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”宮前久美”、イノベーションを学んでグレードアップする ー 永井孝尚「100円のコーラを1000円で売る方法 3」(中経出版)

宮前久美という、美人なのだが、とても気が強くて負けるのが大嫌いな女性を主人公に、第一巻は「マーケティング全般」、第二巻は「競争戦略」をテーマにしていた「100円のコーラ」シリーズも最終巻である。
今巻は、第二巻の最終章で、「ガンジーネット」という会計ソフトのグローバル企業の日本法人社長となった、駒沢商会の上司で、マーケティングの指導者でもあった「与田」を相手のバトルを通じて「イノベーション」について物語仕立てでレクチャーしてくれる。

【構成は】

Prologue ガンジーネット・ジャパン社長・与田譲
Target1 破壊的なライバルは外からやってくる
 ーグローバル市場の怖さ
Target2 iPhoneやKindleはなぜ世界中で使えるのか?
 ー個別カスタマイズから標準品へ
Target3 企業メッセージの99.996%はスルーされる
 ー共感の時代のマーケテイング戦略
Target4 無料でも儲かる仕組みとは
 ーフリーミアムのビジネスモデル
Target5 トランジスタラジオが真空管ラジオを駆逐した理由
 ーイノベーションのジレンマ
Target6 買収するほうは立場が強いとはかぎらない?
 ー交渉の成否を握るBATNA
Target7 なぜグーグルはYouTubeを買収したのか?
 ーM&Aを成功させる方法
Target8 アップルがiPadでパソコンを否定した理由
 ーイノベーションの作法
Target9 有料で1万人に売るか、無料で100万人に使ってもらうか?
 ー数が生み出す新たな価値
Target10 動きながら考える
 ーイノベーターの素養
Epilogue それぞれの新天地へ
あとがき 現状維持は破滅

となっていて、大筋的には、グロバール企業のガンジーネットが、そのフリーミアム戦略で、「駒沢商会」はおろか、市場大手で大企業のシェアのほとんどを持っている「バリューマックス社」の経営を脅かすようになっっている状況下で、両社が共同して、自社製品の、画期的なイノベーションを行って、商品ラインナップから業態まで、がらっと変えてしまう、というもの。
あいかわらずの「宮前久美」流の大騒ぎは健在で、まるで、ジェットコースターに乗ってアップダウンしているようなストーリー展開なのだが、爽快感のある展開で、「久美」の乱暴な活躍を楽しみながら、経営理論の知識が手に入るのは、儲けものには間違いない。

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宮前久美と一緒に「競争戦略」を学んでみよう ー 永井孝尚「100円のコーラを1000円で売る方法 2」(中経出版)

会計ソフトを扱う「駒井商会」を舞台に、美人だが鼻っ柱の強い「宮前久美」を主人公にして、マーケティング理論などを、ストーリー仕立てで描く「100円のコーラ)シリーズの第2弾。本書のテーマは「競争戦略」である。 2012年の刊行なので、今までのビジネス界につきものの栄枯盛衰はあるので、例示されている「企業名」の違和感を感じる向きもあるかも知れないが、その当時の、その企業の戦略の評価と考えて読み進めよう。

【構成は】

Prologue 宮前久美再び 1st Match 業績悪化の真犯人は誰だ? ー日本型コンセンサスの落とし穴 2st Match なぜマクドナルドはリーダーであり続けるのか? ー弱者の差別化戦略と強者の同質化戦略 3st Match 実験は「結論」から始めろ ーPDCAの本質とストーリー戦略 4st Match ”あらゆる事態”に備えるな ー網羅思考のワナ 5st Match 「平等から公平へ」シフトしたパナソニック ー仮設思考と論点思考 6st Match マツダがガソリン車でハイブリッド車に対抗できた理由 ー弱者に不可欠な「選択と集中」 7st Match ローコストキャリアが大手航空会社に勝つ方法 ー「やらないこと」を決める差別化戦略 8st Match 「1+1+1=3」を超えるチームづくり ーミンツバーグの創発戦略 9st Match 撤退する勇気 ートレードオフの見きわめ方 10st Match 社員14人で業界シェア80%を握るコミーの戦略 ー参入障壁の築き方 Epilogue 与田誠の転身 あとがき 成功体験からの脱却

