ミステリー」カテゴリーアーカイブ

オーダーメイドレストランには「謎」がいっぱい ー 斉藤千輪「ビストロ三軒亭の謎めく晩餐」

東京の三軒茶屋の茶沢通りから路地裏に一歩入ったところにある、小さなレストラン「ビストロ三軒亭」は、決まったメニューというものがなく、客が好みや希望をギャルソンに伝えると、」シェフがそのテーブルだけのオリジナルコースをつくってくれるという、「オーダーメイドレストラン」。

そんなユニークなレストランに勤務する新米ギャルソン・神坂隆一を主人公にして、店の客が関係する様々な出来事や揉め事の謎を解き明かすミステリーと、その過程で成長していく俳優志望の主人公の姿を描いたのが本書『斉藤千輪「ビストロ三軒亭の謎めく晩餐」(角川文庫)』

【構成と注目ポイント】

構成は

プロローグ
1 entrecôte 〜アントルコート〜
2 Dinde aux Marrons 〜ダンジョーマロン〜
3 raclette 〜ラクレット〜
4 La quiche lorraine 〜キッシュ・ロレーヌ〜
エピローグ

となっていて、主人公の隆一は、所属していた劇団が解散しニート生活を続けていたのだが、姉・京子の企みで、この「ビストロ三軒亭」に食事に連れていかれ、その流れで、ギャルソンとして雇われることになる。その三軒亭、決まったメニューがないというのもユニークなのだが、従業員も、屈託のない明るさとルックスと話術で女性に人気のギャルソン・岩崎陽介、色白で端正な顔立ちをしてお客の健康チェックから食材の栄養知識をもとにしたメニューのアドバイスをするギャルソン・藤野正輝、格闘家のような体型をしながら喋るとオネエ言葉のソムリエ兼バーテンダーの室田、クリスティのポアロものの大ファンで、客のオーダーに対応して料理をつくる名シェフ・伊勢、と個性派ぞろい、という設定。

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バイクのスピードレースに隠された大規模犯罪を暴け ー 佐藤青南「白バイガール 最高速アタックの謎」(実業之日本社文庫)

神奈川県警交通機動隊所属のタレ目ぽっちゃり型のいやし系キャラ「本田木之美」とレイダーテクニック抜群のツンデレ美人「川崎潤」の二人をメインキャストにすえた、「ポリス」ストーリーの第4弾である。

 

今回は念願の交通機動隊に配属された3年目となり、ベテランの域に入りつつある「木乃美」に初めて後輩ができるのだが、その後輩がかなりの「生意気」な後輩で、なにかと木乃美を押しのけて前へ出ようという性格。さて、この後輩を操縦しながら、バイク暴走事件の謎を解いていくのか、というのが本巻。ちなみに、この後輩の名前は、ご推察どおり「本田(HONDA)」「川崎(KAWASAKI)」「山羽(YAMAHA)」のライバルである「SUZUKI(鈴木)」であります。

 

これに加えて、前巻で、箱根駅伝の先導を、「潤」に先を越されてしまった「木乃美」なのだが、さてこれから夢に向かったどう走っていきますか、ってなところも気なるところですね。

 

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「潤」のバイク初心者当時の「古傷」は事件解決の鍵となるか? ー 佐藤青南「白バイガール 幽霊ライダーを追え」(実業之日本社文庫)

タレ目のぽっちゃりの癒やし系キャラの「本田木乃美」と、ライダーテクニック抜群ながら、ツンデレ系の「川崎潤」という性格も体型も全く違う女性白バイ警官二人をメインキャストにする「お仕事」系ミステリー「白バイガール」の第2弾である。

今巻は、「潤」に一目惚れしてしまって「おっかけ」をするイケメン・タレントも登場してきたり、全国白バイ安全運転競技大会へ「潤」が女性枠の優勝者の辞退によって急遽出場しないかと打診される、といった「木乃美」の箱根駅伝先導という長年の夢にも関連することも持ち上がりつつ展開するのが本巻である。

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「桃子」の特殊能力全開は、なにを引き起こすのか ー 加藤実秋「モップガール3」(小学館文庫)

