シリーズものでレビューしている「高橋留美子劇場」であるのだが、3巻目の収録は
「日帰りの夢」
「おやじグラフィティ」
「義理のバカンス」
「ヘルプ」
「赤い花束」
「パーマネント・ラブ」
初出は2000年から2004年。長編は「らんま1/2」が連載中。世情的には、21世紀が終わり、2001年は池田小事件、2002年は雪印の偽装事件、2003年はSARS、2004年は中越地震といった風に不安定な時代が始まった予感がする頃ではあるせいか、この巻は、初恋の中学校の同級生との再会とみせかけての夫婦の愛の確認(「日帰りの夢」)であったり、単身赴任が終わって実家へ帰ってきた父親と息子の関係修復(「おやじグラフィティ」)であったり、妻の入院で体の不自由になった父親とあらためて向き合うこととなった息子(「ヘルプ」)であったりと、家族の絆の「修復」や「結束の確認」といった筋立てが多い。
ざっくりとした感じで言うと、21世紀というのは、戦争の世紀であった20世紀から脱して夢のある世紀であるはずであったのだが、どうも災害は多いし、いままでグローバル化やらフラット化やらと世界は「一本化」の方向へ進むのかと思いきや、「局地化」と「分散」が始まって、どうも今までの離合集散の歴史と大差ないのではと思わせる。
そうした時に、回帰したくなるのが、やはり「人と人とのつながり」であるとか「紐帯」であるとかの、ごくパーソナルな関係の心地よさと大事さというのも一つの「解」であって、そのあたり高橋コミックはきっちりとおさえていて、流石といわざるをえない。
とはいうものの、やはり前近代の名残をとどめている「家族」というものは、どこまで機能が確保されるのでありましょうか。
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