知野みさき」カテゴリーアーカイブ

大店の経営の危機は、二人の中を引き裂くか? ー 知野みさき「巡る桜 上絵師 律の似面絵帖」

江戸の神田相生町に住む、女性の上絵師・律を主人公に、彼女が描く「似面絵」(似顔絵)による事件や揉め事解決と、幼馴染の葉茶屋の跡取り息子・涼太との恋バナと絵師修行の姿が描かれる「上絵師 律」シリーズの第四巻が『知野みさき「巡る桜 上絵師 律の似面絵帖 3」(光文社文庫)』。

前巻で着物の上絵をてがけたもののまだまだ一人前の絵師には程遠く、注文主の呉服屋・池見屋の女将の皮肉は続くし、幼馴染の涼太との恋バナは、涼太の母親が反対気味という八方塞がりの中での第四巻である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 混ぜ物騒ぎ
第二章 父二人
第三章 春愁
第四章 巡る桜

となっていて、第一章の「混ぜ物騒ぎ」は、「律」は前巻で、池見屋の女将の妹・千恵の椿の上絵を引き受けたために、主な収入源の「巾着絵」の出来がイマイチになって、注文を減らされた上に、ライバル絵師が登場するし、「涼太」のほうは、生家の茶葉屋・青陽堂が得意客に売った商品からいくつも、古い茶葉が混じったものが見つかったという、二人ともかなりのアゲインストの状態から幕開け。

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茶人依頼の「椿の上絵」のおかげで律の腕前が急上昇 ー 知野みさき「雪華燃ゆ 上絵師 律の似面絵帖 3」

江戸の神田相生町に住む、女性の上絵師・律を主人公にして、彼女の絵師としての成長と、彼女が描く「似面絵」(似顔絵)を手がかりに、幼馴染の葉茶屋の跡取り息子・涼太とともに、もちこまれる様々な事件を解決していく「上絵師 律」シリーズの第三巻が本巻『知野みさき「雪華燃ゆ 上絵師 律の似面絵帖 3」(光文社文庫)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 春の兆し
第二章 姉探し
第三章 消えた茶人
第四章 雪華燃ゆ

となっていて、本巻では各章ごとの似面絵を役立てた犯人探しのほかに、律が仕事をもらっている池見屋のお得意である金持ちで茶人の雪永から出された難題の解決が、全体を貫く仕立てとなっている。

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上絵師・律の似顔絵の技が、両親の仇をあぶり出す ー 知野みさき「舞う百日紅」

江戸の神田相生町に住む、女性の上絵師・律を主人公にして、彼女の絵師としての成長と、彼女が描く「似面絵」(似顔絵)を手がかりに、幼馴染の葉茶屋の跡取り息子・涼太とともに、もちこまれる様々な事件を解決していく「上絵師 律」シリーズの第二巻が本巻『知野みさき「舞う百日紅 上絵師 律の似面絵帖」(光文社文庫)』である。
第一巻では、「律」の絵師修行と、幼馴染・涼太とのなかなか進展しない恋、といったところが目立って、「似面絵」の事件解決はちょっとおずおずとしていたのだが、本巻からは、律のところに持ち込まれる悩み事を解決するのに、彼女の「似面絵」がおおきく貢献するとともに、律の仇討ちも大きく進展していくのが本巻である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 上方から来た男
第二章 迷子の行方
第三章 舞う百日紅
第四章 簪の花

となっていて、まず第一章の「上方から来た男」は、浅草の生薬屋。万寿堂に入った遅込み強盗の似顔絵を仕上げるところからスタート。たった一人生き残った店の主人一家のの次男の犯人を探そうという熱意に、自らの両親の捜索に乗り出した律が、番町のお屋敷町で、父親の遺した犯人の似顔絵に似た「うりざね顔」の男を見つけるところから、お律の仇討ちが本巻で大きく進展していく。
もっとも、第一話で見つけた犯人らしき男は、両親が殺された時は、上方にいたようで、残念ながら犯人ではないのだが、その男・四郎がもたらす情報が真犯人へとつながる貴重なものとなります。
この捜索の途中で、四郎に誘われて、居酒屋に入るお律に、危うさを感じるのだが話のほうもっと思いがけない展開をします。

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江戸・神田相生町の女性「上絵師」の活躍と恋バナが始まる ー 知野みさき「落ちぬ椿」ネタバレあり

時は徳川十二代将軍・徳川家慶の頃、江戸の神田相生町に住む、女性の上絵師・律を主人公にして、彼女の絵師としての成長と、彼女が描く「似面絵」(似顔絵)を手がかりに、幼馴染の葉茶屋の跡取り息子・涼太とともに、もちこまれる様々な事件を解決していく「上絵師 律」シリーズの第一巻が本巻『知野みさき「落ちぬ椿 上絵師 律の似面絵帖」(光文社文庫)』である。
「上絵師」というのは、着物に花や鳥、紋様、家紋など、様々な絵を入れる仕事で、当方が最初思い浮かべた、陶磁器の上絵下絵の方とは違っておりました。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 落ちぬ椿
第二章 母の思い出
第三章 絵師の恋
第四章 春暁の仇討ち

となっていて、まず第一章の「落ちぬ椿」はこのシリーズのスタートとあって、メインキャストの「律」、幼馴染の「涼太」「香」が、彼らが幼い頃通っていた寺子屋の師匠・今井の長屋で「お茶」をごちそうになる場面から。「涼太」の生家である葉茶屋の青陽堂は、茶葉を売る大店で、彼はそこの跡取り息子で、今は「手代」として家業の見習い中。涼太の妹・香はすでに銀座の薬種問屋・伏野屋に嫁いでいる。そして「律」のほうは、弟・慶太郎と二人暮らしで、母親・美和は5年前で辻斬りにあって亡くなり、その時に怪我をした上絵師をしていた父親・伊三郎も最近亡くなった、という設定です。

律は父親の手伝いで、上絵描きをしていたのだが、腕のほうはまだまだで、父親が亡くなってから上絵の仕事を請けるため、情はあるが仕事には超厳しい呉服屋・池見屋の女将「お類」の指導を受けながら修行し、腕を磨いていくのだっが、本巻では、ひよっこもひよっこの腕前の段階です。
そのため、なかなか注文が取れずに生活費も乏しくなっているところを、涼太の店の得意客の南町奉行所の同心・広瀬保次郎が、律が人物絵がうまかったことを見込んで、事件の犯人の似顔絵を依頼してくる。もちろん、これによって「律」に報酬を定期的に支払って生活を助けようということですね。

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