バイブスはWeb漫画誌をリリースし、世代交代が進行中=松田奈緒子「重版出来!」11~13

オリンピック出場を目指していた女子柔道選手・黒沢心が心機一転、大手出版社・興都館の青年マンガ雑誌「バイブス」の編集部員となり、一癖も二癖もある編集者たちに揉まれながら、変人やナイーブなマンガ家たちを担当しながら編集者として成長していく、編集者のお仕事系マンガのシリーズ「重版出来!」の第11弾から第13弾。

前巻までで、担当する新人漫画家・中田伯の初単行本が、予約数がとんでもなく伸びて、発売前に重版決定となる快挙を成し遂げたのですが、今回のタームでは、時流に乗り遅れていたWeb雑誌の発刊に取り組むのですが、これがもとで意外な人物が黒沢のもとへ帰ってきます。

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第11巻 黒沢担当の「高畑一心」にスキャンダル発生

第11巻の構成は

第六十刷 愛したいんだ愛されたいんだ!
第六十一刷 続・愛したいんだ愛されたいんだ!
第六十二刷 二作目のジレンマ!
第六十三刷 負けたことは忘れていい!
第六十四刷 星の光!
第六十五刷 オーバー・ザ・レインボウ!

となっていて、前半部分では、女性の惚れっぽくて、惚れた途端に執筆リズムが狂うという中堅マンガ家・高畑一心「先生」なのですが、今回は、彼のファンである売れっ子アイドルとの「密会写真(?)」を撮影されてしまいます。撮影したのは、バイブスと同じ出版社の「興都館」の写真情報誌だったのですが、同じ社だからといって見逃してもらえるはずもなく、という展開です。高畑一心初スキャンダルの真相は原書のほうでどうそ。

中盤部分は、初連載が打ち切りになって、意気消沈するマンガ家・府川悠の再起物語に黒沢が一肌脱ぐことになります。

紙の本ではいまいち売り上げの伸びなかった打ち切り作品の起死回生の一手として、黒沢が仕込んだのは、「電子書籍」配信と一部無料化。紙とはちょっと違った「電子書籍」のベストセラーのつくり方を黒沢が実践していきます。

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第12巻 Web雑誌「FLOW」発刊。そして、東江絹が還ってくる

第12巻の構成は

第六十六刷 MAKE MONEY!
第六十七刷 FLOW出発!
第六十八刷 次への扉
第六十九刷 担当 黒沢心です!
第七十刷 とうめい階段!
第七十一刷 虹をつかむ子供!

となっていて、前巻の後半部分の続きっぽく、今までバイブスで取組が遅れていた「Webマンガ誌」の配信に先輩編集者の安井が乗り気になっています。前巻で打ち切り作品が電子書籍化で突然人気が出たことで編集部全体でWeb化の気運が盛り上がってきたことに乗じて、以前、廃刊になった「FLOW」の再刊行を目指しているようです。

しかし、ここでネックになるのが前世紀の遺物のようになっていて「山邊」編集局長で、彼はこれ以上赤字は出せないと猛反対です。この難題に安井が意外な解決手段を見出します。それは局内の編集者たちの「念願」でもあったのですが、ということで種明かしは原書のほうで。

そして、Web雑誌として甦った「FLOW]をみて投降してきたのが、かつて黒沢のもとを去って、安井の担当となり、使いつぶされてマンガ界を去った「東江絹」で、という展開です。マンガ家を辞めて、大学に復学し旅行会社に就職していた彼女の描くマンガは、以前と比べて一皮むけていて幅広い層の人気を獲得します。

3週続けて人気上位三位以内に入れば連載権が獲得できるのですが、連載決定となった場合は「安井」が担当すると一方的に安井が宣言します。これに対して黒沢は、安井のプラン以上に東江のマンガを面白くする案が出せれば担当を譲ってもらうと交渉。

そして、なんとか企画書案をひねり出すのですが欠点だらけのもので、突っ返そうとする安井だったのですが、企画書のある1ページを見て、時代の変化で、自分は「古く」なっていることに気づき・・という展開です。企画書に描かれている何を見てそう思ったか、は原書のほうで確認してくださいね。

後半部分は、「ビーヴ遷移」の連載が進行しているのですが、壁にぶつかっている伯くんが悩み始めるタームに突入します。ベテラン漫画家の三蔵山のマンガ家は「興味がないものやコトでも、しっかり見る。自分なりに考える」ことが必要だというアドバイスを受けて、伯は実父に会う決心をするのですが、老人ホームであった彼の父の様子は、以前横暴だった姿とはうって変わったもので・・という筋立てで次巻に続きます。

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第13巻 東江絹はトラベル漫画で売れっ子になる

第13巻の構成は

第七十二刷 傷つき星人!
第七十三刷 伯、開眼する!
第七十四刷 はしあげしずる!
第七十五刷 新しい売り方!
第七十六刷 捨てる神あれば拾う神あり!
第七十七刷 チェリーブロッサム!

となっていて、冒頭の「傷つき星人!」はマンガ製作とはちょっと離れて、「アユちゃん」の学校生活が描かれます。父親の失踪後、一人で生活している彼女なのですが、友人とのトラブルを通じて周囲の人に支えられていることに気づく、というほっこりとした話となってます。

後半部分では、Web雑誌「FLOW」で再デビューした東江絹のトラベル漫画に、いよいよ単行本化の話が持ち上がります。前巻で若い編集者のサポートに専念することに決めた安井は、相変わらず「辛口」ながら黒沢の「東江」売り出しのアイデアをさらに深化させてくれるようになってます。

ところが東江の勤める会社は副業禁止だったため、マンガ家としても名が売れ始めた東江は、単行本が出た後は会社を辞めてもらえないか、と自主退職を勧められ、という展開です。今まで、他人への気遣いがハンパなかった東江の「決断」が注目されるところです。

一方、壁にぶつかった状態で、父親と会い、彼が今までの記憶を失っていることにショックを受けた中田の精神状態はだんだんと悪化を続けていて・・というところで次巻以降のショッキングな展開に続きます。

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レビュアーの一言

第12巻や第13巻で主要なテーマとなっているWebマンガ誌ですが、出版社系のWebマンガ誌は、2012年に小学館が「裏サンデー」、集英社が「となりのヤングジャンプ」をリリースし、2014年に小学館が「マンガワン」へ、集英社が「少年ジャンプ+」へと模様替えして、この二つを中心としながら発展してきた、という感じです。

現在ではコロナ禍を契機として、講談社、白泉社、芳文社をはじめ多くの出版社が自社系Web雑誌をリリースしています。2021年の統計では紙コミックの売り上げが2625億円に対し、電子コミックの売り上げが4114億円とほほ1.5倍になっていますし、Web漫画特有の縦スクリールのほうが読みやすいという層もでているようなので、Web漫画誌のほうが優勢になっていく時代がすぐそこなのかもしれません。

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