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生涯キャリアを選択する時代の「働き方」とは ー 新井健一「働かない技術」

「人生100年時代」「働き方改革」という議論が先ごろまであちこちで起きていたのだが、最近は、ラグビーワールドカップで日本チームが大健闘したせいでもないのだろうが、議論が下火になっている感が強い。
ただ、この問題は、筆者の

自らの、あるいは自社の働き方について、いま最も真摯に考えるべきなのは、若手でも経営層でもなく、ミドル世代だと思っている。この世代が、働き方改革の本質を見極め、改革を正しい方向に導かなければ、日本も日本企業も凋落の一途をたどるだろう。

という投げかけのとおり、今現在、企業社会を支えている層が、自らの意思で、自らの方向をきめるべき問題ではある。
そんな企業社会を担う「管理職」世代への「働く」ということについての提言が本書『新井健一「働かない技術」(日経プレミアシリーズ)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

プロローグー「働かない」のにはスキルと覚悟が必要だ
第1章 なぜ「働かない技術」が必要か
第2章 ガラパゴス化する職場
第3章 ダラダラ職場が生まれる理由
第4章 「働きすぎる」ミドルの末路
第5章 「職場脳」からの脱却
第6章 残業できない時代をどう生きるか?
エピローグ
「働く技術」
日本の組織ならではの強みを活かしつつ新しいステージへ
あとがき

となっていて、まず

そもそも、これからは8時間労働そのものも疑ってかかる必要がある。
(略)
8時間労働は18世紀後半、それまでの10時間から16時間にのぼる過酷な労働を見直し、「仕事に8時間を、休息に8時間を、やりたいことに8時間を」というスローガンのもとに提唱されたものである。
要は8時間労働とは、労働安全衛生という人道的見地から提唱され、定着したものであり、知識労働者の生産性を高めるために必要な「集中していられる時間」とは無関係なのだ。

と我々の「労働観」そのものへの疑問から始まる。たしかに、今の「働き方改革」の議論は、働く「方法論」、働く「形態論」で議論されることが多くて、労働時間も含めた、「働くこと」の基本論について議論されている気配はない。このあたりは、まあ議論しても甲斐がない、という思いのある人もいるだろうが、効率性や生産性の話の前提として、我々はどういう「働き方」を選択したいのか、という面では、いつも頭の中においておくべき話なんだと思う。

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人間の「四類型」ごとに最適なワークスタイルを考えよう ー カーソン・テイト「ワーク・シンプル」

「ハードワーク」のため心が疲れ切ったり家庭やプライベートを犠牲にしてしまうのは、日本人のワークスタイルの特徴の一つとしてあげられるのだが、これは、けして日本だけのことではなく、特にハードワーカーの度合いは、グローバル化が
より進んでいたり、競争原理の徹底度が高い、といったことから、特に「アメリカ」のビジネス社会は、日本のそれより輪をかけた状態であるらしい。

そのアメリカで、コンサルタント会社を経営し、コンサルタントとしてバリバリとハードワークをこなしつつも、「単なる」疲労や睡眠不足ではなかった。魂が消耗していたのだ」と自覚した女性コンサルタントによる、忙しさに振り回されずに、生きる目的や意味を取り戻すための「シンプルに働く」ための提案が、本書『カーソン・テイト「ワーク・シンプル」 がんばらずに成果が上がる働き方(日経BP社)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

プロローグ 無理をやめ、シンプルに働くと決めた日
第1章 ハードワークではなくスマートワーク
第2章 楽になるための準備をしよう
第3章 あなたの生産性タイプは?
第4章 注意力をコントロールする
第5章 あなたの本当の優先事項は?
第6章 狙った時間に賢く投資する
第7章 「マスター・タスクリスト」で脳を開放する
第8章 絶対できるタイプ別の実行・管理法
第9章 メールの手なづけ方
第10章 作業効率の良い空間作りのコツ
第11章 書類整理に時間をかけないために
第12章 チームメンバーへの上手な助けの求め方
第13章 違う生産性タイプとうまく働くコツ
第14章 会議革命を起こす
第15章 「本当のあなた」が一番、生産性が高い
エピローグ 忙しさは克服できる

