ビジネス」カテゴリーアーカイブ

「昭和的強制のつながり」は令和になってどうなるか? ー 本田直之「ゆるいつながり」

ほぼ十年ぐらい昔の、ちょうど「平成」の真ん中頃に、「レバリッジ」ブームを起こした、本田直之氏による「人のつながり」についての著述が本書『「ゆるいつながり 協調性ではなく、共感性でつながる時代」(朝日新書)』である。「人のつながり」と書いたのは、本書の「はじめに」のところから引用すると


「なにかを得るために人脈をつくろう、人脈をつくればなにか得をするだろう」というような発想で人とのつながりを築こうとすることは、スタートから間違っています

ということで、世間でよくいう「「人脈は金脈」「人脈をつくってビジネスを成功させる」といったこととはちょっと違っている。筆者によれば「仲間に貢献することを大前提としたコミュニティやネットワークのあり方」について書いたとのことだが、レバリッジ人脈術、レバリッジ時間術、レバリッジ・リーディングなど「レバリッジを効かす」というフレーズで、ブームを起こした筆者による、新しい時代の「人脈」「人とのつながり方」は、よくある「人脈本」とは一味ちがうのは間違いない。

続きを読む

「話し下手」でもコミュニケーション上手になれる ー 吉田照美『「コミュ障」だった僕が学んだ話し方 」』(集英社新書)

 文化放送のアナウンサーで、ラジオ番組の「セイ・ヤング」、テレビ番組の「ぴったし カン・カン」などの司会でいられる売れっ子アナウンサーの「吉田照美」さんによる話し方、コミュニケーション・スキルについてのノウハウ本。

本文中にもあるのだが、筆者は浪人時代に、「コミュニケーション障害」どころか、幻聴も聞こえるノイローゼ状態になって人付き合いがほとんどできなかった時代があるそうで、そこからの立ち直りの体験談も含めての「コミュニケーション」「話し方」についてのアドバイスは値打ちがある。

「コミュ障」だった僕が学んだ話し方 (集英社新書)

「コミュ障」だった僕が学んだ話し方 (集英社新書)

posted with amazlet at 19.05.17
吉田 照美
集英社 (2017-12-15)
売り上げランキング: 229,332

続きを読む

しょぼくても「生きていい」「生きていける」起業のススメ ー えらいてんちょう「しょぼい起業で生きていく」(イースト・プレス)

筆者は「朝、起きられない」といった曖昧な動機から、リサイクルショップの起業をスタートに、イベント・バーなどを立ち上げた、いわゆる成功している「青年起業家」であるのだが、本書の「はじめに」のところによれば、

この本では、そんな従来の「起業」というイメージとはまったく別の「多額の開業資金」も「特殊な技能」も「綿密な事業計画」もいらない「しょぼい起業」という新しい考え方と、その方法をみなさんいお伝えしていきます。

ということで、「会社を辞めてガンガン稼ごうぜ、あなたもこれで大儲け」といった、いわゆる「アオリ」系の「起業本」ではない。
むしろ、起業のススメというよりは、新しい「生き方」「働き方」の提案書という色合いの強い「ビジネス本」である。

しょぼい起業で生きていく
しょぼい起業で生きていく

posted with amazlet at 19.05.10
えらいてんちょう
イースト・プレス (2018-12-16)
売り上げランキング: 3,553

楽天Booksはこちらから

続きを読む

組織のノウハウを伝えていくには「秘訣」がある ー 「人もチームもすぐ動く ANAの教え方」(KADOKAWA)

「ANAの口ぐせ」で、ビジネス・ノウハウ全般、「ANAの気づかい」ではビジネスや組織を円滑にまわすためのコミュニケーション・ノウハウについて、そのキモのところを惜しげもなく外へ出してくれた、「ANAの〇〇」シリーズであるが、本書は、「教え方」、つまり、先輩や組織に「ナレッジ」として蓄積されるノウハウをいかにして後輩や外の組織に伝えていくか、のノウハウである。

秘訣やコツといったものは、多くの組織で優秀な人ややる気のある人が数人いれば獲得できたり、見つけ出したりといったことが可能なのだが、困難なのは、その「秘訣」や「コツ」をきちんと伝えるシステムをどうつくるか、ということで、この「伝承」がうまくいかなくて、代が替わると衰退してしまう組織は枚挙にいとまがない。本書は、多くの組織の悩みのタネである「教えること」のANA流のノウハウのまとめ本である。

 

 

 【構成と注目ポイント】

構成は

Chapter1 ANAの先輩は、後輩の「サポーター」

Chapter2 ANAの先輩は、思い切って「任せる」

Chapter3 ANAの先輩は、一人を「チーム」で育てる

Chapter4 ANAの先輩は、「褒める、叱る」に心を込める

Ckapter5 ANAの先輩は、自分自身も「教わる」

 となっているのだが、まず注目すべきは

「先輩は、後輩が自律成長するためのサポーターである」これが、ANAの教え方の基本です。私たちの会社においては、先輩は後輩を「動かす」のでもなく「引っ張る」のでもなく、サポートすることに重きをおいています(P6) 

