新選組メンバーの推す「最強の剣客」は誰?=細川忠孝「ツワモノガタリ」1・2

幕末の京都・江戸では、薩摩、長州や会津や新選組といった剣の腕に覚えがある連中が、攘夷か開国か、佐幕か倒幕か、といった交わることのない主義主張をタテに真剣で向き合う、まさに「戦いの坩堝」が出現していました。
新選組屯所屯所となった八木邸で、近藤勇以下新選組のメンバーが、己が立ち会った剣客について語り合う、異色の幕末剣豪コミック・シリーズが『細川忠孝「ツワモノガタリ」(ヤンマガKCスペシャル)』。

政治ドラマとしての幕末ではなく、幕末最強の剣客は誰かを明らかにする異色の幕末物語の第1巻と第2巻をご紹介します。

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あらすじと注目ポイント

第1巻 沖田総司VS芹沢鴨、新選組の内部抗争で明らかになる精強の剣客

第1巻の構成は

第1話 沖田総司VS芹沢鴨
第2話 挟撃と衝撃
第3話 不抜の剣
第4話 専用技
第5話 己の歴史
第6話 天地人

となっていて、物語は新選組屯所での近藤勇、原田左之助、斎藤一、山南敬介、土方歳三たちの酒盛りのシーンから始まります。彼らの宴席の常として、剣を抜いての喧嘩になりそうなのですが、これを止めたのが近藤勇の「今までそれぞれが立ち会った中で最も強かった剣客」について語ろう、という趣向です。

で、最初に語るのは「沖田総司」。彼は池田屋事件のときはすでに結核を発症しているので、この頃は療養中の時期でもありますね。その彼が語った剣客は新選組初代筆頭局長の「芹沢鴨」です。
ここから一巻では、文久三年九月に決行された、土方、山南、沖田、原田による芹沢鴨暗殺事件での、沖田総司と芹沢鴨の死闘が描かれていきます。

芹沢は、京都や大阪の豪商から押し借りをしたり、力士を切り捨てたりと狼藉の限りを働き乱暴者という話がもっぱらなのですが、実は「神道無念流」の特徴である鉄壁の守りである「不抜の剣」の遣い手、その上に、この流派の極意である、相手の気を読んで、相手が動くと同時に反応して撃退する「無念無想」を体得しています。
この芹沢の剣と沖田の神速の剣とのバトルが展開されていきます。

第2巻 沖田vs芹沢の死闘決着。そして、物語は藤堂vs田中新兵衛へ

第2巻の構成は

第7話 沖田総司の理心流
第8話 一の段 終幕
第9話 魁先生
第10話 藤堂平助と北辰一刀流
第11話 人斬りの才能
第12話 田中新兵衛と薬丸自顕流
第13話 心理的制限
第14話 藤堂の理 新兵衛の理
第15話 剣道之人斬也

となっていて、前半は前巻の「沖田総司VS芹沢鴨」の決着篇です。

実は前巻の最後のほうで、芹沢の「侍」概念と、総司の「侍」概念が対立していて、芹沢の言葉で、総司が近藤勇とは違う「天然理心流」を見出し始めているのですが、最後の決着は総司の見出した「天地人」の技と芹沢の「諸手受け」の対決となります。
まあ、勝負の結果は史実通りなのですが、評判のよくない「芹沢鴨」に対する作者の新たな解釈が興味深いです。

中盤からの「第二段」の語り手は、北辰一刀流の「藤堂平助」です。史実では藤堂平助は北辰一刀流の開祖・千葉周作の道場「玄武館」で10代半ばで「目録」となり、後に新選組に参謀として加わったものの、土方たちと対立して「御陵衛士」という別派をつくって暗殺された伊東甲子太郎(当時は伊東大蔵かな)の伊東道場にも在籍していたと言われています。

新選組当時は一番最初に切り込んでいくことから「魁先生」と呼ばれていたようですが、本作の藤堂平助は、剣は「人斬り」の技と割り切り、そのウザさで他の隊士から嫌われている、という設定です。

その彼が薩摩の薬丸自顕流の遣い手で、「幕末四大人斬り」の一人と言われた「田中新兵衛」について語ります。

彼は安政の大獄の時に、多数の尊王攘夷派を捕縛、処刑した「島田左近」をたった一人で暗殺して名をあげ、彼が義兄弟の契りを結んだ「武市半平太」が示唆する相手を次々と暗殺してきたのですが、今回、新選組がその標的となり、藤堂平助と対峙することになった、というわけですね。

ほとんどの流派の剣の特徴を頭にいれて、それに的確に対応する北辰一刀流の遣い手「藤堂平助」と、相手の流派がどうあれ、「蜻蛉切」の一手で相手を一刀両断する薬丸自顕流の遣い手「田中新兵衛」という、スタイルの全く違う二人の「人斬り」の激突が始まります。

レビュアーの一言

このシリーズの時代設定的には「元治元年」とされているのですが、シリーズ第7巻では池田屋事件について語られているので、それ以後に新選組メンバーが集って酒を飲める時期といえば、8月20日に起きた「蛤御門の変」以後かなと思われます。

さらに「八木邸」での宴会となっているので、伊東甲子太郎一派の参画などによって隊士が200名まで増えたため、西本願寺に屯所を移転するまで、さらに元治2年2月に粛清される山南敬介が宴席にいるので、少なくとも元治2年1月までの間と推測します。

試衛館派のメンバーの粛清や伊東甲子太郎の離脱がまだない、近藤新選組としては絶頂の頃のお話といえるかもしれません。

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