チェーザレのヴェネツィア対策が功を奏し、父は念願の教皇へ=惣領冬実「チェーザレ」11〜13

どんな手段や非道徳的な行為であっても、結果として国家の利益を増進させるのであれな許されるという「マキャベリズム(権謀術数主義)」を唱えた、イタリア・ルネサンス期の政治思想家であるニッコロ・マキャベリから、「理想の君主」と讃えられながら、志半ばで戦乱に斃れたチェーザレ・ボルジアの半生を描いたシリーズ『惣領冬実「チェーザレ」(モーニングKC)』の第11巻から第13巻まで。

前回は、神学の学位を取得して、一族の悲願であった「枢機卿」となったジョヴァンニ・デ・メディチだったのですが、今回は舞台をローマへ移し、教皇イノケンティウス8世死去後の、ローヴェレ枢機卿一派とロドリーゴ・ボルジア派が争う因縁の「教皇選」に突入します。

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あらすじと注目ポイント

第11巻 ロレンツィオ・メディチが死去し、チェーザレは教皇選の方針修正を迫られる

第11巻の構成は

Virtu92 永遠の都
Virtu93 巨星墜つ
Virtu94 次世代たち
Virtu95 帰郷
Virtu96 宴

となっていて、枢機卿となったジョヴァンニとともに、アンジェロもローマ入りを果たします。教皇庁の枢機卿たちへの挨拶後、ボルジア家の邸宅に招かれ、チェーザレの妹・ルクレツィアに面会してその可愛らしさに圧倒されるのですが、同時にチェーザレそっくりの性格のキツさを見てしまうことになりますね。

一方、チェーザレのほうは、メディチ家とピサ大司教の仲をとりもって、メディチを取り込み、教皇選挙での体制を整えていくのですが、ここで恐れていた事態が勃発します。
病床に臥せっていたメディチ家の当主・ロドリーゴがサヴォナローラの見舞いを受けた後、体調が急変し亡くなります。このため、メディチ家は長男のピエロが当主となるのですが、これがミラノのスフォルツァやナポリ王と結んでいる三国同盟の今後に影響を及ぼしていくこととなります。そして、ピエロと面会したチェーザレに彼が告げたのは三国同盟の解消です。
さらに、ここで教皇イノケンティウス8世が危篤となり・・と、用意周到に進めてきた、ボルジアから教皇を指す、という目的に暗雲が漂い始めます。

ただ、この事態を手をこまねいてみているチェーザレではなく、次はヴェネツィアに狙いを定めて、ヴェネツィア軍の総司令官を務める一族ゴンザーガ家の次男「ジョヴァンニ・ゴンザーガ」に接近していきます。

第12巻 チェーザレは、ヴェネツィア勢力に接近し、教皇選挙が開始される

第12巻の構成は

Virtù97 決断の時
Virtù98 招集
Virtù99 教皇選①
Virtù100 教皇選②
Virtù101 票の行方

となっていて、冒頭では教皇イノケンテイゥス8世の危篤を見越して、ヴェネツィアのゴンザーガ家に接近したチェーザレの動きが描かれます。教皇庁とナポリの同盟の動きをリークして、教皇庁の軍事部門を請け負っているヴェネツィアの動揺を誘うあたり、策士の本領発揮といえます。
そして、ミラノ、ナポリがそれぞれ軍をローマへ派遣してゆさぶりをかける中、メディチ家の新当主・ピエロは、ナポリ王国に呼応して、ロドリーゴ・ボルジアからローヴェレへと鞍替えをし・・という展開です。

メディチ家の方向転換によって、帰趨のわからなくなった教皇の座がロドリーゴ・ボルジアとローヴェレ、どちらに転がり込むこととなるのか、あるいは、両派の対立の隙間をついて、おもわぬ候補が漁夫の利をさらうこととなるのか、23人の枢機卿とその従者が、システィーナ礼拝堂に缶詰になって行われる「教皇選挙」での、虚々実々の駆け引きが展開されていくのですが、その模様は原書のほうでどうぞ。

第13巻 ボルジアの教皇就任が決まる中、ジョヴァンニは反教皇派の烙印を押されるか?

第13巻の構成は

Virtù102 談合
Virtù103 ヴァチカンの朝
Virtù104 教皇誕生
Virtù105 策略
Virtù106 再会

となっていて、冒頭は前巻からの教皇選挙の続きです。教皇選挙のやり方は時代によっていろいろあるようで、この1492年の時のやり方や得票数が正確に伝わっているわけではないようですが、このシリーズでは、推薦者3名までの名前を書くことが許される記名式投票で、全体の3分の2以上の得票を得た者が新教皇として衰退されるという方式になっています。

第1回から第3回までの投票で、ローヴェレ枢機卿が庇護するナポリ派のミキエル、ナポリ出身の枢機卿ながらナポリ王と対立している中立派のカラーファ、ミラノ派から支持を受けるボルジアの三人が有力候補となってきているのですが、ここで、ローヴェレ枢機卿によるミラノ派への買収工作や、カラーファ枢機卿のミラノ派への泣き落としなどさまざまな多数派工作が裏で展開していきます。

そしてここで一番ものをいったのが、ミラノ派のスフォルツァ枢機卿に対しての、ロドリーゴ・ボルジアの娘ルクレツィアを使った一族への政略結婚と、チェーザレが仕込んでおいたヴェネツィアのゲラルディ枢機卿によるローヴェレ派の切り崩しです。

実は前巻で、チェーザレがゲラルディ枢機卿に面会した時に、彼にある作戦が仕込んであったようで、一夜のうちに中立派、ナポリ派、ローヴェレ派が切り崩され、ボルジアへと票が動き、一挙にボルジアが多数派となっていきます。

この動きから取り残されたと見えたのが、ローヴェレ枢機卿とジョヴァンニ・メデイチです。ローヴェレ枢機卿の選択は?そして、ジョヴァンニは、反教皇派として糾弾され、メディチ家を衰亡に陥らせる引き金を引いてしまうのか?といった展開です。

少しネタバレしておくと、投票前夜、礼拝所でロドリーゴ・ボルジアからの「そなたに(そなたの)父の声が届くよう、神に願おう」というアドバイスのおかげで間一髪、危機を乗り切っています。
この最終投票のところはかなり息詰まるやりとりが展開されるので、ぜひ原書で読んでほしいところです。

メディチ没落の危機を救ったジョヴァンニだったのですが、兄のピエロによる失策によって「ローマ追放」となってしまいます。まあ、これは罰というより、スフォルツァとの仲が決定的に悪化した余波からジョヴァンニを守ろうというアレキサンデル六世(ロドリーゴ・ボルジア)の温情なんだと思います。
このため、アンジェロほジョヴァンニ付きを離れて、物語は新たなステージへと突入していきます。

レビュアーの一言

アレキサンデルr世の前の教皇がイノケンティウス8世で、このシリーズの中では高齢のため、かなり衰弱している状態で登場するのですが、実は元気な頃は、魔女狩りと異端審問を活発化させ、その一方で聖職売買や親族登用、派手な女性関係で、堕落した「教皇」の典型と言われた人物です。
さらに、イノケンティウス8世の跡を継いだロドリーゴ・ボルジアことアレキサンデル6世もその治世のはじめは教会法の厳守と支出の切り詰めで財政を立て直したものの、治世の後半は、親族登用の弊害や奢侈がたたり、ローマ市内はスペイン人のならず者が闊歩し、犯罪の温床となるなど治安が相当悪化した都となっていたようです。
「ルネサンス」という華やかな言葉と裏腹にかなり荒んだ時代であったような気がしますね。

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