高橋留美子「鏡が来た」

「うる星やつら」に始まって、「らんま1/2」「犬夜叉」などのミリオンセラーを輩出し、コミック界の大御所となった高橋留美子大人であるのだが、個人的には、コミック・ホラー(ちょっと矛盾した表現なのだがご容赦を)の掌編にその凄さが凝縮するような気がしている。

本書の収録は

鏡が来た
リベンジドール
星は千の顔
可愛い華
with CAT
MY SWEET SUNDAY

となっていて、本気のホラーは、表題作の「鏡が来た」で、後は、ホラーの匂いはあるがコミックの気配が強い作品が多い。
もっとも、「鏡が来た」にしても、鏡による人間の邪心の「浄化」の過程で、美少女と眼鏡少年が出会うという、Boy Meat Girlの典型といえばいえなくなく、恐怖だけをぐいぐいと押し付けてくる、ありきたりの「ホラーもの」と違ってあちこちに笑いが挟まるのが、「るーみっくわーるど」の心地よさでもある。

なお、最後の「MY SWEET SUNDAY」はあだち充とのコミック風味の交換日記で、手塚治虫、石森正太郎、藤子不二雄の次の次の世代がコミックの世界にどう憧れをいだき、どう漫画家を目指したか、といったところが日本の漫画の歴史の一幕を同時体験できて面白い。

高橋留美子のホラーはどうかすると、夜中に後ろを振り返ってしまうぐらい怖いものもあるのだが、ソフトホラーといったテイストで、あまり心臓に負担をかけずに読める短編集でありますな。

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