時代小説・歴史小説」カテゴリーアーカイブ

新之助にふりかかる放火誘拐犯の嫌疑を、火喰鳥は食いつくせるか ー 今村翔吾「玉麒麟 羽州ぼろ鳶組8」

火薬を使った元花火師の放火犯・狐火が起こした明和の大火に始まって、新木場の火事、大坂の火付けなど多くの火事を、頭領の「火喰鳥」こと松永源吾を筆頭に、一丸となって「食って」きた「ぼろ鳶組」。

前巻では、狐火の復活かと思われた放火事件を解決したのだが、田沼老中の失脚を狙う一橋卿の陰謀はますます「巧妙さ」と「凶暴さ」を増してきている。

そんな中、創設当時からのメンバー「鳥越新之助」の火付けの嫌疑がかかり追われる身となるというアゲインストな幕開けとなるのが、大名火消「羽州ぼろ鳶組」の活躍を描くシリーズの第8弾となる『今村翔吾「玉麒麟 羽州ぼろ鳶組8」(祥伝社文庫)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

序章
第一章 消えた頭取並
第二章 加賀の評定
第三章 もう一人の銀煙管
第四章 真の下手人
第五章 関脇ふたり
第六章 出奔覚悟
第七章 転(まろぼし)
終章

となっていて、日本橋の商家の火事の場面からスタート。

続きを読む

吉宗暗殺の陰謀の結果は? ー 上田秀人「動揺 聡四郎巡検譚 3」

「江戸」と「東海道」と二部構成で展開をし始めた、「聡四郎」シリーズの3season「聡四郎巡検譚」の第3弾。

今巻では、第2巻で用意されていた「吉宗暗殺事件」がとうとう勃発して大バトルへ進んでいくことになるので、時代小説のバトルシーンが楽しみなファンにはもってこいの展開となっている。

また、聡四郎も京都入りして、複雑な職制の江戸幕府の中でも、とりわけ複雑怪奇で、権力構造もよくわからない「朝廷」「公家」の様子も解説されているので、歴史の「ウンチク」を溜め込みたい方にもおすすめの出来となってます。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 叛意あり
第二章 忍の矜持
第三章 目付の意義
第四章 京の役人
第五章 古都の蠢動

となっていて、まず今巻の第一のヤマ場である「吉宗暗殺」事件の勃発から始まる。

続きを読む

吉宗を狙う新たな陰謀勃発。聡四郎へは伊賀から意外な申し出が・・ ー 上田秀人「検断 聡四郎巡検譚 2」(光文社文庫)

勘定吟味役、御広敷用人という重任を果たした後、「世間を見てこい」と徳川吉宗によって新しい職「道中奉行副役」という何をしていいのかわからない役目に任じられた水城聡四郎の活躍を描く「聡四郎」シリーズの3season「聡四郎巡検譚」の第2弾である。

シリーズ最初の頃とあって、幕府内の旧勢力である「金」「女」の続く新たな敵の姿は、跳ねっ返りの「目付」以外はまだはっきりとはしてこないのだが、相変わらずの聡四郎一行の命を狙う企みに加えて、吉宗の命を狙う企みも芽生えだし、波乱の幕開けの香りただよう本巻である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 幕臣の夢
第二章 駿河の城下
第三章 それぞれの想い
第四章 刺客百景
第五章 掟の終わり

となっていて、まずは、吉宗の幕府改革案を潰すため、聡四郎を片付けようと企んでいる目付・野辺三十郎の命令を受けた徒目付・小高三郎が、密書を駿河奉行へ届けるところからスタート。

続きを読む

加賀藩に降りかかる火の粉を、本多政長は打ち払えるか ー 上田秀人「舌戦 百万石の留守居役13」

老中筆頭・堀田備中守正俊と「手打ち」をすることのできた加賀・前田家であったのだが、安心は長くは続かず、未だに前田綱紀が将軍候補の声があったことを恨む将軍・綱吉と、先祖が取り潰された恨みを未だ忘れない大久保加賀守が敵として立ちはだかる。

 

 

