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タミルとスミスが再会。愛は「砂漠」を乗り越えるのだ ー 森薫「乙嫁語り 11」(芳文社コミックス)

砂漠の中で、両方が想い合っていながら、わずかな行き違いから別れてしまった、スミスとタミルの再会である。再会自体は先巻の10巻で果たしているのだが、今巻は再会するまでのアミルの旅であるとか、再会してからの二人の行く末について描かれるのが本書である。

【収録と注目ポイント】

第七十話 寒中歌
第七十一話 あれから
第七十二話 約束
第七十三話 湿板写真
第七十四話 前日
第七十五話 南へ
第七十六話 時計
第七十七話 アンタリヤ

となっていて、第七十話は、このシリーズで時折、挿入歌っぽく入れられる「ポエム」のような短編で、メインとなるのは、鷹好きのティレケが、カルルクが冬営しているところまでやってくる話。物語が始まる前の、食前酒みたいな味わいですね。

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カルルクは弓の修行に頑張る。スミスには春が来たか? ー 森 薫「乙嫁語り 10」

前巻で、「強くなりたい」と、アミルから弓を習い始めた、カルルクが、彼女に格好良い所を見せたい、という欲望に忠実になって、彼女のもとからしばし離れて、修行を始めるのが『森 薫「乙嫁語り 10」(ビームコミックス)』。
 

【収録は】

 
第六十二話 狩猟肉
第六十三話 イヌワシ
第六十四話 母親
第六十五話 騎馬鷹狩猟
第六十六話 馬を見に
第六十七話 国境いの村
第六十八話 山道にて
第六十九話 再会
 
となっていて、弓を習うためにアミルの兄・アゼルたちのテントに泊まってカルルクが修行するのが前半。民俗学者のスミスの旅行記が後半、というつくりになっている。
 

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パミルの恋の行方は、果たしてどうなる・・・ ー 森 薫「乙嫁語り 8・9」

アミルの一族による街の襲撃や、民俗学者のスミス氏のペルシャを通ってのアンカラへの旅の途上での様々な事件などが、このシリーズの話の華のところをとっていて、味のあるいいキャラを持ちながら、ちょっと日陰の存在であった「パリヤ」さんに「春がやってきた)的な「恋バナ」が展開されるのが『森 薫「乙嫁語り 8」(ビームコミックス)』と『森 薫「乙嫁語り 9」(ビームコミックス)』である。

【収録は】

第8巻が

第四十四話 ばらの花咲くころ
番外編 ガゼル
第四十五話 パリヤの刺繍
第四十六話 北の平野へ
第四十七話 櫛入れ
第四十八話 ウマルが来た
第四十九話 ふたりで遠駆け
第五十話 最悪の想像
第五十一話 パリヤの決意

第9巻が

番外編 いきものがたり
第五十二話 パリヤのパン
第五十三話 ウマルはどんな人?
第五十四話 語らい(前編)
第五十五話 語らい(後編)
第五十六話 盤上遊戯
第五十七話 帰途
第五十八話 仮軸
第五十九話 尋ね人
第六十話 友だち
第六十一話 これからのこと

となっていて、アミルの一族の襲撃後、壊れてしまった街の修理に、カルルク一行がスミス氏の救出に赴いたカラザの街のウマルの一家が手助けに来ている間のパミルとウマルの「恋バナ」に、アミルの兄弟たちのその後の動向が切れ目切れ目に挿入されるという構成。

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ペルシャの「百合」の物語 ー 森 薫「乙嫁語り 7」

第1巻から第6巻までは、中央アジアのウズベキスタンとかを舞台にしていたせいが、いろいろな意味で、ごく健全な印象が強かったのだが、舞台が、歴史の長い集積のあるペルシャ(イラン)に移ると、少々風合いが変わってくる。シリーズの前巻までとは、ちょっと異質に思えるのが本書『森 薫「乙嫁語り 7」(ビームコミックス)』

