられ、張り切るのだが、彼女の性格もあってか、社内の古手の営業担当専務と対立する事態に。これに乗じてライバル企業は、さらに攻勢をかけてくるのだが、果たして宮前久美はどう挽回するのか・・?、といった展開である。

100円のコーラを1000円で売る方法2

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”実践”には十分役立つ、軽めの「マーケティング入門書」 ー 永井孝尚「100円のコーラを1000円で売る方法 1」

先だってレビューした『「これ、いったいどうやったら売れるんですか?ー身近な疑問からはじめるマーケティング」(SB新書)』の先行バージョンといっていいのが、本書『永井孝尚「100円のコーラを1000円で売る方法 1(中経文庫)』。 「これいったい・・」とは、ちょっと趣向が違って、アメリカのビジネス書でよくある、主人公の彼女(彼)のドラマに託してマーケティングを語るといった形式の、ドラマ仕立てのマーケティング入門書である。

【構成は】

Plologue 宮前久美登場 Round1 アメリカの鉄道会社はなぜ衰退したのか? ー事業の定義 Round2 「お客さんの言いなりの商品」は売れない? ー顧客絶対主義の落とし穴 Round3 顧客の要望に100%応えても0点 ー顧客満足のメカニズム Round4 値引きの作法 ーマーケットチャレンジャーとマーケットリーダーの戦略 Round5 キシリトールガムがヒットした理由 ーバリュープロポジションとブルーオーシャン戦略 Round6 スキンケア商品を売り込まないエステサロン ー競争優位に立ちためのポジショニング Round7 商品を自社で売る必要はない ーチャネル戦略とWin・Winの実現 Round8 100円のコーラを1000円で売る方法 ー値引きの怖さとバリューセリング Round9 なぜ省エネルックは失敗してクールビズは成功したのか ーコミュニケーションの戦略的一貫性 Round10 新商品は必ず売れない? ーイノベーター理論とキャズム理論 Epilogue 終わりなきマーケティング革命

となっていて、「駒沢商会」というソフトウェアの販売会社が本書の舞台。 主人公は、”鮮やかな色のスーツを着こなし、年齢は30歳前後。アカ抜けていて眼力が強く、いかにも勝ち気な印象だ。黒いストレートのロングヘアがひときわ目立つ」という「宮前久美」という女性で、彼女が商品企画部の「与田」、久美の同僚の営業部員・井上太郎といったところをメインキャストに展開する。

主人公は、とても高ピーで自信家の女性マーケターなので、ここで好みが分かれるようで、このへんはAmazonのコメントでも言われてますね。

100円のコーラを1000円で売る方法

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ブログのプランニングに「マーケティング理論」を使ってみてはどうか ー 永井孝尚「これ、どうやったら売れるんですか」

ブログを始める前には、そのブログのテーマをきちんと考えなさい、っていうのは、ブログ教本には書いてあるんだが、どうやっていいのか方法がわからないのが悩みのタネの人は多いはず。

ただ考えてみると、ブログのプランニングというのは、新商品開発や商品企画と同じなのでは、ということで、いわゆる「マーケティングの手法」が使えるのでは、と思いついたのだが、経済学や経営学の本というと、大学の講義をはじめ、やたら横文字や難しい漢字が出現して、普通の一般人なら、気楽に読もうと思える代物ではない。

で、見つけたのが、そういう類の主要なマーケテイング理論を、具体のケースを使いながら、とてもわかりやすく解説してくれているのが、本書『永井孝尚の「これ、いったいどうやったら売れるんですか?ー身近な疑問からはじめるマーケティング」(SB新書)』である。

【構成は】

第1章 腕時計をする人は少ないのに、なぜ腕時計のCMは増えているのか?
 ー「バリュー・プロポジション」と「ブルーオーシャン戦略」
第2章 人はベンツを買った後、どうしてベンツの広告を見てしまうのか
 ー「顧客」と「ブレンド」
第3章 雪の北海道でマンゴーを育てる
 ー「商品戦略」と「顧客開発」
第4章 あの行列のプリン屋が赤字の理由
 ー「価格戦略」
第5章 なぜセブンの隣にセブンがあるのか?
 ー「チャネル戦略」と「ランチェスター戦略」
第6章 女性の太った財布には、何が入っているのか
 ー「プロモーション戦略」と「マーケティングミックス」
第7章 きゃりーぱみゅぱみゅは、なぜブレイクしたのか?
 ー「イノベーター理論」と「キャズム理論」
第8章 古本屋がふつうの古本屋より儲かる理由
 ー「マイケル・ポーター5つの力」と「競争戦略」

となっていて、副題を見てもわかるように、ほぼ有名どころの「マーケティング理論」はおさえてあって、かなりわかりやすく解説してくれている。特徴としては、オーソドクスなマーケティング解説本といえるのではなかろうか。

 

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「弱点」は克服するものではない — 中村 元「常識はずれの増客術」(講談社+α新書)

水族館プロデユースで有名な中村 元氏の、今までの水族館ビジネスの経験からの「集客術」「増客術」。
 
構成は
 
序章 集客力を上げるにはコツがいる
 
第1章 大人向けにリニューアルして大成功!常識を覆した「サンシャイン水族館」
 
第2章 「闘うワークショップ」で、スタッフのちからを150%引き出す
 
第3章 田舎の弱点を強みにして集客数を15倍に上げた「北の大地の水族館」
 
第4章 「業界初」の仕掛け。宣伝力で知名度をアップさせた「鳥羽水族館」
 
となっていて、提案される内容やアドバイスも、経験に裏打ちされた、理屈っぽものではないので、すんなりと読めるビジネス書になっている。
 
で、筆者の業績でやはり凄いのは、けして条件の良くない水族館を舞台に、増客を果たしていること。それは、都会地のビルの中の水族館で敷地や水量の限られる「サンシャイン水族館」であったり、ど田舎の、交通の不便で、しかも予算が限られるので小規模で飼育種類の限られる「北の大地の水族館」であったり、かなりのハンデをものともせず増客をしているところなのだが、その対策は
 