となっていて、基本のところは、それぞれの人の「生産性のタイプ」に応じて、タスク管理、書類の管理などの仕事のノウハウを提案していく、というつくりとなっている。

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「仕事を楽しみ「本当にやりたいこと」を探すには・・・ ー ピョートル・F・グジバチ「PLAY WORK(プレイ・ワーク)」

「人生百年時代」とか「働き方改革」とか、いろんな掛け声はあるのだが、思ったような成果とか変化とかが見えてこないのが、多くの人の実感であろう。
その原因は、おそらくは「働き方」や「人生の設計の仕方」についての根本的な「思想」のところはおいといて、ノウハウ的なところや、制度的なところに熱中してしまう日本人の癖がでているのではないか、と当方的には思っている。

そんな「働くこと」そのものについて、「 人生100年時代、「働くこと」は「生きること」と限りなく重なり合っていきます。 」と根本的なところについて提案・アドバイスしているのが本書『ピョートル・F・グジバチ「PLAY WORK(プレイ・ワーク)」』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

Step1 自己認識
Srep2 自己開示
Step3 自己表現
Step4 自己実現

となっていて、まずは

見方を変えれば、AIの登場は僕たちにとっては朗報です。つまらない仕事や嫌な仕事を、AIが代わりに引き受けてくれるのです。 人間はもっと自由にやりたいことを仕事にすればいい

と言ってくれるのは、とかくデジタル・ネイティブ世代に引け目を感じてしまう当方のような世代にとってうれしい発言である。

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職業人生のターニングポイントの設定方法をアスリートに学ぶ ー 為末大・中原淳「仕事人生のリセットボタン ー 転機のレッスン」(ちくま新書)

人生100年時代といわれながら、労働環境、働き方については、「霧の中」の度合いを増しているのが現状であろう。そして、「転職」ということが変わったことではなくなった若い世代よりも、「就社」意識がほとんどであった時代にビジネスマンとなった中高年世代が「霧が深い」というのが実感であろう。

そして、副業解禁、転職解禁とはいいながら、中高年世代が自分のライフサイクルの中で、どこでターニングポイントを迎えたらいいのか、どう気持ちの持ち方を変えたらいいのかについては、個々人が探っていかなければならない課題として残されているのが現状で、どこを見ながら動いたらいいのか、と悩んでいる人も多いと思う。

そんな時、ビジネスマンの先達の発言よりも、人生のかなり若いところで引退や転身を迫られる「アスリート」の発言が「道標」となることが多いのだが、オリンピック・メダリストとなった後、スポーツとは違う分野に転身した「為末大」氏の発言の数々は参考となることが多いのではなかろうか。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 右肩上がりの単線エスカレーター人生はもう終わり
第二章 勝てる傍流か、負ける主流か?
第三章 新たなスタートを切るために
第四章 自分の経験をリフレッシュする

となっていて、基本は、為末大氏と中原淳氏との、人生百年時代の「働き方」「職業スタイル」についての対談集である。

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”日本型”や”シリコンバレー流”にとらわれない「働き方」を模索する ー ピョートル・F・グジバチ「Google流 疲れない働き方」(SB Creative)

「世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか」で、「今、その場で仕事を終らせる」「無駄に悩まない」「メールに頼りすぎない」などのGoogle流の「世界一速く仕事をする」仕事術について紹介してくれた筆者が、今度は「働き方」について書いたのが本書。本書のキーワードは「疲れない」という言葉で冒頭のところで

皆さんは、ヘトヘトに疲れるまで働いているのに成果が出ないと思っているかもしれませんが、逆です。 「疲れている」から、成果が出ないのです。

と「時間」の量を基準にする我々の「働き方」「成果」について疑問を投げかけるのだが、精神論に流れていかないのが高ポイントな「働き方改革)本。

自らのマネジメントや心理的な手法などの誰もがとっかかれそうな「テクニカル」なノウハウも含めてアドバイスしてくれるのが、誰もが仕えるサービスを提供するGoogle流の肝であると実感するのが本書である。

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歴史的・構造的に「残業」をとらえた長時間労働の「処方箋」 ー 中原淳+パーソナル総合研究所「残業学」

