防衛隊の主力メンバーを襲う怪獣9号の特化型攻撃をはねのけろ=松本直也「怪獣8号」10〜11【ネタバレあり】

各地に怪獣が出現し、容赦なく建物を破壊し、人々が犠牲になる「怪獣多発国・日本」で、駆除された怪獣専門の清掃業に従事していたアラサー「日比野カフカ」が、謎の生物によって自らが怪獣化し「怪獣8号」となったのですが、そのことを隠して防衛隊の一員となり、怪獣駆除に乗りだす、異世界「怪獣」シリーズ『松本直也「怪獣8号」(JUNPコミックス)』の第10弾から第11弾。

前巻では防衛隊の四ノ宮長官が斃れた後、残されたカフカ、レノ、カフカたちがそれぞれに体術の強化や新たな識別怪獣兵器の装着などでパワーアップを図っている中、怪獣9号の計画する日本同時侵攻計画が発動します。これに対抗するため、怪獣10号の識別怪獣兵器を装備した立川基地の保科副隊長や母の形見である識別怪獣兵器4を装着したキコルが覚醒していきます。

あらすじと注目ポイント

第10巻 亜白ミナの新兵器で群発怪獣を撃破するが、怪獣9号の策略が動き始める。

第10巻のAmazonレビューは

識別怪獣兵器10号を装備して、群発災害に対応する保科。史上初、意思を持つ怪獣兵器との実戦は困難を極めるが、保科の機転で攻勢に転ずる。一方、カフカのいる大泉エリアでは6体もの超大型怪獣が出現し、戦況は悪化していく。そこに思わぬ援護が…!? ――9号の思惑が交錯する、第十巻!!

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となっていて、前半では意識をもった識別怪獣兵器10を装備した保科と、昆虫型怪獣との死闘が続いていきます。当初は我の強い同士であるため互いに功を競い合って力が分散されていたのですが、怪獣10号を挑発しながら、要所を保科の「剣技」で仕留めるというやり方で怪獣を制圧していきます。

さらに、東京都の大泉地区では住民の避難が遅れたため、住民を守りながらの怪獣駆除となり、東雲小隊が苦戦をしているのですが、これを救ったのは、やはり亜白ミナの砲撃です。彼女は20km離れた立川にいるのですが、そこから超長距離の射程をもつ彼女専用の新兵器「対大型怪獣固定電磁砲 ケラウノス」で大泉で暴れる大型怪獣を次々と砲撃・破壊していきます。「ケラウノス」っていうのは古代ギリシア語で「雷」を現す言葉で、ギリシア神話の主神・ゼウスの武器ですね。ゼウスがこれを使うと世界を一瞬で溶解させ、全宇宙を焼き尽くすことができると言われていて、この伝説に負けず、ミナの砲撃の威力はすさまじいものです。

こうした防衛隊の反撃によって怪獣の群発侵攻は防いだと思われたのですが、実はこれは怪獣9号の「想定内」です。

変身せずに「人間」型を保っているカフカを除いて、防衛隊の主力のメンバーを表舞台に登場させたところで、識別クラスの怪獣11号から怪獣15号が防衛隊の主力メンバーが分散して戦っている現場へ出現します。

怪獣9号の狙いは主力メンバーそれぞれの攻撃に対応した防御方法を身につけ、さらの弱点をつくことのできる「特化型」の怪獣をそれぞれにぶつけて個別の抹殺してくる作戦です。

で、四ノ宮キコルの敵となったのは、彼女によく似た風貌を持つJK風の人型怪獣・怪獣15号です。戦法も彼女とよく似た攻撃をしてくるのですが、怪獣の攻撃力のほうがキコルより上です。

これに対して、キコルは母親と同レベルの識別怪獣兵器4との同調を果たし、怪獣15号を切り裂くのですが、その時のキコルの心の隙をついて怪獣15号の最終兵器である「精神攻撃」が炸裂し・・という展開です。

これと同時期に、他の防衛隊のメンバーも自らの攻撃に特化した怪獣たちと対峙して苦戦を強いられ・・という筋立てです。

第11巻 特化型怪獣の攻撃に、四ノ宮キコル、鳴海弦覚醒

第11巻のAmazonレビューは

9号が作り出した5体の識別クラス怪獣が東方師団エリアに集結。防衛隊の主力を抹殺するため設計された識別怪獣に、苦戦を強いられる各隊長。その脅威は、東雲小隊長にも…。一方カフカは、戦いの前キコルと一つの約束を交わす。それは…!? ――己の信念を貫く、第十一巻!!

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前半では、大泉で戦う立花小隊長と東雲小隊長と怪獣13号との戦闘です。東名高速を走行する車と高速で追い越して走り、消えていった怪獣ですが、そのスピードと破壊力は鳴海隊長に追いつくため東雲小隊長が積み上げてきたあっというまに粉砕していきます。

この東雲小隊長を救出したのが、後方で控えていることを命じられていたカフカ(怪獣8号)です。彼は圧倒的な脚力を活かして突進してくる怪獣13号をあっさりと吹き飛ばしてしまいますね。

一方、怪獣13号の苦戦を察知してカフカの攻撃に転じようとした怪獣15号なのですが、ここで精神攻撃で叩きのめされ動けないはずのキコルから思わぬ反撃をくらい始めます。

「キコル、行かねーぞ。お前を信じる」というカフカの言葉に過去をふっきったキコルが、怪獣15号の精神攻撃を吹き飛ばし・・という展開です。この戦いの最後のほうで描かれる、怪獣15号の悲しい幼年時代のエピソードが注目です。

そして、中盤からは、その未来予知の能力が敵の体内の電気信号を読み取るものだと見抜き、水を操って電気信号を遮断する怪獣11号との戦いが佳境を迎えます。怪獣11号は茅ヶ崎の海岸に現れ、大量に魚を吸い込んで姿を消した怪獣ですね。

この怪獣は鳴海の能力の仕掛けを見抜いているほか、四ノ宮長官の記憶を植え付けられているので、鳴海の繰り出す攻撃の癖や初動を見抜いて、すべて先手をうってきます。

もはや打つ手はないか、と思われたその時、鳴海が怪獣の予測できない、つまりは四ノ宮長官の記憶にない攻撃を仕掛け始めます。四ノ宮長官を超えようと修行してきた鳴海の新しい攻撃の様子をしっかり見てくださいね。

そして後半部分は立川基地に飛来した怪獣10号の完成形である怪獣12号と保科+怪獣10号の戦いです。

銃器の扱いが下手で剣剣による接近戦に防衛隊員としての活路を見出してきた保科なのですが、彼には能力的には保科を上回る兄がいたことがここで明らかになります。ここで二刀流から一刀流にかえた保科の反撃が始まっていきます。

レビュアーの一言

今回で防衛隊の殲滅を狙う怪獣9号の作戦の全貌が明らかになってきています。

これをみると怪獣9号が防衛隊基地を襲撃して得た収穫のうち即効的な効果を見せているのは、怪獣2号の能力獲得ではなく、四ノ宮長官の「記憶」ではないでしょうか。

キコルが幼少期から抱いていた「寂しさ」や鳴海の未来予知能力のからくりなど、彼の記憶がなければたてられなかった作戦です。

今のところ、キコルも鳴海もなんとかそれを克服してきているのですが、これから先、どういう「特化型」攻撃が展開され、主力メンバーがどう克服するかが、読みどころになると思われます。

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