天下騒乱の騒ぎの陰で、松姫と信平の恋が育つのでありました — 佐々木裕一「公家武者 松平信平 姫のため息」(二見時代小説文庫)

関白鷹司家の四男で、将軍・徳川家光の義弟の松平信平が、紀伊大納言家の松姫と結婚するために、千石取りの旗本を目指す物語の第二弾。
 
収録は
 
第一話 浪人狩り
第二話 姫のため息
第三話 再会
第四話 陰謀
 
となっていて、今回の時代設定は、幕府転覆を謀らんだ由比正雪の乱の後、騒然の風が治まっていない頃である。
 
物語の始まりは、浪人狩りで怪我をした浪人を助けるところから始まる。ここで、以後も登場する、先手組与力の筒井が初お目見え。そして、大筋は、由比正雪の残党が、裏切り者として、紀伊の殿様・徳川頼宣の暗殺を謀む。
未だ同居できぬ、紀伊徳川家の姫・松姫の舅の危機を救うため、信平が立ち上がるのであった・・、っていうのがこの巻。
 
とはいうものの、途中、松姫が信平に会うために、屋敷を抜け出す冒険譚があったり、紀州候暗殺は由比一派の復讐譚といった単純なものではなくて、裏に将軍位を争っての陰謀があったり、と道具立ては各種取り揃えてあるので、最後まで楽しめる筋立てである。
 
そして、危難が起きた時の信平の剣の技は相変わらず秀逸で、悪人どもをばったばったとなぎ倒す爽快さは健在。はらはらしながら安心して楽しめるという時代劇の勘所はきちんとおさえてあるのでありました。
 

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