電通の痛ましい自殺や、いろいろ表にでてきた過労死といったことを発端に始まった「働き方改革」なのであるが、「働き方」を改革することが遅々として進まないだけでなく、「労働時間の短縮」も、大企業から中小企業への付け回しのNHKニュースもあったように、思ったようには進んでいないのが実態であろう。

そんな「残業」の問題を、単純な「効率アップ」「生産性向上」の観点だけではなく、歴史的背景や慢性的な長時間労働を産む「構造」の問題まで、正面からとらえたのが本書『中原淳+パーソナル総合研究所「残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうか?」(光文社新書)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

オリエンテーション ようこそ!「残業学」講義へ
第1講 残業のメリットを貪りつくした日本社会
第2講 あなたの業界の「残業の実態」が見えてくる
第3講 残業麻痺ー残業に「幸福」を感じる人たち
第4講 残業は「集中」し、「感染」し、「遺伝」する
第5講 「残業代」がゼロでも生活できますか
第6講 働き方改革は、なぜ「効かない」のか?
第7講 鍵は「見える化」と「残業代還元」
第8講 組織の生産性を根本から高める
最終講 働くあなたの人生に「希望」を

となっていて、まずは

残業についての議論がこのように絶望的なすれ違いをもたらす原因の一つには、「データに基づく対話がなされていない」という問題があると私は見ています。・・・「木を見て、森を水」の状況が、残業問題には常についてまわります(P35)

といった問題提起から始まる。働き方改革法案の国会審議の過程ででてきた、長時間労働の統計のいい加減さは置いといて、たしかに、長時間労働の問題の議論が深まらないのは、単なる「時間数削減」に目が行って、長時間労働を生み出す原因は、「ダラダラした働き方」であるとか、働く側のメンタリティの部分だけ強調されて、心理学的、労働の構造論的なアプローチがされていないことにも原因があるように思える。

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「スペシャリスト」ではない生き方も魅力的だ ー エミリー・ワプニック「マルチ・ポテンシャライト 好きなことを次々と仕事にして、一生食っていく方法」(PHP)

もしあなたが、次の2つの項目

①「一筋の道」とか「専門家」とか、とかく世の中のワークスタイルについてのアドバイスは、特定の分野を永年にわたって掘り下げる人を推奨することが多くて、あちこち興味が移る人にとっては、とても冷たいことが多い。

②日本社会の「職人崇拝」の影響のせいか、企業社会においても「スペシャリスト」よりも「ゼネラリスト」は「冷遇」されててしまうことが多いような気がする。

について賛同できて、さらに自分自身が「興味が多方面にあるために冷や飯を食わされている」と思っていたら、あなたは、本書にいう「マルチ・ポテンシャライト」なのかもしれない。

そんな移り気といわれる「マルチ・ポテンシャライト」がとても魅力的な性向で、「スペシャリスト」では実現できない、様々な成功の可能性を秘めていることを教えてくれるのが、本書『エミリー・ワプニック「マルチ・ポテンシャライト 好きなことを次々と仕事にして、一生食っていく方法」(PHP)』である。

【構成は】

PART1 あなたが「なりたいものすべてのもの」になる方法
     ようこそ、「マルチ・ポテンシャライト」の世界へ

 第1章 マルチ・ポテンシャライト
  ー世間にしばられず、複数の天職を追求する人たち
 第2章 マルチ・ポテンシャライトのスーパーパワー
 第3章 マルチ・ポテンシャライトが幸せに生きる秘訣

PART2 マルチ・ポテンシャライトの4つの働き方 十人十色

 第4章 グループハグ・アプローチ
 第5章 スラッシュ・アプローチ
 第6章 アインシュタイン・アプローチ
 第7章 フェニックス・アプローチ

PART3 マルチ・ポテンシャライトたちの課題
     ”ドラゴン”の倒し方を教えよう

 第8章 自分に合う「生産性システム」のつくり方
 第9章 マルチ・ポテンシャライトが抱く「不安」に対処する

となっていて、PART1が、「マルチ・ポテンシャライト」が決して劣った性向ではないという評価、PART2が、「マルチ・ポテンシャライト」の類型分析と、それぞれの特徴とワークスタイルの処方箋、PART3が、「マルチ・ポテンシャライト」全てに向けて、彼らの仕事のスタイルや仕事をする上で、彼ら特有の悩みへのアドバイスである。

 

