地政学コンサルはウクライナとインドの政治と歴史の闇に遭遇=「紛争でしたら八田まで」3・4

目まぐるしく動く国際情勢や、他国人にはわからない民族対立が原因でおこる様々な揉め事を、「地政学」的知識と、無鉄砲な行動力+プロレス技で解決していくリスク・コンサルタント「八田百合」の活躍を描く、紛争解決マンガ・シリーズ『田素弘「紛争でしたら八田まで」(モーニングコミックス)』の第3弾と第4弾。

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あらすじと注目ポイント

第3巻 お気楽地政学コンサルタントは、ウクライナで親ロシア派の企みを見抜く

第3巻の収録は

第17話 ウクライナ愛と暴力と資金提供篇③
第18話 ウクライナ愛と暴力と資金提供篇④
第19話 ウクライナ愛と暴力と資金提供篇⑤
第20話 ウクライナ愛と暴力と資金提供篇【完結】
第21話 日本山中不良抗争【前編】
第22話 日本山中不良抗争【後編】
第23話 インド、宗教とITと蟲の夢①
第24話 インド、宗教とITと蟲の夢②
第25話 インド、宗教とITと蟲の夢③

となっていて、「キングス・カレッジ・ロンドン」で同級生だったウクライナ人「オクサナ」の依頼を受けてのウクライナの首都・キエフでのトラブル解決。

オクサナは大学卒業後、アメリカの大手ゼネコンを経て、母国ウクライナの大手ゼネコン・レオコープの幹部社員となっています。その会社が資金提供をしているウクライナの民主化とロシア離脱を進める政治団体UEDに対ロシア強硬派が増え始め、資金提供ができなくなってしまっているので、資金提供を復活するため、強硬派の排除を百合に依頼してきた、という次第です。

まずは、実情の調査が大事と調べ始めた百合だったのですが、レオコープの資金提供が依然として対ロシア強硬派に流れていることをつきとめたところ、百合とオクサナその強硬派に襲撃されるいう事態が起きます。その危機を救ったのが、強硬派のナンバー2で、元アメリカのプロレスラーのアルセンで、という筋立てです。

ここから、反ロシアで西側よりの勢力が優勢ながら、親ロシア派が独立を狙って動き、そこに大手企業のビジネスも絡んできていた、2014年当時の複雑なウクライナ情勢が浮かび上がってきます。

中ほどの「日本山中不良抗争」は、百合のたった一人の妹で、長野(ローメンが出てくるので、伊那地方がモデルかと推測されます)で祖母と暮らしている「サチ」の友人のトラブル解決。

内容は市内の中学生レディースの勢力争うなのですが、百合がからむと「地政学」の実験場のようになってしまいます。

後半は次巻へ続く「インド編」の最初のところ。

インドに進出している日本のIT企業のエリート現地人社員が、会社への借金を申し出てくるため、その身辺調査です。その社員「ディリップ」はインドの大学を失業して夫婦でこの企業に就職してきた真面目で勤勉な社員なのですが、インド人の平均年収の30倍の高給にもかかわらず生活がいつも苦しそうで、犯罪絡みでは、と心配しての依頼です。

ディリップの生い立ちを調べた百合は、彼がインドのカースト制度のある「階級」の出身者であることをつきとめるのですが・・という展開で次巻へ続いていきます。

紛争でしたら八田まで(3) (モーニングコミックス)
イギリスを軸に、フリーの地政学リスクコンサルタントとして世界中で働く八田百&...

第4巻 お気楽地政学コンサルタントは、インドのカーストの闇を晴らす

第4巻の収録は
第26話 インド、宗教とITと蟲の夢④
第27話 インド、宗教とITと蟲の夢⑤
第28話 インド、宗教とITと蟲の夢⑥
第29話 インド、宗教とITと蟲の夢⑦
第30話 インド、宗教とITと蟲の夢⑧
第31話 インド、宗教とITと蟲の夢【完結】
第32話 アイスランド、今と過去の追跡①
第33話 アイスランド、今と過去の追跡②
第34話 アイスランド、今と過去の追跡③
川口貴久氏の【2021年の地政学リスクとその見通し】

となっていて、前半から中盤にかけては前巻から続く「インド編」です。

前巻の最後で、調査対象となった「ディリップ」がインドのカーストの最下層「ダリット」の出身で、奥さんの「ゾーラ」は裕福な商人一族でヴァイシャ階級の出身で、駆け落ち同然にインドのIT産業の中心都市・ベンガロールへでてきていたことや、さらにその過去をネタに金をゆすられていたことをつきとめます。

このゆすりが多額になり、ディリップの支払いが遅れがちになったことが原因で、ディリップの父親が誘拐される事態にも発展しています。ディリップの父親も貧しい暮らしをしているので、誘拐しても多額の金が用意できるはずもないのですが、実はその裏に、「ゾーラ」の父親が娘の奪還を目論んで、非ヒンドゥー教徒の拉致・殺害を請け負う「アグニファウジ教団」へディリップの暗殺を依頼していた、という事情が潜んでいることがわかります。

ここで、一時的にディリップの父親を奪還しても、教団の追及は収まらないことと考えた百合は、バッタの大量飛来を利用して、誘拐犯のアジトに潜入し、ディリップの父親とゾーラの父親を確保した上で、誘拐犯のリーダーにディリップたちの追跡をこれ以上やめるよう取引を申し出ます。

それは彼らの資金源と銃の供給先がインドの隣国であることをネタにした脅しで・・という展開です。

後半部分では、アイスランドを舞台に、日本のバイオベンチャー企業とアイスランドのゲノム解析会社との提携契約の契約書やデータの入ったUSBの盗難事件の解決です。

ここで、百合は幼少時代、イギリスで仲良しだった友人の姿を見かけるのですが、詳細は次巻のレビューで。

紛争でしたら八田まで(4) (モーニングコミックス)
イギリスを軸に、フリーの地政学リスクコンサルタントとして世界中で働く八田百&...

レビュアーの一言

各国の歴史に根ざした複雑な国際情勢や国内情勢に詳しくなるこのシリーズなのですが、もう一つの魅力は百合がビジネスで訪れる国の国民食・民族食の数々。

ウクライナ編では、ロシア料理と誤解している人の多いウクライナのスープ料理「ボルシチ」と揚げパンの「パンプーシュカ」や、羊のひき肉を包み揚げしたウクライナで人気のファーストフード「チェブレキ」、インド編では刻んだ玉ねぎやスナック麺・ポン菓子・タマリンドを混ぜてつくられる軽食「ベルプリ」、小麦粉をこねて丸く揚げ、真ん中の穴をあけて、スパイスを入れた水やポテトをいれた「パニプーリー」、揚げた豆に塩で味付けし、干しぶどう・ナッツを混ぜたスナック菓子「ナムキン」といったものが登場しています。

今回は乱闘シーンや、スラムの調査といったことが多いせいか、B級系のものが多いですね。

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