マリとフランスのテロリストの動きを封じる「地政学」的手法とは?=「紛争でしたら八田まで」9・10

目まぐるしく動く国際情勢や、他国人にはわからない民族対立が原因でおこる様々な揉め事を、「地政学」的知識と、無鉄砲な行動力+プロレス技で解決していくリスク・コンサルタント「八田百合」の活躍を描く、紛争解決マンガ・シリーズ『田素弘「紛争でしたら八田まで」(モーニングコミックス)』の第9弾と第10弾。

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あらすじと注目ポイント

第9巻 地政学コンサルは、祖国の英雄を狙うテロリストを阻止する

第9巻の構成は

第71話 八田百合の休日、ラブ&シーランド編
第72話 マリ、テロと政治と宿命①
第73話 マリ、テロと政治と宿命②
第74話 マリ、テロと政治と宿命③
第75話 マリ、テロと政治と宿命【完結】
第76話 フランス、愛とセレブと団地①
第77話 フランス、愛とセレブと団地②
第78話 フランス、愛とセレブと団地③

となっていて、冒頭話はひさびさのイギリスでの仕事待ちの日々で、いつものように「地政学」講義が始まります。今回は相手への「探り」と「切り崩し」をテーマとする「プローピング」。内容は原書で確認いただくとして、今話では、泡沫国家「シーランド公国」がでてきます。

本編の中盤のアフリカのマリ共和国が舞台。そこの出身者で、フランスのサッカー・プロチームで活躍した名選手・バカリを、政治の舞台に引っ張り出す企画に依頼されたのですが、彼は政治利用を非常に嫌がっていて難航します。

バカリの承諾が得られないまま、彼の凱旋イベントが近づき、その式典に出席する予定の、マリの北部出身のトゥアレグ人で組織された人気バンドとの対談を行うのですが、そのメンバーの中に見慣れない男性が混じっていることに百合が気づきます。

調べてみると、その男はアルカイダから離脱した幹部が組織した個別テロ組織に属する人物であることがわかり・・という展開です。このあと、このテロ組織によって、バカリの息子が誘拐され、バカリ+百合での奪還作戦が展開されていきます。

後半は、「マリ編」の続編とも位置づけられるもので、バカリから妻「エロディ・ブラッサンス」との離婚交渉を請け負った百合が、フランスに乗り込みます。

エロディの実家・ブラッサンス家は手広くワイン事業を営んでいて、彼女の父親は経済評論やテレビコメンテーターもこなす、右派の有力者で、エロディ自身は若い頃からファッションモデルをし、有名人男性とのゴシップも大量にあるというおバカセレブの典型という設定です。

百合が潜入したパーティーでも、グラスを落として割ったしまったウェイターがそれを素手でひろおうとすると大声で怒鳴りつけるという傍若無人ぶりを発揮しています。

バカリに有利な離婚条件を引き出すために彼女を尾行すると、彼女は現在は修道院暮らしで、修道院に来る移民二世の男性とちょくちょく食事をしているようです。

しかし、その男性は、テロ活動に誘われているようで、百合はそれを阻止しようとするのですが、その過程で、エロディの意外な本性を見つけることとなります。

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第10巻 地政学コンサルは、古き国・イランに新しい投資の芽を見出す

第10巻の収録は

第79話 フランス、愛とセレブと団地【完結】
第80話 イラン、文化と経済と僕たちの青春①
第81話 イラン、文化と経済と僕たちの青春②
第82話 イラン、文化と経済と僕たちの青春③
第84話 イラン、文化と経済と僕たちの青春【完結編】
第85話 カナダ、みんな違ってみんないいし、みんな悪い①
第86話 カナダ、みんな違ってみんないいし、みんな悪い②
第87話 カナダ、みんな違ってみんないいし、みんな悪い【完結】

となっていて、前半の「イラン編」では、第4・5巻の「アイスランド編」で依頼人だったバイオ企業の社員・杉村が再び依頼人になります。彼は、イラン進出の拠点づくりのためにイランのイスファハーンに駐在しているのですが、アメリカの経済制裁などの影響で本社はイランからの撤退を考えています。杉村はイランの将来性から撤退すべきではないと考えていて、ここは現地の踏ん張りどころと思っているのですが、ところが相棒となるイラン人社長のレザーイーはやる気はなく、しょっちゅう外出している割には全く成果があがってきません。副業をしているのではと疑って、彼が頻繁に出入りしている倉庫を探ってみると・・という展開です。

今回は、そんな古い歴史をもちながら、人口の増えている古くて新しい国・イランから撤退しようとする本社決定を百合の「地政学」でひっくり返していきます。

後半の「カナダ編」は、州政府の管轄する学校内で起きている教員ストを鎮めるため、百合がコンサルトして呼ばれています。組合側の要求は「賃金UP」「一クラスの生徒数縮小」という一般的なものなのですが、州政府側が交渉妥結の条件として出してきたのが、「適正なクラス分類」です。

今まで、この学校では、多文化・多民族国家「カナダ」を象徴するかのように「クラス分け」をしてこなかったため、校長たちはこれに抵抗します。ところが、教員側はこの「クラス分け」提案に賛成、これが生徒に飛び火し、賛否が別れて傷害や乱闘に発展する騒ぎになっている、という状況です。

しかし、この対立にはイギリス系、フランス系、イヌイットなどの原住民系といった民族分布が大きく影響しているようです。そして、投票で「クラス分け」導入の是非をきめることとなり、この対立の溝はどんどん深まっていって・・という展開です。カナダの複雑な民族情勢がうかがえる筋立てになっていますね。

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レビュアーの一言

本シリーズおなじみの民族食としてはマリ編では、米やクスクスに牛肉とピーナツバターを使ったソースをかけた「ティガデゲナ」、ミキサーにかけた生姜とレモン、シロップなどを入れ、ビニール袋に入れて売っている「ジャンジャンブルジュース」、フランス編では、牛の4つの胃を、シードルとカルヴァドスで煮込んだ「トリップ・ア・ラ・モード・ド・カン」、肉を煮込んで小麦粉や生クリームで白く仕上げた18世紀以来の伝統料理「ブランケット・ド・ヴォー」が登場。マリ編とフランス編は姉妹編ともいえるのですが、この料理の落差が、それぞれのキャストの状況の落差を表しているように思えます。

イラン編では、ザクロジュースでクルミ、鶏肉を煮込んだ「フェセンジャーン」、羊の頭や足、もつを煮込んで、レモン汁やシナモンをかけて食べる朝食「キャレパチェ」、「カナダ編」ではフライドポテトにチーズと肉汁をつかったグレイビーソースをかけた「プティーン」が登場します。世間一般の見方とはちょっと違った視点からの「イラン」と「カナダ」をそれぞれの料理からも垣間見るのもいいかもしれません。

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