今回、加賀藩に仕掛けられる罠の対象は本多政長で、彼を江戸へ呼び寄せて「直参」にするか、なにか落ち度を見つけて加賀藩を窮地に陥れようとする巧妙な手口である。さらには、加賀藩上屋敷へ「武田党」の乱入を許し、犠牲者も出してしまった不始末の証拠を、大久保加賀守の命を受けた旗本・横山長次が手に入れ、大目付に訴えも出されるという二重の「加賀藩存続の危機」である。

 

ここまでの危機となると、新米留守居役の瀬尾数馬では「役不足」ということで、本多政長が先頭に立って采配をふるうのが「百万石の留守居役」シリーズの第13弾が『「舌戦 百万石の留守居役13」(講談社文庫)』

 

続きを読む

母親の行方探しを契機に成長する「少年」の物語 ー 有馬美季子「さくら餅 縄のれん福寿 2」

日本橋小舟町の居酒屋「福寿」の女主人・お園を主人公にした人情時代もの「縄のれん福寿」シリーズの第2弾。

前巻では、福寿の前に行き倒れていた娘・お里を助け、店の2階に泊めたところから、連続火付け事件の真相へと話が展開していったのだが、今巻も、店の2階でやっかいになる人物の手伝いをするというもので、筋立てとしては前巻と同じ。今回、福寿の2階に住むのは「鈴本連太郎」という少年で、もとの実家は高遠藩の藩士であったのだが、父親が藩の重臣を襲った罪で家は取り潰しになり、今は庄屋の家の養子となっている。彼の母親は父親が死んだ後、家を出て行方知れずになっていて、今回江戸へ母親を探しに来た、といういきさつである。

時代的には「文政6年(1823年)」の設定になっていて、連太郎の故郷の「高遠藩」は第七代藩主の内藤頼寧(ないとう、よりやす)というお殿様が家督を継いで3年目のあたり。このお殿様は産物会所をつくって産業奨励をしたり、藩直営の桑園経営などけっこう斬新的なことをやっていて、百姓一揆とかはあったにせよ、若年寄まで務めた名君と言われる人であったらしい。文政3年ごろに農民に御用金を課す制度の創設で騒動が起き、郡代が処分されている事件はあるのだが、本書とは余り関係ないようで、高遠藩のお家騒動というような展開は期待しないでくださいね。

続きを読む

着物品評会での毒殺事件は大店の娘誘拐事件へとつながる ー 有馬美季子「はないちもんめ 秋祭り」

三世代で経営する日本橋の居酒屋を経営する「お紋」「お市」「お花」の三人と店の常連の同心・木暮といったキャストで展開される居酒屋捕物帳「はないちもんめ」シリーズの第2弾である。
今話では、奥さんの尻の下に敷かれている上に、はないちもんめの三人にもいいようにからかわれている同心・小暮の下っ引きの大男・忠吾のカミングアウトした姿と、同僚の同心・桂の名前通りの「頭」の秘密がでてくるのでお見逃しなく。

【収録と注目ポイント】

収録は

第一話 秋刀魚飯で〆まんさ
第二話 食べ物柄の着物
第三話 南瓜すいとんの秘密
第四話 団子に枇杷で不思議哉
第五話 けんちん汁でほっこりと

となっていて、今巻は、儲かっている商家の娘が連続して誘拐される事件の謎解き。「序」のところで、誘拐された娘が意識が薄れる中、チクチクと刺す痛みを感じるのだが、これが犯人の歪んだ嗜好に関係しているので、最後のほうまで覚えておきましょう。

続きを読む

「菓子勝負」を機に女性菓子職人への道を切り拓け ー 篠綾子「菊のきせ綿 江戸菓子舗照月堂2」

父母が殺された上放火、たった一人の兄は行方知れずという不始末で、京都公家に仕える実家が取り潰され、江戸に了然尼のもとにひきとられた少女「なつめ」が菓子職人をめざす物語「江戸菓子舗照月堂」シリーズの第二弾である。

前巻では、前例がないた菓子職人の修行が許されなかったため、子守として照月堂に雇われた「なつめ」であったのだが、職人をめざす気持ちは変わらない。しかし、松月堂には、いい加減な性格で腕も悪いのだが、菓子の名店・氷川屋のもと職人・安吉が雇われてしまい、職人の空席は埋まってしまった。さあ。「なつめ」の夢はかなうのか・・、といった展開が今巻の幕開けである。