弱点は大変な努力をして克服するよりも、もっと楽な方法でカバーできる。
必ず裏道や違う方法がある(P135)
 
弱点は克服するのではなく、武器にする。極めつきの弱点であればあるほど、それは誰にも負けないすごい武器に変えることができる(P138)
 
といったことが思想的原点であるところが、さらに凄いところではある。
 
水族館や動物園、博物館といった「装置型」の展示施設は、金にものをいわせて豪華な展示物を集めたほうが圧倒的に集客面では有利であることは間違いないのだが、地方のまちづくり、活性化の面で考えると、そんな潤沢な資金は期待できるはずもなく、氏の
 
お金がないという弱点から考えを巡らせていくことで、いくつもの弱点がすべて強力な武器へと変化していく。
弱点は進化と創造を生み出す泉(P130)
 
といった主張は、とても心強い。そして、その原動力は
 
組織を壊さないと、真の意味で新しいものをつくることはできない(P54)
 
人をあっと驚かせて惹きつけるようなものをつくるには、終着駅をつくってはならないのです。アイデアを余分に出して、それらが競争し合うことで、それぞれがさらに進化します(P57)
 
といったところにあるようで、才能や天性といったところではなく、泥臭くはあるが、「たゆまぬ努力」の大事さを教えてくれるのが、好ましい。
 
「あとがき」によれば

アシカの社会では、時代や環境によって生き残るタイプが違う。つまり、それぞれのタイプの能力を存分に発揮した者にだけ、生き残るチャンスがあると言っていい(P206)
 
であるらしい。それぞれが、それぞれの持ち味で、それぞれの舞台で頑張り。勝負していくことが大事、ということでありましょうか。
 

新しいマーケティング手法「ファンベース」の解説本第二弾 — 佐藤尚之「ファンベース」(ちくま新書)

「明日のプランニング」では、ファンベースとマスベースという2つのマーケティングについて論じられていたのだが、その「ファンベース」についてさらに深化させたのが本書。
 
構成は
 
はじめに
 ーファンベースは、あなたが思っているより、たぶん、ずっと重要だ
第1章 キャンペーンや単発施策を、一過性で終わらせないために
第2章 ファンベースが必要な理由
第3章 ファンの支持を津得する3つのアプローチ
 〜共感・愛着・信頼
第4章 ファンの支持をより強くする3つのアップグレード
 〜熱狂、無二、応援
第5章 ファンベースを中心とした「全体構想」の3つのパターン
第6章 ファンベースを楽しむ(もしくは実行の際のポイントの整理)
 
となっていて、ファンベースからのマーケティングのおさらいから始まって、ファンベース・マーケティングの留意点、実施方法の肝について述べられている。
 
「明日のプランニング」のおさらい的にいうと、
 
ファンベースとは、ファンを大切にし、ファンをベースにして(ベースには、土台、支持母体などの意味がある)、中長期的に売上や価値を上げていく考え方(P7)
 
ということで、人口急減、超高齢化、少子化、独身増加という現代の市場環境の中で、今までの短期キャンペーンを中心とした手法が効果を喪っているというのが本書の主張なのだが、結構ページを費やして、ファンベース・マーケティングの必要瀬が説かれているのは、未だに、新規顧客中心のマーケテイング展開が中心であるのが原因でもあろう。ただ、多くの新規顧客キャンペーンが「新しい」顧客ではなく、既存企業とのパイの奪い合いをするだけの状況に陥っていることを考えると、筆者のいう「ファン」をつくる、一緒に成長するという手法の重要性は自明でもある。
 
 
具体のファンベース・マーケティングの展開には
 
「新規顧客ではなくファンを優先すること」を意識的に習慣化する必要がある
 
商品を愛してくてる20%のファンを「囲い込み」する必要はないし、発信力あるファンほど「囲い込み」を嫌う(P121)
 
といったことに留意しながら、
 
お客様というより、大切にする価値を共有し喜び合う「仲間」であり、もっと言えば「身内」ともいえる存在(P169)
 
であるコアファンをつくっていくという活動であるから、従来のカネとマンパワーで押し切れ、といった体育会系のノリとはかなり違う。それは
 
「ファンの数を増やし資産化する」のではないことに注意してほしい。資産化するというと「ファン・コミュニティの参加人数を増やす」みたいな「数」の発想になる人がいるが、ファンとは「揮毫やブランド、商品が大切にしえいる価値を支持している人だ」。短期施策や単発施策で気づいてもらった「価値」に対する「好意」を積み重ねていく事が必要だ(P32)
 
 
ファンベース施策のとき、一番間違えがちなのは、「全員にファンになってもらいたい」と望んでしまうこと(P89)
 
といった「量が一番」という考えとの決別でもあるので、今までのマーケティングについての経験や思い込みをすっぱりと洗い落とさないと行けない所も多い。人によっては、特にベテランと称される人の中には、結構な意識変革が必要となるだろうな、と妙な心配をしても見るのである。
 
なんにせよファンベース施策を実行する際のポイントは
 
①スモールスタートで楽しむ
②時間をかけることを楽しむ
③ファンになってもらう過程を楽しむ
④常連さんをお迎えすることを楽しむ
⑤ファンという少数と楽しむ
⑥コミュニティ運営を楽しむ
⑦キレイゴトを楽しむ
 
であるらしい。ねじり鉢巻で販促に汗水たらす、といった世界とはちょっとかけ離れてきているようでありますね。