流行に遅れたお父さんのための「鬼滅の刃」その3ー炭治郎と無惨との最終決戦。禰豆子も人間へ回帰

2019年からコミック人気を超えて社会現象化した「鬼滅の刃」なのですが、ブームに乗り遅れてしまって、子供たちとの会話に困っているお父さん方もいらっしゃると思います。
アニメの第二期の放映を前に、シリーズの概要をネタバレ的にお教えするのが今回のレビュー企画。

前巻までで、太陽の光を克服した「禰豆子」を奪おうと鬼殺隊の総帥の産屋敷に邸宅に襲来した鬼舞辻無惨に反撃し、退却した無惨を追って「無限城」に突入した、炭治郎たちと鬼殺隊の「柱」たちなのですが、いよいよ十二鬼月の上位グループと鬼の親玉である無惨との最終決戦が始まります。

「無幻城での決戦・上弦の鬼編」のあらすじと注目ポイント

第17巻「受け継ぐ者たち」

第17巻の構成は

 第143話 怒り
 第144話 受け継ぐ者たち
 第145話 幸せの箱
 第146話 誇り
 第147話 小さな歯車
 第148話 ぶつかる
 第149話 嫌悪感
 第150話 気づき
 第151話 鈴鳴りの雪月夜

となっていて、まず前巻に続いて、上弦の弐・童夢と胡蝶しのぶとの決戦です。

自らの毒の技をありったけ出すのですが、毒を素早く解毒する童夢に彼女は敗れ、吸収されてしままいます。彼女の継子の栗花落カナヲが駆けつけるのですが待に合いませんでしたね。

次に展開する戦いは善逸と上弦の陸・獪岳との戦いです。
獪岳は善逸の兄弟子で、雷の呼吸の一の型しか使えない善逸をひどく「下目」に見ています。
しかし、獪岳のほうも「一の型」だけ使えない、いわば半端者で、師匠から二人セットで後継者だ、と言われ怒った獪岳は、上弦の壱・黒死牟によって鬼化してもらったという経緯ですね。その後、二人の師匠は、獪岳が鬼となった責任をとって切腹した果てていますので、善逸にとっては師匠の敵討ちの戦いでもありますね。

そして、本巻での三つ目の戦いは炭治郎は煉獄杏寿郎の仇・上弦の参・猗窩座と対決です。体術を得意とする猗窩座に炭治郎、圧倒されます。猗窩座の技は、何かに引き寄せられるように炭治郎の隙と急所を突いてくる正確で破壊力のある技なのですが、この正確な技を観察しているうちに、炭治郎は、猗窩座が相手の「殺気」を感知して技を繰り出していることに気づきます。そして、これを打ち破る鍵は、父親が子供の頃に見せてくれた「透き通る世界」が見える体捌きなのですが、これを会得するために、必死になって幼い頃、父が巨大な羆を倒した時に見せた体捌きを思い出していきます。

この巻では、鬼舞辻に毒をもった珠代は鬼舞辻に吸収されつつあったり、禰豆子は珠代の人間化する薬を服用していたり、と次巻以降の大事な伏線となるところが描かれているので、しっかりとおさえておきましょう。

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第18巻「懐古強襲」

第18巻の構成は

 第152話 透き通る世界
 第153話 引かれる
 第154話 懐古強襲
 第155話 役立たずの狛犬
 第156話 ありがとう
 第157話 舞い戻る魂
 第158話 破茶滅茶
 第159話 顔
 第160話 重なる面影・甦る記憶

となっていて、猗窩座vs炭治郎・義勇の戦いの続きです。

今巻で炭治郎は、父の教えの「透き通った世界」に入るコツを会得します。それは「闘気」をなくす無我の境地で、そこでは「相手の動きがゆっくりと見え、時間がゆっくり進んでいるような世界」と表現されています。

この境地に至った炭治郎は猗窩座に反撃し、彼の頸を斬りとばすのですが、猗窩座は頭が崩れても倒れず、さらに失われた首を再生して「新たな鬼」として甦ろうとします、
このあたりは煉獄杏寿郎を倒した、残忍な鬼の印象が色濃く残っていますね。