となっていて、あらすじは、「社長の会計」というクラウド型の会計ソフトを売り出して順風満帆に見えた「駒井商会」なのだが、ライバルの大手企業・バリューマックス社が類似のソフトを売り出し、業績に暗雲が漂い始める。 この事態を重くみた新社長から、久美は「社内タスク・フォースチーム」の責任者に任じられ、張り切るのだが、彼女の性格もあってか、社内の古手の営業担当専務と対立する事態に。これに乗じてライバル企業は、さらに攻勢をかけてくるのだが、果たして宮前久美はどう挽回するのか・・?、といった展開である。

100円のコーラを1000円で売る方法2

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日本人女性人事ウーマンのグローバル企業奮闘記 ー 増田弥生・金井壽宏「リーダーは自然体 ー 無理せず、飾らず、ありのまま」

本書の主役・増田弥生さんは、リコーの「ふつうのOL」として庶務や秘書業務をやったあと、海外営業、日米合弁企業の立ち上げと店仕舞、そして、リーバイス、ナイキで「人事」のエキスパートとして業績を上げた、企業社会の勝ち組のウーパーウーマン。
そういう女性と経営学者の金井壽宏の、対談のようなやりとりを収録したのが本書『増田弥生・金井壽宏「リーダーは自然体ー無理せず、飾らず、ありのまま」(光文社新書)』。

【構成は】

第一章 リーダーは自分の中にいる
第二章 新人でも「社長目線」で取り組む
  ーお気楽OLのリーダーシップ入門時代
第三章 どこでも通用するプロになる
  ー転身、専門性を磨いた時代
第四章 自分自身のリーダーシップを磨く
  ー再び渡米、「筋肉」を鍛える旅へ
第五章 グローバル時代のリーダーシップ
第六章 リーダーとしてより良く成長する
終章 リーダーシップのベース:「自己理解」と「自己受容」

となっていて、第二章が国内のリコー時代、第三章がリーバイス、第四章がナイキ時代の回想。第五章からがこれらを踏まえてのリーダーシップ論となっている。

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”実践”には十分役立つ、軽めの「マーケティング入門書」 ー 永井孝尚「100円のコーラを1000円で売る方法 1」

先だってレビューした『「これ、いったいどうやったら売れるんですか?ー身近な疑問からはじめるマーケティング」(SB新書)』の先行バージョンといっていいのが、本書『永井孝尚「100円のコーラを1000円で売る方法 1(中経文庫)』。 「これいったい・・」とは、ちょっと趣向が違って、アメリカのビジネス書でよくある、主人公の彼女(彼)のドラマに託してマーケティングを語るといった形式の、ドラマ仕立てのマーケティング入門書である。

【構成は】

Plologue 宮前久美登場 Round1 アメリカの鉄道会社はなぜ衰退したのか? ー事業の定義 Round2 「お客さんの言いなりの商品」は売れない? ー顧客絶対主義の落とし穴 Round3 顧客の要望に100%応えても0点 ー顧客満足のメカニズム Round4 値引きの作法 ーマーケットチャレンジャーとマーケットリーダーの戦略 Round5 キシリトールガムがヒットした理由 ーバリュープロポジションとブルーオーシャン戦略 Round6 スキンケア商品を売り込まないエステサロン ー競争優位に立ちためのポジショニング Round7 商品を自社で売る必要はない ーチャネル戦略とWin・Winの実現 Round8 100円のコーラを1000円で売る方法 ー値引きの怖さとバリューセリング Round9 なぜ省エネルックは失敗してクールビズは成功したのか ーコミュニケーションの戦略的一貫性 Round10 新商品は必ず売れない? ーイノベーター理論とキャズム理論 Epilogue 終わりなきマーケティング革命

となっていて、「駒沢商会」というソフトウェアの販売会社が本書の舞台。 主人公は、”鮮やかな色のスーツを着こなし、年齢は30歳前後。アカ抜けていて眼力が強く、いかにも勝ち気な印象だ。黒いストレートのロングヘアがひときわ目立つ」という「宮前久美」という女性で、彼女が商品企画部の「与田」、久美の同僚の営業部員・井上太郎といったところをメインキャストに展開する。

主人公は、とても高ピーで自信家の女性マーケターなので、ここで好みが分かれるようで、このへんはAmazonのコメントでも言われてますね。

100円のコーラを1000円で売る方法

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ブログのプランニングに「マーケティング理論」を使ってみてはどうか ー 永井孝尚「これ、どうやったら売れるんですか」

