明治の二十年代、銀座にある派出所に勤務する「滝」と「原田」の二人の警察官を主人公にするシリーズの第2弾。
第1弾の「明治・妖モダン」は江戸から明治に時代が移る中で、こっそりと人間の世の中へ忍び込んでいた「妖」たちが、その姿をそろそろと現してくる物語であったのだが、今巻は、幕末に地方の小藩「甫峠藩」の「甫峠村」でおきた「廃仏毀釈」の前触れともいえる、「五仏五僧失踪事件」を発端に、その事件の関係者が明治になって出会った怪異事件に、牛鍋屋・百木屋の常連たちが絡んでいく物語である。
話のもととなる「五仏五僧失踪事件」のおきた「甫峠村」は架空の村であろうから場所探しをしてもしょうがないのだが、維新後「筑摩県」に編入されたとあるので、今の長野県中信地方・南信地方、岐阜県飛騨地方のどこか、菜種油が名産で江戸にも出荷していたとあるので、太平洋側に近い諏訪市などのある南信のどこかかな、と推察してみる。
明治の初期にここの「菜の花」が病気のために不作になって菜種油の生産ができないうちに、西洋から石油が入って廃れたといったエピソードは、明治初期のエネルギー転換による日本の産業の構造変換と、維新の開国によって外国から産物だけでなく病もはいってきたのか、といったことを思わせて、「開国」による「陰」の部分を連想させる。