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「AI」が全盛となる時代に「機嫌よく働く」ためのポイントを考える

【 「AI」に関する記事2つー「光」と「陰」】

 
ITmediaによる、NECプラットフォームソリューション事業部マネージャーのセミナーの概要をまとめた『「AI導入のリスク」よりも「AIを活用しないことで起きるリスク」を考えろ』という記事では
 
・もはやAIはブームではない
・AIの精度が100%ではないことをリスクとして手をこまねくのではなく、AIを活用しないことで想定されるリスク(少子高齢化による労働人口の減少やノウハウのあるベテラン社員の不足)の対処するためにAIを活用するステージに入っている
・企業のAI導入につながる「情報活用」のステージは
①データ取得(収集)ができているか
②データが活用できる形で蓄積できているか
③データを見える化してビジネスに活用できているか
④予測、最適化などの高度な分析のトライアルができているか
⑤分析モデルを作成しビジネスで成果をあげているか
の5段階で、企業はこのステージを1段階づつ上って情報活用のレベル向上を目指すべき
 
一方で、AIへの過信を戒める記事もあって、「日本を覆う「AI万能感」の危ない正体」では
 
・そもそも、AIは学習時に与えられたデータを使って、最も当てはまりの高い解を「推定」しているにすぎない。
人間のように概念を理解し思考をもって答えを「決定」しているわけではない
・今のAIは言語の意味やそれが持つ真意を人間の知能のように理解して、解答を導き出しているわけではない。
 統計的な処理とAI的な処理を融合させて、最適解を探しているに過ぎない
 
としていて、今の「AI」は、当方のような一般人が思い浮かべる「HAL」のような人工知能には遥か及ばない段階にあるようだ。
 
この2つの記事から「AI」による社会の変化を推測すると
 
①「AI」による企業の変化は「まだら」に進む。それは、「AI」に適した業種かどうかではなくて、それぞれのAIへの理解度によってまちまちに進む。
②このため、企業社会の変化も劇的には起きない。
③個人を取り巻く環境も、企業社会の変化にひきづられて、劇的には変化しない。ただ、いつの間にか、生活や職場が変化している状況で、確実に、仕事が減ったり、変わったりしている
 
といった風に、じわじわと水かさが増していくように、気がつけば、すっかりあたりの様子が変わっていたというような感じで進むはずで、企業活動はおいといて、個人としても自己防衛を講じておいたほうがよいのは間違いない。
 

【野口悠紀雄『「産業革命以前」の時代へ』でのアドバイス】

 
 
このあたり、先だってレビューした野口悠紀雄氏の『「産業革命以前」の時代へ』では
 
人間でなければできない仕事は残るだろう。例えば、「なぜか?」という疑問をAIが発することはできないだろう。そしてAIが定型的な文章を書いてくれるようになれば、人間は分析的な作業に集中できるようになる。
(略)
さらに残る仕事は、創造的な仕事だけではない。例えば、掃除だ。「何がゴミであるか」を判別するのは、それほど容易なことではない。一見したところ単なる紙切れに見えても、そこに重要なメモが書いてあるかもしれないからだ。
いかにコンピュータが進化しようと、行っているのは演算に過ぎない。
判断をするためには、機械学習するAIでもデータが必要だ。それは人間が与える。だから、人間は主人であり続けるだろう(P189)
 
とし
 
いま必要なのは、人間にしかできない価値のある仕事がなんであるかを考え、それを追求することだ。
自分にしかできない価値をいかに生み出すかが、これからますます問われてくる(P189)
 
とアドバイスしている。
 

【当方が勧める3つの「機嫌よく働く」ためのポイント】

 

①「定型的」なことからはできるだけ遠ざかる

 
AIの得意分野は、ビッグデータに基づいて分析、推計することであること。このジャンルで戦っても人間に勝ち目はない。
なので、いさぎよく、この分野からは手をひいていこう。例えば、入力作業とか、集計作業、データ分析といった仕事については、できるだけ、自動化、機械化、あるいは外注化することを考えて、自ら手を動かすことは、できるだ避ける。一応、必要最低限なことはできるようにしておく必要が今のところはあっても、熟練する必要はない。
 