【収録は】

第三十六話 水の園
第三十七話 姉妹妻
第三十八話 男湯
第三十九話 はじめまして
第四十話 シーリーン
第四十一話 契りの儀式
第四十二話 あなたなら
第四十三話 ふたりの園
番外編 熱

となっていて、本巻のほとんどが、民俗学者のスミスが訪ねたペルシャの大富豪のところの奥さんとその女友達の話である。

【あらすじ・・・】

あらすじ的には、大富豪の奥さんであるアニスと、彼女が銭湯で知り合ったシーリーンが、この地域の風習である「姉妹妻」の契約を結び、アニスの旦那の家で一緒に暮らし始める、といった展開。

この姉妹妻というのは、

結婚して子供のいる情勢同士が、姉妹妻の契りを交わすもjので、お互い以上に仲の良い相手はつくらない。

嬉しいことも、悲しいことも悩みもなんでも話して、お互いの心の本当の理解者になる

一生の親友

といったものであるらしいのだが、今までの中央アジアの物語でが出てこなかった話なので、歴史が堆積し、爛熟した地「ペルシャ」ならではのものであるのだろうが、アニスが銭湯でシーリーンに再会するところとか、はにかみながら距離を縮めていく姿であるとか、うーむ、これは、友情物語といった類ではなくて、「百合族」の世界の話ではないのか・・・と思えてくるのである。

もっとも、奥方のアニスは、もともとが裕福な生まれっぽくて、生活の苦労なぞしたこともないような印象。その彼女が、旦那にいかに優しくされても、心の空洞は大きくなるばかり、といった描写があちこちあるので、満ち足りすぎた生活の中に忍び込んでくる「虚無」のお話、といった風に解釈できないこともないのだが、今巻はやたらと「裸」のシーンが多いので、やはり「百合」の世界に行ってしまうよね、と思わざるをえないですね。

【レビュアーから一言】

アニスの胸は薄く華奢なヌードとか、シーリーンのグラマラスな姿とか、女湯の描写とか、とにかく「裸」が多い。

そのせいもあってか、他の巻とはかなり印象をことにするので、好き嫌いが別れてしまうかもしれない。まあ、アニスの綺麗さに免じて「了」としておきましょうかね。

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砂漠」の中の”タラス”と”スミス”の恋物語 ー 森 薫「乙嫁語り 3」(エンターブレイン)

アラル海の漁村のウエディング・ストーリー ー 森 薫「乙嫁語り 4・5」

アミル、親父との永遠の別れ。でも親父の死は自業自得と思う ー 森 薫「乙嫁語り 6」

パミルの恋の行方は、果たしてどうなる・・・ ー 森 薫「乙嫁語り 8・9」

カルルクは弓の修行に頑張る。スミスには春が来たか? ー 森 薫「乙嫁語り 10」

タミルとスミスが再会。愛は「砂漠」を乗り越えるのだ ー 森薫「乙嫁語り 11」(芳文社コミックス)

アミル、親父との永遠の別れ。でも親父の死は自業自得と思う ー 森 薫「乙嫁語り 6」

アラル海の近くの漁村の婿取り・嫁取り騒動で、騒々しいが楽しい話が続いていたのだが、晴れる日はそう長くは続かないのが世の習いである。
カルルクとアミルの住む町に、再び、アミルの実家の一族・ハルガルが襲撃し、再び抗争になるのが本書『森 薫「乙嫁語り 6」(ビームコミックス)』

【収録は】

第二十八話 背くらべ
第二十九話 放牧地
第三十話 バダンとの会談
第三十一話 砲撃
第三十二話 騎馬の襲撃
第三十三話 アゼルの攻勢
第三十四話 後ろ盾
第三十五話 報い

となっていて、第二十八話以外は、アミルの実家一族とカルルクの住む街の人々との抗争にあてられている。

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アラル海の漁村のウエディング・ストーリー ー 森 薫「乙嫁語り 4・5」