第一巻で、クリーニングサービス宝島にアルバイトで勤めて、殺人現場や事故現場の清掃によって自分の特殊能力に気付き、第二巻で、その能力が父親から伝えられたものであるとともに、同僚の「大友翔」との子供の頃からの関係や父親の死の真相を突き止めることのできた「桃子」だったのだが、父親の封印がとけ、「難聴」が現れていなくても。触れるだけでその場所で起きた出来事がわかる能力が完全開放される。
父親を殺した男から、その能力を「バケモノ」よばわりをされた桃子が、その能力とどう向き合って、どう使っていこうとするのかが描かれるのが今巻き。桃子も翔も「エイトコーポレーション」が正社員となり、「特殊清掃+素敵なサムシング」ビジネスが順調にいくのか、と思わせておいて、桃子の能力が突然失われたり、と二転三転しながら進んでいくのある。

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桃子の「不思議な現象」の秘密の影には父親の事故死が・・ ー 加藤実秋「モップガール2」(小学館文庫)

前巻で、主人公の桃子がちょっと気になっている、同僚でイケメンの「翔」の父親に関する事件が解決したのだが、その当人が会社を去って、代わりに中国人研修生の「王」さんが「クリーニングサービス宝船」に入社して、今巻が始まる。
今回、桃子におきる現象は、掌をもぞもぞしたり、遠吠えや尻尾振りのような犬が憑いたような現象だとか、前巻よりパワーアップした怪しげなものになっているのが特徴である。

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箱根を先導する「潤」の邪魔は「木乃美」が許さない ー 佐藤青南「白バイガール 駅伝クライシス」(実業之日本社)

前作「白バイガール」で協力して事件を解決することのできた、島根県出身・ぽっちゃり系の「本田木乃美」とツンデレ系のバイク娘「本田潤」の二人組なのであるが、今回、捜査の中心となるのは「本田木乃美」のほうで、現場の近くにはいるものの、別用務に就いている。
それも、なんと木乃美が白バイ警官を目指した「箱根駅伝」の先導バイクという任務で、八区後半の戸塚から十区六郷橋までの間の先頭ランナーの先導というTVにもバンバン出る「晴れの舞台」である。
今巻は、「木乃美」の心情を気遣いながらも、箱根の先導に挑んでいく「潤」の姿と、憧れの「箱根」を「潤」に託して、暴行殺人事件の捜査に専念する「木乃美」の姿がオーバーラップして展開されていく。

 

【あらすじと注目ポイント】

話のほうは、高校時代の親友に誘われて、彼女の男性友達のマンションで年越しの宿泊をしていた「両角麗奈」という女子大生が、その男性友達たちに襲われかけ、そこを飛び出すのだが、何者かに拉致されるところからスタート。

そして、この出だしから一転して、「潤」が箱根駅伝の先導の白バイメンバーに選ばれて頑張るところとか、年末の夜、鎌倉の七里ヶ浜の駐車場で起きた、数人の男による暴行殺人事件の捜査に、「潤」や「木乃美」の属する交通機動隊のメンバーも駆り出されていくといった展開となっていくのだが、交通機動隊が関係していくのは、その犯人グループらしいのが、暴走族「闘雷舞(トライブ)」のメンバーらしいという設定で、これは、後半のカーチェイス・シーンへつなげる前振りでもありますね。

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女性白バイ警官は、明るく、元気に、「謎」を解く ー 佐藤青南「白バイガール」(実業之日本社)

佐藤青南が紡ぎ出してくる物語の女性主人公は、「行動捜査官」シリーズの「楯岡絵麻」や「消防女子」シリーズの「高柳蘭」といった、男勝りではあるが、健気で魅力的な主人公が多いのだが、彼女たちに続いて、またも魅力的な女性主人公を世の中に送り出してくれた。
しかも、二人もである。

今巻は、島根県出身・ぽっちゃり系の「本田木乃美」とツンデレ系のバイク娘「川崎潤」の二人の白バイの女性隊員の青春奮闘物語である。

 

【あらすじと注目ポイント】

白バイの女性ポリスというと、箱根駅伝の伴走などでTVでもよく見るのだが、ネットで調べてみると、警視庁の交通機動隊の白バイに女性が始めて配属されたのは2010年であるらしく(警視庁交通機動隊に初の白バイ女性隊員(日テレNEWS24、2010.09.08))、そんなに古い話ではない。
今巻は、そんな警視庁ではなくて神奈川県警の交通機動隊が舞台に展開される物語である。

で、話のほうは、新米白バイ警官の「本田木乃美」が、半泣きになりながら8トントラックの運転手に交通違反切符を切るところからスタートする。なにせ、タレ気味の大きな目でまんまるの顔。さらに中学で身長の伸びが泊まったのだが横幅はある「ぽっちゃり体型」とあって、残念ながら強面系ではなく、違反運転手からなめられてばかりである。もっとも、彼女は人並みはずれた「動体視力」の持ち主というおまけ付きではある。