この印象が変わってくるのは、猗窩座が人間「狛治」だった頃の回想シーンから。
彼は父親の薬代をかせぐためにスリを重ねていたのですが、それを気に病んだ父親は自死。このためさらに自暴自棄となっていた彼を体術の師匠・慶治の弟子になります。
その後、師匠の病弱な娘・恋雪と将来を誓い合う仲になるのですが、隣道場の道場主が体術道場の取得を狙って、井戸に毒を入れ、師匠と恋雪は毒死。
これに激怒して隣道場の者を皆殺したところを鬼舞辻によって「鬼化」されたという事情ですね。この恋雪と父親の思い出が、猗窩座が斬られた首を再生して再度「鬼化」していくのを引き留めることになるのですが、鬼として再復活を試みる自分に対して、猗窩座がとった悲しい選択が読みどころですね。

一方、胡蝶しのぶが童夢に敗れ吸収された後、童夢vs栗花落カナヲの戦いが始まります。
しかし、実力差はかなりあり、カナヲは刀を奪われてしまうなど、かなりの劣勢に立たされます。ここで伊之介が乱入し、カナヲ+童夢と伊之介の戦いが始まります。

そして、ここで童夢と伊之介の不思議な因縁が明らかになります。伊之介がまだ赤ん坊の頃、彼の母は、旦那の虐めから逃れるため、赤ん坊だった伊之介を連れて童夢の教団へ逃げてきていたことがわかります。童夢は彼女を気に入り手元におくのですが、彼女は童夢が信者を食っていることを知り、脱走。しかし、逃げ切ることができず、追い詰められて崖の上から、伊之介を投げ落とした後、童夢に食われています。

童夢は、鬼殺隊の宿敵であるとともに、伊之介にとっては、母親の仇でもあったわけですね。

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第19巻「蝶の羽ばたき」

題19巻の構成は

 第161話 蝶の羽ばたき
 第162話 三人の白星
 第163話 心あふれる
 第164話 ちょっと力む過ぎただけ
 第165話 愕然と戦慄く
 第166話 本心
 第167話 願い
 第168話 百世不磨
 第169話 地鳴る

となっていて、童夢vsカナヲ+伊之助の戦いの結末編です。

童夢は猗窩座が斃されたことを知り、彼にとっては「雑魚的」な位置づけのカナヲと伊之助の相手を、「結晶の御子」という自分の氷の化身に相手をさせ、自分は鬼舞辻の助力に向かおうとします。

今まで、攻撃を受けながらも何かが起きるのを待っていたような雰囲気のカナヲだったのですが、ここでその真意が判明します。

藤の花の毒を摂取しつづけ、体の隅々まで藤の花の毒を高濃度で行き渡らせたしのぶは、童夢に自分を吸収させることによって、内部から毒を回す捨て身の作戦をとっていたのですが、しのぶの毒の仕掛けが発現。童夢は体の中から溶け崩れ始めます。

そして、溶け落ちながら、なおも最後の反撃をする童夢に向かって、カナヲと伊之助の技が炸裂するところは、ざまぁ・・と言う感じですね。
そして、どうやら童夢に対して、作者も余り良い感情を抱いていないのか、「鬼」が斃れる時の、人間だったころの回想シーンはだいたい感動的で、鬼の悲しみを描いていることが」多いのですが、童夢の場合は教団の教祖だった父母を惨殺した冷酷な記憶が中心で、ここは猗窩座のときと違い、かなり冷たい描写です。
特に、断末魔の童夢が、胡蝶しのぶの霊体に言われる

といったあたりがその象徴的なところですね。

このほか、上弦の肆・鳴女と伊黒+甘露寺の戦いや上弦の壱・黒死牟と時透無一郎と不死川玄弥との戦いに玄弥の兄の風柱・不死川実弥、岩柱・悲鳴嶋行冥が参戦しての、十二鬼月との決戦の最終盤が始まります。ちなみに、黒死牟は無一郎の先祖の鬼狩り剣士・継国厳勝であることがここで判明しますね。

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第20巻「匪石之心が開く道」

第20巻の構成は

 第170話 不動の柱
 第171話 変ずる
 第172話 弱者の可能性
 第173話 匪石之心が開く道
 第174話 赤い月夜に見た悪夢
 第175話 後生畏るべし
 第176話 侍
 第177話 弟
 第178話 手を伸ばしても手を伸ばしても

となっていて、黒死牟に体を切断された玄弥は無一郎に、体を繋げてもらうとともに、黒死牟の落とした髪の毛を吸収。鬼食いの能力を使って傷を回復させます。彼の復活が、黒死牟を斃す伏兵となるので、ここは重要なところですね。

