出口治明「還暦からの底力」ー迷ったらやる。迷ったら買う。迷ったら行く

日本生命を退職後、60歳でライフネット生命を創業し、ネット生命保険の草分けとして事業を軌道にのせた後、今度は立命館環太平洋大学(APU)の学長として国内外の学生の教育にあたる、という年齢にとらわれない活躍を続けておられる筆者の、人生100年時代と言われる中で、歳をとってもパワフルに活躍していくコツをアドバイスしたのが本書『出口治明「還暦からの底力 歴史・人・旅に学ぶ生き方」(講談社現代新書)』です。

【構成と注目ポイント】

構成は
第一章 社会とどう向きあうか
第二章 老後の孤独と家族とお金
第三章 自分への投資と、学び続けるということ
第四章 世界の見方を歴史に学ぶ
第五章 持続可能性の高い社会を子供たちに残すために

となっていて、第一章から第三章までが、高年齢になってからの社会や若い人との関係のつくり方や生き方・行動のアドバイス、第四章が歴史認識、第五章がこれからの社会づくりへの提言となっていて、人生指南的なところは前半部分を中心に読んだ方がいいでしょう。

で、最初にまず注目しておくべきなのは、

僕は、極論ですが、「敬老の日」など」やめてしまえと思ってます。「敬老」という言葉があること自体が、「若者が高齢者の面倒を見るのは当たり前だ」という歪んだ考え方につながり、社会を歪めるからです。僕はこの考え方を「ヤング・差ポーティング・オールド」と呼んでいます。

として、これからは「オール・サポーティング・オール」の考え方に変更すべきだ、と主張しているところでしょう。
とかく「社会保障」の議論になると、若者が何人のお年寄りを支えるか、という世代間の負担論に終始することが多いですが、これは筆者の言うように「暗い気持ち」になるだけの議論で、

(敬老パスを配るべきは)大企業トップで十分な収入を得ている人にそんな必要はありません。むしろ配るべきはシングルマザーなど困っている人たちです

というあたりは「なるほど」と頷くしかありませんね。

そして、これは高年齢になってからの生き方にもあてはまるようで

もちろん「還暦後は余生だ」と言った捉え方も間違っています。マラソンでいえばまだ半分しか走っていない。それで何を悟りきったことをいっているのか、という話です。守りに入っている場合ではありません。
むしろ折り返してからのほうが、冒険ややチャレンジはしやすいのです。冒険が怖いと感じるのはリスクがどのくらいあるかわからないからです。
人生を半分走ってきた60歳はその分、世の中のことがわかっていますから、仕事も生活もおそらく恋もきっと上手にできると思います。ということは、若い頃よりも人生をもっと楽しめるということです

といったあたりは定年退職後、寄る辺がなくなっている人への熱いエールになりますね。ただそうだからといって、「若い者には負けぬ」と若い人に席を明け渡さないのは本末転倒で、本書で引用されている「高齢者は「次世代のために働くこと」に意味があり、次世代を健全に育成するために生かされていると考えるべきなのです」という生物学者の本川達雄氏の言葉はキモに銘じておくべきなのでしょうね。

このほか、歴史について造詣も深く、著書も多い筆者の歴史館に基づくアドバイスは含蓄のあるものが多いのですが、例えば、保守主義と革新主義に関するところで

保守主義とは「仮置き」する思想です。賢くない人間井は何が正しいかなど永遠にわからないのだから、うまく回っているものごとについては正しいと仮置きして放っておくわけです。

であったり、

ここで一つ注意しなければならない大きな問題があります。歴史の事実と福損を混同してはならないという点です。例えば、「これが日本の伝統だ」とされているもののの多くは、「想像の共同体」をつくるために明治時代に入ってからつくられたものです。

といったあたりや、「日本が鎖国できたのは、海外の人がぜひ欲しいと思う世界商品がなかったから」とか「第二次世界大戦の惨禍は、開国を捨てて富国・強兵に走った結果」など「雑談ネタ」としても秀逸なものがあるのでお見逃しなきように。

【レビュアーからひと言】

思ってもみなかった病禍もあって、どうしてもいろんなことに億劫になりがちになるのですが、筆者の

「もう60歳になったのだから、何をするにももう遅いのでは・・・」
「今さら勉強を始めるのは面倒だし・・・」
そんなことを考えていたら結局何もできず、つまらない毎日の繰り返しに陥ってしまうでしょう。明日に先送りしたら1日年を取るのだから、何でも今すぐに早く始めたほうがいいに決まっています。いまこの時のあなたが一番若いのに、なざいますぐ始めないのか。
僕は「迷ったらやる。迷ったら買う。迷ったら行く」をモットーにしています。

といったアドバイスは、年齢を問わず、先行き不透明な「今」を生き抜いていく、心強い声援になるのではないでしょうか。

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