ブログを始める前には、そのブログのテーマをきちんと考えなさい、っていうのは、ブログ教本には書いてあるんだが、どうやっていいのか方法がわからないのが悩みのタネの人は多いはず。

ただ考えてみると、ブログのプランニングというのは、新商品開発や商品企画と同じなのでは、ということで、いわゆる「マーケティングの手法」が使えるのでは、と思いついたのだが、経済学や経営学の本というと、大学の講義をはじめ、やたら横文字や難しい漢字が出現して、普通の一般人なら、気楽に読もうと思える代物ではない。

で、見つけたのが、そういう類の主要なマーケテイング理論を、具体のケースを使いながら、とてもわかりやすく解説してくれているのが、本書『永井孝尚の「これ、いったいどうやったら売れるんですか?ー身近な疑問からはじめるマーケティング」(SB新書)』である。

【構成は】

第1章 腕時計をする人は少ないのに、なぜ腕時計のCMは増えているのか?
 ー「バリュー・プロポジション」と「ブルーオーシャン戦略」
第2章 人はベンツを買った後、どうしてベンツの広告を見てしまうのか
 ー「顧客」と「ブレンド」
第3章 雪の北海道でマンゴーを育てる
 ー「商品戦略」と「顧客開発」
第4章 あの行列のプリン屋が赤字の理由
 ー「価格戦略」
第5章 なぜセブンの隣にセブンがあるのか?
 ー「チャネル戦略」と「ランチェスター戦略」
第6章 女性の太った財布には、何が入っているのか
 ー「プロモーション戦略」と「マーケティングミックス」
第7章 きゃりーぱみゅぱみゅは、なぜブレイクしたのか?
 ー「イノベーター理論」と「キャズム理論」
第8章 古本屋がふつうの古本屋より儲かる理由
 ー「マイケル・ポーター5つの力」と「競争戦略」

となっていて、副題を見てもわかるように、ほぼ有名どころの「マーケティング理論」はおさえてあって、かなりわかりやすく解説してくれている。特徴としては、オーソドクスなマーケティング解説本といえるのではなかろうか。

 

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経営の肝にレバレッジをかける ー 本田直之「レバレッジ・マネジメント」

「レバレッジ・リーディング」「レバリッジ・シンキング」などでブームとなった「レバレッジ(てこ)」本シリーズの「マネジメント編」が本書『本田直之「レバレッジ・マネジメントー少ない労力で大きな成果をあげる経済戦略」(東洋経済新報社)』である。

【構成は】

第1章 経営者のレバレッジ
第2章 戦略のレバレッジ
第3章 営業のレバレッジ
第4章 ブランドのレバレッジ
第5章 仕組み化のレバレッジ
第6章 組織のレバレッジ

となっていて、マネジメントについて筆者が重要と思われるポイントはまとめているが、本書の冒頭に

「会社がどうなるか、その鍵は経営者が握っている」  いかなるトップ、役員、幹部であるか。つまり、経営陣がどういった人物であり、何を考え、どのように行動しているか。端的に言えば、「経営者の思考」がいかなるものかが、うまくいく会社とうまくいかない会社の違いを作り出している。
(略)
「思考」というOSを整えない経営者は、やるべきこともわからないままテクニックだけをやみくもに取り入れることになり、そこにはさまざまな誤解が生じてしまう
(略)
本書は読むためではなく、「考えるツール」である

とあるように、本書は、マネジメントの知識を得るハウツー本ではなく、マネジメントに携わる者が、自分の頭脳と自分の言葉で「考える」ための「道標」として読むべきであるようだ。

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世の中の成功原理は間違いだらけ ー エリック・パーカー「残酷すぎる成功法則」

「成功の法則」は書店のビジネス書のコーナーにいけば、溢れんばかりに陳列されていて、そのどれもが、「これ一冊でOK」と主張しているのだが、さて、どれが一番いいのか、はっきりと答えられる人は稀であろう。
そんな、世間に流布する「成功法則」を捌(さば)いてみせるのが本書『エリック・パーカー「残酷すぎる成功法則ー9割まちがえる「その常識」を科学する」(飛鳥新社)』である。