②「考えること」の割合を増やす

 
これは企画やプランニングに特化しろ、といっているのではない。自分がやっている仕事は単純な「作業」にするのではなく、「もっと自動化できないか」「もっと楽できないか」、「もっとうまくいく方法はないか」という視点で考えていくということ。
単純作業が必要な場面は多いし、ポジションによっては、避けられないことも多い。できるだけ、AIにできそうなことからは逃げ出して、AIが苦手とするところを見つけて、やっていこう。
 

③「人の手」をいれることによるプラス・オンを考える

 
AIの苦手なところは「ハンドメイド」などの「人の感性」が関わるところ。データーから推測されることをなぞるのではなくて、自分の感性によって、なにかプラスオンできないか考えてみよう。例えば、データの集計作業などをやらされていても、自分なりのデータの使い方や新たなビジネスを考えてみる、なんてことをついでにやってみてもよいのでは。
 

【まとめ】

 
「AI時代」に機嫌よく働くコツは、否定形で、気まぐれである「人間の特性」にある意味、忠実に従ってみるということに尽きるのかもしれない。例えば、自分たちの創意工夫を、作っているものにこっそりと忍ばせたりといった、江戸時代の職人たちがの振る舞いが参考になるかもしれないですね。

「安定した低空飛行」経営に、「働き方改革」の特効薬を見つけた

「働き方改革」の掛け声は相変わらず勇ましいのだが、努力しても労働時間はへらないし、効率化をしてはずなのに、ラクにならない、というのが多くのビジネスマンの「働き方改革」への実感ではないだろうか。

そんなあなたに参考になりそうなのは”BUSINESS INSIDER”の「売上増も他店舗展開も捨てた企業ー「家族で晩御飯」の働き方をフランチャイズ展開」で取り上げられていた株式会社minittsの経営する国産ステーキ丼専門店「佰食屋(ひゃくしょくや)」のビジネスモデルである。

【「安定した低空飛行」を目指す「働き方」】

詳細は、上記の記事で確認願いたいのだが、要点は

・飲食店は、平日より土日の方が大変なわけだが、土日に余分に働いたからといって給料が高くなるわけではない。

・「頑張ったら自分に返っていくる仕組み」を飲食店に導入できないか考えたのが「1日100食売り切ったら、その日は店仕舞い」というシステム。

・休暇は、社員・アルバイト同士が話し合ってシフト変更をする

・ビジネスプランコンテストではケチョンケチョンに言われたが、今では3店舗まで増えた。

・ただ、基本は会社を拡大しようというのが目的ではなく、「自分たちが働きたい会社」をつくること。譲れない条件は「家族で晩御飯が食べられること」

ということ。

その基本理念はあくまでも「会社に貢献している人が報いられないのはおかしい。会社が儲かっても社員が報われないのはおかしい」ということにおきながら、今後は「佰食屋」から。さらにダウンサイズして「五十食屋」を増やすことを目指す。
つまりは「安定した低空飛行」ができる店を増やし「働き方のフランチャイズ」をつくりたい

といったことで、いわゆる「拡大志向」から遠いところにいようという意思が強固に示されている。

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育休と女性活用の「明けない」夜明けー中野円佳「育休世代の」のジレンマ

正直のところ、当方が「男性」で「男性優位」な時代に生きてきたせいか、この「育児休業」と「女性の活躍」のジャンルは少々苦手である。
であるのだが、今読んでおかねば、と思ったのは、制度は整いつつも離職が出てしまう「育児と企業社会」が制度が整いつつも、なにか「幸福感」が漂わないのはなぜなんだ、と思ったのである。
本書『中野円佳「「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか?」(光文社新書)』は筆者の、大学院時代の修士論文を加筆修正したもので、執筆はおそらくは第三次安倍内閣の2014年の頃に書かれたものではと推測している。その後「働き方改革」の議論も本格化しているのだが、どうも、先に述べた「すぅすぅ感」が拭いきれず、ひょっとすると、この原因が「働き方改革」の議論全てに共通するのではないか、と思ったところでもある。