19世紀の中央アジアを舞台に、カルルクとアミルという若い夫婦を中心に据えて、町の人々の暮らしや、闘争などを描いた本シリーズであるが、ちょっと脇道に入ったウェディング・ストーリーとなっているのが『森 薫「乙嫁語り 4・5」(ビームコミックス)』。

【収録は】

第4巻は

第十八話 訪れ
第十九話 アラル海のふたり
第二十話 狙うは大物
第二十一話 ふたりの相手
第二十二話 短期集中花嫁修行
番外編 馬市場

第5巻は

第二十三話 祝宴(前編)
第二十四話 祝宴(中編)
第二十五話 祝宴(後編)
第二十六話 日暮歌
 番外編 岩山の女王
第二十七話 手負いの鷹

となっていて、今回は、アミルとカルルクの話はちょっと脇役。
主筋は、民俗学者のスミスがアンカラへ向かう途中の漁村で出くわす、嫁取り・婿取り話である。

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「砂漠」の中の”タラス”と”スミス”の恋物語 ー 森 薫「乙嫁語り 3」(エンターブレイン)

カルルクとアミルの物語も、アミルの一族の襲撃を撃退して一段落したところで、次の展開へ至るまでの、ちょっとした幕間の劇というところなのが、本書『森 薫「乙嫁語り 3」(エンターブレイン)』である。

【構成は】

第十二話 逗留
第十三話 懇願
第十四話 タラスの想い
 おまけ パリヤさんはお年頃
第十五話 再会
第十六話 市場での買い食い
第十七話 アンカラへ向かって

となっていて、民族学者のスミスが旅の途中で出会う「砂漠の中の美女」との「恋」が本巻の主筋。

乙嫁語り 3巻 (HARTA COMIX)
乙嫁語り 3巻 (HARTA COMIX)

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KADOKAWA / エンターブレイン (2012-09-01)

【あらすじ】

◯砂漠の中の美人・タラス

本巻の物語の最初は、カラザという砂漠の中のオアシスっぽい街からスタート。この街で、カルルクの家に居候していた民族学者・スミスがアンカラまで一緒に行く案内人を待っている間に、馬を盗まれてしまう。この時、同じように馬を盗まれたのが、今巻で、スミスと恋仲になる「タミル」という未亡人。

未亡人とはいいつつも、この土地の風習で、長男に嫁いできたのだが、その長男が急死し、その兄弟に再嫁するが、次々と兄弟が死に、今は義母と砂漠の中で遊牧しながら暮らしている、という設定。日本でも昔は夫の死後、兄弟に嫁ぐということはあったのだが、さすがに兄弟5人に嫁いで、しかも全てが若死にするというのは、いくら衛生状態が悪く危険も多い、19世紀の中央アジアとはいえ、運のよいほうではないな。

話としては、市場長の差配で、馬を取り戻したスミスが、タラスのお礼の気持ちから、彼女のテントへ宿泊させてもらうことで、今回の恋愛譚が進展。一人残されて老人の世話をさせられているタムルの身を案じた義母が、スミスに彼女を嫁にもらってくれ、といいはじめ、彼女も・・・、といった展開。もっとも、森薫さんのマンガなので、くれぐれも◯◯い場面は想像しないように。

ネタバレ的に言っておくと、結ばれない恋なのは間違いない。
タミルの想いを感じながら、彼女のもとを離れ旅を続行しようとするスミスが、カラザの街でスパイの疑いで、牢に入れられたり、その噂を聞いた「タミル」が駆けつけたり、といった恋の成就へ向かって盛り上がっていくのだが、まあ、最後のところは・・・、という展開。
といっても、沈かに沈潜させておいて、どこかで、といった含みは残っているので、すこし期待しておこうか。

◯「パリヤさん」に新展開?

