赤ずきんは謎解きをしつつ、仇討ちの旅へー青柳碧人「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う」

「むかしむかしあるところに、死体がありました」で「一寸法師」「花咲かじいさん」「鶴の恩返し」「浦島太郎」「桃太郎」といった日本の昔話を「ミステリ―」に変える新分野を開発した筆者が、西洋のグリム童話などでおなじみの「シンデレラ」「ヘンゼルとグレーテル」「眠り姫」「マッチ売りの少女」「赤ずきん」といったヨーロッパの童話をミステリー風に再構成して連作ミステリーに仕立て上げたのが本書『青柳碧人「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う」(双葉社)』です。

構成と注目ポイント

構成は

第1章 ガラスの靴の共犯者
第2章 甘い密室の崩壊
第3章 眠れる森の秘密たち
第4章 少女よ、野望のマッチを灯せ

となっていて、おおまかな流れとしては、シュペンハーゲンの町まで、クッキーとワインを届けるために旅をしている少女「赤ずきん」が、その旅の途中で出くわす事件を次々と解決していく流れとなっています。

まず一番目の「ガラスの靴の共犯者」では、森の中を進んでいく「赤ずきん」が、小川で、ぼろぼろの服をきた裸足の女の子が白い布を一枚洗濯しているところのでくわします。そう、第一章の「本歌」は”シンデレラ”で、もとのお話と同じように、魔女の魔法で、ぼろぼろの服を綺麗なドレスに変え、硝子の靴を履いたシンデレラと赤ずきんは、お城で開催される「舞踏会」へと出かけていきます・・というおなじみの展開。

ところがお城へ向けて森の中を馬車を走らせていると、木の陰からふらりとでてきた緑色の服を着た五十歳ぐらいの男をひっかけてはねてしまいます。この死体を道の脇に押し込んで枯葉で隠して舞踏会にでた赤ずきんたちなのですが、その途中で死体が発見され、捜査が始まることとなり・・といった筋立てです。

事件の犯人として、シンデレラの姉・マルゴーが自白するのですが、赤ずきんは彼女は陥れらただけで、別の人物が真犯人だと推理します。
そして彼女が「あなたの犯罪計画は、どうしてそんなに杜撰なの?」と問いかけた真犯人の正体は・・・という展開です。前作同様、童話では「善玉」のはずの意外な犯人が明らかになっていきますね。

第2章の「本歌」は「ヘンゼルとグレーテル」です。森の中にある魔女のつくった「お菓子の家」におびき寄せられ、監禁されていたヘンゼルとグレーテルは、魔女を謀殺して家へ帰還するのですが、この話では、なんと継母をその「お菓子の家」におびき寄せ、食器棚の下敷にして殺してしまいます。そして、その犯行を継母が魔女を殺した末に自殺したと偽装し、「お菓子の家」を内側から閂のかかった密室に仕立てあげるのですが、さて、赤ずきんはそのトリックを見抜くことができるのでしょうか・・・といった展開です。
そして、赤ずきんは、森の管理者をしているゲオルグというオオカミと一緒にこの事件の捜査にあたることになるのがシュールなところです。

第3章の「眠れる森の秘密たち」では、魔女の呪いによって深い眠りについてしまった「眠り姫」のお城のあるところが事件の舞台となります。そこで、赤ずきんは、国の宰相キッセンの使う車椅子が木の根っこにはまっているのを助けたことから、彼の屋敷に招かれ滞在することになります。
この国の王女オーロラは意地悪な魔女の糸車の呪いによって百年の深い眠りに落ちてしまっているのですが、この国の王位を継げるのは「男子」と決まっています。この国の王家の子供はオーロラ一人だけなので、彼女が生む男子しか継承者になれないのですが、オーロラの目覚めるのは少なくとも百年後。その間に隣国に国を乗っ取られてしまう危険性をはらみながら今日まで来ているわけですね。
そして、赤ずきんの滞在中に、キッセン宰相の屋敷で働いている召使い・トロイの息子・メライが町でならず者を殺した罪で捕縛されてしまいます。メライの濡れ衣を晴らすため、赤ずきんが乗り出します・・という展開ですね。
この話の謎解きのキモは、メライの本当の父親は誰か、というところで王家存続の秘密がそこに隠されています。

第4章の「少女よ、野望のマッチを灯せ」では、「シュペンハーゲンの町まで、クッキーとワインを届ける」という赤ずきんの目的の真相が明らかになります。
その前提として、このシュペンハーゲンの町には「ガルヘンのマッチ」と「セントエルモの火」という二つのマッチ工場があったのですが、現在では「ガルヘンのマッチ工場」が改組した「エレンのマッチ」が、そのマッチがついている間、夢を見ることができるマッチを売り出して市場を席巻しています。みなさん、ご想像のとおり、この「エレンのマッチ」の社長は元マッチ売りの少女「エレン」なんですね。アンデルセンの童話では、マッチをすって夢を見ながら凍え死んだエレンが実は生き残っていて、叔父のガルヘンのマッチ工場を乗っ取ったという設定ですね。
そして、このエレンのマッチの夢・幻想を見る効能に中毒性があって、あちこちで食事もとらずにマッチを擦り続け、衰弱死してしまう人が続出しているのですが、赤ずきんのおばあさんもその犠牲になっています。死んでしまったおばあさんの仇を討つため、「毒入り」のクッキーと、爆発性のある「ワイン」を持って、赤ずきんはこの町までエレンを斃しにやってきた、というわけですね。
さて、赤ずきんの復讐劇はどうなるのでしょうか・・といったのが最終章となります。

レビュアーから一言

最終章で「マッチ売りの少女」エレンとの競争に負けて潰れてしまう、質はいいが値段の高価なマッチ「セントエルモの火」の由来は、船乗りの守護聖人となった聖エルもがイタリアに船で向かったときに嵐に遭遇し、難破しそうになるのですが、彼が熱心に祈ったところ嵐が収まり、帆柱の先端に「青い炎」が灯った、という伝説がもとになっていて、科学的には静電気による一種の発光現象なのでしょうが、昔は「怪現象」の一つとされていたものですね。聖人伝説の火が、マッチ売りの少女の火に負けちゃったというわけですね。

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