【構成は】

序章 なぜ「成功する人の条件」を誰もが勘違いしているのか
第1章 成功するにはエリートコースを目指すべき?
第2章 「いい人」は成功できない?
第3章 勝者は決して諦めず、切り替えの早い者は勝てないのか
第4章 なぜ、「ネットワーキング」はうまくいかないのか
第5章 「できる」と自信を持つのには効果がある?
第6章 仕事バカ・・・それとも、ワークライフバランス?
結論 本当に人生を成功に導く法則は何か

となっていて、捌かれる「成功法則」は世間一般、流布している成功原理ばかり。

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経営者への転進は「起業」だけが選択肢ではない ー 三戸政和「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」

経済産業省の調査によると、中小企業経営者のうち、95%が事業を他の人に引き継ぎたいと思っているのだが、そのうち、20%が事業承継を希望しているが後継者が居ない状況であるとのこと。
一方で、高齢者の定年後の再就職は、政府の旗振りはあるが、なかなか進まないというのが現状。
その双方を結びつければ、廃業による日本産業の空洞化と高齢者の就業問題の「処方箋」になるのでは、と提案するのが本書『三戸政和「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」(講談社+α文庫)』である。

【構成は】

序章 「人生100年時代」は資本家になりなさい
第1章 だから、起業はやめておきなさい
第2章 飲食店経営に手を出したら「地獄」が待っている
第3章 中小企業を個人買収せよ
第4章 100万の中小企業が後継社長を探している
第5章 「大廃業時代」はサラリーマンのチャンス

となっていて、はじめの第1章・第2章のところは、「定年退職者」が陥りがちな「起業の甘い誘い」の戒め、第3章以降が、本書の主張の主眼である「個人M&Aのススメ」である。

【注目ポイント】

なぜ「定年起業」ではいけないの、というあたりについては

まったくのゼロから事業を立ち上げ成功させる起業家を、私は「 ゼロイチ起業家」と呼んでいます。そうした起業家は、「息を吸うかのように」とんでもない仕事をしています。ゼロイチ起業家は、「普通」の人間とは違う世界を生きています。新しい事業のチャンスを 嗅ぎ 分ける 嗅覚 の 鋭さも別格です。

と、起業家に求められる「特異」な性向を強調するととともに

起業とは、会社を作ることではありません。事業を作ることです。会社を作ることは誰でもできます。ネットで「会社 作り方」と検索し、その通りに手続きするだけです。しかし、今すでにあるサービスや商品を自らの手で販売していくだけでも大変なのに、まして、世にないサービスや商品を創造し、市場に浸透させていくベンチャービジネスを軌道に乗せるのは、並大抵のことではありません。この点を誤解しないでいただきたい

といった感じで「起業」というものに抱きがちな「幻想」をきつく戒めている。
さらには、会社辞めたら「ラーメン屋でも」とか「趣味の蕎麦を」といった感覚で飲食業に手を出そうとする人たちへ

断言します。引退後に飲食店を経営して成功できるのは、飲食業界にいて必要な経営スキルを身につけている方だけです。ノウハウのない人が安易に手を出すと「地獄」を見みます。

経験から強く感じるのは、飲食業は「基本的には勝てないビジネスモデル」だということです。
開業しやすそうにみえるのか、普段足を運ぶカフェなどがラクに回っているように見えてしまうためか、飲食店経営を軽く考えている人が余りにも多いと感じます。ベンチャーキャピタリストの目で見れば、飲食店はもっとも難しいビジネスの一つです

と恐怖心を煽るのであるが、たしかに筆者の言いたいところは伝わってきて、それは、「イチからの起業のようなハードワークとリスクを負うことは、定年を機にやることではなくて、起業したい人は放っておいても起業するんでしょ」というところであろう。

で、筆者がオススメするのが

そんな「ゼロイチ起業」より、過酷な 10 年を生き残った 23%の企業の〝オーナー社長〟 になってしまいませんか、というのが私からの提案です。具体的には、あなたのこれまでの知識と経験を活かせる中小企業を見つけ、個人でM&Aをして、経営を引き継ぐ……つまり、「 会社を買う」= 事業承継

ということで、本書の中盤あたりからは、財務系やマーケティングといったサラリーマン時代の知識が、中小企業の経営層には少ないことや、大企業で培ったビジネスモデルを導入すれば、もっと成長する、といったことを挙げながら「個人版M&Aのススメ」が展開される。

