一流文芸誌の敏腕編集者「佐々木幸子」、通称「鉄の女・サチコ」が、結婚式の披露宴会場から、新郎・俊吾に逃亡されたショックを忘れるためにはまり込んだのが「忘却のグルメ道」。次から次へとやってくる仕事の難題を解決し、担当作家や上司のわがままを処理するため、このグルメ道に邁進し、日本各地の「名物」と東京の隠れた「うまいもの」を探求するグルメ漫画シリーズ『阿部潤「忘却のサチコ」（ビッグコミックス）』の第15弾と第16弾。
あらすじと注目ポイント
第15巻 サチコとは真逆の副編集長・椿、着任す
第137話 パワー全開！ ヒーロー集う野菜炒め！！
第138話 輝け！ おしゃれ堪能ケバブサンド
第139話 繰り出せ！ 時を超える浮世絵ランデブー！！・前編
第140話 繰り出せ！ 時を超える浮世絵ランデブー！！・後編
第141話 仰天！ 背筋ひんやり麻婆カレー麺
第142話 闘え！ 一発ＫＯ鶏ムネ肉の蒸しステーキ
第143話 掴め！ 白熱ステージ７種具材の野菜キンパ
第144話 上陸！ 波乱呼ぶ大型ハリケーン・その一
第145話 上陸！ 波乱呼ぶ大型ハリケーン・その二
第146話 上陸！ 波乱呼ぶ大型ハリケーン・その三
冒頭の第137話と第138話は、フツーのOLとは少々異なったサチコの性向がうかがえます。ひきこもり作家ジーニアスの頼みで、故郷の母親に偽装恋人を演じたものの、人間が食するとは思えない野菜炒めを調理したり、スティーブ・ジョブズばりの機能性と効率性を重視した私服選びを披露したりといった具合です。提供される料理は、ジーニアス先生のお母さんのつくったおふくろの味感あふれる野菜炒めとケバブサンドですので、そこはご安心を。
中ほどの「繰り出せ！ 時を超える浮世絵ランデブー！！」では現代風の浮世絵作家・藤川翠風の戦前生まれとは思えない若者風の行動に振り回されるサチコなのですが、筋金入りのパリピギャル・川端アリサには敵わないようですね。ここでは、アリサが「次にくるスィーツ」と推す「固めに仕上げた極上プリン」とぶっかけと炊き込みの二種の「深川めし」が提供されています。
後半の「上陸！ 波乱呼ぶ大型ハリケーン」では、新しく、やり手で社内で有名な「椿」という副編集長が着任するのですが、「やり手」で想像されるイメージとは真逆の残業・休日出勤なし、勤務時間内も行方知れずのサボりの常習犯という人物です。
編集部内の反発も日に日に高まっていくのですが、ある時、ノーベル文学賞候補の作家・柴崎から突然、椿に会いたいと電話がかかってきます。椿に同行してその作家に原稿を書いてもらおうと日参するサチコだったのですが、そこで彼女の綺麗好きと断捨離癖が災いして、柴崎を怒らせてしまいます。さて、ここで椿のフォローは意外にも・・という展開です。
今回はいつも仕事をバリバリこなすサチコの負の場面がでるお話なのですが、食すのは「ルッコラの海に溺れるクロックミッシュ」「”まほう”のコーヒーゼリー」、椿副編集長お手製の「豚バラと三種のきのこの甘辛」といったラインナップです。
第16巻 サチコは椿編集長のアシストでノーベル賞候補作家の原稿をゲット。そして、副編集長の娘・カンナ登場
第16巻の収録は
第147話 上陸！ 波乱呼ぶ大型ハリケーン・その四
第148話 体験せよ！ 視点転がるホワイトシチュー
第149話 明かせ！ 親心溢れるエビグラタン
第150話 絶叫！ 童心リターン？？ 大人のお子様ランチ
第151話 探せ！ お悩みとろけるチーズドライカレー（吉祥寺）
第152話 届け！ 想い詰まったホットスティックチョコレート
第153話 闘え！ 頂点目指す台湾まぜぞば（秋葉原）
第154話 映せ！ 気遣い溢れる鮭といくらの親子茶漬け
第155話 作れ！ ギャップ溢れるタコライス
第156話 届け！ 郷愁溢れる山菜そば
となっていて、冒頭の第147話「上陸！ 波乱呼ぶ大型ハリケーン・その四」はノーベル賞作家に失望されたサチコの復活編。サチコの幅広い読書遍歴と本好きが功を奏して信頼を回復するのですが、縁の下の力持ち的な椿編集長のアシストも見逃せん。
さらに、この後の第149話では椿の７歳の娘「カンナ」も登場して、徹夜・休日出勤当たり前の編集者だった椿がなぜ、マイホームパパになったのか、といったあたりが明らかになります。
ただ、渋めの中年イケメン・椿副編集長の存在は編集部に静かな嵐を呼んでいるようです。
今回は、このほかに愛犬家の作家の飼い犬の世話に奮闘するサチコが食する「ロールキャベツとホワイトシチュー」、猫好きの新進作家の東京での新居さがしに奮闘した後の「チーズドライカリー」、プロボクサーあがりの作家・宮島がはまってしまった「編みぐるみづくり」の趣味を無事世間に出したあとの「タコライス」といったメニューが提供されているのですが、今巻は基本的には「掌編」の連続です。
レビュアーの一言
第150話ででてくるのは玉子、ハンバーグ、ポテサラ、ナポリタン、エビフライを大人向けにアレンジした「大人のお子様ランチ」なのですが、本当の「お子様ランチ」は東京日本橋の三越の食堂部主任さんが数種類の人気メニューを取り揃えた子供用定食として考案したのが始まりとのことです。
当時のメニューは富士山型に盛ったライスの日の丸の旗、コロッケ、ハム、果物といったラインナップだったようで、お値段は30銭。当時、鯛焼きが３個で５銭、鯛焼き18個分のお値段です。現在の価格・鯛焼き１個100円とすれば1800円ぐらいで、少し高価かもしれないですが、デパートが現在のディズニーランドに匹敵するレジャー施設であった当時、相応のお値段といえるかもしれません。
ちなみに、現在のディズニーランドのお子様セットは、ミートソーススパ、オムライス、ソーセージまたは海老フライ、コーンチャウダー、オレンジジュース、野菜サラダといったラインナップで1200円～1600円といったお値段のようです。
（参考記事：【2023】ディズニーランドの全キッズメニュー！お子様ランチ＆ディナー！かわいいミッキープレートも！）
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