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横浜で起きる「連続火災」に隠された「謎」を解け ー 佐藤青南「灰と話す男 消防女子!!高柳蘭の奮闘」(宝島社)

前作「消防女子」では、男社会の中でのしごきや、酸素ボンベのエア抜き事件などを乗り越えて、父親譲りの「消防魂」を発揮して大型客船火災で大活躍をした主人公・高柳蘭であったが、横浜市湊区内で連続して起きる「火災」の原因究明に乗り出すのが今巻である。

 

【あらすじと注目ポイント】

物語の出だしは、四階建てマンションの家具とかなにもない部屋から火事がおこるシーンからスタートする。この火事で、蘭たちは、部屋に取り残された赤ん坊や、オタクの男などを救出するのだが、その火事の原因をめぐって、警察と消防とがいがみ合うという滑り出しである。

というのも、この湊区管内で二ヶ月内に42回の出動をしているのだが、そのうち、16件が半径1.5キロ圏内に集中し、出火原因すら明らかになっていないからで、放火を疑った警察が「マルツウ」を隔離して尋問を始めたため、同じく原因を調べている消防の方と軋轢が死生じた、という次第。この場面で、今巻の「敵役」として、いい味を出している神奈川県警本部の松永という刑事が登場するのだが、いかにも、といった悪役ヅラで登場するので、しっかり記憶にとどめておきましょう。この時、警察とあらそうのが、現場検証では凄腕の、蘭の父親の同僚・木場で、この人の通称が「灰と話す男」なんですな。
ちなみに「マルツウ」というのは、消防の隠語で「火事の通報者」のことであるらしい。

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特殊清掃の掃除会社に、霊感的特殊能力の女の子が就職すると・・ ー 加藤実秋「モップガール」(小学館文庫)

フリーターで、時代劇フリークの長谷川桃子は、何かの才能とか隠れた能力を見つけるため、いろんな種類のバイトや職業にチャレンジしているのだが、今回就職したのは、東京都内の掃除会社なのだが、その会社、通常のビルやオフィスの清掃のほか、事件現場の掃除も扱う会社であった。
面接に行って即採用となった、桃子は早速、三角関係のもつれから女性が刺されるという
事件の起きたアパートの部屋の清掃につれていかれ・・・、てな感じで始まる、とても変わった「お掃除サスペンス」である。

【収録と注目ポイント】

収録は

「おわりの町」
「赤い衝撃」
「ファンハウス」
「ブラッシュボーイ」

となっていて、メインキャストの「桃子」は心因性の難聴を患っていて、突然、左耳が聞こえなくなるという持病があるのだが、その持病の発症中に、「念」の残された事件現場の清掃にいくと、体に変調をきたしてしまう。だが、その「変調」は、その部屋や場所でおきた「事件」の謎を解く道標にもなっていて・・・、といった感じで話が展開していく。

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明治初期の新奇な風情満載の物語 ー 橘沙羅「新聞売りコタツ 横浜特ダネ帖」(時代小説文庫)

横浜が今のような隆盛を極めるきっかけになったのは、幕末の安政五年(1858年)にアメリカと締結された「日米修好通商条約」で開港地とされたことに始まるのだが、それから25年後の明治十六年(1883年)、その横浜を舞台に新聞売りの藤野達吉、自称「コタツ」をメインキャストに展開されるのが本書である。

新聞売りと言っても、特定の会社の新聞を売り歩くわけではなく、「知識階級を対象にして、政治経済を中心として扱う硬派な”大新聞”」と「噂話や読み物をふんだんに載せた、女子供まで楽しめる”小新聞”」を各種取りそろえて売って歩く商売で、新聞が雨後のタケノコのようにでできた、この当時を象徴する仕事でもある。そして、「コタツ」というのは当時人気を博した新聞売りの安藤政五郎、通称「新聞小政」をもじって自分の名前「達吉」の最初の「タツ」を「政」と入れ替えたものであるらしい。

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【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 アマテラスの嘆く春
第二章 洋火の果つる夏
第三章 天馬の翔る秋
第四章 千層に積もる冬