ただ、ここで気をつけておかないとな、と思うのは、けして筆者は大企業出身者なら誰でも大丈夫といっているわけではなく、

会社経営は生き物です。継続していくには、これまで記したノウハウだけでは足りません。なにより経営者の情熱が必要です。

とキチン(少々控えめに、ではありますが)と釘を指しているので、そこのところは忘れてはいけない。

当方としては、小さな組織であっても「経営」に携わるのであるから、「経営者としての覚悟」はないといけないよな、と思うところで、「経営者」となる場合は「サラリーマン」とはかかってくるプレッシャーは違うよ、ということは肝に銘じておかなければならないだろう。

【まとめ】

「中小企業の事業承継」と「高齢者の能力活用」ということからみると、筆者の提案は面白い。特に、起業意欲のある退職予備軍に対して、無責任な「起業」をすすめるよりも、本書の提案は良心的である。
とはいいつつつも、本書の提案は、「ゼロベース起業」ではないにしろ、「起業」の一つであるのは間違いない。しっかりと考えて実践するかどうか、「自己責任」で判断してくださいな。

「変革」は一日にして成らず ー 金井壽宏「組織変革のビジョン」

最近は、会社とかの「組織」に属さない働き方が、もてはやされているところがあって、「組織をどうするか」や「組織は変わるべきか」といった議論は少々、時代遅れのものになっているかもしれない。
だが「フリーランス礼賛」や「副業OK」という声が大きくなっても、今のところ、多くのビジネスマンが、「組織」に属し、上司や同僚に囲まれながら、日々の糧を得ている、というのが大半で、組織が生き延びられるかといったことは重要な関心事であろう。
そういう「組織変革」を正面から取り上げたのが、本書『金井壽宏「組織変革のビジョン」(光文社新書)』

【構成は】

プロローグ うちの会社も、どこの会社も
第1章 個人にとって組織とはなにか
第2章 なぜ組織変革が必要なのか
第3章 変革を動機づける
第4章 組織変革を阻むもの
第5章 組織変革のリーダーシップ
第6章 組織改革のビジョン

となっている。
前節で「正面から」とあえて表現したのは、組織改革のよくある「ビジネス本」のように「こうすれば(みるみる)組織は変わる(バラ色)」といった楽天的な組織論ではなく、なぜ組織は変わらないか、組織を変えようとした人はどう扱われるか、というところまで言及した、少々辛めの書であるように思えたからで、組織変革の裏表、陰陽といったところにも読者は思いを巡らせないといけないようだ。

【注目ポイント】

◯変革には上層部の関わりが肝

まずおさえておかないといけないのは、

「うちの会社は順調にいっている。環境を的確につかまえて、うまく適応しているから、大きな変革は必要ない」と考えているひとがおおぜいいるとしたら、その会社はいずれ危なくなる。そう考えているひとは、「適応は適応力を阻害する( Adaptation precludes adaptability)」というカール・E・ワイクの名言を噛みしめていただきたい

というところで、往々にして、足元までヒタヒタと並がやってきているのに、上ばかり見ているとそれに気付かないことが多いものである。順調に見える組織が、実はいろんなところにガタがきていて、その手当をしなかったせいで、もろくも崩れてしまうのはよくあることで、改めて足元を見つめ直す必要を訴えている。
ではあるのだが、じゃあ、「危機的だ、危機的だ。」といっていればよいものではなく、

日本の経営者は、危機感をあおれば組織は変わる、変革がうまくいくと故意に錯覚しているか、思い込もうとするところがややもすればいきすぎているように思える。確かに危機感は大事だ。でも、煽るばかりではいただけない。程度というものがある

ということで、「言霊の国 日本」では、「危機的状況だ。組織変革をするぞ」と上層部が言い続けていると、組織が変わっているという情報を、つくり上げてでももってくる「きらいがあるのが、日本的組織というもので、本当の組織を変える動きになっているか、変わっているかは、経営者がきちんと自ら判断しないといけないものであろう。

◯変革のスタッフへの高処遇が必要

というのも、こうした組織の変革の任に当たるスタッフが、恵まれているかと言うとそうでもない状況にあるようで、

変革のリーダーはプロジェクトの全貌にかかわる必要がある。というのは、変革のプロジェクトは言い出しっぺが最後までやり通さないといけないところがある。立ち上げから回り始め、終了までの全貌を目配りすることが多いからタスク・アイデンティティは高くなる。