主筋は、スミスとタリスの恋愛譚なのだが、実は、もう一つの恋愛譚が、裏筋に隠されていて、それが「パリヤ」の話。

スミスが街の守備兵に軟禁されているところに、カルルクとアミル夫婦が救出に向かうのだが、それに彼女も同行する。そして、カラザの街の市場で、一同、盛大な昼食をとるのだが、その際に同席した街の商人に同じ年頃の男性がいて、といった接待が忍び込まされている。
今巻では、大きな進展はまだまだなのだが、先行き楽しみなのを暗示していますね

【まとめ】

舞台が強国ロシアを含め列強の思惑が交錯する地とはいえ、どちらかというと辺境である「中央アジア」なので、物語の展開が血湧き肉躍る戦乱サスペンスみたいなものにはならないのだが、「エマ」で「古き良き英国」を舞台に典雅な物語を紡いだ森薫氏の作品らしく、若夫婦の情愛や、悲恋物語を散りばめながらの物語がだんだんと円熟してきた感がある。

ここで、意外な伏兵となりそうなのが、「パリヤ」の存在で、これからコミカルな味を加えてくれそうな予感がして楽しみなところですね。

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アミルに「嫁心」がつきました ー 森 薫「乙嫁語り 2」(エンターブレイン)

中央アジアの地方都市を舞台にカルルクとアミルの若夫婦を中心に、その地方に住む人々の暮らしと人間模様を描く「乙嫁語り」シリーズの第2巻。
ちなみに、「乙嫁」とは、本書の巻末のあとがきマンガによれば「古語で「若いお嫁さん」「美しいお嫁さん」」ということであるらしい。

【収録は】

第六話 パン焼き竈
第七話 争い(前編)
第八話 争い(後編)
第九話 嫁心
第十話 布支度
第十一話 出発

となっていて、本巻は、第一巻で、ようやく夫婦らしい関係になってきカルルクとアミルに、アミルの実家からの無理難題が中心かな

 

乙嫁語り 2巻 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)
森 薫
エンターブレイン (2010-06-15)
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【あらすじ】

◯第六話 パン焼き竈

冒頭は、「竈の日」といって、女性たちが集まって、まとまったパンを焼く日の情景から始まる。ここで、後巻で、味のある活躍をしてくれる「パリヤ」とアミルが出会って、彼女の気が強そうで、実はシャイな性格が滲んできて良いデビュー。こうした「竈の日」のように、普段は家の中にいて外出しない女性たちが集まることによって、情報交換やら、それぞれの品定めやらをしたんであろう。中央アジア版井戸端会というところか

◯第七話 争い(前編)、第八話 争い(後編)

第七話、第八話は、今巻の大イベント。アミルの一族、兄弟が、一族の有力者に嫁がせるために、彼女を取り返しにくる話。
嫁さんを不条理な理由で、奪還されては、当然、一族や町の沽券にかかわるわけで、町をあげて、かれらを撃退する話。
腕力があるほうではなく、まだまだ頼りなかった「カルルク」がアミルを守ることによって、短期間にたくましくなりますね。

◯第九話 嫁心

第九話は、第七話、第八話のトラブルを経て、アミルが、実家と縁切りし、完全にカルルクの「妻」となる話。
とりわけて、イベント的なものはないのだが、若い夫婦のイチャツキがなんとも微笑ましいですね

◯第十話 布支度

第十話は、ここらあたりの嫁入りでは、たくさんの刺繍された布を嫁入り道具にもっていく風習があり、それに関する話。パン作りでは絶妙に技を発揮したパリヤだが、裁縫はとても苦手であったことが判明。これに対してカルルクの姪のティレケは、裁縫は得意なのだが、柄のほとんどを「鷹」にするという変わり者。これを案じた母親が、祖母に頼んで、家に伝来する多くの刺繍布を彼女に見せる。それはさながら、一族の女性の記録であった、といった話。
この話で、途中、カルルクの家の居候・スミス氏に手紙を届けてくる意思ギリス人女性は、ひょっとすると、イザベラ・バード?などと妄想する

◯第十一話 出発

第十一話は、カルルクのところに居候しているイギリス人民族学者・スミスが、次の研究地へ出発する話。彼が中央アジアに来る発端となった子供の頃の話に、この当時の探検家たちの心情が垣間見えますね。