【収録と注目ポイント】

収録は

第一話 養生なつめ
第二話 黒文字と筒袖
第三話 非時香菓
第四話 菊のきせ綿

の四話。

続きを読む

江戸時代のパティシエを目指す娘の奮闘物語はいかが ー 篠綾子「望月のうさぎ 江戸菓子舗照月堂1」

女性が主人公で食べ物がテーマの時代小説となると、たいていは居酒屋、料理屋、一膳飯屋というところが多くて、職人の世界、しかも「和菓子」の世界というのはそうそうはお目にかかれない。

現代では女性の菓子職人やパティシエというのは珍しくなくなっているのだが、男女の区分や女人禁制の部分が多く、菓子作りが鍋や機材の持ち運び、餡や生地の込めあげなど今より力作業が必要であった江戸時代の中期を舞台にした「女性和菓子職人」の物語が本書『篠綾子「望月のうさぎ(時代小説文庫)』の「江戸菓子舗照月堂」シリーズである。

主人公は、京都の公家の仕える侍の家に生まれた「なつめ」という少女が、父母の急死と兄の失踪という事件を経て江戸へ行き、菓子職人の途へ進んでいく物語なのだが、よくある成り上がりものと違うのが、「菓子職人になるのが幼い頃からの念願」といったわけではなく、京都で好きな菓子を存続させたかったから、というのが少々変わり種のスタートである。

続きを読む

「和歌」がアイテムの変わり種時代小説はいかが ー 篠綾子「代筆屋おいち」シリーズ

その時代小説の世界に浸れるかどうかは、その舞台設定はなじみのものであるか、あるいは自分の経験の範囲外にある目新しいものであるか、といったところが肝になることが多いのだが、このシリーズの主人公は、田舎から家出してきた娘が「代筆屋」を始める、といったところと、「和歌」が謎を解いたり、物語を進める上でのキーワードになっているところが特徴である。

【構成と注目ポイント】

第一巻「梨の花咲く」の構成は

 第一話 歌占師
 第二話 子故の闇
 第三話 春の雪
 第四話 ま幸きくあらば

となっていて、「おいち」という娘が、恋人の「颯太」を追って、下総の真間村(今の千葉県市川市のあたりですな)から家出してくるところからスタート。「おいち」は母親が駆け落ちした上での子供であるので、実の祖父からは疎まれていて実家にも居づらくなった上に、恋人が突然の失踪をしてしまった、という設定である。

続きを読む

忌まわしい火付け犯復活?明和の大火の再来か・・・ ー 今村翔吾「狐花火 羽州ぼろ鳶組7」

江戸の火消の代表格となった「新庄藩大名火消し」の活躍を描く「羽州ぼろ鳶組」の活躍を描くシリーズの第七弾が「狐花火」(祥伝社文庫)。

度重なる火事で犠牲者も出ているが、「ぼろ鳶組」があちこちの火事に出張って「見舞火消」を続けるうちに、江戸の火消たちの結束や連携が高まってきている。今巻は、そんな「ぼろ鳶組」誕生の時の大火事であった「明和の大火」の犯人の復活と思わせる付け火に立ち向かう「源吾」たちの姿が描かれる。

話が進展していくうちに、江戸火消たちのラインナップも充実してきていて、羽州ぼろ鳶組のメンバーだけでなく、大音勘九郎ひきいる「加賀鳶」や喧嘩っ早いモンロー主義鳶の、辰一ひきいる「に組」、礫の名手・柊与市の「仁正寺藩火消」など、それぞれの特色が楽しめまる仕上がりになってます。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 蠢く
第二章 多士済々
第三章 番付狩り
第四章 要人
第五章 狐を継ぐ者
第六章 青き狼
第七章 焔の火消

となっていて、まずは、田沼意次のこの時期最大の政敵で、「ぼろ鳶組」を田沼追撃の材料に使おうとしている、一橋卿・徳川治斉の述懐が本巻の出だし。

続きを読む