といったように、かなりハイレベルの能力と責任が必要とされるのだが、

ポーター=ローラーの期待理論からすると、変革のプロジェクトはあまり分がよくない。期待には、努力したら業績をあげられるという期待と、業績をあげれば報酬が入ってくるという二通りの期待があった。努力してうまく成し遂げられた場合の内発的報酬は大きいかもしれないが、プラスの外発的報酬はそれほど大きくはないばかりか、変革には痛みを伴うものが多いからマイナスの外発的報酬も予想される

といったことで、リスクを取り、成果を上げつつも報いられない事例はよく見かけるもので、少なくとも「変革に携わる者」には、しっかりとしたサポートと成果報酬を与えることが必須であるような気がしますな。

そもそも「変わること望んでいない」人々を「変える」こと難問なんであって、

ひとというものは、新しい生活(変化)を望んでいるときでさえ、古い生活を(心理的に)捨て去るのは難しい。新しい生活をはじめようとすれば、まず古い生活をきちんと終わらせる必要がある

といったことを丁寧にやっていかないと「変革」は動いていかないんであろうな。

筆者は「組織変革が失敗に終わる八つのつまずきの石」として
① 現状満足を容認してしまって十分な危機感がない。 ② 変革を進めるのに必要な強力な連帯を築くことを怠る。
③ ビジョンやミッションの重要性を過小評価する。
④ 従業員にビジョンを十分にコミュニケートしない。 ⑤ 新しいビジョンに立ちはだかる障害の発生を放置してしまう。
⑥ 区切りごとに成果、 進捗 を確認することを怠る。 ⑦ あまりに早急に勝利を宣言する。
⑧ 変革を企業文化に定着させることを怠る

といったことを挙げているのだが、ほとんどの「変革」がこの石に躓くあたりに、「変革」の難しさがあるんでしょうな。

【まとめ】

当方の認識としては「変わらないようで変わるのが人の心」で「変わるようで変わらないのが組織」というもの。

本書の最後の方の

一橋大学の伊丹敬之先生に、『人本主義企業』という著書がある。サブタイトルは「変わる経営 変わらぬ原理」と魅力的で、「いいサブタイトルですね」と申し上げたところ、「逆の会社がたくさんあるから」と言われた。本来、原理原則は変わらないから原理原則なのに、「コロコロ変わる原理原則 変わらぬ経営」の会社が多すぎるということ

という言葉をしっかり噛み締めながら、「変えるべきところを変える」といった努力を丁寧に継続していくことが、「変革」の基本なんでしょうね。

 

「教える」より「コーチング」が部下育成のトレンド ー 菅原裕子「コーチングの技術」

最近の職場は、リストラや合理化がいきついてしまって、多くの管理職が、マネジメントに専念できるポジションではなく、プレイイング・マネジャーとなっていることが多い。しかも、職種や経験も多種多様でな部下を抱えながら、「チーム」としての総合力と成果を求められているビジネスマンは多いのではなかろうか。
そんな時に、有効な「手法」としてよく言われるのが、「コーチング」という言葉であるのだが、じゃあ、その中身は、といった具体的なことになると、途端にぼんやりとしてしまうのではなかろうか。
そんな「コーチング」についての入門書が本書『菅原裕子「コーチングの技術 上司と部下の人間学」(講談社現代新書)』。

【構成は】

はじめに
第1章 人の可能性を開くコーチング
第2章 コーチングが発揮される環境とは
第3章 コーチングの技術
第4章 グループコーチングの技術「ファシリテーション」
第5章 セルフコーチングのすすめ
あとがき

となっていて、第1章から第2章が、コーチングの重要性の提案とコーチングが使える場面、第3章がコーチングの主なテクニック、第4章、第5章が、応用編、といった構成である

【注目ポイント】

◯コーチングとは

そもそも「コーチング」とは

コーチングは、対象者が自覚していない潜在的な知識やスキルを引き出し、それを智慧に高め、結果に結びつけていく作業です。「知っていること」と「知っていること」を結びつけ、「知っていること」と「新しい情報」を結びつけ、これまでにない「結果」を作り出すのがコーチング

ということであるのだが、これでは抽象的すぎる。端的にいうと「一方的にああしろこうしろと教え込むのではなく、相手の中の眠っている能力を引き出し、それを高めていくこと」ということで、つまりは、コーチングをする側が誘導するというよりは、コーチング側が受ける側が主導的に動くように仕向ける、ということである。