【構成は】

序 なぜ、あんなにバリキャラだった彼女が「女の幸せに目覚めるのか?
1章 「制度」が整っても女性の活躍が難しいのはなぜか?
1)辞める女性、ぶら下がる女性
2)どんな女性が辞めるのか
2章 「育休世代」のジレンマ
1)働く女性をめぐる状況の変化
2)「育休世代」にふりかかる、2つのプレッシャー
3)「育休世代」の出産
3章 不都合な「職場」
1)どんな職場で辞めるのか
2)どうして不都合な職場を選んでしまうのか
4章 期待されない「夫」
1)夫の育児参加は影響を及ぼすか
2)なぜ夫選びに失敗するのか?
3)「夫の育児参加」に立ちはだかる多くの壁とあきらめ
5章 母を縛る「育児意識」
1)「祖父母任せの育児」への抵抗感
2)預ける罪悪感と仕事のやりがいの天秤
3)母に求められる子どもの達成
6章 複合的要因を抱えさせる「マッチョ志向」
1)二極化する女性の要因
2)「マッチョ志向」はどう育ったか
補1)親の職業との関連
補2)きょうだいとの関連
補3)学校・キャリア教育との関連
7章 誰が決め、誰が残るのか
1)結局「女ゆえ」に辞める退職グループ
2)複数の変数に揺れ動く予備軍グループ
3)職場のジェンダー秩序を受け入れて残る継続グループ
8章 なぜ「女性活用」は失敗するのか
1)「男なみ発想」の女性が「女ゆえ」に退職するパラドクス
2)企業に残る「非男なみ」女性と、構造強化の構造
3)夫婦関係を侵食する夫の「男なみ」
4)ジェンダー秩序にどう抗するか?
5)オリジナリティと今後の課題(意義と限界)
おわりにーわたしの経緯
新書を出すにあたって

となっていて、内容的には、インタビューにかなり時間と利労力をかけてまとめてあって、かなりの労作であることを評価したい。

【本書の注目ポイント】

まず「ありゃ」と思ったのは、

米国の先進的なファミリーフレンドリー企業において、社員が家庭生活を外注できるよう様々なサービスを提供し、働きやすい職場を作ることで、むしろ家庭が効率を求め疲弊するという、家庭と職場の逆転現象を指摘する(P81)

というところ。どうも、育児も含めた「働きやすい環境」の整備が、家庭にとって幸せな結果ばかりを産まないのは、日本だけではないらしく、先進地であるアメリカでも、といったところのなにやら、根が深そうなものを感じる。

さらに

「仕事」も「夫」も得ようとする女性もいるものの、「自分よりも仕事の上で有能な男性を勝ち得ることが自分の「性的魅力」を確認させてくれる」が、自分が仕事をしている場合は特に、「自分よりも高い社会的地位の男性の妻となると、そうした男性たちが「家事・育児」に割くことができる時間的資源をほとんどもっていない場合が多い」ため、「『性的魅力』による異性獲得競争に勝利することが、結果として自分自身の『社会的地位』競争において相対的に不利になる(P127)

というところには、女性特有のジレンマを感じてしまって、なんとも複雑な思いにかられてしまいますな。この件で女性が「満足感」「達成感」を得るには「マウンティング」だけでは解決できない問題で、誰が勝者で誰が敗者か混沌としてきますな。

そして

「女性の働きやすさ」を嫌悪したり無視したりする女性たちは、「社会規範としての女性らしさの価値を自明視していない」よりは、むしろ積極的に女性らしさを切り捨てることで、男性が圧倒的に多い世界での競争や「女らしい女性」が損をする社会を生き延びようとしてきたと捉えられる(P281)

といったところになると、なにやらイギリスの分離対立戦略に踊らされて、最後は国を失った、インドの藩主国たちを思わせるところもある。「イギリス」って誰だ、という質問には答えないけれどね。

【まとめ】

なんともまとまりのつかないレビューとなってしまったが、それは、この問題が、なんともまとまりのつかない「状況」にあることを意味していることの反映という気がしてきた。

筆者の「本書では、出産後の女性の抱える問題は、育休をとるかどうかではなく、復帰後の働き方と処遇にあることを指摘してきた(P323)」という主張は、「正解」ではあるが、まだスキッとした「解決策」がでていないことでもあるように思う。

「子育て」と「女性の活躍」、「女性の働き方」の問題は、「制度」を作って終わりではなく、「魂」をどう入れるか、と局面になっててきているようですな。

【筆者のほかの著作】