 

続きを読む

難しくなる一方の「労働環境」にお悩みの方への福音の書 ー「仕事も人間関係もうまくいく ANAの気づかい 」(KADOKAWA)

前著「ANAの口ぐせ」では、ANAのビジネス・スキル全般について取り上げられていたのだが、今巻は、そのスキルの根幹の一つといっていい「気づかい」についてである。
『現場で、人から人へ受け継がれてきた、いわば「口伝の技術」を初めて公開』ということで、まあ秘伝を「公開」ってな雰囲気であろうか。

【構成と注目ポイント】

構成は

はじめに
Chapter1 「気づかい」は成果に必須のビジネススキル
Chapter2 すべての気づかいは「時間を守ること」から始まる
Chaptre3 「お客様をよく見る」のが接遇の基本
Chapter4 初対面で「すぐに打ち解ける」にはコツがある
Chapter5 気づかいの「マジックフレーズ」で人を動かす
Chapter6 ANA流「上司から部下」への気づかい
Chapter7 気遣いを「チーム」で活かす方法

となっていて、最初に注目したいのは、「はじめに」のところで言われている

チームメンバーとは初対面のこともあるでしょう。
職場によつては、違う企業文化の人たち、違う国の人たちといっしょに仕事をする機会が訪れることもあるかもしれません。
そんなとき重要になるのが、ちょっとした「気づかい」です。
サービス業だけに留まらず、前提を共有していない相手と同じゴールを目指すため、「気づかい一は必須のビジネススキルになりつつあるのです。(P8)

ということで、海外労働者の受け入れが本格的に始まろうという時期に、一番重要なのは、案外にこういうことかもしれないね、と思った次第。

続きを読む

第一線の航空企業のビジネスノウハウは、とても「人間くさい」ものだった ー 「どんな問題も「チーム」で解決する ANAの口ぐせ」(KADOKAWA)

特定の企業の経営のノウハウ、特に社員教育のノウハウについては、その企業の毀誉褒貶や業績の如何によって、評価が乱高下することがよくあるので、ブックレビューでとりあげるのに注意が必要なのである。
ただ、ANAという特定企業名を超えて、安全管理と定時運行とカスタマーサービスといった複数の要素の質の高さが同時に求められる”航空業界”のトップのノウハウが知れるのが本書である。

【構成と注目ポイント】

構成は

はじめに
Chapter1 ANAの社員は、「あれっ、大丈夫?」が口ぐせ
Chapter2 ANAの社員は、いつでもどこでも「雑談」する
Chapter3 ANAの社員は、「失敗」をとことん活かす
Chapter4 ANAの社員は、「好き嫌い」を気にしない
Chapter5 ANAの社員は、「基本」を徹底する
Chapter6 ANAの社員は、自分以外を「お客様」と考える
おわりに 危機だからこそ、成長できる

となっていて、こういう組織論のビジネス書では、ところどころに尖った「理屈」が忍び込んでくることがあるのだが、長い期間に渡って、多くの人によって練り上げられてきたノウハウというのは意外と人間心理に根ざしたところもある。

続きを読む

1日7万食、配食するメガ「弁当屋」企業から組織づくり・人づくりの秘訣を盗め ー 菅原勇一郎「東京大田区・弁当屋のすごい経営 (扶桑社)

都内15区と神奈川県の一部をエリアに、会社向けに配達する税込450円の日替わり弁当だけを扱って、1日7万食を配達している、大田区の宅配弁当会社・玉子屋の二代目社長による「経営本」である。

本書によると3000食/日扱えば、弁当業界では大手といわれるそうなので、7万食/日で、年商90億円の「玉子屋」は弁当業界の「メガ企業」には間違いない。
ただ、スタンフォード大学のMBAコースの「ケーススタディ」に選ばれたのは、その「メガさ」というよりは、そのサプライチェーンのユニークさなど、経営のユニークさにあるらしい。

【構成と注目ポイント】

構成は

1章 中小記号の事業承継は先代が元気なうちに
2章 数字で語る玉子屋
3章 嫌いだった弁当屋を継いだ理由
4章 社員の心に火を灯せ
5章 玉子屋の未来

となっていて、本書の読み方としては、二代目社長への事業承継のノウハウや、二代目社長からみた創業企業の継ぎ方、といった視点か、一日7万食を配食する秘訣とか、それを支える社員育成の視点で読むか、といったところなのだが、当方は二代目社長の身の上でもないので、後者の視点に近い所で読んでみた。

続きを読む

アイデアは「新たに生み出す」のではなく、「くっつける」もの ー 水野学「アイデアの接着剤 」

ここのところ、「デザイン」や「アイデア出し」といったところや、そのための「センスアップ」についての本を読んだり、レビューしているわけなのだが、こういった関係についtねお究極のところの万人の悩みは、「どうしたら、斬新なアイデアが、ばんばん出せるようになるの?」というところであろう。

もちろん、「デザイン」や「センスアップ」が、特定の人たちの特殊な能力ではないことは、水野学氏の「センスは知識から始まる」や「「売る」から、「売れる」へ 水野学のブランディング講義」などの著作ではっきりと言われているのだが、それでも、なにか、斬新な「アイデア出し」の秘訣はないものか、とすがってみたのが本書『水野学「アイデアの接着剤」(朝日文庫)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