◯「聞くこと」も意外と難しい

となると、コーチングの基本的な技術としては、まず「聞くこと」が大事になるわけなのだが、そこにもまた

私たちはよく、「聞き耳を立てる」という表現をします。相手の話をよく聞こうと耳を澄ますさまを言います。ところがその「耳」には、人それぞれの「聞き方」があります。ですから「聞く耳を立てて」聞こうとすればするほど、観念という翻訳機が作動してしまいます。

といった落とし穴があって、きちんと「聞く」ためには、本書でアドバイスする「ミラーリング(鏡に写したように相手と同調した動きをすること)」や「ペーシング(相手の話し方ー速度、リズム、抑揚、声の大きさーを合わせる」や「バックトラッキング(相手の話の中からキーワードを見つけ、そのキーワードを繰り返す質問の方法)」といったテクニカルなところを習得しておいたほうがよいらしいのだが、この辺は、独学より、スクールや講座で実地に教わったほうがよい気がしてくる。

◯「望ましいもの」を与える指導法

さらに、効果的な指導方法として「望ましいもの(好子)」を与えるやり方が推奨されるのだが、

実際にやってみると、好子を与える方法は思ったより簡単にできるのですが、大抵の人は罰を与える方を好みます。なぜなら、上手くいっている状態を待つには辛抱が必要だからです。辛抱して待つより、その場で叱った方が、手間をかけずにすむと思うのでしょう。
(略)
ここでもコミットメントが重要な鍵のようです。
コミットメントとは、望んでいることが起こるまで待つ忍耐と、そのためには何でもしようという柔軟性であると述べました。好子を使って相手の行動を強化するためには、まず待つことです。

といった風で、「ちょっとやってみますね」といったようにはいかない気がする。本書では具体例として

部下が読みづらい文書を持ってきたときは、叱るのではなく「どうしたらもっと読みやすくなるだろう?」と質問したり、「ここはこう変えてはどうだろう?」と具体的に提案をします。そして、なかなかいい文書ができたと思うときに、「この文書は読みやすいね。よくできているよ」とか「努力したんだね。前よりグンとよくなった」と、相手の努力を認めるような言葉をかけます

といった例が上げられているのだが、スムーズにこれをやるには、少々トレーニングがいるような気がしますね。

◯セルフ・コーチング

さらに、自分自身への「コーチング」の一端も紹介されていて、セルフコーチングによって

よく売れるセールスマンと、そうでないセールスマンの違いについてある話を聞いたことがあります。よく売れるセールスマンは、「売れるのはこの次かな」と、売れるまでお客様のドアを叩きつづける。ところが、売れないセールスマンは「ここまでやったのに売れないのは結局ダメなんだ」とあきらめる。
この違いは、売れるセールスマンは「売れる」という結果が見えているため、単純にそれがいつかを待つだけ、売れないセールスマンは売れている結果が見えないために、あきらめてしまうということです。

とか

セルフコーチングにおいては、行動のストレッチをお勧めします。ストレッチとは、自分を引き伸ばすことです。普段はやらないようなことに挑戦してみることです。まともでない要求を自分に課すことで、日常の癖から抜け出し、いつにないわくわく感を作り出すことができます。

といったこととなるようで、、なんとなく勇気づけられるような気がしてきますね。もちろん、そのためには、テクニカルなところを身につける必要もあるので、そこは本書をはじめ書物などできちんと抑えておく必要がありそうですね。

【まとめ】

ともかく、コーチングの秘訣は

優れたコーチは、人を勝たせることを喜びとしています。スポーツ界におけるどのコーチを例にとっても、コーチが独自に脚光を浴びることはありません。選手が素晴らしい結果を作り出したとき、その業績を支えた人として、選手がスポットライトを浴びるその脇で多少の光を浴びるのです。ビジネスにおけるコーチも同じです

ということで、あくまでも、コーチングする「相手」が第一。その点で、今までの「デキる上司」が部下たちを引っ張ったり、追い立てたりして成果を上げていくという方法とは、全く異なる手法であることに間違いない。初めて部下を持って、その指導法やリーダーシップに自信が持てない方は、まずは、本書のような入門書でまず基礎知識を身に着けてから、講座やスクールを活用してみてはいかがであろうか。

【コーチング関連ではこんな本も】


 

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