スポーツ」カテゴリーアーカイブ

駅伝の名監督が教える「ゆとり世代」の能力を全開にする秘訣 ー 原晋「逆転のメソッド 」

本書が書かれた以降、四連覇をし、東海大学に五連覇を阻まれたとはいえ、大学駅伝の雄として君臨している存在となった、青山学院大学の陸上部監督の原晋氏による、若者の育成論、チーム論について書かれたのが、本書『原晋「逆転のメソッド」(祥伝社新書』。

書かれたのは、2015年の青山学院大学の箱根駅伝初優勝の時を中心に、筆者の学生時代・中国電力時代の競技生活、中国電力での営業マン時代、そして青山学院大学の陸上部(長距離)の監督となって、当時、優勝候補どころか箱根駅伝に出場するのがやっとだったチームを、後に優勝常連校となる強豪まで育て上げた記録とアドバイスという仕立てである。

【構成と注目ポイント】

構成は

はじめにー駅伝もビジネスも同じである
第1章 選手時代の栄光と挫折
第2章 「提案型」営業マンの伝説
第3章 箱根駅伝優勝への道〜ゼロからの大作戦
第4章 青学は、なぜ優勝できたのか
第5章 「逆転」を生み出す理論と情熱

となっていて、初優勝から連覇が続いていく中で、著者の本やインタビュー記事は数多く出されるようになったので、すでに見知った内容の方も多いと思うので、ここでは、「ゆとり世代」の取り扱い説明書的な意味合いで取り上げよう。

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「ラグビー」をテーマにしたオススメのコミックと小説を調べてみた

ラクビー日本代表の「ワールドカップ2019」での勝利が続いてまずは目出度い、ということでラグビーをテーマにしたコミックや小説のオススメ本を調べてみました。

ラグビーは、アメフトと違って守備側と攻撃側が明確に別れていないこともあって、アメフトをテーマにしたものがクォーターバックを主人公にした「ヒーローもの」が多いのに比べ、スタンドオフを主人公にしていても、「チーム」を強調したものが多いように思います。さらには、「闘球」といわれるようなぶつかり合いがあるので、同じスポーツマンガでも、サッカーや野球と違った「泥臭さ」が楽しめるとともに「熱さ」が味わえるように思えます。その意味で「企業もの」のビジネス小説とも通じるところが多いのかもしれません。

◇小説系◇

【池井戸潤「ノーサイドゲーム」】

ノーサイド・ゲーム
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池井戸 潤
ダイヤモンド社 (2019-06-13)
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大泉洋さんが主演で、勤務先の自動車会社のラグビーチーム「アストロズ」のGMとしてチーム再建に取り組む、といったチームと自分の再起をかけた「戦い」を描いた小説ですね。「陸王」で、スポーツと企業社会を組み合わせた世界をみせてくれた池井戸潤さんの腕が冴え渡るところですね。

【堂場俊一「10-ten」】

10 -ten- (実業之日本社文庫)
堂場 瞬一
実業之日本社
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ミステリーだけでなく、スポーツ小説の分野でも多くの傑作を発表している、堂場俊一さんの作品で2015年のワールドカップのときにも評判になってますね。舞台的には、大学リーグ4連覇を目指す強豪大学チームの名監督が急死した後に、後任となったヘッドコーチを主人公にした物語ですね。

【堂場俊一「二度目のノーサイド」】

二度目のノーサイド (小学館文庫)
小学館 (2013-01-21)
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こちらは通常のスポーツ小説とはちょっと趣を異にしてて、元実業団ラガーマンを主人公にした、「あの日を再び」的な物語ですね。元実業団でラグビーの選手だった主人公が、チームの元マネージャーの死をきっかけに、選手当時、くじ引きで負けた最終試合の決着をつけようと思いたち・・・、といった展開です。

