オリンピック出場を目指していた女子柔道選手・黒沢心が心機一転、大手出版社・興都館の青年マンガ雑誌「バイブス」の編集部員となり、一癖も二癖もある編集者たちに揉まれながら、変人やナイーブなマンガ家たちを担当しながら編集者として成長していく、編集者のお仕事系マンガのシリーズ「重版出来!」の第17弾から第19弾。
前巻までで、中田伯くんの心の病が悪化しているのに気づかず、黒沢が担当を外されたり、”神”書店員の「河さん」が勤めていた書店の契約を打ち切られたため、自らブックカフェを開業したり、「バイブス」の編集長が様々な揉め事の末、黒沢のメンターであった「五百旗頭」に替わったり、と大きな環境変化が起きたのですが、このタームでは黒沢も中田伯くんの担当に戻ります。そして、中田伯くんの「ビーヴ遷移」の人気が黒沢が属する「バイブス」誌にさらなる飛躍をもたらしていきます。
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第17巻 「ビーヴ遷移」のアニメ化が動き始めたが、トラブル発生
第17巻の構成は
第九十六刷 置き土産!
第九十七刷 最悪と最良!
第九十八刷 続・最悪と最良!
第九十九刷 クロニクル!
第百刷 すべて見よ!
第百一刷 続・すべて見よ!
となっていて、前半では、話だけ持ち上がっていたフリーズしていた「ビーヴ遷移」のアニメ化の話が動き始めます。
実は、黒沢が担当を外れてから、製作会社を巡って、前編集長の相川が自分の子飼いの会社に仕事を回そうと画策したため、五百旗頭がクビ覚悟で、製作話を蒸していたことがわかります。このあたり、黒沢が担当から外れていて幸いだったというところでしょう。
ただ、ここで全てがうまく回っていくとはいかないのが、こういうアニメ化の常で、原作者の中田伯と、製作を請け負ったyammとのキャライメージが合わず、あわや製作中止か、というところまで追い込まれます。この危機がどう克服されたかは、原書のほうで。
後半では、伯たち親子を捨て出奔し、現在は認知症となって関西の老人ホームに入所している伯の実父が病死します。認知症が進んで、自分を「中田伯」だと思い込むほどになっていたのですが、最後は、「父親に虐待される」という妄想にかられ、施設内の庭で「ビーヴ遷移」の漫画のページを破って口に詰め込んで死んでいた、という死に方です。
父親の葬儀を一人で出しながら、中田は父親に抱いていた心理的束縛からなんとか脱出しようとしています。
第18巻 黒沢と伯、アユ、それぞれのプライベートライフ
第18巻の構成は
第百二刷 びっくり!
第百三刷 私生活!
第百四刷 クリエイト!
第百五刷 マンガを描く!夢を描く!
第百六刷 花も団子も!
第百七刷 Happy Birthday!
となっていて、前半は、中田伯がなんと動画配信に挑戦したり、黒沢が合コンに参加したりといった、こぼれ話系のネタですね。合コンの男性メンバーの心の底を見抜いていく、黒沢の観察力がハンパないのですが、それが店の女の子まで及ぶのがスゴイところです。
中盤部分は、マンガ家の多くが使うようになっているタブレットの作画アプリの不具合による騒動です。ペンと紙で描いていたアナログの時代には想像できなかったことなのですが、アプリが一般化することによって、一人のベテラン漫画家が現役復帰するエピソードとか、アナログの「ブラシ」作成の職人技がデジタルで甦るあたりは新しい時代の「明るい側面」を感じさせてくれます。
後半部分では、伯とアユちゃんの恋バナがゆっくりと進展していくのですが、ここで、伯の母親が昏い陰をさし込んできます。
第19巻 「バイブス」の世界同時配信に向けて黒沢、奮闘する
第19巻の構成は
第百八刷 108!
第百九刷 お金はこわい!
第百十刷 星!
第百十一刷 みんなで一緒に!
第百十二刷 どんと来い世界!
第百十三刷 よろしく世界!
となっていて、冒頭は、薔薇族系ギャグマンガ家「性・二―ルソン」の弟・新村正史がグルメ探偵もので開眼していく話です。第3話までは評判も良かったのですが、読者アンケートの結果もふるわなくなって、何か彼のマンガは一味たりないようなのですが・・という筋立てです。彼が今まで封じていた「巨乳好き」を解放することが解決策になっていきますね。
後半部分は、「ビーヴ遷移」のヒットによって売り上げも順調に上がってきたマンガ誌「バイブス」が雑誌の世界同時配信に乗り出す話です。「ビーヴ遷移」のアニメの世界同時配信が始まったため、「バイブス」の海賊版サイトが跋扈して、見逃しておくわけにいかなくなった、というわけですね。
しかし、同時配信を行うためには、いろんなチェック、例えば宗教的なタブーであったり、文化的な違いであったり、様々なハードルがあるため一朝一夕には進みません。
ここで黒沢が第6巻でつくった「校閲者」との人脈は生きてくるのですが、詳細は原書のほうでどうぞ
レビュアーの一言
第18巻のマンガの作画アプリのところでは、第16巻で発掘した漫画家・野口がデジタルで出稿する原稿の印刷サイズが微妙に小さくなる原因が、出力サイズの違いであることがわかるのですが、ここのところで、マンガ誌のデジタルの出力催事が会社ごとや雑誌ごとに違っているということが紹介されています。
マンガでは、バイブスの主力催事をデフォルトメニューにいれてもらうことで解決するのですが、そもそも統一が図られていない、というところに、日本らしい「見えない壁」を感じてしまいます。
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