そして、黒死牟と風柱・不死川実弥、岩柱・悲鳴嶋行冥との戦いが始まります。

黒死牟は「痣」を出現させたものはパワーが拡大したわけではなく、自分の生命力を前借しているだけなので、早逝、早ければ25歳以下で死んでしまうことを告げますが、これは黒死牟のフェイク。実は「痣」を発現させても25歳以上、生きた実例があることは黒死牟自体が知っています。これは巻の後半で明らかになります。

黒死牟vs不死川実弥+悲鳴嶋行冥+時透無一郎+不死川玄弥の戦いは、黒死牟の圧倒的優位に進行していくのですが、4人の、特に不死川玄弥の死を賭した攻撃で盛り返していきます。

そして、最後の決め手となったのは、黒死牟が人間であった時の、初代の日の呼吸の使い手である彼の弟との思い出が、彼の反撃を封じていくことになるのですが、詳しいところは原書のほうで。天才の弟をもった秀才の兄の苦悩と、兄への愛情を失わない弟の物語を読むことができます。

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「無幻城の最終決戦・鬼舞辻無残編」のあらすじと注目ポイント

第21巻「古の記憶」

第21巻の構成は

 第179話 兄を想い弟を想い
 第180話 恢復
 第181話 大災
 第182話 激怒
 第183話 鬩ぎあい
 第184話 戦線離脱
 第185話 匂いのない世界
 第186話 古の記憶
 第187話 無垢なる人

となっていて、冒頭では、上弦の壱・黒死牟との戦いで大怪我を負った時透無一郎と不死川玄弥が無念の死を遂げます。

ただ、無一郎は死に分かれた兄と再会を果たし、玄弥は尊敬していたのに無視され続けていた兄の真意と愛情を感じつつの”死”なのが、せめてもの救いですね。

そして、いよいよ鬼舞辻無惨との対決です。無惨は「珠代」を吸収しつくし、体力を相当部分回復しての復活です。
彼の圧倒的な圧力の前に萎縮する炭治郎に、無惨は上弦の肆・鳴女に伊黒と甘露寺が殺されたと告げてショックを与えるのですが、これは情報自体が、愈四郎が無惨に与えた「偽情報」。鳴女の視覚と脳を操って、無惨を油断させて、炭治郎と生き残った「柱」と鬼殺隊全員による総攻撃の機会をつくったというわけです。これにより、地下深く潜っていた「無幻城」が地上に引きずりだされます。

このまま夜明けまで無惨を地上に留めることができれば、太陽の光によって無惨はぼろぼろに崩壊してしまうのですが、そうなる前に炭治郎や「柱」たちを倒そうと、自分の触手に、猛毒の自分の血を混ぜる攻撃で襲ってきます。炭治郎は、この攻撃によって瀕死の重傷を負ってしまいます。

ここで、彼の意識は過去に飛び、上弦の壱・黒死牟の弟で、日の呼吸の剣士・継国縁壱と、炭治郎の先祖・炭吉との邂逅の場面を追体験するのですが、これが無惨を叩きのめす「日の呼吸」の奥義をつかむきっかけになるのでしょうか・・・という展開です。

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第22巻「廻る縁」

第22巻の構成は

 第188話 悲痛な恋情
 第189話 心強い仲間
 第190話 ぞくぞくと
 第191話 どちらが鬼か
 第192話 廻る縁
 第193話 困難の扉が開き始める
 第194話 灼熱の傷
 第195話 めまぐるしく
 第196話 私は

となっていて、冒頭は、甘露寺に憧れられている蛇柱・伊黒小芭内の回想場面から始まります。

彼は蛇の化身の女鬼に代々仕えて富を蓄積してきた一族の生まれで成長すれば生贄にされるところだったのですが、脱出に成功して命が助かったという経歴の持ち主です。しかし、彼が逃げたせいで一族50人が鬼に殺され、彼は生き残った親族の恨みをかっているという経験の持ち主です、なので、甘露寺蜜璃にも好意をもっていることを素直に告げられなかった、といった設定です。

で、戦いのほうは残念ながら、無惨が持てる力を最大限発揮して、彼の優位に展開していきます。途中、珠代の飼っていた鬼化した猫が、「柱」たちに解毒剤を注入して小康常態になるのですが、正直言って「焼け石に水」状態ですね。

