特殊清掃の掃除会社に、霊感的特殊能力の女の子が就職すると・・ ー 加藤実秋「モップガール」(小学館文庫)

フリーターで、時代劇フリークの長谷川桃子は、何かの才能とか隠れた能力を見つけるため、いろんな種類のバイトや職業にチャレンジしているのだが、今回就職したのは、東京都内の掃除会社なのだが、その会社、通常のビルやオフィスの清掃のほか、事件現場の掃除も扱う会社であった。
面接に行って即採用となった、桃子は早速、三角関係のもつれから女性が刺されるという
事件の起きたアパートの部屋の清掃につれていかれ・・・、てな感じで始まる、とても変わった「お掃除サスペンス」である。

【収録と注目ポイント】

収録は

「おわりの町」
「赤い衝撃」
「ファンハウス」
「ブラッシュボーイ」

となっていて、メインキャストの「桃子」は心因性の難聴を患っていて、突然、左耳が聞こえなくなるという持病があるのだが、その持病の発症中に、「念」の残された事件現場の清掃にいくと、体に変調をきたしてしまう。だが、その「変調」は、その部屋や場所でおきた「事件」の謎を解く道標にもなっていて・・・、といった感じで話が展開していく。

まず最初の「おわりの町」の事件は世田谷の高級住宅街の高級マンションの清掃からスタート。この部屋で、急成長中の外食産業の社長の若い妻が後頭部を殴打され殺害されたのだが、この部屋を清掃中、桃子は「青い空、澄んだ日差し、背の低い緑の木々、そして色褪せたオレンジの瓦屋根と白い壁の数々」といった映像が、立ち上がったり、振り返ったりという動作をした時にふいにフラッシュバックする、という現象に見舞われる。
この景色はフランスのプロヴァンス地方の景色らしいのだが、桃子はそんなところに行ったこともなく、その景色に全く見覚えがない。どうやら、殺された被害者に関係した景色のようなのだが・・・、といった筋立てである。
桃子に起きた現象を治すには事件の謎を解く以外になく、といった形で、桃子や、同じ清掃会社の上司の重男、翔、美樹たちと謎解きに乗り出すのだが・・・、といった展開である。謎解きのほうのネタバレをすると、美人の若妻が殺された時に疑うべきは、愛人か夫か、といった典型的なものなのだが、シリーズの開始の物語として軽めの事件ではありますね。

第二話の「赤い衝撃」では、内神田の雑居ビルで起きた転落事故の現場の道路を清掃した時に現象がおきる。今回の現象は、食べるものすべての味が「マルちゃん 赤いきつね」の味になってしまう、というもの。死んだのは試薬や臨床検査薬を開発している企業の開発部の社員・平松で、彼は若い頃は論文で有名な賞をとるほどの研究者であったのだが、今は鳴かず飛ばずの状態で、会社もリストラ寸前という評判。ところが調べるうちに、彼は大学時代の友人・宮永と一緒に個人で研究開発を進めていて、その友人がつい最近、事故死していることがわかる。
そして、その友人の家を訪れた桃子たちは、友人の息子にバットで殴りかからる。その息子は「データ捜しにきた」と叫んで襲ってきたのだが・・・、という展開。平松や宮永の研究が彼らの「死」に関連しているのか?、と思わせるのだが、真相はごどんでん返しをくらいますね。

第三話の「ファンハウス」では、近所から幽霊屋敷と言われている、元麻布の高級住宅街の洋館で現象が起きる。この地域を再開発しようとする会社の依頼を受けて、この洋館の清掃に踏み込んだ桃子たちなのだが、階段下に隠されていた和室で、この館の元の持ち主の白骨死体を発見する。その後、桃子は、なにを嗅いでも「消毒液っぽくて、甘くてまろやかな臭い」しか感じられなくなってしまう。この死者はどんな想いを遺していたのか・・、といった筋立て。
この油の正体は、刀の手入れをする「丁字油」で、和室に残されていた「刀箪笥」に関係しているようなのだが、といった展開で、少しネタバレすると、人には言えない「フェチ」な趣味が謎解きのキーですね。

第四話の「ブラッシュボーイ」は、清掃会社の同僚ではあるが、なにかと桃子と対立する「翔」の父親の濡れ衣を晴らす話。彼の父親はビル・クリーニングの会社を経営していたのだが、翔は大学三年生の時、取引先の会社の社長を殺害した容疑で逮捕され、拘置所の中で自殺している。この父親の死に不審を抱き続ける「翔」は、その事件の真相を密かに調べ直しているのだが、桃子と仲が良くなっている「南」の同僚・津山が行方不明になる、という事件をきっかけに、その父親の事件の真相に一挙に近づいていって・・・、という筋立て。
今回の現象は、真夏であるのに「寒気」に襲われる、というもの。
津山の行方を探して、彼らが勤めている会社の社長が所有する別荘に行くのだが、当然、寒気のおさまらない桃子はとんでもない厚着をして向かうのだが・・、という展開。
この厚着が後で役立つことになるのだが、詳細のところは原書で読んでくださいな。

【レビュアーから一言】

面白いミステリーかどうかというのは、登場人物か、物語の設定がどれだけ気を引くことができるか、といったところに大きく影響していて、その面で、事件現場の清掃を扱う会社に就職した、霊感的特殊能力のある女の子、という設定は、まさに壺にはまった設定といえる。
TVドラマでは、このあたりが変形していたのだが、当方的には、小説の設定のほうが出来がいいと思っている。
設定だけ見ると「ホラー」仕立てのものを想像するのだが、意外にドタバタお仕事ミステリーであるので、そこのところはご注意を。

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