「可楽杯」を制した「あかね」は父親・志ん太破門の真相を知る=「あかね噺」3・4

「可楽杯」を制した「あかね」は父親・志ん太破門の真相を知る=「あかね噺」3・4

落語の一門・阿良川流の真打ち昇進を決める審査会で、審査委員長を勤める大御所から「破門」を言い渡され、それをきっかけに落語を辞めた父親の仇をうつため、その娘「桜咲朱音(おうさきあかね)」が、大看板の落語家となることを決心し、女性としては珍しい落語家の階段を登っていく噺家版サクセスストーリーとなる『末永裕樹・馬上鷹将「あかね噺」(ジャンプコミックス)』シリーズの第3弾と第4弾。

あらすじと注目ポイント

第3巻 「あかね」のライバルは、改作落語の「からし」と、劇場型落語の「ひかる」という強敵

第3巻の収録は

第十七席 可楽杯予選
第十八席 せからしか
第十九席 可楽杯本選
第二十席 BM
第二十一席 ひかるの落語
第二十二席 表現者として
第二十三堰 凪
第二十四席 寿限り無し
第二十五席 消える高座

の9話。

まず冒頭では、この可楽杯で優勝し、優勝者と審査委員長の阿良川一生との対談で、父親が波紋された理由を聞き出すために、半プロながら、このアマチュアの大会に出場した「あかね」だったのですが、予選には、師匠・阿良川志ぐまに出場の条件とされた「寿限無」で臨みます。

出場者や観衆ばかりでなく、落語を少しでも聞いたことのある人なら、小耳にはさんだことのあるほどポピュラーな演題なため、審査では不利なのですが、これを「あかね」はこの噺の特徴である「言い立て」を一気に喋り切るという圧倒的な技術力で、予選を突破していきます。

そして迎えた決勝戦。「あかね」のライバルとなるのは、去年・一昨年と圧倒的な話術で圧勝した「練磨家からし」と、人気声優として活躍中の「高良木ひかる」です。現代風の新作落語で若い層の人気をとる「からし」に対し、「ひかる」は一見、美人声優がファンを広げるための話題づくりで出場したような雰囲気を漂わせていたのですが、「あかね」が偶然聞いた、郷里・福岡にいる母親との会話の様子では、上昇志向丸出しのバリキャリ娘ですね。

こうした強力なライバルがいる上に、「可楽杯」は、「阿良川一門」を代表する阿良川一生と一剣、上方落語の若手ホープ・榊龍若、そして会場の落語好きの観客を相手にするかなり高度な審査会です。

さらに、「あかね」の前に演じた二人は、それぞれ、古典落語「転失気」を現代風にアレンジした「改作落語」、声優としての経験を活かし、登場人物の声質をすべて変え、人情噺「芝浜」を演劇をみているかのような感じを抱かせるように仕上げた「劇場型落語」を見せ、観衆や審査員を唸らせるのですが、その後に登場する「あかね」は演じる前からすでに「消化試合」的な雰囲気に包まれています。

このアゲインストな空気の中で、地味な「寿限梨」で優勝を目指す「あかね」の噺は・・という展開です。

すでに「からし」と「ひかる」、どちらが優勝するかに興味が移っている会場の聴衆を前に、「あかね」はゆったりとした雰囲気で噺をはじめます。前の二人の熱演に憑かれていた観衆は、「あかね」の出す寄席のような雰囲気に心地よさを覚え、次第に彼女の「語り口」に引き込まれてていき・・という筋立てです。

第4巻 「可楽杯」を制した「あかね」は父親・志ん太破門の真相を知る

第4巻の収録は

第二十六席 来ていい場所
第二十七席 座談会
第二十八席 よかった
第二十九席 素敵な世界
第三十席 落語家である前に
第三十一席 前座修行開幕
第三十二席 弥栄亭
第三十三席 修練の場
第三十四席 捨て耳

の9話。

冒頭では、前巻にからの「あかね」の噺が続いています。寄席のような雰囲気を醸し出し、観衆を噺に集中させた「あかね」は「寿限無」の「サゲ」にさしかかるのですが、それは最近では不幸な結末となるるため、最近では語られることのなくなった、もともとのオチを改作したもので・・という展開です。

「あかね」の噺を聞いた。阿良川一生は、いままでの出演者に見せていた柔らかい表情から一変。厳しい目で、「あかね」に対し、「ここはお前が来ていい場所じゃないってわかってるよな?」と問いかけ、「あかね」も「はいっ」と強い口調で答えます。このやりとりを見ていた「からし」と「ひかる」は二人ともショックを受けたようで・・という結末です。

このあと、優勝者のご褒美として開かれた、「あかね」と「阿良川一生」との座談会で、「あかね」は当初の目的どおり、父・志ん太が、真打昇進の審査会で「波紋」にされた訳を尋ねます。それに対する「一生」の答えは、「真打ちの芸」の厳しさと、彼の考える「落語」の厳しさを示すものでした。それを聞いた「あかね」の反応は・・というところが注目ポイントですね。

後半部分では、「あかね」は正式に「阿良川志ぐま」に弟子入りし、前座修行を始めることになるのですが、「可楽杯」で優勝し、さらに華々しく落語専門誌でも取り上げられたことから、先輩たちの反感の逆風が真正面から吹いてくる厳しいスタートとなりますね。その前座の雑多な仕事の奔流にもまれながらも、師匠連の落語に耳をすます「捨て耳」の技を教えられ・・、着々と噺家らしくなっていってます。

レビュアーの一言

「可楽杯」での「あかね」の噺のサゲは、当方は予測を大きく狂わせてしまいました。

噺が多くの人々が知っているものであるため、最近では使われない、残酷オチで徴収の肝を冷やすのかな、と思っていたのですが、その予測を超えるオチとなってました。

さて、このタームで披歴された「噺」は改作した「転失気」「芝浜」「寿限無」と、オーソドクスな上に少な目です。まあ、コンテストがこのタームの主軸だったので、いたしかたないのですが、次のタームではもっと目新しい「噺」を期待したいところですね、

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