ついには、「柱」たちも全て吹き飛ばされ、残ったカナヲも無惨によって引き裂かれるのか、といったところで、意識を取り戻した炭治郎が立ちはだかります。先祖・炭吉と初代「日の呼吸」の剣士・継国縁壱との邂逅で見ることのできた「日の呼吸」の十二の型を使って無惨に立ち向かっていきます。

技のキレが縁壱にまだまだ及ばないため、余裕をみせながら炭治郎の技を受けとめる無惨なのですが、ここで彼の体にある違和感が生じます。無惨の体の動きが微妙に遅くなり始めているのです。どうやら「珠代」が無惨に仕込んだ薬は「人間返り薬」だけではなくて、「老化の薬」もあわせて使われているようです。

「人間返り薬」と「老化薬」の複合接種の影響と炭治郎の攻撃の複合効果で確実に力が弱まってきている無惨は、もうすぐ昇ってくる太陽の光から逃れるために逃亡を図ります。炭治郎の攻撃に加えて、意識を取り戻した蛇柱・伊黒小芭内の攻撃に耐えかねた無惨は、体を分割させて細かく飛び散って逃げようとします。昔、継国縁壱から逃れた技の再現なのですが今回は分裂することができません。珠代さんの仕掛けた薬のせいなのですが、投薬は人間返り、老化、分裂阻害だけではなく4つ目の薬も仕込まれているのが珠代さんのしたたかなところですね。

ちなみにこの巻の後半のほうで、禰豆子が珠代さんの薬の効果がでて、人間に戻っています。

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第23巻「幾星霜を煌めく命」

第23巻の構成は

 第197話 執念
 第198話 気付けば
 第199話 千年の夜明け
 第200話 勝利の代償
 第201話 鬼の王
 第202話 帰ろう
 第203話 幾多の呼び水
 第204話 鬼のいない世界
 第205話 幾星霜を煌めく命 

となっていて、珠代さんの投薬と炭治郎・伊黒の複合攻撃で弱ってきた無惨に再び立ち上がった「柱」たちと善逸、カナヲ、伊之助の攻撃が襲います。

そして、とうとう夜明けの到来。太陽の光を浴びた無惨は巨大な赤ん坊のような姿になり、鬼殺隊と「柱」たちの攻撃と太陽の光のもとに崩壊していきます。

ここで、一件落着かと思いきや、死にかけている炭治郎の中に注入されている無惨の血が蠢き始めます。炭治郎を「鬼化」させ、味方であるはずの「柱」と鬼殺隊を襲い始めます。

太陽の光も克服し、「日の呼吸」も会得した炭治郎は、このままでは無惨を上回る最強最悪の「鬼」となってしまうのか・・、というところで、最後の救世主である人間に戻った禰雨子と、

しのぶからカナヲが預かっていた藤の花から抽出した毒によって、「人間」として再び復活することができます。

無惨と炭治郎の無意識下での最後の闘争は、静かなシーンながら、この鬼滅シリーズを締めくくるところなので、原書のほうでしっかり読んでください。自らの後継者として奈落の底に引き込もうとする「無惨」に対し、禰豆子をはじめ多くの仲間たちが、炭治郎に手を差し伸べ現世へと引き上げていく姿は泣かせどころです。

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レビュアーから一言

最終巻の最後は、鬼滅の刃シリーズのほぼ全部のキャスト(といっても善玉キャラに限られますが)の子孫や現代に生まれ変わったら、といったシチュエーションでの現代編で締めくくられています。かなり、しっかりした形で締めくくられているのと、作者は家庭の事情で引退(結婚とも介護とも言われてます)されているので、スピンオフ作品とかは派生してきそうもないのが残念なところです。

ちなみに、この鬼滅シリーズの敵の親玉・鬼舞辻無惨は「鬼」として凄まじい破壊能力をもっているのですが、彼も元は「人間」で、宇宙から飛来したわけでも、古来から存在する人間とはかけ離れた妖物でもないのが特徴で、無惨だけでなく他の「鬼」たちも、「人」がちょっと道を踏み外した結果、出来上がった存在です。ここらが、昭和、平成の時代の「異物との対決」が先鋭化されて描かれていた物語群とちょっと異なる、令和の新しい物語の姿のような気がします。

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