◇コミック系◇

【雨瀬シオリ「ALL OUT」】

二度目のノーサイド (小学館文庫)
小学館 (2013-01-21)
売り上げランキング: 46,817

神奈川県の高校ラグビー部を舞台にした、青春スポーツものですね。背の低い「祇園健次」と背の超高い「岩清水澄明」というダブル主人公。ラグビーの才能がありながら中学生時代に友人に練習で怪我させたことがトラウマで「ウドの」大木」化している岩清水と、ラグビー初心者ながら、目立ちたがりの上昇志向の「祇園」がひょんなことからコンビを組んで、弱小の発展途上ラグビーチームの中でチームメイトと奮闘していくストーリーですね。「どんな人間だって主役になれる」の名セリフがよいですね。

ちなみに、コミックは16巻まで出てますし、アニメ化もされてます。

ALL OUT!! 1-16巻 新品セット (クーポン「BOOKSET」入力で+3%ポイント)
雨瀬 シオリ
講談社
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【竜崎遼児「ウォークライ」】

ウォー・クライ 1巻
ウォー・クライ 1巻
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Benjanet (2014-12-16)

創立一年目の私立高校・扶桑高校の新設ラグビー部が舞台。そのラグビー部は、元日本代表の監督を務めた校長が、1年間ラグビーをしたら、後2年は遊んでいても卒業してやる、という条件で全国から集めた悪タレばかり。そこに、新監督として、ラグビー日本代表の妹で武道の達人が赴任してきて、といった設定で始まる、学園ラグビーもの。ところどころ、古さが滲むところがありますが、悪ガキたちがスポーツを通じて団結し、強豪チームに挑んでいく、といったオーソドクスな学園スポーツものですね。
毎巻、乱闘シーンや喧嘩が起きているので、ちょっと今風とはいえないかも。

このシリーズはすでに完結しています。

【飛松良輔「ブルタックル」】

ブルタックル (1) (ビッグコミックス)
飛松 良輔
小学館 (2017-04-28)
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上の二作は高校スポーツもので、これは大学ラグビーが舞台。といってもラグビーの古豪・早稲田、明治、同志社や強豪の帝京、東海といった大学ではなく「星辰大学」という私立大学。もっとも、かっては日本一、二を争った元強豪校、という設定なので、モデルは「関東学院大」とか「大東文化大」といったところでしょうか。しかも「桜ちゃん」という同級生にかっこいいところを見せたい、モテたいという動機から、ラグビーのド初心者「釜之うしお」が、家業の銭湯の薪割りで鍛えた筋力を武器に活躍をしていくっていうちょっと異色なスポーツマンガ。とはいっても、かなり「熱い」場面が多数あって、スポーツマンガの王道をいってます。

こちらは現在3巻まで。

【山下てつお「IDATEN」】

IDATEN 1巻
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ビーグリー (2015-10-30)

母親が病死し、その後、借金に追われた父親が失踪。幼い弟・裕太と二人きりになった中学を卒業したばかりの沢村雄吾は、弟を養うため万引で生活をしている。そういう彼に夜の町で出会ったラグビー日本代表の中心選手・墨崎は、彼の「走り」にラグビーの名選手になる素質を見出す。かつてラグビーワールドカップの優勝の常連・世界ラグビーの強豪ニュージーランドのオールブラックスに大敗し、世界レベルから遠いところにいる日本代表を世界レベルに引き上げるために、彼に主要な役割をもたせることを計画し・・、といった展開。
まだ、日本がワールドカップでほとんど勝てなかった時の成り上がりストーリーと考えればいいですね。突然終了したっぽい二巻で終わっているのが残念ではありますが。

◇おまけ◇

ラグビーものもいいけど、ルールとかが摩訶不思議でよくわからん、という人は、猫マンガの巨匠・そにけんじ氏による、15匹の猫がラグビーに挑戦する「ラガーにゃん1 猫でもわかるラグビー入門」「ラガーにゃん2 猫ラグビー ワールドカップ編」あたりはいかがでしょうか。

ラガーにゃん1 猫でもわかるラグビー入門 〔初級編〕
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スポーツチームの組織づくりはビジネスに応用できるか — 岩本真弥『「脱・管理」のチームづくり 駅伝日本一、世羅高校に学ぶ』(光文社新書)

高校駅伝の名門「世羅高校」の陸上競技部監督で、2010年には、師走の都大路で男女アベック優勝を成し遂げた岩本氏の著書。

構成は

第1区 都大路、運命の一日

第2区 速い選手よりも強い選手を

第3区 どうやってチームを再生させたのか?

