新米女性刑事は、オッサンの警察官OBに鍛えられて成長する ー 加藤実秋「メゾン・ド・ポリス 退職刑事のシェアハウス」(角川文庫)

2019年1月現在、高畑充希、西島秀俊主演でTBSの金曜ドラマとなっている「メゾン・ド・ポリス」の原作である。
キャストは、東京都の南西部にある警視庁柳北署の新米刑事の「牧野ひより」を主人公にして、ある政治家と企業の癒着事件によって警視庁を退職した「夏目総一朗」をサブの主人公、そして警察官専用にシェアはハウスで共同生活をおくる、柳町北署の元刑事の「迫田保」、中野東署の総務部に勤務していたジェアハウスの管理人兼事務長兼シェフの「高平厚彦」、警視庁科学警察研究所の元研究員の「藤堂雅人」、そして資産家で警視庁の幹部だった「伊達有嗣」といった面々で脇を固めて展開される、現職刑事+警察官OBによるミステリーである。
事件は殺人や暴行事件がメインで、コージーミステリーとは違うのだが、陰惨な感じがないのは、筆者が軽めの仕立てで、話を展開させているせいであろうか。

【収録と注目ポイント】

収録は

第一話 新人女子刑事 VS くせ者おじさん軍団
第二話 犯罪ウィルス 連続暴行事件の謎
第三話 科学捜査が迫る密室OL自殺の真相
第四話 ペンキ事件と犯行声明文の秘密
第五話 重なり合う過去 さらばおじさん軍団

の五話。

第一話は、このシリーズがスタートする話とあって、「ひより」とメゾン・ド・ポリスの面々との出会いがメイン。
事件のほうは、老舗に天ぷら屋の主人が、深夜に空き地でタキシード。蝶ネクタイ・革靴で焼死したという猟奇殺人。この犯行パターンは、過去にあった「デスダンス事件」というものと酷似していて、ということで、「ひより」が、このシェアハウスに住む「夏目総一朗」に当時の事件の様子を聞きにくるところからシリーズがスタートする。

第二話では、大学にバスケット部の有望新人が何者かに夜中に、金属バットで暴行される事件が起こる。最初、彼の幼馴染の浪人生の男の子が犯人ではないかと疑われるが、第二・第三の同様の暴行事件が発生する。しかも、これらを誘導しているらしい、「交換暴行斡旋サイト」も発見されて・・・、という展開。

ベテラン刑事であった「迫田」の容疑者から聞き出すテクニックが絶品であるのと、家族への愛情を働くことでしか表現できなかった、「昭和のオヤジ」の姿がちょっと泣かせますね。

第三話の事件は、消費者金融に勤める、40歳代の中年女性が、塩素ガス自殺にみせかけて殺される事件。謎解きの鍵は、彼女の遺書がスマホメモだったことと、部屋に落ちていた「ウサギの毛」。

この話では、研究所並みの鑑識機械を自費で揃えている「藤堂」の、キザなオタクぶりが目を引きますな。

第四話は区役所の施設に連続で黒ペンキがかけられる事件の解決。犯行現場には「天誅」とか「区役所は悔改めよ」といった紙が残されていて、宛名が、区の広報誌の編集部あてになっている。「ひより」たちは、その広報誌「そよかぜ」に頻繁に投書をする人を調べていくが、いずれも犯行動機が見当たらず・・・、といった展開。

趣味を邪魔すると、かなり痛い目を見てしまう、という、古来から共通の犯行動機でありますね。

最終話は、「惣一郎」が警視庁を退職する原因となった、政治家と企業の闇献金事件を再捜査しているうちに、ひよりの父親の失踪事件の真相にも及んでくる話。

本体の闇献金事件のほうは、暴力組織と企業、政治家がつるむというお決まりの悪事を暴くデータはどこに・・・、といったお決まりのネタなんであるが、闇献金事件にとどまらず、警察内部を含め、もっと「闇」が深そうなところを見せて、次話以降への期待をもたせるのである。

【レビュアーから一言】

いずれの話も、TVドラマとは微妙に違う筋立てや設定となっているので、TVを見た人も新鮮な感じで読める。
乱暴に総括すると、若い新米刑事「牧野ひより」が、引退した長老刑事たちの助けを借りながら成長していくといった、「お仕事ミステリー」であるな。
当方は、TVドラマを見てから、本書を読んだので、高畑充希ちゃんのイメージが「ひより」にかぶって、思わず声援を送りたくなったのでありました。

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