ラーメンは、すでに国民食の域を脱して、「民族食」「日本文化食」のレベルに達していて、そうなると、それをつくる調理人も「料理人」「職人」として扱われるようになってきているのだが、有名店のラーメン職人たちの物語を紡いだのが本シリーズ。
収録は
第1巻
1杯目 麺屋武蔵/山田雄・佐藤吉治
2杯目 柳麺 ちゃぶ屋/森住康二
3杯目 ぜんや/飯倉洋孝
4杯目 中村屋/中村栄利
5杯目 なんつっ亭/古谷一郎
6杯目・7杯目 支那そばや/佐野実
第2巻
1杯目 東京・荻窪/春木屋
2杯目 東京・池袋/大勝軒
3杯目 飛騨高山/まさごそば
4杯目 札幌/純連(すみれ)
5杯目 白河/とら食堂
6杯目 和歌山/井出商店
第3巻
1杯目 久留米/大砲ラーメン
2杯目 月形/むつみ屋
3杯目 京都/天下一品
4杯目 函館/マメさん(丸豆岡田製麺)
5杯目 福岡/博多一風堂
6杯目 大阪/日清食品
となっていて、全てとは言わないまでも、多くの店の名前が記憶にあることと思う。
で、こうした料理を含めた職人の物語は、たいていの場合、苦難を乗り越えて、その天性が開花する、といったのが定番で、一話、二話はよいのだが、多くをよむと満腹感が漂ってきて、その努力臭が鼻についてくるものであるのだが、有り難いことに、このシリーズはその臭いが少ない。
というのも、大衆食でもあるラーメンらしく、その料理人が店を繁盛店にもっていったり、ラーメン屋を始めたりする経歴が多種多様であるせいであろう。例えば、通商産業省の役人あがり(ぜんや/飯倉洋孝)であったり、戦後の動乱の中で子どもたちを育て上げるための母親の大奮闘(和歌山/井出商店)であったり、「天才」と呼ばれた父親を乗り越えようとする息子の努力(白河/とら食堂)であったり、ラーメン屋を開業してしまった、製麺メーカーの社長であったり(函館/マメさん(丸前岡田製麺)、とラーメンの種類の多様さそのままに、ラーメンに携わる人も多様である。
そして、3巻目の〆に、インスタントラーメンの発明者「安藤百福」をすえるなどメニュー構成もよく考えてある(風に思える。ひょっとすると、とりあげるラーメン屋に詰まったせいかもしれないが)。
とはいうものの、そこはラーメンに携わる人々の物語である。菓子や日本料理の料理人の物語につきものの辛気臭さ、説教臭さはほとんどない。ビジネス本に疲れた時の箸休めにいかがでありましょうか。
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