第4区 苦しみ続けた日々が教えてくれたもの

第5区 人口17000任の町が日本一になれた理由

第6区 タスキを次世代へつなぐ

第7区 日本陸上界、改革のための提言~青山学院大学陸上競技部・原晋監督対談

となっていて、男女アベック優勝のふりかえりが「第1区」「第2区」、成績が地に堕ちた世羅高校を、いかに再生したのかというあたりが「第3区」「第4区」「第5区」という仕立てである。

こうしたスポーツもの、スポーツチームの育て方として読むか、教育論として読むか、はたまた、営業組織を含むビジネスの組織づくりとして読むかは、それぞれの自由であるのだが、読むポジションをきちっとしておかないと妙な小道に入り込んでしまうことがあって、一般的に、スポーツを題材にした組織論を読む際に「注意がいるな」と思っているのは、日本人の「スポーツ好き」のせいか、スポーツチームを強くする方法論、組織論が、すべての場面で通用するかのような錯覚を抱いてしまうことで、その辺は、読者がいろいろ忖度しながら読まないといけないところであろう。

個人的に、一般社会での組織運営に活かせるよね、と思ったのは

優勝した翌年というのは難しいのだ。優勝という偉業を成し遂げたことで、選手はどうしても緩んでしまう。・・特に前年結果を遺した選手ほど成長が鈍り、チームの中心にならなければいけないはずが逆にブレーキになってしまいがちである。(P22)

といったところは、業績が急に伸びたり、プロジェクトがバカ当たりした時の戒めとして読めるし、

すべてのベースは生活にある(P54)

強さというのは何だろう?私は心がブレないことだと思う。どんな状況にもあわてないこと。想像していない事態にぶつかっても、あきらめず、腐らず、自分の頭で考えて冷静に対処できること。私が言う強さとは、つまり”心の強さ” ”メンタルの強さ”であり。そういう選手が最終的には結果を残せると思っている。

強い選手というのは失敗しない選手という意味ではない。彼ら、彼女たちはちょくちょくミスをする。しかしそこでズルズル崩れていかないのが強い選手だ。彼らは失敗を失敗で終わらせないリバウンド・メンタリティを持っているのだ。(P57)

といったところは、社員の育成の基礎的な指針として共通項は多いような気がする。

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近藤史恵「キアズマ」(新潮社)

「キアズマ」とは染色体の交換が起こった部位をさす、といったことは本書の冒頭にあって、ちょっと面食らうのだが、どうやら「他者との交流」とか「人と人との接点」といったことと考えればよいらしい。

 

で、本書は近藤史恵のライフワークっぽくなってきた「自転車小説」の中で、謎解きやレースのどろっとしたかけひきとかがかなり少ない、自転車スポーツの青春小説といったもので、読む口は結構爽やか。

 

粗筋はというと、大学に入りたてのフランスからの帰国子女である「岸田正樹」が、大学へモペット(原付きにペダルがついている「原動機月自転車」といったものらしい)で通学途上に、大学の自転車部のロードバイクと事故ってしまう。それが縁で、自転車部に勧誘され、意外とロードバイクの才能があることが発見され、レースに出、といった筋立て。

そして、こういうスポーツ青春小説は、というと、クラブ内の確執があって、他校のライバルとの切磋琢磨があって、はてまたほぼ同い年か少し年上の、どういうわけか美人との恋愛っぽいやりとりがあって、といったものだが、残念ながら、そういったものはほとんどない。

かといって、ストイックな求道風かというと、そこは「ロードバイク」という今風なものを題材にしているだけあってそういうわけでもない。「ロードバイク」と「ロードレース」の魅力に順々と引き寄せられながら、自らの精神も脱皮・成長していくという、青春小説の「髄」のところはきちんとおさえてあるので、むしろ余計な不純物のない、削ぎ落とされた風合いで、良質の「スピリッツ」をキンと冷やして飲み干すような心地ではある。

 

するすると読めるスポーツ青春小説でありますな。気分がクサクサしている時の良薬でありますかも。