となっていて、各章ごとに、「コタツ」が惚れてしまうタイプの違う美女が関わる事件を解決していく構成なのだが、本筋は、コタツの妹・お絹が、暴れ馬にはねられて足が不自由になった原因をさぐるというもの。で、キャスト的には、主人公の「辰吉」こと「コタツ」、妹の「お絹」、植木職人をしていた「コタツ」の父親が出入りさせてもらっていたお屋敷の若旦那で、今は新聞の連載小説家をしている小見山といったところがメインである。

まず第一章は、伊勢山のふもとに現れる「按摩」の怪で、伊勢山の崖下までやってきた按摩の笛の音が一瞬にして崖上に移るというもの。さては数年前に殺された「按摩」の亡霊か、という噂の真相を暴くもの。
この章で「コタツ」が惚れ込む美女は「鞠」といって野毛山の材木商のところで女中そしている女性。彼女は弟を西南戦争で亡くしたという過去があり、今でもそれが心のシコリとなって残っている風情である。
そして、「按摩の怪」のほうは、鞠に想いを寄せているらしい、近くの団子屋の耕作と、暴露記事を得意とする新聞記者の富田の乱入により、急展開していく、といった筋立てである。この富田から、妹の事故は、実は明治十年に起きた「瓦斯局事件」というスキャンダルの巻き添えだよ、と教えられ、その真相究明にコタツが乗り出すという仕掛けになっている。

第二章の美女は

優しく垂れた黒目がちの瞳は艷やかに潤み、涙でもこぼれ落ちたかのような泣きぼくろが一つ。ともすれば、婀娜っぽくなるぽってりした唇も、蕾のように小さく可憐だ。丸みを帯びた方も、昼夜帯をしめただけのしなやかな柳腰も、今にもしなだれかかってきそうに見える

といった風情の、ジェームズというアメリカ人に雇われている「お咲」という女性。で、
この娘の雇い主のジェームズが殺され、お咲が犯人として疑われるのだが、コタツが彼女を救うために真犯人探しに乗り出す話。明治六年に解禁されたキリスト教(耶蘇教)の聖書と、アメリカの独立記念日を祝って、横浜の平山で打ち上げられる「昼花火」といった、文明開化の中心地であった「横浜」を主張するものが謎解きのヒントになってますね。

第三章は、貿易商から埋め立て事業に転じ、今は横浜の名士となっている粕谷の持ち馬・ムサシ号と・文乃に関する事件。話の主筋は、このムサシ号が競馬大会のさなかに逃亡し、暴れ馬となって、市中を走り回るという騒ぎを引き起こす。怒り狂った粕谷は、ムサシ号を処分しようとするが、「文乃」を大反対。文乃のムサシ号への想いを叶えて、彼女に気に入られようと、「コタツ」が人肌脱ぐが・・・、といった展開。
このムサシ号が暴れ馬になった状況が、コタツの妹・絹が暴れ馬にはねられた状況とよく似ていて、2つの事件の共通の犯人がこの章で明らかになるのだが、真相はもっと大きな疑惑に結びついているようで、といった感じで第四章に続いていく。

ちなみに文乃さんは「ほっそりとした卵型の輪郭に楚々とした目鼻が収まっており、裾に紅葉を散らした上品な衣がよく似合っている」という風情である、

最終章の第四章の主となる事件は、前話の粕谷や英国軍人がからむ疑獄事件の証拠になりそうなものを、ひょんな経緯から辰吉が手に入れてしまったことが原因なのか、お絹の行方がわからなくなってしまう、というもの。お絹は粕谷たちに誘拐されたと思い込み、スキャンダル記事専門の記者・富田や、旧主の若旦那・小見山にまで協力を仰いで、疑獄事件の真相にたどり着いたのはいいのだが、お絹が暴れ馬にはねられた事件の真相にまでたどり着いてしまう。その真相は、辰吉が今まで信じていた人の裏の姿にかかわるもので・・・、というもの。
最後のところで、文乃の嫁入りが決まり、お絹が小見山へ抱いている本音とか、いろんなことが明らかになるのだが、そこは原書で確認してください。

【レビュアーから一言】

明治初期の物語というのは、今までの幕政時代の江戸の景色ががらっと変わって、懐かしいものが壊れた感じを漂わせるととともに、新奇なものがあふれかえる生きの良さを同時に味わえるものが多い。しかも、本作は、東京を舞台ではなく、むしろ東京より新しい時代の先端をいっていたといっていい「横浜」を舞台にしているので、その「明治」っぽさも半端でなく味わえる。

幕末や戦国モノもいいのだが、それらの時代とはちょっと異なる「危うさ」を持った明治初期の雰囲気を楽しめる一冊でありますね。