秀吉の死の直後から「関ケ原」への秒読みは始まっていた=宮下英樹「大乱 関ケ原」1

豊臣秀吉亡き後、秀吉の後継者・秀頼と豊臣政権を守ろうとした石田三成と、天下の覇権を我が物にしようと企む、戦国の雄・徳川家康は、豊臣恩顧の大名や秀吉に臣従させられた大名を巻き込んで、日本を二分した大乱「関ケ原の戦」を、戦国マンガの第一人者・宮下英樹が新解釈した「大乱 関ケ原」シリーズの第1巻。

前シリーズの「センゴク権兵衛」では、センゴクは上方の権力闘争から離れて小諸の自領統治に専念し、徳川と石田三成の対立が表面化してからは、徳川に味方し、秀忠軍に寄騎したために結局、関ケ原の戦には間に合わなかったのですが、今回のシリーズでは、徳川家康や石田三成など戦の中心人物たちにスポットをあててその本筋が語られます。

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あらすじと注目ポイント

構成は

第1話 秀吉薨去
第2話 五大老、五奉行
第3話 誓紙と提言
第4話 深謀遠慮
第5話 渡海衆
第6話 禁忌の縁組

となっていて、冒頭は秀吉の死去から始まります。「センゴク権兵衛」シリーズでは、尾張から秀吉に付き従っていたセンゴクが主人公であったので、数々の回想シーンがあったのですが、今回は、思い出にふける人物もなく、秀吉が死ぬ前にやり散らかした「朝鮮の役」の後始末に苦慮する徳川家康や石田三成の姿から始まります。

言い出しっべの秀吉が死に、戦況も押されている状況なので、当然「撤退」しか選択肢はないのですが、秀吉死去が大っぴらになれば、敵の明・朝鮮連合軍の攻撃の的になることは間違いないですし、無事帰還したとしても、渡海して戦った小西、加藤、黒田、島津をはじめとする有力大名には報奨となる領地も割譲できないため、彼らの不満が爆発すれば内乱状態になる可能性大、という状態です。

この危機的な政治状況の時に、秀吉が後を託した、石田三成を筆頭とする五奉行と家康、そして徳川家康、前田利家、宇喜多、上杉、毛利の五大老間の仲は、家康の突出によって疑心暗鬼にかられ最悪です。
ただ、ここで注目すべきは、通常の時代小説では、家康はこの段階で秀吉後の政権奪取を企んでさまざまな謀略を仕掛けるのですが、本書では家康にそんな謀略を企てる余裕はなく、朝鮮の役の渡海衆が内乱を起こしたときの備えと自分より若輩で戦争経験のない五奉行を頼りにせずに進めてしまった結果、こういう状態を引き起こしていると解釈されているところでしょう。

全員が「内乱を避ける」という目的は一緒ながら、動きが連携もなにもないため、どんどん、事態が悪いほうへ転がっている、という典型例であったようですね。

そして、五奉行や他の五大老から糾弾されることが嫌で、家康が多数派工作として、徳川派となる大名たちの取り込みを強化していってどんどんドツボの中にハマりこんでいく中で、渡海衆への対応の旨さ、特に島津家を納得させて他の大名たちを抑え込む、という三成の見事な手法で彼の声望が上がり、三成派が形成されていく、という「戦まっしぐら」みたいな情勢へと転がっていきます。

レビュアーの一言

今巻でも徳川家康の謀臣は本多正信で、要所要所で彼に忠告したり、政策提言をしているのですが、石田三成に「馬鹿者」という家康最近の口癖は慎むよう厳しく言ったにも関わらず、家康が思わず口走ってしまったり、派閥つくりの証拠となるようなことは慎むよういったはなから、家康が勝手に伊達政宗との縁組を約束していたり、と信長、秀吉が健在だったころのような「政信頼み」は影をひそめてきています。
慎重な家康なのですが、時として、三方ケ原のときのような突発行動がでることがあるので、そこが不安なところですね。

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