【まとめ】

実家によるアミルの奪還騒動を経て、この二人の仲が縮まったのが、この巻の最大の収穫かな。奪還騒動は、アクション満載で結構ハラハラいたしました。さらにはパリヤやスミスさんの旅立ちなど、次巻以降のネタも仕込みが始まっているのでお見逃しなく。

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中央アジアの若夫婦・カルルクとアミルの物語始まる ー 森 薫「乙嫁語り 1」

19世紀の中央アジア、カスピ海周辺の都市を舞台にした物語が本書『森 薫「乙嫁語り 1」(エンターブレイン)』。中央アジアを舞台にしたマンガというのは、あまり見たことがない上に、当方は、風俗、民族ともに「中央アジア」といったところは皆目、無知であるので、異国情緒満載であることには間違いない。

【収録は】

第一話 乙嫁と聟花
第二話 お守り
第三話 騎行
第四話 アミルをかえせ
第五話 風邪

となっていて、第1巻の舞台は、カルルクの住む街がウズベキスタンのあたり、アミルの住んでいた村がカザフスタンのあたりの様子。

ウズベキスタンは、今は、金や石油の埋蔵が豊富で、この資源を使った経済発展も期待されているのだが、当時の産業は、遊牧とかオアシス貿易ぐらいなもんであろうか。しかもイスラム王朝をロシア政府が併合しようとしているところであろうから、実はかなり政情不安であったろうな、と推測する。
その割に、主人公たちの住む街が穏やかに見えるのは、嵐の前の静けさといった類であろうか。

一方のカザフスタンは、18世紀頃には、イスラム系ハン国が力を失って、部族国家の状態なっていたのをロシアが次々と服属させていたようであるから、カルルクの住んでいる街に比べると、民族への圧迫感は強かったのだろうな、と思う。
アミルやアミルの兄弟たちが、弓の手練であったり、馬を駆るのがうまかったり、と遊牧民の様子を色濃く残しているのは、部族国家の状態で、田舎度が強かったせいであろうか。

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乙嫁語り 1〜7巻を一気読みした

以前、まとめ買いのセールで買ってはいたのだが、ついつい(Kindle本の場合にこういうのかどうかは別として)積ん読になっていた「乙嫁がたり」。

本日は用務もなく、家族と一緒に外へ出る予定もない、ということで暇にまかせて一気読みした。

舞台は19世紀の中央アジア・コーカサス地方。カスピ海周辺の都市の13歳の男の子カルルク・エイホンのもとに20歳の姉さん女房となるアミル・ハルガルが嫁いでくるところから始まる。

最初のシーンは、彼女のコテコテの民族衣装のところから始まるあたり、異国風味が「どん」とやってくるのは斬新な導入部ではある。

ここを舞台に、アミルの出身部族がアミルを返せ、といってくる1巻から、スミスというイギリス人がイランの大富豪っぽい人のところに泊まり、そこの奥さんのなにやら怪しげな女友達つきあいの7巻までの話がとりあえず展開される。途中、アミルの実家の部族と嫁ぎ先の部族との戦闘など意外に血沸き肉踊る話があるのだが、コミックの巻ごとの詳細はまた後日。

今回、このコミックでなにやら「ホッ」として和んだのは、一家が一つの家で、朝から夜まで生活しているということで、以前は、日本でも普通であった、「家族の暮らし」というものが、昔は世界標準であったのだな、と思った次第。

そこは家族との濃密な関係性の存在であり、血縁、地縁でつながった強固な紐帯でもある。

私が若いころ聞いていた言説では、こうした地縁、血縁でがんじがらめになっていることが近代化を疎外かしていたという話や、こうした関係性が希薄化することが工業化や近代からの脱出にかかせないというものであったように思う。

しかし、その近代からの脱出が、なんとなく身の回りに隙間風が吹いたように感じられ、「モノ」を持つことがさほど重要視されていなくなっていると思う今日、こうした「家族と一緒の暮らし」あるいは「「家族が一緒に暮らせるナリワイ」というものを見なおしてみてもいいのではないだろうか。

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