Prologue アイデアの接着剤
第一章 人と人
 接着剤 その1 コミュニケーション
 接着剤 その2 客観性と主観性のザッピング
 接着剤 その3 「大義」をもって仕事をする
第二章 知識と知識
 接着剤 その4 「知識+知識」のイノベーション
 接着剤 その5 「洞察力」を研げば「切り口」が変わる
第三章 ヒットのつくり方
 接着剤 その6 インプットの質を高める
 接着剤 その7 時代の「シズル」を嗅ぎ分ける
Epilogue 価値観を変えてくれるのは、いつも「人」

となっていて、まず最初に目を引くのは、最初のほうの

ところで、僕は一度たりとも「アイデアを生み出した」ことがありません。
これから先も、「アイデアを生む」なんてことは、おそらくないと思っています。
僕の仕事は、世界に無数に転がっている、アイデアのかけらとかけらを拾い集め、ぴったり合うものを、くつつけることだから。(P5)

といったところで、アイデアを出す時に、とにかく誰も考えつかないものを、とかいった発想に陥りがちなのだが、そのへんは根底から考えなおしたほうがよさそうなアドバイスに、まず驚く。

続きを読む

日本が再飛躍するためのビジョンを考えてみよう ー 落合陽一「日本再興戦略」(幻冬舎)

最近「日本はスゴイ」「日本の実力はこんなにある」という自画自賛的な論説やTV番組が増えてきていて、たしかに、今まで気づいていなかった「日本の良さ」や、歴史の中に埋もれたしまっていた優れた人物を再発見するにはいいきっかけとなるのには間違いないのだが、自分褒めの度合いが過ぎると、かえって嘘くさくなって薄ら寒くなることがあるのは、当方だけではないはず。

失われたものや隠れていたことを発見するのとあわせて、現状を見据えながら、がっつりとした「希望のある」将来展望を語ってくれるものはないのか?、と思っていたところ現代の若きオピニオン・リーダーの落合陽一氏が、力強く「日本の再飛躍」について語っているのが本書『落合陽一「日本再興戦略」(幻冬舎)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

はじめに:なぜ今、僕は日本再興戦略を語るのか?
第1章 欧米とは何か
第2章 日本とは何か
第3章 テクノロジーは世界をどう変えるか
第4章 日本再興のグランドデザイン
第5章 政治(国防・外交・民主主義・リーダー)
第6章 教育
第7章 会社・仕事・コミュニティ
おわりに:日本再興は教育から始まる

となっていて、見てのとおり、日本が「復活」を遂げるために必要となる分野について、おおむね網羅して言及してあるといってよく、まず、

我々は今、デザインにしても教育にしても、あまつさえ効果不明な健康法すらも無秩序に「日本はだめで、何々に見習え」と言うばかりで、考え方の基軸がありません。我々はいったい何を継承してきて、何を継承してきていないのか。それを正確に把握した上で、今後勃興するテクノロジーとの親和性を考えていかないと、日本を再興することはできません。
日本にも考える基軸は絶対にあるはずです。我々は他の国に引けを取らない長い歴史を持ち、歴史の中で何度もイノベーションを起こしてきました。

といったスタンスには、自家中毒で酩酊することなく、隣の芝生だけを見て無駄に卑下することもなく、冷静で、偏ることのないスタンスで語ろうという意志が見えて、安心感を覚える。

続きを読む

「諦めること」に積極的な意味を見出す”生き方”もある ー 為末大「諦める力 勝てないのは努力が足りないからじゃない」

先日は、同じ為末さんの「限界の正体」で、限界をどうしたら突破できるか、限界を感じるのは全力を尽くしてから、といった書評を書いたのだが、同じ筆者のものながら、今回は「諦める」ということについてである。

先に取り上げたものとちょっと背反するんじゃないの、という声も聞こえてきそうなのだが、筆者は「限界の正体」でも「努力してもどうにもならないことがある」ことは認めていて、全力で壁を超えようとチャレンジした後に「諦めてしまうこと」は善くないことなのか?、もうお終いということなのか?、について言及し、「諦めること」の肯定的な意味を教えてくれるのが本書『為末大「諦める力 勝てないのは努力が足りないからじゃない」(プレジデント社)』である。

 

【構成と注目ポイント】

構成は

第1章 諦めたくないから諦めた
第2章 やめることについて考えてみよう
第3章 現役を引退した僕が見たオリンピック
第4章 他人が決めたランキングに惑わされない
第5章 人は万能ではなく、世の中は平等ではない
第6章 自分にとっての幸福とは何か

となっていて、最初にいうと、筆者自体が100メートルからハードルに転向し、オリンピックの銅メダルの獲得後ほどなく競技生活から引退し、という「諦めた」人である。

通常、何かを諦めた人は、他の分野に移ってもわだかまりをかかえていることが多いのだが、筆者の場合、「諦めた」後が輝いていて、それは

続きを読む